崩れる日なにおもう 病葉流れて (下) (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎 (2005年12月1日発売)
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  • 本 ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344407275

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  • 先物取引会社で働く事となった梨田。大仁田と共に会社が騙している客を救出、自分の張った相場に成功するも生きている実感を得ることが出来ず、袋小路を抜け出せない。病葉流れてシリーズ、とりあえず完結。

  • 1

  • 『毀れゆく者、なにを祈る―』ギャンブル小説であり、筆者の自伝的小説でもある本作の一応の完結編でございます。身を焦がすようなギャンブルと相場の果てに彼が見たものは一体なんだったのか?強烈な物語です。

    ずっと書こう書こうと思って、ついつい延び延びになってしまいました。本書は無頼派作家で知られる白川道先生の自伝的小説の一応の完結編となります。ここの箇所は他と違い、今までのギャンブル小説だけではなく、天文学的な金が瞬時に増えたりなくなったりする相場小説。それももっとも過酷な先物相場の世界の話になってくるのです。

    主人公の梨田は大手企業を辞め、麻雀で知り合った辻野の経営する先物会社に入社することになったのですが。ここで繰り広げられているのがなんともはや…。詳しいことは書くことは出来ませんけれど、本当に真に迫っていて。業界が現在も縮小傾向にあるのはここに書かれた当時とほぼなんら変わらない営業スタイルや、俗に『商い』といわれる客の金をそれこそ「ケツの毛まで」むしりとるテクニックの数々が開陳されていることでした。もう一度繰り返します。先物会社の実態というのはここに書かれていることと、現在でも少しの差異はあれど、大筋では変わっておりません。ですので先物相場を始めようとする人には何も言わずにこの本を一読させ、それでもやるかどうかは自分で決めろというでしょう。

    それはさておき、営業で大きな客をつかんだ梨田は大学時代の麻雀の師匠である永田らと組んで、自分の席を置いている会社相手に相場でひと勝負するということを思いつきます。正直言うと相場の流れとカネとギャンブルと男と女…。これらが密接に絡まりあってカタルシスへと突き進む怒涛の展開は、この文章を書いている段階で都合4回ほど全体を通して読んでおりますが、今回もまた、グイグイと引き込まれてしまいました。その過程の中で『赤トンボ』で水商売を営む坂本、永田、梨田、医者の小野で囲む超高レート麻雀の場面は僕が麻雀を廃業してルールもほとんど忘れてしまっているので、ゲームの織り成す緊張感と展開される麻雀活字、当時の金銭の価値を今の価格に換算して読まなかったので、もし頭の中でそれを一切合財やっていたらおそらくその狂気ぶりに後に永田の妻になる登場人物の菜摘のように、文章を追いながら呆然としていたでしょう。

    本筋のお話である相場のほうでは、会社に蜘蛛にとらわれた獲物のように絡めとられ、にっちもさっちも行かなくなっている客をウラで集め彼らを密かに逃がすなど、ダイガクを出だ人間がそこまで頭が回るのかと思うほどの八面六臂の活躍を見せながら、梨田は社長の辻野にその腕を買われ、着々とその地位を気づいていきます。本人は勝った時点で会社から姿を消すと腹の中で考えているのに…。

    そして相場も最終局面になったときにウラの世界からの影がひたひたと梨田に迫って来、ぎりぎりのところで交わしながら自分の目標にひた走る梨田。彼のピカレスク的なかっこよさに何度も心を震わせる自分が降りました。結果として彼は勝つのですが、永田と飲んだ酒でも酔えず、酔いが回り始めた頃に…。この物語の結末が待っております。これを『因果応報』というのか、それとも別な感想を抱くのは読者の判断にゆだねられるところではありますが、彼の生きた前半生をありのままに僕は受け止めたいと思います。

    この物語は読む人で好みが合う会わないが多分に分かれるかと思いますが、僕はこの物語が大好きですし、できることなら大学生くらいの人に読んでいただければ紹介している身としてはこれ以上にうれしいことはなく、また全ての年代層の人間にも「こういう人間も「アリ」だな」と思っていただければ、さらにありがたく思います。

  • 会社組織に身を置いて社会の枠を知ったのも束の間、放蕩生活に拍車をかけた梨田雅之は遂に大手企業を退職。ひたすら生きる実感を欲して、新たなる大博打・先物取引の世界に飛び込む―。痺れるような感覚だけを求め自ら毀れゆき朽ち果てようとした男が、必死のあげく漂着した世界とは?自伝的青春賭博小説の傑作『病葉流れて』感動の完結編。

  • 久々に夢中になって読み漁ったw
    つづきは出ないのだろうな~と思いつつ期待してしまう

  •  短い人生の終焉と思うけど、軽傷なんじゃないかとも思う。

  • 良い夢よ覚めてくれるなという感じで読み終えました。
    どうか続きを読ませてください。

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