彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎 (2009年10月1日発売)
3.34
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  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344413788

作品紹介・あらすじ

八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始めるが…。衝撃の長編ミステリ。

彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 読みながら号泣でした。
    泣きすぎて頭が痛くなりました。

    レビューを読むと陣治が気持ち悪いという方が多いようですが、私は割と最初の方から陣治が好きでした。
    世の中どこを探しても、あんなに本当に優しい人はみつかりません。見返りを求めることもなく、ただ十和子の幸せを想っている陣治。

    「俺が殺ったらよかった。」と何度も言う陣治。
    それができなかったかわりに、「十和子が思い出したこと俺が全部持っていったる。」と言う。

    十和子が自殺したりしないように、自分に一生かかって借りを返せと言う陣治。
    まさか本当に生まれ変わりを信じている訳ではなくて、十和子には結婚をして、子供を育て幸せな家庭を作って欲しいのでしょう。

    本当は自分が若くて子供が作れたらそうしたかったけど、出来ないからいつかは別れて十和子を幸せにしてやりたいと思ってた。だけど十和子が好きになるのは、しょうもない男ばっかり。

    多分、陣治の願いは叶わず十和子は一生陣治を忘れられずに想って生きていくのでしょう。たった一人の十和子の恋人として終わっているから。

    私は読み終わってからも思い出すたび、泣けてきます。
    迷うことなく今年一番の本です。沼田まほかるさん、有難うございました。

  • 1番自分の事を想い、大事にしてくれる、大事にしなければならない人について幾度も涙した。日常に埋もれて見失った時に、何度も読み返したいと思えた。数ある中の大切な小説になったのは間違いない。

  • 読み終わった瞬間、これも愛、いやこれが愛かあとちょっと泣きました。

    〈一緒になったらすぐに子供をつくろう〉という水島とのシーンで「黒崎と同じことを言う。その言葉を言われたがっていると男に悟らせてしまう何かが、自分にも身体付きにもきっと露骨に顕れてしまっているのだ」という十和子の独白を読後に思い出し、陣治もそう悟ったのかなあと。女性は子どもを持てば生まれ変われるというような雰囲気というか、そんな憧れを十和子も抱いているような。

    陣治は十和子を愛してて、十和子と共に過ごすことが唯一幸せだったけど、十年暮らしてて十和子にはそれが充分な幸せでなかった。そして正気に戻った十和子が過去に犯した罪を知る自分が側にいては、十和子が幸せにはなれない。十和子が陣治を蔑み罵ることができるからこそ保ってこれた関係だったと、何より陣治が思っていたからこそのラストなんだろうなあ。

    〈俺を産んでくれぇ。幸せになって、俺を産んで、俺をとことん可愛がってくれぇ〉と陣治が言うシーンは、死んでも会えるから、死ぬな、〈まっとうな〉男と十和子が結ばれて幸せになって欲しい、十和子から愛が欲しい気持ちと、何より陣治から十和子への愛が詰まっていて、ほんとうにたまらない。

    多分同じ15歳差でも、陣治と出会った時もう少し十和子が歳いってれば、もう少し上手くいったんではないかと思うのですが。まあそれより黒崎と出会って無ければの方が先立ちそうだけど。この話で陣治と十和子は、恋人や夫婦というより、父と娘のような甘さと可愛がりのある2人になってる気がするので。

    何か恋愛ものの物語には、子どもを持ち家庭を築いたからこその深い愛が語られる一方、子どもを持たなかったからこそ真に結ばれる精神関係も尊ばれる傾向にあると感じているんですが、この話もある意味後者なのかなあと思った次第。沼田さんの他の作品も是非読みたいです。

  • 主人公である北原十和子の視点のみで語られる本作ですが、物語冒頭から同居人の陣治に対してこれでもかといわんばかりの嫌悪感が書き連ねられていきます。あまりの執拗でねっとりした描かれ方に、陣治に対してはもちろんのこと、十和子に対しても読者は不快な印象を抱き、読んでいくのが苦痛に感じられるかもしれません。私もそうでした。
    これで安易な終わり方にしたら怒りをぶちまけてやろうと思いつつ、我慢して最後まで読み進めると、、、なるほどそうきましたか。これなら文句なしです。東野圭吾の某作品を思い出しました。さらに再読すると初読時に冗長と感じられた描写全てに意味があったことが分かり、不快だった箇所の印象が一変しました。こういう読書体験はなかなかあることではありません。
    本作と『ユリゴコロ』が今年映画化されます。あくまで原作のみの比較ですが、大衆向けのエンタメとして受け入れられ易いのはミステリとして完成度の高い『ユリゴコロ』のほうだと思います。が、水島が十和子と一線を超えるに至るまでの書き込みが不十分だったり、主人公の記憶の改変がややご都合主義であることなどの欠点を踏まえても、読後の余韻の強烈さと、何より作者の意気込みが伝わる本作のほうが私は断然好きです。
    いい作品でした。

  • 昔の恋人・黒崎が忘れられない十和子は、現在同居している男・陣治にいらいらする毎日を送っていた。
    働くでもなく、主婦としての家事をこなすでもなく、ただ毎日をやり過ごすだけの日々。
    黒崎との日々を思い出し悲しみに暮れるか、陣治に苛立ちをぶつけるかしかない十和子だったが、クレームでかけた電話がきっかけで新たに心を動かす男性と出会ってしまう。
    そんな中黒崎が現在行方不明であることが発覚し、徐々に陣治に疑いの目を向ける十和子はある決断をする。

    陣治に苛立ちをぶつけることでしか自分を保てない十和子にも、そんなふうに扱われるしか仕方の無い陣治にも、どちらにも感情移入してしまい序盤はとにかく苦しかった。
    出てくる登場人物はみんな女として、男として最低だ。
    だからこそ、最後に真相が明らかになったときわたしは号泣していた。

  • 最後の2ページ何なの(良い意味で)…と思うくらい凄い。
    読み終えた後しばらく物語の世界から抜け出せなかった。
    嫌なんだけど、すごく不快なんだけど、惹かれてしまう。
    沼田まほかる=イヤミス、らしいけど、この小説は後味がというよりは、読んでいる最中が本当に不快。むしろ読後は少し温かいようなものが残るのが不思議。

    33歳の十和子は、8年も前に別れた黒崎という男を忘れられないまま、淋しさから15歳年上の男・陣治と暮らし始め、仕事もしないまま陣治の稼ぎで半ば惰性のような生活をしている。
    下品で貧相で不潔な陣治と、彼を心から嫌悪しながらも離れられずにいる十和子。
    ある日ひょんなことから黒崎が5年前から行方不明だということを知った十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始める。

    陣治の下品で不潔である描写がこれでもかというほどてんこ盛りで、読んでいるだけで音や臭いがしてきそうで本当に不快な気分になる。
    優しいけれど粘着質で、どうして十和子はこんな男と一緒に暮らしているのだろうかと疑問に思う。
    …と思ってしまうのは、描写がリアルだからだし、そういう風に読めるように巧く構築されているから…なのかも。

    十和子は自分勝手だし、陣治は下品だし、軽薄すぎる男たちも出てくるし、読んでいて心が休まるような登場人物が一人もいない。
    遅々として進まない序盤と、全体的な不快さと、胸がざわつくような感じ。
    それらがミステリらしく最後に謎が解けたとき、これは壮大なラブストーリーなのだと思わされる。
    ミステリとしての謎というかトリックは全然凝ってないけれど、そんなことはどうでも良くなってしまった。

    この本を薦めるのは心苦しいほど不快なんだけど、個人的にはお薦め。という、ジレンマ。笑
    沼田さんの小説を読むのは2冊目だったけれど、既刊本はそんなに多くないみたいだから、制覇したいかも、と思った。

  • ドロッとした感じ。途中何度読むのを止めようかと思ったか…。ただ推理が始まった辺りからはスラスラ読める。まほかる作品3冊目だけどこの人の本は読み終わった後何とも言えない気持ちになるんだよな…。でも何故かまた読んでしまう…。まほかるマジックかしらね…Σ(ノд<)

  • 2015年にも再読してショックをうけたらしい…。
    またしても途中読んだかも、と気づく有様。気づいただけマシか…。
    前回より私の許容範囲が広がったのか、ラブストーリーとしてようやく受け入れられた。
    弱い女と不器用な男の切なく悲しい話。

  • 八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始めるが…。衝撃の長編ミステリ。

  • すごい小説だった。嫌悪感、苦しさ、切なさ、痛さ、怒り、憎しみ。負の感情を起こさせるのに、この圧倒的なラスト。帯にもあったとおり、これは恋愛小説だ。

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