本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (144ページ) / ISBN・EAN: 9784344407824
作品紹介・あらすじ
ひな菊の大切な人は、いつも彼女を置いて去っていく。彼女がつぶやくとてつもなく哀しく、温かな人生の物語。奈良美智とのコラボレーションで生まれた夢よりもせつない名作、ついに文庫化。
感想・レビュー・書評
-
ひな菊の周りで起こっている出来事は、決して良いものではないのに、何故だか暗さをあまり感じない。
ひな菊の性格、奈良美智さんのイラストが相まって、全体的に優しい雰囲気に仕上がっているせいかな。
少し大きめの文字と余白、そしてイラストの効果で絵本のような読みやすさ。
ところどころで遠い昔の記憶を呼び起こされるような感覚があって…すっかり音信不通になった友達や友達とも呼べないような同級生のことを急に思い出した。ちょっぴり切ない読後感。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
奈良美智さんとのコラボ
表紙と挿し絵がとても可愛らしく、
絵本と小説が合体したような本。
文章を読みながら今この描写の絵かな?と
見比べながら読むのもとても面白かった。
表紙の「夜の笛-ダリアを呼ぶひな菊」
無心でたて笛を吹くひな菊の純粋無垢な姿と、ばななさんの不思議な世界観が表現されていて一番好き。
最後の「宇宙に浮かぶ小箱」の絵も好き。
だって、いろいろな人の思い出が詰まった箱が
いっぱいあちこちに浮いてるの想像すると夢があって面白い。(箱に顔の絵が描いてある。)
どの絵も可愛いらしくて家に飾りたくなっちゃう。
幼い頃に母を亡くしたひな菊は、親友のダリアに支えられ十数年後ダリアから1通の手紙が届く。
母の死、ダリアとの出会いと別れを通してどのように考え人生を生きようとするか描かれている。
特に印象に残ったのは、ひな菊の夢。
ひな菊の見る夢の意味が最初よく分からなかったけど、夢のパズルが解けた瞬間は
トリハダかたった。
ちょっとファンタジーぽいけど虫の知らせみたいで実際にありそうで怖い。
『キッチン』の夢のシンクロとは違い、夢の不思議な交流が物語のキーワードになっていてミステリアスで面白い。
二人の名前がダリアとひな菊と花の名前になっているのも気になった。
ダリアの花言葉は「友情」と「感謝」
ひな菊の花言葉は「希望」「あなたと同じ気持ち」、二人の似た境遇、気持ち表していてるようで物語にフィットしているように思える。
ひな菊は「死」は平等で誰にでも訪れる、稀ではないと言っていた。
でも私にとって「死」は特別で平等ではない。
自分の死は受け入れられるけど、大切な人の死は特別。自分の心の支えだったり、何で?悪いことなんかしてないのに?早世と長寿、死にかたでもまた違ってくる。
ただ、そう思わないと前には進めないのも事実。
なので大切な人と互いに生涯心の支えになるような思い出をいっぱい作って、私、大切な人の箱に入りきれないほどの思い出を詰め込めるように生きていきたいと思う。
吉本ばななさんの本を読むと
フワフワするような不思議な気持ちになる。
悲しいような?せつないような?
それでいて優しくてあたたかい。
こう感じるのは自分だけなのか?
ばななさんの世界観によるものなのか?
-
終始人の死に触れているのに、暗さはそんなになくて。
世の中には色んな人がいて、その人たちだけの関係性がある。だから、恋人とか、家族とか、友だちとか、そういう枠にとらわれない関係も、良いとか悪いとかないんだと思う。そんな風に感じさせてくれる作品だった。
何か大きなことが起きるわけではないから、ゆったり読めたけど、印象も薄い作品だったかも。 -
再読。年に数回、吉本ばななに戻ってきたくなる病を発症し、今回は『ひな菊の人生』に戻ってきました。フランス製のいちじくの香水は他の作品にも出てくるモチーフで、気になってるけど買ったりせず頭の中で良い匂いを反芻しています。ひな菊がお店の鉄板で作るソース焼きそばがすごく美味しそうで、小さい頃からの親友ダリアとの距離感が最高で、大人になってからの不便そうでありながらも良く考えて生きている感じがとても安心します。
ひな菊の生き方に倣って、淡々と、でもしっかりと生きていきたいと、読み終わるといつも思う。
奈良美智さんの挿画もとても素敵です。 -
『ひな菊の人生』読了。
家族や友だちの生と死やひな菊がこれまでに生きてきた人生について。一瞬一瞬を切り取ったようなゆっくりな時間の流れを感じました。お好み焼きや夢の話が延々と繰り返すような感じだが、空間の話はよかったな…ばななさんの小説はここ数年いいなぁ〜と思って読んでいるけど、人が死んでこの世から去ったとしても、人と会うことで空間ができて、思い出となって、その思い出に生かされている…という解釈でいいか分からないけど。なんかすごくいいな〜って思った。会えるうちに会いたい人に会っておきたいなって思った。結構ね、場所とか空間って重要要素なのかもね。
去年の今頃、母校に訪問したんだけど、私が高校時代に過ごした廊下の長椅子や図書館の椅子がまだそこにあってちょっと嬉しかったんだよね。友だちがいなかった頃ひとりでこの廊下の長椅子に座って弁当食ったなとか勉強をサボって図書室の死角になるところにある椅子に寝たなとか。そこで出会った親友との思い出にたまに胸が熱くなる時がある。
2024.5.16(1回目) -
奈良美智さんとのコラボレート作品。ひな菊の切なくも悲しい人生を、奈良美智さんの絵が華やかに彩っている。
焼きそばを焼く店を手伝う日常を愛し、母や友達の死を乗り越えて、生きることへの渇望を感じた。
-
よしもとばなな氏が好きかと問われたら、はいと言えない気がする。それなのに、作品中そこここに言葉のきらめきを感じる。それが私がよしもと作品を読む理由になっている。この作品は驚くほど何も起こらない。ただ、個人的に今現在生と死についての考え方が変化してきているので、この作品のラスト数行は気になるものだった。
-
奈良美智とのコラボレーション。ひな菊の一人称で語られる、淋しい夢を見たかのような物語。主人公のひな菊と、他の登場人物との関係性がなんだか希薄だ。かといって、ひな菊が孤独だというわけでもない。お互いの間に葛藤や目立った軋轢もない。それでも、ひな菊は一人暮らしを選ぶ。日常はありふれていつつも、輝きがないわけではない。しかし、「たった一瞬前のことだというのに、もう時間は戻らない」。環境こそ違え、同じような人生を送って来たはずのダリアは亡くなり、ひな菊は彼女の生を生きている。はかなさの中に暖かさのある物語だった。
著者プロフィール
吉本ばななの作品





