半島を出よ 上 (幻冬舎文庫 む 1-25)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344410008

作品紹介・あらすじ

二〇一一年春、九人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠した。さらに二時間後に、約五百名の特殊部隊が来襲し、市中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。慌てる日本政府を尻目に、福岡に潜伏する若者たちが動き出す。国際的孤立を深める日本に起こった奇蹟!話題をさらったベストセラー、ついに文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 垣根涼介さんの「ワイルド・ソウル」の文庫本解説の中で宮沢和史(THE BOOM)さんが激賞していたので読んでみた。

    上巻を読んだとき、丁度福岡に帰省中だったので、北朝鮮特殊部隊が福岡市を占拠するという設定にはドキドキした。(中高生の時、ラジオの周波数を弄っていたら時々韓国語が入ってきていたのを思い出した。)

    北朝鮮内や日本上陸後・福岡占拠後の暴力・拷問のシーンは、読んでいるだけでも憂鬱になる。圧倒的な暴力にはひとの精神は簡単に屈してしまうのだと身に染みてしまった。

    登場人物が非常に多く、巻頭の登場人物表を頻繁に参照しながら読んだ。よくこれだけたくさんのひとを描き分けられるものだ、と村上龍さんの筆力には脱帽だ。中でも西日本新聞社の横川記者が魅力的だ。

    政治家と官僚の動き方は、妙にリアルで、本当に他国の軍事侵攻が起こればこうなってしまうのではないかと思ってしまった。

    舞台設定は、2011年春。(初版は2005年)
    実際に起きたのは、北朝鮮軍事侵攻ではなく東日本大震災だが、政治家と官僚の動きは殆どこの本と同じだったのではないかと想像した。

    下巻が楽しみだ。


  • まず読み始めの登場人物紹介のボリュームに驚く。
    作者の大好きなアーミー、エコノミックの主張は相変わらずあるが、それ以上にエンタメの部分がどんな過去作よりも強く物語を牽引している。
    章を日付けで区切り、視点も入れ替えていく構成に対し、これだけの群像劇で時系列毎に進んでいく流れに、少し勿体無さも感じるが、作者のキャリアでも相当の覚悟を持ち練られた作品である事は間違いない。

  • 内容が妙にリアリティがあるせいか、とても怖い。怖すぎて途中で読むのをやめてしまった。そんな本は初めて。

  • 村上龍の冷静だが推進力のある文章が楽しい。
    政治的な難しい話や、バイオレンスな描写も文章のおかげでスラスラと読んでいける。

    主人公が固定されておらず物事が進んでいく様子を何人もの視点から描く群像劇になっていて、とても面白い。

    こんなことが起こったらどうしよう、どうしたらいいんだろうと考えるが何も思いつかない。政治や歴史についての不勉強を気付かされた。

  • 初・村上龍です。
    本好きの方に、「伊坂幸太郎が好きなら」と勧められ、読んでみました。

    序盤の不衛生な描写がリアルで、やや潔癖症の私としては読み続けるのが非常に困難でしたが、読み進める内に止まらなくなりました。

    2011年、日本経済は底辺にまで落ち、失業者で溢れ返り秩序序は辛うじて保たれている状態。
    そんな福岡でイシハラという変わり者の男性の下に全国から集まり、生活をする青少年達。
    彼らは世間と歯車が合わず、家族や同級生を殺害してしまったり、テロ組織に憧れ軍備や武器に詳しかったり、奇妙な昆虫を大量に飼育していたりします。
    そこへ反乱軍という体裁で、北朝鮮の軍隊が福岡へ侵入、制圧を開始します。

    現実に今、同じ事が起きても日本の政府はこの作品と同じ対応しか取れないんだろうな、と思わせる点はもちろん、スケールが大きく、登場人物が多いにも関わらず、無駄がなく整理された構成は見事。
    作家ってこういう文章を書ける人でなくちゃ、と思いました。

    感想は下巻のレビューにて。

  • 日本の平和ボケを思い知らされる作品である。上巻はそこまで入れ込まないが、下巻は本当に話にのって読めて面白い。傑作だと思う。
    あまり本を他人に貸すなんていうことはしないが、これは友人にすすめて、貸した。返ってくる気配がないので自分用に買おうかとも思う。

    登場人物がとにかく多いが、一人ひとり個性的で、あまり混乱することはない。
    これを読んでから『昭和歌謡大全集』を読んだのだが、衝撃的だったのは、この話の舞台の日本は調布市をイシハラ・ノブエに爆破されたことのある日本だったということだ。

  • 春樹より龍の方が断然いいと思うのは私だけだろうか

  • 北朝鮮の軍隊が福岡を占拠する。現実離れしているようであってもおかしくないリアリティーを感じて読みました。福岡は16年暮らした土地なので建物や地名がリンクしてわくわくしながら読むことができました。

  • ちょっと長くて読みづらかったけど、何とか読了。他の方も感想で書かれているけれど、この作品は妙にリアリティがある。本文の内容まではいかなくても、これってひょっとして近い将来、あり得るんじゃ?!なんて事がチラホラと出てくる(これ読んでる最中も、ミサイルが発射された。と大騒ぎになったし)

    そして、この国の上の人間のやる事と対応等々に関しては、あー!そうそう。いつもそんな感じだ。質問の答えにならないやつでしょ?みたいに、すごく共感した辺りは著者の描写が素晴らしい=観察眼が鋭いと感じた。しれっと皮肉ってるところも、なかなか良かった。

  • 古本で購入。上下巻。

    「反乱軍」として祖国北朝鮮を出た9人のコマンドによる福岡ドーム占拠。
    数百人の後続部隊が飛来し、高麗遠征軍を名乗った北朝鮮軍が日本政府によって封鎖された福岡の統治を開始する。
    無為無策の日本政府が右顧左眄する中、12万人の北朝鮮軍が福岡へ向けて出港する―

    経済的な凋落と国際社会における孤立により、一等国から滑り落ちた「近未来」の日本。
    軍部の対外強硬派を反乱軍に仕立て上げて日本へ派遣、成功すればよし、失敗しても強硬派の消滅でアメリカなどと対話できると目論む北朝鮮の狡猾。
    膨大な情報で構築された情勢がリアルに描写されている。
    周辺国が静観する中で「暗黙の了解の内に日本は嵌められたのでは」と政府関係者が訝るあたり、大友克洋『気分はもう戦争』を彷彿とさせたな。

    この作品は、言わばリアルさに裏打ちされたエンターテインメント小説。
    どこかカリスマ的な奇矯な老人イシハラの下に集まった、殺人・放火などの重罪を犯した青少年らが高麗遠征軍の打倒に動き出すという筋書は、極端な話ラノベ。ちょっとご都合主義的な部分もある。

    「他者」「世間」との致命的なまでのズレを抱える彼らを主題に描くための題材として、北朝鮮コマンドの福岡占拠っていうのがある感じ。
    あとがきにあるように、小泉元首相の訪朝より以前から構想していた内容のようだし、何かしらの警鐘を目的にした作品ではおそらくない。

    何だか文句言ってる感じになったけど、小説としてものすごくおもしろい。特に下巻は一気読みをオススメしたい。
    福岡市中心部辺りの地理を頭に入れて読んだらもっとおもしろかったかも。
    これが初村上龍だったわけだが、他も読んでみたくなったな。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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