- Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344413788
作品紹介・あらすじ
八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始めるが…。衝撃の長編ミステリ。
感想・レビュー・書評
-
ー限りなく不愉快、でもまぎれもない最高傑作ー
本を開いてから始まる物語、その予想外の内容に驚いた。前半はひたすら十和子と陣治の不愉快な関係性が続く。陣治という男に不快感が生じなかったと言えば嘘になるが、彼の一途な気持ちが辛い。一途と言うが決してストーカーではない。思いやりに溢れているのだ。
特殊だとしても、紛れもない愛のお話だった。
すぐに映像作品を見たが、涙と鼻水と嗚咽で過呼吸になりかけた。阿部サダヲと蒼井優の演技が素晴らしい。振り返ると思い出し過呼吸してしまいそう。すごくよかった... -
私にとって沼田まほかる初読作品。
主人公の十和子と、同棲人の陣治の関西弁のセリフが、関西人である私をストーリーへ深く導いてくれた。
しかしながら、序盤〜中盤までは、どの登場人物にも感情移入が出来ず、結末も読めず、しんどかったが、終盤のスピード感のある展開、特に陣治の十和子に対する不器用で無償の愛が切なすぎて辛かった。 -
嫌な大人、嫌なという言葉では甘すぎる…
クソな大人たちしか出てこなく、思い返して浸りたい部分も特にない。
しかしこの物語でしか表現されることのない“胸糞悪さ”と“恋”(これを当てはめるのはかなり躊躇する)があり、読んでいるうちは妙に癖になる。中盤くらいまでダラダラと十和子と陣治の描写が続くのがちょっとしんどい。 -
読み終わった瞬間、誰にも何にも幸せがもたらされないやるせなさと、何故か虚しさを感じた。小説を読んでいる時は、時には登場人物にすり替わり、時には登場人物の至近距離で物語の行末を見守っている、そしてストーリーの傍観者としてあれこれと空想をしてみる自分がいる。この本を読み進めていると、どの立ち位置にいても何とも言えない不快であり、馬鹿げているとわかっても快楽に依存しようとする人間の哀れさが自分にも備わっていると思えてきて身の毛がよだつ。そんな感情を抱かせる描写のリアルさからしてみれば、ある意味優れた作品なのであれうが、不快な感想が優ってしまった。
-
関西弁が少し読み慣れなかった。
陣治がかわいそうだった。陣治の深い愛がなんだか読んでて辛かったな。陣治は絶対いいヤツだけど、十和子のどこにそんなに好きになるほどの魅力があったのだろうか。-
映画観ました。
原作は読んでいません。
どうも映画を先に見てしまうと原作に手が伸びない傾向があります。
愛する人のためにはなんでもする、陣治...映画観ました。
原作は読んでいません。
どうも映画を先に見てしまうと原作に手が伸びない傾向があります。
愛する人のためにはなんでもする、陣治さんの哀愁がたまりませんでした。
2020/06/16 -
moboyokohamaかわぞえさん
こんにちは。こちらにもコメントありがとうございます。
私も映画から原作を読んだので、蒼井優さんと阿部サ...moboyokohamaかわぞえさん
こんにちは。こちらにもコメントありがとうございます。
私も映画から原作を読んだので、蒼井優さんと阿部サダヲさんを無意識に想像して読んでしまってました。2020/06/17
-
-
著者の小説は確か4冊目になります。どの本も最初から最後まで、なんとも言えない居心地の悪さ・不快感を持たせます。男の嫌なところ・女の嫌なところを見せつけられるからかもしれません。しかし、読みたくなるんですね。この作品も同様です。33歳の十和子と15歳年上の陣治。十和子は陣治に嫌悪感しか持っていません。罵倒し蔑みます。陣治は、卑屈なほど彼女に尽くします。途中から彼女が忘れられない男の行方不明が絡んで物語が進みます。どうしようもない男と女の物語。これが結末なのと思わせる終わりかた。読後に「う〜ん」と唸りました。今度は映像化されたものを観たいと思います。個人的には、56歳で小説家デビュー、現在73歳の著者に大いに関心があります。面白い作品でした。
-
ミステリーではあるのかもしれないけれど、一括りにそうとは言いたくない作品。
帯に書かれた〈それでも恋と呼びたかった〉という言葉、読了後とても重く感じた。
とても綺麗な物語とは言い難く、メインの二人の関係性も憧れるものではないけれど、読後は破滅的な感情だけでなく、何か胸にくる思いもあった。 -
八年前に別れた恋人・黒崎の影を引きずる十和子。新しく出会った男・水島にも黒崎の影を重ねる。水島との待ち合わせでいつも頭上に飛ぶカラス。作中に「なぜカラスばかりなのだろう、他の鳥はどこへ行ったのだろう?」といった一文が出てくるが、これがタイトル「彼女がその名を知らない鳥たち」につながっていると思う。十和子が目に見えて意識している黒崎との記憶は黒い影のカラス、反して十和子自身も気付いていない無意識下に封じ込めた記憶はどこかへ消えた他の鳥。それを守っていたのは陣治だった。目に見えるものが真実じゃない、そう考えると終盤で十和子の目が開きにくくなる展開もタイトルに関係してくるのかな、と思ったり。
映画を先に観てからの原作。どうしても阿部サダヲと蒼井優、松坂桃李と竹野内豊の顔が浮かべてしまい、結末も知っているので、すんなりと文章とストーリー、描写などが入って読みやすかったです。でも映画を観なかったら理解しにくい箇所も多かったかもしれません。十和子というメンヘラ気味の視点で描かれているため、いつまでも過去を引きずり終着点の見えない語り口、また関西弁になじみがなければ余計に読むのがしんどいかも(私は大阪人なので読みやすかったですが)。それらもすべては計算された上だとラストまで読めばわかるのですが。小説だけだとわかりにくかったかもという点で☆4つ。
最後まで恋人であり続けた陣治の生き様は、おせっかいともいえる世話焼き精神がにじみ出る関西弁がよく似合っていました。陣治のセリフがすべて東京の言葉なら、彼の惨めさや愛の深さはここまで際立っていないかもしれない。
確かに着地は重たい物が多いですが心に響く重撃は私の好みです。遊びに来てくれてありが...
確かに着地は重たい物が多いですが心に響く重撃は私の好みです。遊びに来てくれてありがとうございます!!
良き読書&映画ライフを...♪*゚