スイートリトルライズ (幻冬舎文庫 え 4-2)

著者 :
  • 幻冬舎
3.40
  • (195)
  • (471)
  • (824)
  • (131)
  • (32)
本棚登録 : 5354
感想 : 531
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344408203

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「嘘」がキーワードになっている小説。
    夫婦の瑠璃子と聡がそれぞれ不倫をするが、どちらの視点で考えるかによって見えてくるものが違ってきました。

    まず、瑠璃子視点で考えてみると
    「なぜ嘘をつけないか知ってる?人は守りたいものに嘘をつくの。あるいは守ろうとするものに。」

    →「嘘」をつくのはその相手を愛しているということなんじゃないかと思いました。瑠璃子は不倫相手の春男や友人のアナベラには真実を告げている、対照に聡には真実を話さない。愛する人にだけ嘘をつく、それがスイートなんだそう。


    聡視点で読んでみると 、
    不倫相手の「しほ」は素直で嘘がない。
    対照的に瑠璃子は嘘を持っている。
    嘘の無いしほと一緒にいることによって、嘘を持つ瑠璃子を愛していると実感できるようになる。


    不倫によって嘘があるから聡を愛せる瑠璃子と、
    不倫によって嘘を持つ瑠璃子の方が良いと愛を実感する聡。この二人にとって「嘘」は必要不可欠で、それこそ二人が愛し合う理由なのだと思った。だから絶対この二人は不倫をやめないと思う(笑)




    不倫ものでした。『四月になれば彼女は』という川村元気さんの小説を読んで「愛」とはなにかを考えさせられ、「恋愛系の本読みたいなぁ」と思っていて読んだ本です。

  • 夫婦がお互いに不倫するお話し
    前に読んだはずなのに登録されてなかったようだ

    基本的に僕は不倫は受け入れられないと思っているけど
    何故か江國香織の書く不倫モノは不思議と受け入れられるんだよなぁ

    「真昼なのに昏い部屋」でもそうだけど、奥さんは多分旦那さんの事を好きな気持ちは変わらないし
    そして恋人の事も好きなことも否定はしないんだよね
    瑠璃子さんはウソをついていない
    秘密や隠し事はあるけど、嘘はない
    これが大事なところ

    作中の一部
    「なぜ嘘をつけないか知ってる? 人は守りたいものに嘘をつくの。あるいは守ろうとするものに」
    という言葉が結構響いた

    そうだよね、嘘をついてまで守りたいものなんだよなぁ
    でも、そんなに守りたいんだったら嘘をつかなきゃいけないような状況にするなよとも思うけど(笑)

    瑠璃子さんの気持ちに嘘はない一方、聡さんの方は典型的な男の浮気で、その対比も面白い

    森博嗣の四季シリーズで、太陽と扇風機の例えをしてたけど
    瑠璃子さんは太陽型、聡さんは扇風機型なんだねと思って納得

    お互い、不倫しててもやはり相手のことは好きなところがいいよね

  • 一人だけを愛したい。
    いつだって、愛する人は一人だけでいい。

    そう思うことは当たり前で、
    そう思うこと以外思いつくこともないはずなのに、
    ちょっとしたきっかけで世界は開いてしまう。

    お互いのことが大切だと知っている夫婦の、
    それでもお互い以外の相手を見つけた二人の物語。

    それぞれの恋人との楽しい時間を通して感じるのは、
    お互いをとても尊く、愛おしく思っていた事実。

    江國香織の小説は、今までにも何冊か読んでいたけど、
    倫理感や平均値を求めたい人には、
    肌に合わないのかもしれないと思う。
    私は好きな作家さんです。

    本当に好きな相手を思う、それぞれの恋の物語。

  • 江國さんの描く男性は、不思議と淡い。
    淡いけれど、今の時代の男性像にしっくりくる。
    そして、そんな男立ちと向かい合う女の心の内も。

    主人公と夫の距離感は、時折出てくる、夫の腕の中に入れてもらうという表現でよくわかる。
    「ふいに気がついた。愛ではなく飢餓だ」
    この言葉が頭から離れない。
    家庭という守られている場所の中にある孤独と飢餓は、この先も彼女につきまとうのだろうか。
    飢餓を癒す術はあるのだろうか。

  • 不倫がはじまる不穏さだとかが
    繊細に描かれていてとてもいい
    ただストーリーはよくわからない
    結末という結末がない
    それゆえにリアルではある
    文学的表現は本当にすごいと思う
    ミニシアター系のフランスの片隅で上映されてそうな恋愛映画を見たような気持ちになれる
    大した事件は起きませんが余韻はすごいです
    おすすめです

  • 『なぜ嘘をつけないか知ってる?人は守りたいものに嘘をつくの。あるいは守ろうとするものに。』

    どこにでもいる夫婦の瑠璃子と聡。互いに不満があるわけではなかったが、瑠璃子は仕事で、聡は大学時代の集まりで、互いにある異性と出逢い、甘い嘘をつく関係に。旦那や奥さんのことを嫌いになったわけではない、ただ自分のパートナーのことも愛おしく思えてしまう、そんな矛盾を抱えながら2人は同じ家で眠り生活する。
    分かるような分からないようなどっちつかずのフワフワな気持ち。

    セリフは瑠璃子が不倫相手に言う言葉。旦那の前はクールで大人な印象な瑠璃子も不倫相手の前ではワガママ。どちらがベターと言うものでもないし、どちらも瑠璃子本人そのもの。

    結局はどっちといる自分が好きかって話なんだろうな。


  • 『ここにあるのは愛ではなく飢餓なのだ。』というフレーズがあった。目に見える幸せの形をした物や表に出した言葉、まるで不安や不満を覆うために存在するようであった。

    嘘のつき方が瑠璃子と聡で異なる点が非常に面白い内容だった。個人的に浮気相手の素直さにゾッとした。素直でいることは、嘘をつくよりも不誠実な場合があるというのは発見でした。

  • 嘘は守りたい人につくもの。
    瑠璃子と聡の夫婦はお互いに恋人が外にいる。
    でもお互いの関係を壊したくない、むしろ守っていきたいと思っている。
    だから嘘をつく。

    読んでまず思ったことは愛って何なんだろうってこと。
    愛してることと守りたいことは違うのかなあ。
    関係を続けていくこと=愛してるではないのかなあ。
    瑠璃子と聡の関係は愛なのかなあ。

    「夫婦はこうあるべきだ」
    「浮気はダメだ」
    みたいな単純な考えは及びもしない、もっともっと崇高なものを見た感じ。

    愛ってなんだろうって人によって違う。
    定義なんか無くて、フィーリングみたいなものなんだと思う。
    だから部外者が外野から何か言うのってくだらないよね。

  • ああわかるなあ

  • 相手が望む行動や言動をしているから良いだろうと思って、お互いに今目の前にいる相手に向き合おうとしない姿勢が、なあなあと続いていてお互いを苦しくさせている。
    結局外部から愛を補填し合って、そこで充たされた分を家に帰って本来の相手に分け与える。
    それって本当の愛なのかな。
    でも、別の異性と会っている時に本来の相手の良いところばかり思い出されて、その人に会いたくなる、という心理は分かる気がした。
    離れているからこそ分かる大切さ、みたいな。

    自分の話ばかり一方的にされるのは嫌だなぁ、適度に質問する関係が良い。一緒にいるけど沈黙が心地良い人がいい。

    42/100

著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

江國香織の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
江國 香織
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×