四つの嘘 (幻冬舎文庫 お 20-3)

著者 :
  • 幻冬舎
3.31
  • (24)
  • (97)
  • (141)
  • (38)
  • (6)
本棚登録 : 814
感想 : 106
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344411319

作品紹介・あらすじ

淫乱に生きるしかない詩文。平凡に生きるしかない満希子。仕事に生きるしかないネリ。平凡に生きるはずだった美波。かつて私立女子校で同級生だった四人はそれぞれ別の人生を歩んでいたが、美波が四十一歳で事故死したことから、運命が絡みあう。残された三人の胸に愚かしくも残酷な「あの頃」が蘇り、それぞれの「嘘」が暴き立てられていく-。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 自分はどの女性とも少しずつ違うなと思うのだけど、共感できる部分はどの人にもありました。

    ストーリー展開もテンポが良く、読みやすい書き方でもあるので、あっという間に読み終えてしまいました。

  • 美人で真面目でリーダーシップのある満希子。
    心のうちはかなり独善的で、自分の意に染まない行動をとる人は罰せられて当たり前と思っている。
    自分に自信がないため、満希子の機嫌を損ねないように気を遣う美波。
    協調性がなく、生きることに意味を見いだせない刹那的な詩文。
    有名私大の医学部に入るために、学校生活を犠牲にして勉強に励むネリ。
    彼女たち4人の高校生活と、41歳になった姿を描く。

    一番華やかだった満希子が、実家の仏壇店を継いでくれる男と見合い結婚し、どこにでもいる普通の中年女となった。
    友だちの彼を寝取ることも辞さなかった詩文は、実家の本屋を手伝いながら女手一つで娘を育てている。
    ネリは目標通り脳外科の医師となったが、殺伐とした日を送っている。
    そしてニューヨークで事故死した美波。

    4人のうちの誰にも共感はできない。
    どちらかというと苦手。
    独善的な人も、自分勝手な人も。

    そして最初美波に告白しながら、詩文を選ぶ河野。
    大学生が女子高生にする告白なんて、それほどの意味はない。
    けれど純情な美波は河野にしがみつく。
    だから余計河野は詩文の方に傾く。

    なぜ、共感できないのかというと、彼女たちは誰も現実を生きていないからだと思う。
    現実の生活に幻滅し、こうであるべきまたはこうありたい生活に無理やり現実を当てはめようともがく。

    41歳になった彼女たちには、独身のネリ以外、同じ年齢の娘がいる。
    娘たちも母親と同じ私立の女子高に通っているのだけど、経営の苦しい仏壇店の満希子や、もっと苦しい、日々の生活費にも事欠くような詩文が、そこまで無理して娘を母校に通わせているのだとしたら、その母の思いもまた娘としたら重いのかもしれない。

    思いがけない事故で、初恋の相手である河野とともに美波が亡くなったことで、澱んでいた彼女たちの人生が動き出す。
    本当の物語はここからだと思うのです。

  • 登場人物は4人の女性たち。彼女らは高校の同級生。だが、そのうちの1人が他の1人の元夫と事故死した。その2人は高校時代にその男性を取り合った仲だった。
    けっして仲が良かったとは言えない残り3人、それぞれの道を歩んでいたはずが彼らの死をきっかけに接触し始める。

    結局、タイトルの嘘ってのはなんだったのか。それぞれに隠し事はあったかもしれないが、誰かを騙すような嘘は誰もついていない。
    何となく中身のない話だなと思った。

  • 読むと止まらなくなった小説。女子校出身の4人が、41歳になって、それぞれの事情で、貪欲に、淫蕩に、諦め気味に、狡猾に生きている。皆、自分らしく生きてきたつもりが、プライドと違和感が入り混じって、不安と負けず嫌いな面が交差して…それがまたイイ。クラスで学級委員をやっていた人にも、集団行動がニガテだった人にも、読んでいて必ず心当たりがある部分が出てくる。新聞の連載小説だったようで、1ページ毎に先が気になってしょうがない感じがスゴイ! …あ、でも男性は読まない方がいいかも。女性の腹の底まで知らない方が、きっとシアワセな気がするので。。。

  • 大石静の本はこれが初読。
    功名が辻やセカンドバージンは楽しめたので、暇潰しも兼ねて、気軽に読んだ。

    やはり大石静らしい部分がチラホラ見られ、「美波の責任、魅力がないという、美波の責任」などのセリフは、セカンドバージンを彷彿させた。
    また、年下の若い男が、40に差し掛かろうとするだいぶ年上の女と関係をもつあたりも、同様だ。
    そういった点で、大石静の描き方には幅がないのだろうと考えてしまったが、登場人物の行動がまったく理性で裏打ちされた小説に比べれば、ずっと引き込まれるものはあった。

    しかし、文章が非常に苦手だった。これが読書中の、最大の壁となった。
    物語に直接関係のない詳細な時間の描写や、必要以上にされている段落の切り替えのせいで、読むペースがなかなか掴めない。一人称が地の文に帰結しない、三人称文もそうだ。〜の使用などなど、その他、挙げればキリがない。マンガのような文章だった。
    軽快でなくとも、読むペースが掴みやすい文章はたくさんある。ある種、文章の上手い下手の違いではないかと、つい考えてしまった。

    さらに、登場人物の過去のシーンなどについては、時代が違うとはいえ虫唾が走った。
    大石静は脚本向けの作家なのかもしれない。

  • 米原万里さんが絶賛してたので読んでみました。
    大石静さん脚本のドラマもいくつか見て、おもしろいと思ったので。

    でも。
    これはおもしろさが分かりませんでした。
    嫉妬や羨望や優越感を持ちたい心理が根底にありながらも「友達」っていうのが、同じ女性だけど私には理解できない。

    どの登場人物にも共感を抱くのはおろか、興味が持てないまま読了しました。

    2020年39冊目。

  • 高校時代、嫌いだった友人と、大人になってから心が通じ合ったりすることはそうそうないと思う
    それに現実の世界では、こうもドラマチックな出来事が次々起こることないよなぁ
    さすが大石静!

  • 船の事故で人が死ぬ冒頭は良かったが
    ミステリーというほど気になる展開でもなく
    結局どの女性にも感情移入もできず
    (特に詩文には)
    本人たちのいざこざはともかくとして
    それを娘たちが繰り返すってのが
    ちょっとやりすぎかなと思った。
    まさに日本のドラマ的。

  • 女のドロドロ。大人になっても囚われる女の人間関係。

  •  著者の大石静さんは、有名な脚本家。「恋せども、愛せども」「セカンドバージン」「家族狩り」「家売るオンナ」「家族狩り」などを手掛けている。まだ無名の若手俳優だった頃の佐々木蔵之介、堺雅人、長谷川博己などをドラマで起用し、ブレイクさせたという。
     引き込まれていくような美しい文章ではないけれど、改行が多く、内容がすーっと頭に入ってきて、楽に読めた。
     最後、死んだはずの美波がデッキに見えたシーン、「ホントは生きてた!」っていうどんでん返しなのか、「見えた気がした」っていうありがちな幻なのか、わからなくてググっていろいろ読んでみたけど、結局よくわからなかった。ドラマでは幻だったみたい。だとしたら、遺体が見られなかったくだりはなんだったんだろう?
     河野→エリートだったから不倫の末の心中というのを隠したかった?
     美波→プライドが高そうな夫が妻の恥を隠蔽した?
     どっちにも取れる終わり方のような気がするから、わたしは、実は生きてたっていうエンディングがいいなぁ。海に落ちたけど、実は二人ともあるいは美波だけ助かって、残りの三人とは違う場所で普通にこれからも生きていく、っていうのがいいなぁと思うのでした。

全106件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大石 静(おおいし しずか)
1951年東京都生まれの脚本家・作家・女優。日本女子大学卒業後、女優になるため青年座研究所に入る。1981年、永井愛と「二兎社」を設立、二人で交互に女優と脚本を担当。1986年『水曜日の恋人たち 見合いの傾向と対策』で本格的に脚本家としてデビュー。
以降、多数のテレビドラマの脚本を担当することになり、1991年脚本家に専念するため俳優を廃業、二兎社を退団。1996年『ふたりっ子』で第15回向田邦子賞、第5回橋田賞受賞。2008年『恋せども、愛せども』により文化庁芸術祭賞テレビ部門(ドラマの部)優秀賞受賞。2011年『セカンドバージン』により東京ドラマアウォード2011脚本賞、放送ウーマン賞2010を受賞。アニメ『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』の脚本も務めている。
飛躍する若手俳優を見抜く眼力に定評があり、内野聖陽、佐々木蔵之介、堺雅人、長谷川博己を自らのドラマに登用してきた。2019年、NHK札幌放送局が制作する北海道150年記念ドラマ、嵐・松本潤主演「永遠のニシパ~北海道と名付けた男 松浦武四郎」(ニシパは小さいシが正式表記)脚本を担当。
『セカンドバージン』等、ドラマ脚本作の単行本・文庫化作は多い。2018年に対談を書籍化した『オンナの奥義 無敵のオバサンになるための33の扉』を刊行している。

大石静の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×