AV時代: 村西とおるとその時代 (幻冬舎アウトロー文庫 O 67-3)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (502ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344407411

感想・レビュー・書評

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  •  「村西とおるという希代の人物を縦軸にしたアダルトビデオ通史」(あとがき)である。

     「AVの帝王」として1980年代に時代の寵児となった村西については多くの取材記事/ノンフィクションがあるが、本書はそれらとは次元が異なる。というのも、著者はライターとして活動するかたわら、80年代を通じて村西の片腕となり、広報などを担当していた人物であるからだ。

     何度か村西に接しただけのライターが、「葭の髄から天上覗く」ようにして書いた本ではない。仕事を通じて村西と苦楽をともにした人物が、“たまたまライターでもあった”ことによって書き得た希有なノンフィクションなのだ。
     その意味で、スタンスとしては、小津安二郎の助監督をつとめたこともある直木賞作家・高橋治が小津を描いた『絢爛たる影絵』に近い。

     ただ、『絢爛たる影絵』のような大傑作と比べてしまうと、本書はかなり見劣りがする。本橋の文章に魅力がないし、構成もダラダラしていてしまりがない。
     文庫本で500ページ近い長大な本なのだが、余分なところを刈り込めば半分くらいの分量にできる。そうしたほうがずっといい本になったと思う。

    ■余分の1/本橋が自分のことを書きすぎ。村西とおるではなく、本橋自身が本書の主人公になってしまっている。本書の読者の大半は村西に興味があるのであって、失礼ながら、本橋の青春などどうでもいいのである。

    ■余分の2/AVの中身を細かく紹介しすぎ。アダルト雑誌の「新作AVレビュー」じゃないんだから、こんなに微に入り細を穿って紹介する必要はなかったはず。

     ただし、そのような瑕瑾を補って余りある面白さをもった本である。

     徒手空拳で出発した村西が、時代の波に乗って巨富をなし、やがて際限のない拡大路線の果てに自滅(=40数億の負債を抱え倒産)するまでの、ジェットコースターのような日々。その軌跡に、バブル経済の光と陰が二重映しになる。
     これは村西とおるの評伝であるとともに、AVの黎明から爛熟までを克明にたどった風俗史でもあり、AV業界から見た80年代クロニクルでもある。

     キワモノではあるが不思議な魅力をもつ一書だ。村西という人物がそうであるように……。

  • 『裏本時代』(幻冬舎アウトロー文庫)の続編です。

    「裏本の帝王」に登りつめるもたちまち頂点から転がり落ちた新英出版の会長は、「村西とおる」という名前でAV業界に参入し、衰えることのないエネルギッシュな行動力によって今度は「AVの帝王」として返り咲くも、なにかに取りつかれたかのような強引な拡大路線が祟り、またしても転落への道を進んでいきます。

    前著につづいて、時代の証言という意味で興味深い内容でした。黒木香や松坂季実子、樹まり子といった往年のAV女優たちの横顔もえがかれており、当時を知る読者にとってはおもしろいのではないかと思います。また、サブカルチャー史に関心のある読者にとっても興味深いのではないでしょうか。たとえば黒木香にかんしては、彼女をめぐる言説がさまざまな意匠に取り巻かれているためにその実像がよく理解できなかったのですが、思いのほかそっけない本書の叙述から当時の雰囲気を多少うかがうことができたように感じています。

  • これ、何で勧められていたんだっけな?忘れちった。まあでも、何らかの書評なりで取り上げられなければ手を出さない系なんで、どこかで目に留まったんでせう。監督の作品を見た記憶がなくて、イメージを喚起しながらっていう楽しみ方は出来なかったけど、AV黎明期の狂熱が伝わってくる内容で、楽しく読み進められた。だから何?まあ、余暇の友。

  • 13番乗り。ジュンク堂書店渋谷店にて購入。未読。(2011/3/19)

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著者プロフィール

1956年、所沢市生まれ。著述家。早稲田大学政治経済学部卒。逍遙と実践による壮大な庶民史をライフワークとしている。著書に『東京最後の異界 鶯谷』、『上野アンダーグラウンド』『迷宮の花園 渋谷円山町』『全裸監督』など多数。

「2018年 『色街旅情 紙礫EX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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