ひな菊の人生 (幻冬舎文庫 よ 2-12)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344407824

感想・レビュー・書評

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  • 終始人の死に触れているのに、暗さはそんなになくて。
    世の中には色んな人がいて、その人たちだけの関係性がある。だから、恋人とか、家族とか、友だちとか、そういう枠にとらわれない関係も、良いとか悪いとかないんだと思う。そんな風に感じさせてくれる作品だった。

    何か大きなことが起きるわけではないから、ゆったり読めたけど、印象も薄い作品だったかも。

  • よしもとばなな氏が好きかと問われたら、はいと言えない気がする。それなのに、作品中そこここに言葉のきらめきを感じる。それが私がよしもと作品を読む理由になっている。この作品は驚くほど何も起こらない。ただ、個人的に今現在生と死についての考え方が変化してきているので、この作品のラスト数行は気になるものだった。

  • 奈良美智とのコラボレーション。ひな菊の一人称で語られる、淋しい夢を見たかのような物語。主人公のひな菊と、他の登場人物との関係性がなんだか希薄だ。かといって、ひな菊が孤独だというわけでもない。お互いの間に葛藤や目立った軋轢もない。それでも、ひな菊は一人暮らしを選ぶ。日常はありふれていつつも、輝きがないわけではない。しかし、「たった一瞬前のことだというのに、もう時間は戻らない」。環境こそ違え、同じような人生を送って来たはずのダリアは亡くなり、ひな菊は彼女の生を生きている。はかなさの中に暖かさのある物語だった。

  • 目次
    ・崖の途中の家の夢
    ・居候生活
    ・いちぢくの匂い
    ・再生
    ・写真
    ・雨
    ・首の話

    長男を妊娠していた時、直属の係長が貸してくださった『TSUGUMI』を読んで、こんなに私の生きづらさをわかってくれる作家がいるんだ、それもこんなに若い作家が、と感動しました。
    でもその後彼女の書くエッセイをいくつか読んで、ものすごくオープンなようで実はすごく人の好き嫌いの烈しい人だなと言うのがわかり、好きなもの好きな人に囲まれた生活は、彼女の成長を妨げたのでは?なんて思うほど、彼女の作品が色あせてしまいました。

    好きな作品もあるんですよ。
    『デッドエンドの思い出』とか。

    でもこれは、いまいち。
    親と死別した子ども、恋愛とは違う異性のやさしさ、スピリチュアル的な気付き。
    彼女の得意のパターンだな。

    こんなに周囲の人に大切にされて、自立していると言いながらの居候生活で、何が人生?って思う。
    おじさんやおばさんと距離を取りながらも、手の届くところに居続ける。
    彼女の人生は、まだまだこれからではないのだろうか。

  • 「天とか運命とかは、首の事故で彼を俺たちから奪うことはできても、あの楽しかった時間を奪うことは永遠にできないから、俺たちの勝ちだと思うんだ。」
    自分が経験したこと、関わった人と過ごした時間、それらの積み重ねが人生だと思わせてくれる。大切な人を想い出しながら読んで胸が熱くなった。

  • 別れのときが来ると、いいことばっかりだったような気が、いつもする。思い出はいつも独特の暖かい光に包まれている。私があの世まで持っていけるのは、この肉体でもまして貯金でもなく、そういう固まりだけだと思う。

  • 幼い頃に事故で母親の壮絶な死を目の当たりにしたヒナ菊。叔母・叔父と生活を送り出し、唯一の親友ダリアとの夜の交流を繰り返しながら大きくなった。叔父たちの焼きそばのお店を手伝いながら、引っ越してからあっていないダリアの夢を一年に一回見ることで彼女の無事を確信していたヒナ菊だったが、その年はなかなかその夢を見なかった。それがある日ダリアの夢の雰囲気を匂わせながらも気味悪く、またさみしい夢を観るようになった。幼い日に焼付いた強烈な死と、新しい男の子との優しいときめき、そしてどうしても溝を作ってしまう叔父たちとの関係、そのどれもがゆっくりと重なり合い一つの今へ結ばれていく。
    救いの物語、というものかもしれない。短くて、物語としては単純だけれど木漏れ日のような思い出の一つ一つが読んでいて心地よかった。

  • 吉本ばななさんの本は3冊目です。
    ばななさんの世界というか、空気というかとにかく好きです!
    奈良美智さんの絵ともすごく合っていて、哀しいけど優しい雰囲気で読書の秋にはピッタリだと思いました。

  • 終盤に高春が「人と人とが出会うことによって生まれる空間」について語っていて、主人公はわりかしさらっと流してしまうけど、これが物語の根幹だと思う。

    ダリア、おじさん、おばさん、高春、そして母。誰しもが、関係の濃淡に関係なく生まれた"彼ら"との空間をパッキングして当たり前の死を迎えていくのだ。たくさんの箱があちこちに散在しているイメージが浮かんだ。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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