Q&A (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 6660
感想 : 740
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344409361

作品紹介・あらすじ

都下郊外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず-多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。防犯ビデオに写っていたのは何か?異臭は?ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は?そもそも、本当に事故なのか?Q&Aだけで進行する著者の真骨頂。

感想・レビュー・書評

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  • それでは、これからあなたに幾つかの質問をします。ここで話したことが外に出ることはありません。正直に、最後まで誠意を持って答えることを誓っていただけますか?
    『はい。誓います。』
    まず、あなたのお名前と読書歴、一番好きな作家さんを教えてください。
    『「さてさて」です。読書を始めて約半年、恩田陸さんから読み始めて、最近好きな作家さんがどんどん増えています。』
    あなたは、半年前からブクログに大量に感想を書いていますが、よくそんなに時間がありますね?
    『はい、睡眠時間がどんどん削られていっています。毎日ただただ眠いです。』
    そんな状態で翌日の仕事には影響しないんですか?
    『この前、上司に別室に呼ばれて、最近ぼーっとしているんじゃないか、しっかりしろと叱られました。』
    そこまでして、読書は楽しいのでしょうか。
    『うおおおっ、という作品に出会うと眠さも吹き飛ぶような気がします。』
    そうですか。ところで、今日は、「Q & A」という作品を読んだそうですが、どんな作品でしたか?
    『12人の老若男女に順に質問と回答を繰り返して、どんどん真実に迫っていくという凝った作りの作品でした。』
    なるほど。まるで、このレビューみたいですね。
    『はい、ずっとこういう形式でレビューを書いてみたかったんです。』
    それで、どんなストーリーですか?
    『舞台は、旭が岡という街のスーパーマーケット・Mで、有毒ガスが発生して、負傷者が多数発生したそうなんです。』
    もう少し具体的に教えていただけますか?
    『ええ。まず、ショッピングセンターで毒ガスが撒かれたらしいんです。』
    毒ガスが撒かれた?それは物騒な話ですね。
    『物騒すぎますね。それで、建物の中では、人々が逆流し始めたんだそうです。辺りが有害物質に汚染されているのではないか、もしかしてここにいてはいけないのではないか。恐怖は伝染しますから、誰かが走り始めるとみんなが走り始める。そのうち、車を残して、逃げ出す人が現れました。映画の場面みたいだったそうなんです。』
    凄い人数だったでしょうね。
    『ええ。二時過ぎ頃、店内には一フロア平均で五、六百人からの客がいたそうです。少なく見積もってもざっと四千人近くが建物の中にいたそうです。』
    亡くなった方もいるのでしょうか。
    『最終的に死者六十九人、負傷者百十六人にまで膨れ上がったんだそうです。』
    それは、とんでもない事故ですね。
    『ええ。ただね、事故なのか、事件なのか、それすらちっともわからないようなんです。何が原因で混乱に陥ったのかも分からない。』
    なるほど。
    『でもね、もっと気になることがあるんですよ。』
    もっと、とはどういうことでしょうか?そう言われるととても気になりますね。
    『いえね。消防士が言うには、どこをどう捜しても、あの時のMの店内には、火災はおろか、何かのガスの発生した痕跡、もしくは何かの事故が起きたあとは全くなかった。言い換えれば、彼らが死ぬべき原因はどこにも見つからなかったと言ってるらしいんですよ。』
    それは、まさしくミステリーですね。
    『そう思うでしょう。でも、そう思って読んだ方は必ず結末に失望して☆一つをつけられるんですよ。』
    この作品は、ミステリーじゃないんですか?
    『ええ。全否定はしませんが、これは恩田さんの作品なんです。』
    どういう意味ですか?
    『話を膨らませるだけ膨らませおいて、結末で読者を突き放すということです。』
    はあ?
    『恩田さんの作品は、読書の過程を楽しむものだということです。』
    なんだか、おっしゃっていることがよく分からないんですが?
    『この「Q & A」の中で恩田さんは次のように書かれています。「事実と呼ばれているものだって、嘘をつく。事実はいっぱいあるってことを認識するしかない。人の目の数だけ事実はある」。わかりますか?』
    つまり、結末は読者それぞれが考えろということですか?
    『そうです。読者の数だけ結末があるなんて素晴らしいじゃないですか。そう思いませんか?いやあ、とっても面白かったですよ。』
    なんだか、とても評価されていらっしゃいますね。他の人にも読むのを薦めますか?
    『もちろんです。こんな風に質問と回答の繰り返しだけで、最後まで飽きさせないって、凄いことだと思いますよ。』
    ところで、ここだけの話にしますから、結末をちょっと教えてくださいよ。
    『ネタバレと二度漬けは禁止ですからあ。』
    いやいや、串カツの話ちゃいますからあ。
    『同じようなもんでっしゃろ。』
    なんで関西弁になってんねん?
    『先言うたん、あんたやん。』
    このレビュー、結構長くなってきてるんですから、脱線しないでくださいよ。
    『どの口が言うてんねん。』
    では、最後にもう一つだけ聞かせてください。今回、「Q & A」の書き方を真似してレビューを書かれましたが書いてみてどうでしたか?
    『いやあ、ただただ恩田さんの才能に感服しましたよ。真似しても書けるもんじゃないって思いました。恩田さんにはビールの呑み比べでもとても勝てそうにないし、あらゆる意味で完敗ですよ。凄い人だ、恩田さんって。』
    まあ、そんなに肩を落とさないでください。
    『冗談ですよ。恩田さんの作品もこれで40冊目になりました。完読したらサインをもらいに出かけようと思います。ハハハハハ。』
    はあ。もっときちんとレビューを締めてくださいよ。これじゃあ、ここまで読んでくれた方に申し訳ないでしょう?
    『そうですね。この作品は、質問に回答する老若男女それぞれについて、我々が期待するそのキャラクターの個性を巧みにずらすことで、不思議なギャップを生み出していました。そして、スーパーマーケット・Mで発生した事象について多彩な視点からそれを上手く描き出し、作品冒頭からは全く予想もつかないまさかの結末に向けて非常に練り上げられた作品づくりがなされていたと思いました。恩田さんの作品は、結末がどうこうではなくて、その雰囲気感に浸って読書の過程を楽しむのが魅力だと思っています。この作品では、12人の老若男女それぞれに垣間見える個性、そしてその回答から少しずつ真実へと近付いていく過程、そしてそれらが織りなす巧みな連鎖を存分に味わわせていただけたと思います。そう、これはミステリーではありません。そう、これはハッキリした結末を期待してはいけません。このことさえ理解すれば、とても面白く、とても楽しい読書の時間を過ごすことができます。これは、そういう作品だと思いました。』
    なるほど。よくわかりました。本日はどうもありがとうございました。

    • miomsさん
      とても面白いレビューでした!
      読みたくなりましたが、「結末を期待してはいけない」ということで読みたい気持ちが若干しぼみました笑
      が、読むと思...
      とても面白いレビューでした!
      読みたくなりましたが、「結末を期待してはいけない」ということで読みたい気持ちが若干しぼみました笑
      が、読むと思います。ありがとうございました。
      2021/05/03
    • さてさてさん
      miomsさん、こんにちは。
      構成がQ&A形式というとても面白い作品でした。思わずレビューも合わせてみるとこうなりました。恩田さんの作品は結...
      miomsさん、こんにちは。
      構成がQ&A形式というとても面白い作品でした。思わずレビューも合わせてみるとこうなりました。恩田さんの作品は結末というより、作品のふんいきを楽しむものが多いと思いますので、この作品もその視点から読めばとても面白いと思います。そもそもQ&Aで展開する小説というだけで他にはない経験ができるかと思います。
      2021/05/03
  • その日その場所に居たことで、損害を(不幸を)被ってしまった人たち。現実はこうだと突き付けられたようでもあり。
    探し物をしているのにどこにも見つからない、身悶えする気分にもなった。それは、誰一人これに対する明確な答えは持っていないということ。いかに人は物事を曖昧に見ているか、一つの事件を通し、生じる人間模様、人の脆さ、浅ましさ、欲深さに人生まで狂う。好ましくない事態に直面した時の捉え方の縮図のようで哀しくもあり、集団心理の恐ろしさを感じた。
    大型商業施設において重大事故(事件)発生。真相は分からぬまま。聞き取り調査のQ&Aでストーリーは進行する。
    各人に同じ質問を投げかけ、人は何と答えるか。物事の捉え方、自分だけはうまく立ち回ろうとする心理。真実は一つだが、人の数だけ事実はある。それぞれ信じるものは違う。
    はっきりしない物憂い抜け出せない感覚がQ&A形式のみで響くのが凄い。どの章の生の声(アンサー)もが胸に届き、異色で面白かった。

  •  本当に君の悪い小説でした。もちろん褒め言葉です。何が何だかわからない状態で読み進めました。起こっていること自体はわかるけれども、何かしっくりこない。終始そんな感想でした。




    以下ネタバレ含みます。

     結論として犯人はいません。強いて言うなら政治の陰謀が犯人なのですが、あとは人間の弱い心が全ての原因です。いっそのこと凶悪な犯人や猛毒によるテロの方がよかったと思えました。

     事件はすでに過去のことになっていますが、話が進む中で2時災害がどんどん起こります。特に最後の奇跡の少女の人生は悲惨と言わざるを得ないものでした。最後には自ら死を選び物語が終結します。悲惨な開幕、腑に落ちない真実、そして絶望に満ちたラストと終始嫌な部分が浮き彫りになっていました。



     何度も言いますが、ここまでのマイナス評価は全て褒め言葉です。本書に出会えてこんな本を探してたんだと思いましたし、恩田さんの作品はもっともっと読んでみたいと思いました。

  • 大型ショッピングモールで起こった不可解な事故を巡る聞き取り調査を基に話が進む。
    意図的・無意識にしろ登場人物の悪意がそこかしこに漂っていて湊かなえさんのイヤミスを読んでいるような錯覚に陥った。

    恩田陸さんで読んだことがあるのは「夜のピクニック」「蜜蜂と遠雷」みたいな爽やかな作品ばかりだったので本作は良い意味でイメージを覆された。

  • 大型商業施設で起きた、多数の死者を出した事故のことについて、聞き取りを行う形で、話が進んでいくが、最後まで真相は明かされない。

    事故で生き残った子供が教祖にされていく話もあるが、旧統一教会のことが世間で話題になっている今、本書を読んだので、不思議な感じがした。

  • 大型ショッピングセンターで起こった惨事。死者69名、負傷者116名もの被害者を出したにもかかわらず、原因は特定できず、それどころか、「あの日そこで何が起こったのか」ということさえわからない、という。
    事件なのか事故なのかさえ、わからない。って、そんなことがあるのか、と、そこだけでざわざわする。
    問う者、と問われる者のやり取りだけで話は進む。しかも、問う者が誰なのか、その意図も、わからない。わからない尽くしのまま話は最終章へ。もやもやが頭と胸に積もったまま小説は終わる。
    たまたま偶然が重なって、そこにいた人々の中にあったそれぞれの「恐怖」に火が付いたのか、あるいはなにか大きな力による陰謀なのか、あるいは、テロなのか。
    あの日起こったことはあの日で終わっていない。そこから始まった物語の中でそれぞれの人生は続いている。あの惨事によって変わった何かのそばで。

  • 普通の小説ならば相手の表情や様子・主人公の感情などの情景描写によって気づくのであろう展開の急転が一切排除されているので、ミステリーの持つ「人間の怖さ」が人物の会話後半に一気に明らかにされる。

    現実世界でもそうだが口先だけ良い人は沢山いて、情報がない中でその裏に潜む本質を解き明かすのは非常に難しいんだろう。

    善人の面を被って怪しいカルト集団を作り上げる女性や、サラリーマンのフリをして真相を知る者の口封じを実行する男の会話なんかは、予想もつかない展開で、ありきたりなホラー映画よりもよほど恐怖を感じた。

  • うーん。
    恩田陸さんの作品は初めて読んだが
    どうしても終わり方に納得ができない。

    最後の章?だけ別の小説を手に取っているような
    感覚。

    ただ、会話形式のみでここまで想像力を
    膨らませる文章が書けるのは素晴らしい。

    他の作品も手に取ってみて、
    この本の評価を再度確かめてみたい。

  • コロナ禍前、某所イベントの本交換で入手した本。

    序盤すごく苦手な閉鎖空間でのパニック状態の描写が続いて想像だけで気分が悪くなってしまったので、閉所恐怖症や広場恐怖症などの方は同様に気分が悪くなったりする可能性があるかもしれません。
    ですが、中盤以降はだんだんと状況の不思議さ・不気味さの方が勝っていき、続きが気になりました。
    明らかな悪意や敵がいるわけではない、「集団」の恐ろしさが分かります。いつ、どこで起こってもおかしくはない。そんなパニックホラー? サスペンス? 小説です。

  • あれはいったいなんだったんだろうとか、誰がやったんだろうとか、以外と現実世界でもことの真相がはっきりしていないことって多いなと改めて思わせる作品だった。
    願わくば先述したことが善意や良いことだけに起こってほしいと思う今日この頃である。

    この本たくさん考察できそうな気がする。
    なんかふと気になったことを書いてみる
    ※以下若干物語のネタバレ要素含むので読んでくださる方は注意してください。

    商業施設の名前は「M」。最後の方で虫かごを踏みつける話があるけどこのMって箱を真上から踏みつぶしたような形になってるよね

    最後教祖様と会っていた人は実は教祖様に押し戻された子の親なんじゃないか、、、

    パニックで人を○せるようになればコスパ上がるよね。同調圧力や周りの目に押しつぶされたり、流されないようにしたい。

    てか恩田さんってこういう類の本もお書きになるんやなぁー
    面白い。

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著者プロフィール

1964年、宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞および第2回本屋大賞を受賞。06年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞を受賞。07年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞を受賞。17年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞を受賞する。

「2023年 『ドミノin上海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

恩田陸の作品

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