上と外 下 (2) (幻冬舎文庫 お 7-10)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344410206

感想・レビュー・書評

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  • 恩田さんの作品は、以前に「ライオンハート」を読んでいた。
    その時は、特に残るものはなく、特別面白いと感じたわけではなかった。
    むしろ、つまんね・・・に類するぐらいだった。

    がしかし、この「上と外」は非常に面白かった。
    特に、終盤のストーリー展開は息をもつかせぬ勢いで、最後のシーンでは涙が出てしまった。
    いつも、新幹線の中なので恥ずかしいんだよね。本読みながら涙するのって。

    なんだぁ、恩田陸って面白いじゃん・・・と思って次(現在)も「夜のピクニック」を読んでいる。
    ん~、ちと期待はずれ。
    それにしても、これも映画になってるんだね。
    主演の多部未華子
    はい、ど真ん中のストライクです。
    山田太郎ものがたりで、眉間にしわを寄せながら
    「えっ!」
    っていう顔が抜群でした。

    ん?何の話だっけ。。。。

    「上と外」

    これも中学生が主人公みたいなものなので、中高生が読んだら良いのになと思う本でした。お勧めです。

  • この本を読んでいる途中、恩田陸のエッセイ「小説以外」を読んだ。そこで恩田さんは、つまらない本には本当に腹がたつ、いつもわくわくするような本を読んでいたいし、そんな本を読みたいという気持ちが、本を書く原動力なのだと。
    まさにこの小説が、「わくわくする本」。始めは、亀裂のはいった家族の問題から話ははじまるのだけど、ジャングルや地底へ場面が移ると、描写や心理の変化がリアルで、ずっとわくわくできた。ニコや祖父との練の関係もあたたかく、最後まで裏切らない展開だった。
    分厚いけれど、読み応えがあり。

  • 上巻を読み終えた時点ではね、題名の意味、全然わかりませんでしたけど、、、下巻を読み終えた今、なんとなく、なんとなくですが!分かった気がします。気がしますぞ。勘違いかもしれませんけれどもね。

    「上と外」とは、それすなわち。ミスチルの曲「光の射す方へ」ってな事ですよね?ジャングルの木々が、太陽の光を求めて上へ上へと成長していくように。人が、自分の周りの小さな世界に満足できずに、外へ外へと行動範囲を広げていくように。

    上へ上へと突き進むトライセラトップスのゴーイングトゥーザムーン。人は成長するべきなのだよ。未知なる世界へ漕ぎ出していこうぜブラザー&シスター。それはきっと素晴らしい事なんだぜ!ってこと?でしょう?違う?どうなんだろうなあ。わたくし、そう理解しました、この題名の意味を。それって、素敵やん?って思いましたね、読み終わって。

    まあ、大冒険活劇ですね。抜群にハリウッドで映画化して欲しい。超大作になること、間違いなし!ですね。まあ、映像化するには、ちょっと途轍もない予算がかかることは、間違いない。

    でも、そんな、映像化は激烈に予算天文学的な作品でも、小説ならば、あらなんと。文字だけで表せちゃう。文字を追うだけで、読者は、大冒険活劇を想像できちゃう。恩田陸さんの想像力たるや、そらもう凄いんです。

    いやあ、小説家って、ホンマに凄いよね。どんな途轍もない超大作でも、文字で表現できちゃうんだもの。大尊敬です。文字って、偉大だ。いや、そらね、映像も、映画も、素晴らしいですけれどもね。

    映画化しようとするならば、膨大な人数と、膨大な予算がかかるであろう作品を、たった一人で、文字で、表現しちゃう。そう考えると、小説って、マジで凄いな、って思いますです。うん。

    ちなみに、超大作冒険活劇もの、という括りで考えますと、高野和明の「ジェノサイド」と似ている感じがしました。でも、凄く本音を言いますと、「ジェノサイド」の方が、圧倒的に好きです。恩田さん、ゴメン、、、でも、こっちも好きよ。ホンマよ。でも、ジェノサイドは、群を抜いている大傑作だと思うの。恩田さん、ゴメンね。と、謎の陳謝。

    しっかし、上巻下巻通して、練と千華子を襲う、トコトンまでの危機、危機、危機また危機。ちょっと、あまりにも一難去ってまた十難、くらいな展開、可哀想でした。中学生と小学生(ですよね、確か)の二人には、あまりにもキッツイやんか。いやもう、ホンマ、お疲れ様でした!!!!という言葉しか、かけられへんなあ。練、千華子、あんたらは、凄い。偉い。大したもんです。凄い!と、大敬礼ですね。

    ちなみに、練のお祖父ちゃんも凄いし、ニコのお祖父ちゃんも凄いし、この物語って、つまるところ、祖父は偉大なり!繋がりの二人の話なの?という気もした。お祖父ちゃんっ子は、凄い人物になるぞ、ってこと?いや、違うと思うけど。

    あと、南米のG国は、モデルは「グアテマラ」だったようです。後書きで、恩田さん自身が、言っておられました。ブラジルでは、なかったのね。で、そのグアテマラで、クーデターを起こした人々の狙いが、「全ての国境と人種を超えた、ネット上での電子政府を設立することだった!」というのは、ちょっと度肝を抜かれました。これってほぼほぼ、究極の理想みたいなもんやんか。くおお、恩田陸、凄い投げかけをしたなあ。ジョン・レノンでいうならば、イマジンですよねえ。

    ここ、ちょっと別の作品でも良いので、更に追求してほしいテーマですね。これからの人類にとって、ある程度、進むべき道なのではなかろうか、という気もしますし。凄く大事なテーマだと思う次第です。

  • ★★★☆☆

  • 下巻を読み終わるまでかなり時間がかかった。正直私にはよくわからない。知恵を絞ってジャングルを切り抜けるのはいいが、その後の成人式とか。マヤ文明なら遺跡だけじゃなく他にもだし。G国の手合いも薄い。ほぼラストのニコが大使として来日辺りのみが「かっけーじゃん」と。ニコのキャラは好みだけに好感度大。どーもしっくりこない、感動が中途半端、なんだったんだろう。結果あまり面白くなかったということなんだろう

  • 主人公たちが助かるのだと信じてはいても、ずっとハラハラさせられながら読了。
    そう、大変な経験をしたからといって、それ以外の現実的な問題が劇的に変わるわけではないし、日常が明らかに私たちを形作っている。それでも一つひとつの経験が私たちのどこかを少しずつ変えていくのだと、冒険小説としては妙に現実的な読後感。
    夏に読んだらきっと何倍か暑苦しかったことだろうなぁ。

  • 読ませます。
    まさに、この言葉がしっくり来る作品でした。

    本当に沢山の要素がぎっしりと詰め込まれ、それが目まぐるしく展開していきます。
    それでいながら、窮屈な感じは微塵も感じさせません。
    ハラハラドキドキしながら、その怒濤の展開に圧倒されるばかりです。
    4人の視点をどんどん切り替えながら、ぐいぐい引き込まれる物語。
    この速度感が、恩田陸氏の真骨頂だなあ、と改めて思いました。
    ほんと、頁を繰る手を止める隙が見当たらないほど、引きずり込まれます。

    そしてまた、細かい台詞や場面に、思わずハッとさせられることも多かったです。
    何気なく発せられている台詞でも、こう、すとんと腑に落ちるというか。
    ふーむ、という唸りが洩れてしまうかのような、そんな感銘。
    <blockquote>情報通信が発達すると、デマが流れやすくなる。顔が見えなくなればなるほど、嘘はつきやすい。遠いところならなおさらだ。いったんデマが発生すると、広がる速度も規模も大きい。匿名性の高い社会では、情報の真偽を判断するのがますます難しくなっていく。たった一言の嘘が世界を駆け巡って国家予算規模の損失が出るってことはおまえがよく知ってるだろ? みんなバブル期以来慣れっこになってるみたいだが、それはものすごく異常なことだ。目で見て判断せずに、誰かが言った言葉だけを頼りに自分や客や国民の財産をホイホイ差し出すんだからな。相手を信用してたからだって言い訳するが、それは信用という言葉の意味を履き違えてるんだ。闇雲にお任せすることを信用とは言わない。信用というのは、文字通り信じて用いるのであって、信じた相手を対等に使いこなさなきゃいけない。相手の能力や人格を見極めた上で初めて生じるシビアな言葉なんだ。道具は嘘をつかない。セールスマンやパンフレットがどんなに美辞麗句を並べても、見て、触って、使ってみればその実力はすぐに分かる。道具に実力があれば、宣伝しなくてもみんながそれを使うようになる。道具はそれ自体が雄弁な言葉で、たくさんの情報を与えてくれる。俺の言うことを時代遅れだと思うかもしれないが、くれぐれも俺たちは製造業だということを<ruby><rb>肝</rb><rp>(</rp><rt>きも</rt><rp>)</rp></ruby>に銘じておいて欲しい。言葉は嘘をつくが、モノが嘘をついたら終わりだ。
    (上と外(上) P.166〜167)</blockquote>すごいことをさらっと書くなあ、と思います。
    こういうことを、台詞として自然に書けるって、本当にすごい。
    物語としては、完全なentertainmentを指向しているのです。
    その中にあって、こういう「職人」を描き出す筆力。
    恩田陸という作家の、引き出しの広さがよく分かる場面だと思うのです。
    そして、こういう台詞を差し挟むことで、人物像がくっきりと浮かび上がってくる。
    そうすることで、その後の展開により弾みが増していくのだと思います。

    最後まで息をつけない、本当に怒濤のような物語でした。
    これだけ多面的な作品展開なのに、それでも「恩田陸」という色を失わないのが圧巻です。
    稀代のentertainerであり、storytellerなのだな、と実感する次第です。

  • 不思議な冒険、究極の中成長していく彼等。

  • 一気に読まされた。

    練、千華子パートのハラハラドキドキ感。
    得体の知れないニコが登場してから、さて、「成人式」は無事終わるんだろうか、という所が楽しみの一つでした。
    なぜ、その儀式が必要だったのか、ニコの能力や楔が抜けるとは、などなど、ファンタジー的な疑問は解決されたような、まだしっくり来ない部分もあるのだけど。
    練が錯乱したジャガーを倒したシーン、そこで、生き物の命を奪うということを考える練と、その気持ちを察するニコの描写が印象に残っている。

    力や知恵を得ることと、それをどのように行使するかというのは、また別のことで。
    練が、それを行使した結果、よくある達成感が彼を包むのではなく、一種の現実、生々しさが残ったことに意味があるんだと思う。

    千鶴子が母なのか女なのかは結局分からないままで、ただ、千華子との縁を強く結び直した形で終わらせたのは意外だった(笑)
    てっきり、翻って賢パパとヨリ戻すんちゃうかなと思っていたのに。

    極め付けは、ラストシーン!
    祖父との再会に涙が出そうになった。
    偉大な人は、姿で語るものよ……。

    マヤ文明好きの自分としては、雰囲気だけでも読んでいて楽しかった。
    けれど、時間は不可逆的で、存在するものはまた消滅してしまう。早いか、遅いかだけで。
    ニコが言った、また、作ればいい、の一言。
    確かに私たちは何でも作れるはずなのに、壊れてしまうことに恐れを抱くよなぁと、考えさせられた。

    それは、人間さえ代替可能なモノとして見ることを知らず受け容れているからなのだろうか。

  • 次から次へと訪れる試練にページをめくる手が止まらなかった。
    何でこんなにも過酷な目に合わせられるのか。神様なんていないんじゃないのか?いや、神様がいたから様々な試練を乗り越えられたのか?
    自分だったら、ぜったいに乗り越えられないよ〜。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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