小説渋沢栄一 上 (幻冬舎文庫) (幻冬舎文庫 つ 2-12)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344409125

作品紹介・あらすじ

武蔵国の豪農の長男に生まれ、幼少期から類い稀な商才を発揮する栄一。幕末動乱期に尊王攘夷に目覚めた彼は、倒幕運動に関わるも一橋慶喜に見出され幕臣となり、維新後は大蔵官僚として度量衡や国立銀行条例の制定など、日本経済の礎となる数多の政策に携わった。“近代日本資本主義の父”と呼ばれる傑物の、激動の人生を活写する史伝大作。

感想・レビュー・書評

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  • 若かりし頃の渋沢栄一は、血気盛んな草莽の士でありながら先見の明があり、融通無碍でバランス感覚に優れた好人物。

    攘夷活動に過激に身を投じ、危うく攘夷の人柱になりかけたと思えば一橋家に仕官し、その後幕臣となって徳川昭武に随行してフランスに洋行。そしてフランス滞在中に明治維新を迎え、帰国後は静岡藩で合本組織(金融機関)を立ち上げたと思えば明治政府に召し抱えられ、大蔵省で八面六臂の大活躍の後、あっさりと野に下って産業界に身を置くことに。驚くほどの変わり身の早さだが、本人がうまく立ち回ったというよりも、時代が彼の有り余る能力を求め続けたんだろう。

    官吏に平身低頭する卑屈な態度は、江戸時代にすっかり染み付いてしまった商人の悪弊。これを改めさせるため、自ら商工業者の先頭に立って範を垂れようとした栄一。

    産業界での活躍は下巻で。

  • 確か、09年自分が卒論のテーマを絞り込む段階の際に読んだ本。
    卒論は渋沢栄一とは直接関連するものではないが、儒教にも通じる考え方を持っていた点では大いに参考となった。
    この本は伝記的性格が強く、彼が単なる秀才ではなく、「行動」を伴った人物であったことがわかるものであった。ひとつ、ここに一例を紹介したい。

    「本を読むというのは、何も畳の上に座って読むことだけが読書ではない。鍬を振って土を耕す時も、あるいは道を歩いている時も頭の中で本を読み続けろ。本を読み続けるということは、読んだ文字が現実に照らし合わせて、あるいは自分の生き方に照らし合わせて、どういう意味を持っているかということを追求することだ。しかし、決して急いではならない。時間をかけてじっくりと心の眼で本を読め」

    読書をただ「読んで」満足するものに終わらせるのではなく、様々な状況下に自分の身を置かせながら読むことで現実とすり合わせ、そして自分の意識下に落とし込んでいくというものだ。さらに、焦って多くの本をひたすら読むのではなく、じっくりどんな意味が含まれているのか考え抜くこと、とある。

    実際自分が最も課題とすることの一つだと強く認識させられる。
    ある人は、「2度読み」読書法を薦める。一度読んだ本に付箋等付いてあるだろうから、その部分に注意しながら、改めて読んでみる。もちろん新たに付箋を付けたっていい。ただ、なぜその点が気になったのか、Whyに引っかかることが必要だという。

    そこから、新たにその本の良さを発見し、魅了されるのであれば、それはより深い読書を行ったといえる。また、行動への意欲も高まるうえ、その行動を習慣に変える原動力ともなると言える。
    残念ながら、自分は読んだ書籍数がまだまだ読み足りないため、「2度読み」は年に数冊分しかできていない。けれども、徐々に深い読みが実践できるように、まずは「幅」を広げられるようにしていきたい。

  •  

  • 明治維新期に国を作った人たちの偉業は、どの角度でみてもすごいとしかいいようがない。渋沢栄一も海外で学んだことから、自分の意志で国のために、の志高く取り組んでいったが、人の意見を聞いてその場その場で立場を柔軟に変えてきたところは意外。

  • 明治維新の土台築いた人たちのランナーズハイなエネルギーがほとばしる一冊。

    渋沢栄一さんは日本の資本主義の父、東証設立者、初代の紙幣印刷局長。だけど存命中は私利を追わず、財閥にはしなかったとか。

    1万円札の顔になるそうだが、今、彼からコメントもらえるとしたら何て言うだろう?
    各藩で流通してたおカネを新しい明治政府の紙幣に吸収した人だから、紙幣の側でなく、きっとブロックチェーンの側に立つと思うんだよなぁ。

  • 論語と算盤は、この本を読んでからの方が理解が深い。

  • たぬきじじいというイメージだったけどただひたすらに「善意の人」。色々失敗している部分も、その清さゆえに感謝されているところがあるんだろうな。晩年まではただ忙しく、金にあかしたというわけでもなさそうなので、そのモチベーションがノブレスオブリージュということでもなさそうだ、というところが一番気になる。そこの部分はその「時代」の空気とは全く切り離せないだろう。この時代にしかでなかった人なのだと思う。渋沢栄一に学ぶなどという本が出ているようだけれど、この時代に栄一翁がするとしたら慈善事業・NPOのようなもののような気がしてならない。私たちが学ぶべきはもっと別のところのような気がするが。

  • 明治の起業王

    明治時代の起業王、近代日本資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一氏の伝記小説を手にした。数百の会社を作りながら、財閥をなすことなく、私利私欲に走らなかった人という言い伝えだけは聞いていたが、その人の人生について知る機会となった。前半生は以外にも、豪農の家に生まれながら、幕末に起った危機感から志士を志す。しかし運命のいたずらから最後の将軍・徳川慶喜に仕えることとなり、さらに慶喜の弟の訪欧に随行していく。ヨーロッパ滞在において若き日の攘夷の義憤がいかに世間知らずの若気の至りであったことを悟って行くことになる流れの必然と、その運命を自身の才覚により切り開いていく様は、江戸~明治期の時代がなせる業だったのか? 
    自身が同じ境遇に入っても、やはりこうはできなかったろう。しかし激動の時代にあれば、自分ももしかして・・・という気にもなる。
    明治政府でも重用される中で、これまでの慣例を打ち破り、新しい施策を次々に考え出さなければならなかったこの時代の政府役人の行動力に感服する。

  • すごいひとがいるもんだ。
    まず、正しい事がどうかを考える。世のためになるかを考える。自分のためになるのならなおよしと考える。
    とにかく設立にかかわった企業の数々が凄まじい。現在の我々の経済社会の礎をつくりあげた偉人である。

  • 近代日本の基礎を築いたといっても過言ではないひと。ただただ凄いと思った。八面六臂の大活躍って感じね。

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著者プロフィール

1929年和歌山県生まれ。東北大学法学部卒業。78年に『深重の海』で直木賞受賞。その後、織田信長を描いた『下天は夢か』がベストセラーになる。95年『夢のまた夢』で吉川英治文学賞、2005年菊池寛賞受賞。1997年に紫綬褒章を、2003年には旭日小綬章を受章。剣道三段、抜刀道五段で武術全般に造詣深く、剣豪小説をはじめとして多くの武道小説を執筆。2018年5月26日逝去。著書に『明治撃剣会』『柳生兵庫助』『薩南示現流』『雑賀六字の城』『修羅の剣』『大わらんじの男』『龍馬』など多数。

「2022年 『深淵の色は 佐川幸義伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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