半島を出よ (上) (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎 (2007年8月2日発売)
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  • 本 ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344410008

感想・レビュー・書評

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  • 垣根涼介さんの「ワイルド・ソウル」の文庫本解説の中で宮沢和史(THE BOOM)さんが激賞していたので読んでみた。

    上巻を読んだとき、丁度福岡に帰省中だったので、北朝鮮特殊部隊が福岡市を占拠するという設定にはドキドキした。(中高生の時、ラジオの周波数を弄っていたら時々韓国語が入ってきていたのを思い出した。)

    北朝鮮内や日本上陸後・福岡占拠後の暴力・拷問のシーンは、読んでいるだけでも憂鬱になる。圧倒的な暴力にはひとの精神は簡単に屈してしまうのだと身に染みてしまった。

    登場人物が非常に多く、巻頭の登場人物表を頻繁に参照しながら読んだ。よくこれだけたくさんのひとを描き分けられるものだ、と村上龍さんの筆力には脱帽だ。中でも西日本新聞社の横川記者が魅力的だ。

    政治家と官僚の動き方は、妙にリアルで、本当に他国の軍事侵攻が起こればこうなってしまうのではないかと思ってしまった。

    舞台設定は、2011年春。(初版は2005年)
    実際に起きたのは、北朝鮮軍事侵攻ではなく東日本大震災だが、政治家と官僚の動きは殆どこの本と同じだったのではないかと想像した。

    下巻が楽しみだ。


  • まず読み始めの登場人物紹介のボリュームに驚く。
    作者の大好きなアーミー、エコノミックの主張は相変わらずあるが、それ以上にエンタメの部分がどんな過去作よりも強く物語を牽引している。
    章を日付けで区切り、視点も入れ替えていく構成に対し、これだけの群像劇で時系列毎に進んでいく流れに、少し勿体無さも感じるが、作者のキャリアでも相当の覚悟を持ち練られた作品である事は間違いない。

  • 内容が妙にリアリティがあるせいか、とても怖い。怖すぎて途中で読むのをやめてしまった。そんな本は初めて。

  • 新書で発売されたときに読んで以来、ほぼ20年ぶりの再読。舞台となる2011年春の日本では、現実社会では大震災が発生しているわけだが、この小説の設定では米国と中国が接近し、経済的な失政が続いた日本は失業率が上昇し社会不安が増大している状態。「高麗遠征軍」を名乗る北朝鮮の特殊部隊が福岡を占拠し、無能力な日本政府が手をこまねいているうちに北朝鮮から後続12万人が福岡に向かうという状況。建前議論ばかりで本質的決定を回避し続ける政府の姿を描く事で、日本社会全体の事なかれ主義を描く。
    ーーーー
    現実社会では地震がおき、俺自身は家族を3/15に福岡に送り出し西新の親戚んちに春休みいっぱい滞在させていた。俺は職場のBCP要員として香港勤務となったけれど3末から4月初めにかけて家族と福岡で再会。つまりこの小説が進行している日程で一時期は福岡にいたことになる。

    東日本大震災以降から10年以上を経た2024年現在、日本の一部政治家やメディアは、脅威であるはずの中国/北朝鮮の利益を代弁するかのようなスタンスをとっている。また社会保険料の増大こそが大きなアジェンダはずなのに一部政治家を除いて各党は口を閉ざしている状況。本書の中の政治家たちが北朝鮮軍に対しての態度を固めずにいるのと同じ状況と言える。

    一方で北朝鮮は長年の国是であった半島統一路線を捨て、韓国を国家第一の敵とし、ロシからの食糧/エネルギー/各技術援助の見返りとしてロシアウクライナ戦争に派兵。
    ーーーー
    本書が書かれた当時は近未来小説だったけれど、現在読むとパラレルワールドの物語。現実は小説より奇なり、である。本書を現実と対比して読むと、これはこれで興味深かった。台湾サーフトリップの道中で読了。

  • 村上龍の冷静だが推進力のある文章が楽しい。
    政治的な難しい話や、バイオレンスな描写も文章のおかげでスラスラと読んでいける。

    主人公が固定されておらず物事が進んでいく様子を何人もの視点から描く群像劇になっていて、とても面白い。

    こんなことが起こったらどうしよう、どうしたらいいんだろうと考えるが何も思いつかない。政治や歴史についての不勉強を気付かされた。

  • 春樹より龍の方が断然いいと思うのは私だけだろうか

  • 初・村上龍です。
    本好きの方に、「伊坂幸太郎が好きなら」と勧められ、読んでみました。

    序盤の不衛生な描写がリアルで、やや潔癖症の私としては読み続けるのが非常に困難でしたが、読み進める内に止まらなくなりました。

    2011年、日本経済は底辺にまで落ち、失業者で溢れ返り秩序序は辛うじて保たれている状態。
    そんな福岡でイシハラという変わり者の男性の下に全国から集まり、生活をする青少年達。
    彼らは世間と歯車が合わず、家族や同級生を殺害してしまったり、テロ組織に憧れ軍備や武器に詳しかったり、奇妙な昆虫を大量に飼育していたりします。
    そこへ反乱軍という体裁で、北朝鮮の軍隊が福岡へ侵入、制圧を開始します。

    現実に今、同じ事が起きても日本の政府はこの作品と同じ対応しか取れないんだろうな、と思わせる点はもちろん、スケールが大きく、登場人物が多いにも関わらず、無駄がなく整理された構成は見事。
    作家ってこういう文章を書ける人でなくちゃ、と思いました。

    感想は下巻のレビューにて。

  • 日本の平和ボケを思い知らされる作品である。上巻はそこまで入れ込まないが、下巻は本当に話にのって読めて面白い。傑作だと思う。
    あまり本を他人に貸すなんていうことはしないが、これは友人にすすめて、貸した。返ってくる気配がないので自分用に買おうかとも思う。

    登場人物がとにかく多いが、一人ひとり個性的で、あまり混乱することはない。
    これを読んでから『昭和歌謡大全集』を読んだのだが、衝撃的だったのは、この話の舞台の日本は調布市をイシハラ・ノブエに爆破されたことのある日本だったということだ。

  • これは、だいぶ前にカナダで読んだ本。
    「カンブリア宮殿 村上龍×経済人」を読んで、
    村上龍という作家に興味を持ったので、小説にも手を出してみやした。

    経済の破綻した日本に
    北朝鮮のコマンドが乗り込んできて、福岡ドームを制圧!!
    そのまま九州を日本から独立させようと目論みます。

    こんなコト起こる訳ないな、と思いつつも、
    いやでもありえん話ではない…と感じてしまう自分がいて、
    少し不思議な気分でページをめくっていました。。
    特に、日本の経済が破綻して、預金封鎖なんて
    考えられなくもないな、、、と感じてしまった。

    話の核に入り込むまでの説明がちょっと長いので、
    波に乗るまでは少し大変かもしれませんが、
    そっからは話にのめり込んでいくことができると思います。

    てか、登場人物が大量に出てきて、
    とてもじゃないけど覚え切れないです。。
    初めに登場人物のリストがあって助かった~(笑)

  • 中田英寿も読んでる!で有名になるも読めなかった本作を2024年に読む。2005年に書かれた本作は2011年の経済崩壊した日本を描いている。すでに未来にいる私としては、この2011年春の北朝鮮反乱軍の上陸と東日本大地震と重ねて読んでしまう。しかしそれは勝手な話。

    北朝鮮で鍛え上げられた特殊部隊と、日本政府や日本人の性質、社会とは相容れない殺人や異常性をもった子供達。三つの体制から、事件を描いている。
    非常に多い登場人物の成り立ちを丁寧に書いているが、おかげで全体の進みが遅く感じる。なぜ反乱軍がきたのか?日本政府で情勢に詳しい人は早く動き出さないのか?危険な子供たちがどう関わっていくのか?
    上巻の後半でようやく大阪府警SATが動くも...(続き)

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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