阪急電車 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 46163
感想 : 4786
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344415133

作品紹介・あらすじ

隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車-人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 阪急電鉄今津線を舞台に、往路で登場する人たちの出会い、恋模様、人間模様、そして復路ではその人物たちのその後の成長、生き方や心情の変化が描かれた連作短編。

    有川浩初読のレインツリーの国が読み心地良かったので、ずっと表題名が気になり積読していた本作を連読。

    本作も恋愛小説の類に入るのだろうか。
    そうであれば、おじさんの私はまだまだ恋愛小説でキュンキュンすることが判明した。
    フォロー・フォロワーの皆さま、こんな私をご許容願いたい。

    本作も心地の良い読了感を与えてくれた。

    それぞれの目的があって同じ電車に乗車している人たち。

    はじまりは他人同士、見ず知らずの人と人とが、ささやかなキッカケで出会い、影響され、ある者は恋に落ち、ある者は前向きな人生観を持ち…と、とてもホッコリする作品だった。

    私の実家の最寄路線が阪急電鉄京都本線だったことも、親近感を持って読み進められた大きな要因のひとつだったと言えよう。阪急茨木駅。最後に乗車したのは、かれこれ20年ほど前。駅もその周辺も、きっと大きく様変わりしていることだろう。

    本作を通じて、日常で乗る電車が少しだけ好きになった。

    そしてまた1人、好きな著者が増えた。

  • んんん~凄く面白かった
    同じ電車に乗る 乗客達
    それぞれが全く違う生き方なのに、皆少しだけ繋がっていて…各乗客のエピソードも、ホッコリしたり、スッキリしたり…
    でもコロナ渦では、この感じでは生活できないですね
    読んでて【コロナ渦になる前の日常を少し忘れてるな…どんなだったっけ…】と考えてしまった…

    でもコロナ渦以前の感覚も少し思い出させてくれた
    いい本でした

  • 電車に二人で乗っている時は、大抵緊張してそわそわしていた。視線はひたすら車内、乗客の中に知った顔がないかキョロキョロと視線をさまよわせていたものだった。その日、さてさて がXX駅から隣り合わせて座った女性は、さてさて からも女性の側からももちろんよく知った顔だった。○○線から△△線に乗り換えて一駅のYY駅に、今日夕食を食べる予定の場所がある。勤め人となって五年目の さてさて が久しぶりに赴くレストランだ。社内結婚だった さてさて は、妻と付き合っていることが同僚にばれることを極端に恐れ、ターミナル駅のデートを避け、各駅停車の停まる駅を選び、さらに同じ駅だと怪しまれると考えて、△△線の中で毎回会う駅を変えるということを繰り返していたのだった。三年後に結ばれた二人。でも、そんな二人の△△線を舞台にした物語を他の乗客は知る由もなかった。電車の中にいる人の数だけ物語はある。乗客たちがどんな物語を抱えているか ー それは乗客たちそれぞれしか知らない。

    『その日、征志が宝塚駅から隣り合わせて座った女性は、征志の側から一方的に見覚えのある人だった』。ほぼ二週間に一度のペースで通う宝塚中央図書館。新刊を先に手に取るのを争うライバルだと征志が一方的に意識していた女性が隣に座ります。窓の外に見えた『生』という字のオブジェを見たことをきっかけに偶然にも二人の間に会話が生まれ、実は彼女も征志を意識していたことを知ります。駅に着き『この次会ったとき、一緒に呑みましょうよ。缶じゃなくてジョッキで』と征志に語り電車を後にする女性。『ジョッキでいくなら 今日やろ!』と慌てて征志はあとを追いかけるのでした。一方、そんな二人の会話をぼんやりと聞いていた翔子は『ウェディングドレスもかくやという白いドレス』を着て扉の近くに立っていました。最初は二人のことをカップルだと思っていた翔子。電車を飛び出し、彼女を追う彼の姿を見て『いいもの見ちゃった。恋の始まるタイミングなんて』と小さく呟くのでした。そんな彼女は『討ち入り』の帰り。そして、…と、たまたまその電車に乗り合わせただけの同じ車内の乗客を、主人公視点に順番に切り替えてリレーのように繋いで物語は展開していきます。

    この作品は『阪急電車各線の中でも全国的知名度が低い』という今津線の8つの駅、所要15分を結ぶ車内を舞台に、たまたまその電車に乗り合わせたごく普通の人々のごく普通の日常の一場面を切り取って繋いでゆく作品です。何か大きなことが起こるわけではありません。ごく普通の人々が電車に乗り、シートに座って、駅に着き、そして降りていく。我々の誰しもが日常目にし、そして誰しもが取る光景と何ら変わりはありません。『ありとあらゆる身分、ありとあらゆる組み合わせの人々』がたまたま同じ時間、同じ空間を共にする偶然。思えば電車を利用するということは凄いことだと思います。『その一人一人がどんな思いを持っているか』。電車を利用している人はたまたま同じ時間、同じ空間を共にしているだけであって、それぞれの人生や思いをそれぞれが背負っていることなど意識していません。そして、電車を降りた後はまたそれぞれの人生の行くべき場所へと向かっていきます。そんな束の間の偶然の出会いの中で、はからずも他の乗客と思わぬ形でコミュニケーションを交わす時があります。一番多いのは席を譲る場面でしょうか。始発駅なら席取り合戦の場面でも何かしら人を意識する瞬間が生まれるかもしれません。そして、そんな中でほんのちょっとした会話が、ほんのちょっとした行為が、その相手の人生をも変えていくことがあります。でもそれぞれの人々は元々は知り合いでもなんでもないあかの他人です。この作品では、そんな他人と他人がたまたま同じ時間、同じ空間を共にしただけにも関わらず、不思議と知り合いにも見せてしまうところが絶妙です。そんな場面では、ある人が主人公として光を浴びていたのが、電車を降りて次の主人公にバトンが渡ると、電車を降りた人が途端に他人に思えてしまう不思議感。電車の乗客に絶対的な主人公など存在しないからこそ生まれるとても興味深い感覚です。この作品を読むことで、普段無意識に利用している電車というものがなんだかとても不思議な空間にも感じてきました。

    そして、作品は、終点の宝塚駅への結末に向かって全ての伏線が鮮やかなまでに回収されていきます。その一方で、電車から見る景色がそうであるように、回収された伏線はそれぞれの主人公の物語とともに後ろへと、もう違う世界へと遠ざかっていきます。『人数分の物語を乗せて、電車はどこまでもは続かない線路を走っていく』。物語は宝塚駅を出た各駅停車が西宮北口駅に到着し、折り返します。行きの電車にも様々なドラマがありました。そして宝塚駅へと折り返す電車の中には、結末へと向かうその先のドラマがありました。電車が進み、ひと駅、ひと駅と終点の宝塚駅が近づくに連れ、ゆっくり走って欲しい、まだ到着しないで欲しい、もっと車内に息づく物語を見ていたい、そう強く感じました。

    ほっこりとした幸せを感じた後に、しっとりとした余韻も感じさせてくれた作品。リズム感のある関西弁の響きとともに、作品全体から滲み出てくる沿線風景の味わいと、そこに暮らす人々の人としての魅力も存分に堪能させていただきました。
    いいなあ、この世界観。素敵な作品に出会えました。

  • 電車の中でたまたま隣り合った人たち。
    そのたまたまの出逢いから友だちになったり恋人になったり。
    隣から聞こえてくる会話から元気をもらったり、迷っている背中を押してもらえたり。
    目の前の名前も知らない、おそらく傷ついているであろう人に言葉をかけてあげたり。でも深入りせず「正しい行きずりの関係」で。

    「考えてみたらあたし、けっこう知らん人たちに救われてんねんなぁ」

    小学生からおばあちゃんまで色んな年代の女性たちが、たまたまの出逢いから影響を受け合って強くなっていく、とても素敵な作品でした。

    いやーしかし、関西弁のせいか、基本的にずーっと面白く読めて、読み終わるまでニヤニヤが止まりませんでした。ホント、最高に面白い本だった!

  • 再読。
    有川さんが好きになったきっかけの本です。
    やっぱり面白い。
    テンポの良い文章で描かれる人間模様は絶品。
    たまたま同じ電車に乗り合わせた人たち。
    みんなそれぞれの人生を生きていて、関わることのない人たち。
    それが電車という空間で、さらっと関わる。
    中には、さらっとではない出会いもあるが。
    登場人物たちの年代は幅広く、いかにも電車という空間らしい。
    そして女性たちが、なんともカッコ良いのです。
    スカッと気持ちいい。
    興味深いのは、小学校一、二年の女の子たちの話。
    「こんな年でも少女たちはもう女だった。卑しく、優柔不断で、また誇り高い。あんな幼い、小さなコミュニティの中に、既に様々な女がいた」
    本当にその通り、ズバリとした表現だと思う。

    私は関東在住なので、今津線知らないんですが、いつか行きたい場所リスト入りです。

  •  有川浩さんの作品は初めて読みました。ブクログのレビューで見ると、ほのぼのした恋愛小説のようで、皆さん評価が高かったこの本から読み始めました。
     作品の構成は阪急線のとある区間について各駅ごとに行きかえりするのですが、それぞれの駅がひとつの章になっています。行って帰るってのがまた良くできていて、行きでそれぞれの話しが始まって、展開して帰りに同じ駅でその顛末がわかる、という。ストーリーはいくつか入っているのですが、それが阪急線の中で交差していきます。
     読み始めてすぐの感想は、キュンキュンする感じでしょうか。かわいらしい、恋の始まりがいくつか入っていて、おじさんの私からすると、「若いっていいね~」。あとは、登場するみんなが、知らない人に、しかも電車で一緒になっただけの人に良く話しかけること。しかも相手も普通に応答するんですね。関西だからでしょうか。東京でこんなにあったかいことって起こるのかしら??
     しかも、意気投合してそのあと飲みに行ったり、お茶しにいくってすごい!それだけ、特別なことが起こったんでしょうね。しかも、みんな「いい人」。いきなり、電車で一緒になっただけの人に話しかけたら、おかしな感じになりますが、ここで出てくる人たちは「ちゃんと」したタイミングで「ちゃんと」相手や周囲の状況も考えて「ちゃんと」した言葉で相手に伝えます。それに対して、相手も「ちゃんと」した言葉で応対するので、ずーっといい関係が続いていって、嫌な感じが少しもしないんですね。癒されました。

  • とても軽快で、楽しく読ませてもらいました。おじさんが書く言葉じゃないけど、まさに「胸キュン」でした。
    くくっちやいけないのかもですが「関西ならでは」感が、良い感じで沁みました。言葉なのかなぁ?

    出張で初めて阪急電車をみた時のインパクトは今も忘れてなかったので手に取りました。

    有川氏の作品は初めてでしたが、解説を読むまで男性と思い込み。他の作品も読んでみたくなりました。

  • 東京のJRと大阪の私鉄では、雰囲気がずいぶん異なるのですね。

    私はいつも電車の中では心を無にして、人と出来るだけ接触しないことを心がけています。
    しかしこの電車の中は、良くも悪くも人との出会いに満ちています。

    社会人になり、人との出会いもあまり無く、マンネリとした毎日。
    しかし、こんな風に新たな出会いがあるかも、と思うだけで、いつもの電車でもなんとなくワクワクします。

    特に素敵なのは、宝塚駅での政志とユキのような出会い。
    お互いタイプだと思っていたが声は掛けられずにいたところ、同じ電車に乗り合わせたことで話すきっかけになった、というのは
    阪急電車が恋の後押しの一助になったということでしょう。

    全く生活を異にする人同士が、電車で隣り合わせて座ったりすることって実はとても面白いのですね。
    この作品のような人生の"機微"を、私も期待したくなりました。


  • 人が少しだけ他人のことを想えると、
    素敵なことが沢山おきますね。

    人のためを想い、相手の感情や
    心情を感じてあげられる優しさが巡って、
    少しの幸せを配っていく。

    とても良い本でした。

  • 現在、阪急電車沿線上に住んでいないので、阪急電車はほぼ利用することがないが、以前約10ヶ月間だけ、阪急池田線沿線上に居住したことがある。その期間は、交通手段が阪急電車しかなかったので、あのえんじ色の電車を思い出すだけでとても懐かしく感じた。

    本作は阪急電車 今津線の「宝塚駅」から「西宮北口駅」を折返しとして、「宝塚駅」に戻ってくるまでに繰り広げられる車内人情劇場。普段、何気なく無意識、無関心、無表情で利用している電車の中で、実はドラマや出会いがあることを気づかせてくれる物語である。ひょっとしたら今日、明日乗る電車の中で私もドラマに遭遇するかもとか、日常生活の中での発見や感動を見落としているかもなどという気持ちになる。

    何より、自分の人生に交わることのない人が交わる可能性を秘めているかもしれないと考えると、ひょっとして、この人、あの人とキョロキョロと挙動不審な行動を起こしてしまうかもしれない。

    宝塚駅
    征志と国際的ネズミ(ミッキーマウスとは書かれていない)のトートバックを持つユキとの出会いの話し。

    この歳でキャラものトートというところに反応。昔、イギリス人の友達が「日本人は小学校を卒業してもキャラものを平気で持つのね。」と言われたことを思い出した。しかしながらこの物語はミッキーのトートという強烈なインパクトがあってこそ、二人の物語りが始まるので、ここでは幼稚とか、そんな発想は置いておこう。なぜなら、私なら図書館に来ている人の顔なんてまず覚えることはできない。まずはインパクトのある持ち物や服装で覚える!ただ、この2人に限っては、お互いが好みのタイプだったので、顔で覚えていたようだ。

    宝塚南口駅
    引き出物の袋を持ち、純白ドレスを着たさも訳ありな翔子が乗車してくるくるところから物語が始まる。

    まんまと、同期の女性の策略にはまり、新郎となる予定であった男性を奪われた翔子だが、その新郎新婦の結婚式に新婦より目立つ容姿で純白の高価なドレスを着ていける彼女の勇気と行動力に圧倒される。確かに呪いたいほど憎い気持ちがあっても、周りの目があるのでこんなあからさまな嫌がらせは私にはできない。翔子のその行動力は、逆に少し怖く感じた。物語としては面白いが、いざ実際、翔子のような性格の友達がいると引くと思う。

    逆瀬川駅
    降車したユキと征志と入れ替わりに老婦人・時江と孫娘が乗車してくる。先に乗車していて翔子の人生に時江が横切る物語。

    泣いているお嫁さんを見た好奇心旺盛なお年頃の孫娘の先手を打ち、翔子に「討ち入りは成功したの?」と、野次馬ババアと言いながら時江が声をかける。野次馬でありながら、「それだけのことをされて呪わずにいられるのは聖人くらいのものよ。行動力があって後悔しない決意があるなら殴り返した方がよっぽどすっきりするわ」と時江と同じくらいの年齢のご婦人方であれば、まず批判をするであろうその行動に理解を示し、「でも、気が済んだところでできれば会社を辞めなさい」と、優しいアドバイスをする。こんな物分かりのいい、頼りになる老婦人が周りにいればいいなぁ。

    小林駅
    翔子は、この駅で時江の助言に従い下車する。代わりにミサとカツヤが乗車してくる。

    偶然に乗り合わせた時江の言葉で「潮時はいつにしようか」と考えれるようになった翔子。偶然、翔子の人生に少しの間だけ交わった老婦人により、翔子の再生に影響を与えるなんてと考えるだけで、人生への言葉の影響力を感じる。

    仁川駅
    カツヤとミサは、翔子のドレスをきっかけにケンカとなり、仁川駅でカツヤは降りてしまう。

    些細な喧嘩を些細に終わらせず、自分が怒っていたら人前でも平気で彼女を怒鳴りつけ、彼女が怪我をしそうになっても無視して、人目がない場所では暴力さえ振るう。顔が良ければ、暴力男でもいいのか?と、ミサの心境を疑う。怒っていない時は優しいかもしれないが、冷静になりましょう。と言いたくなった時、時江の『下らない男ね。やめておけば?苦労するわよ。』とミサに放った言葉に「時江さん、さすがです?」と呟やいた。
    きっとカツヤはミサから愛想を尽かされるとは思っていないはずだ。早くキッパリふってしまい、カツヤに反省をさせたい。
    こんな男を野晒しに放っていては、世の女性が不幸になる!

    甲東園口駅
    女子高生グループが乗車。グループの中のえっちゃんとその社会人彼氏の話しが聞き耳を立てていたミサに勇気を与えることになる。

    えっちゃんと社会人彼氏の節度ある付き合いを自分の付き合い方と比較してミサは別れの決心をする。
    まさか、高校生のえっちゃんも自分と彼の恋愛を聞き耳を立てて聞いていた女子大生の恋愛に影響を与えようとは夢にも思っていないだろう。壁に目あり障子に耳ありだ。
    車内の耳障りな迷惑行為も誰かの人生に影響をあたえている可能性がある!

    門戸厄神駅
    大学1年目の圭一と美帆(権田原美帆)が、教科書つながりで知り合いになる。

    圭一の軍オタ設定に「やっぱり、出ましたね。」と作者の得意分野設定に反応した。
    同じ大学で同学年であっても、実際に電車でいきなりは話しを始めないし、付き合うなんて可能性としては低いだろうなぁと、現実と小説の出会いというハードルの高さを比較した。
    それでも、物語だからこそあり得ることで、これからこの2人の清らかな恋愛の始まりを予感することができる。

    西宮北口駅
    終点。今まで、時間を共有していた翔子とえっちゃんたち女子高生、圭一とゴンちゃんこと美帆は下車し、また違う違う人との時間を共有する。

    折返し西宮北口駅
    宝塚方面行きの北口駅からミサが乗車する。そこに、派手なひらひらワンピースを着たおばさん集団が向かいに席を陣取った。ミサの横の空席に鞄を投げつけ、「イトーさん」と呼ばれるおばさんの席を確保する。

    席を鞄に横取りされた翔子の「素敵なブランドが台無しね」に共感するミサ。高校生の時に友達の席を鞄で確保していたところ老人に大きな声で怒鳴られることを思い出す。私も高校生の時、自分が座らずに鞄を座席を置いていたら、老人に怒鳴られた記憶がある。自分が座らずに、代わりに重かった荷物を置いていただけであったが、怒鳴られた。高校生のミサ同様、私もこの時ものすごく恥ずかしかった。あれから座席に鞄を置くことはない。エチケットを守っているからこそ、今、座席に座って荷物を膝の上にのせずに横に置いて一席確保している人を見ると腹が立つ。私もミサもこの派手おばさん軍団を最低と非難する側に居ることができる。加えて、鞄を投げつける行為は、非難を通り越してて軽蔑に値するものである。

    門戸厄神駅
    最低おばさん軍団の1人であるイトーさんをミサが思うことを素直に伝える。

    グループの中の力関係の問題。グループのリーダー格が常識ある人間であればいいのだが、世の中はどうもそのようになっていない。力があるからこそ弱者を軽視あるいは疎外する。
    主人は何も言わないのか?あるいは相手にされていないのか?子供は親をたしなめないのか?おばさん軍団のリーダーの家庭はきっと崩壊しているのだろう。

    「ところでミサさん、あなたは自分の恋愛には手間取ったのに、イトーさんにははっきりとおしゃってますね」と心の中で呟いて、舌を出した。

    甲東園駅
    大学受験を控えた高校生のえっちゃんの悩み。

    高校生のえっちゃんを、気遣いながら付き合う彼氏の優しが、例えば「絹」という漢字が読めなくてもかっこよく見えた。

    仁川駅
    甲東園で乗ってきた圭一とごんちゃんが線路斜面のワラビの枯れ草に反応している。

    はじめてのカレ・カノで、一緒に過ごすクリスマス。クリスマスって、こんなにドキドキしたか?と、今となったは昔のことすぎて、覚えていない自分が情けなかった。

    小林駅
    とうとう小林駅に引っ越してきた翔子。女子小学生たちの卑しい嫌がらせを傍観する。

    やっぱりグループにはリーダー格となる少女がいて、この少女もやっぱり意地が悪い、卑しく、しかし誇り高い。だから救いようがない。仲間外れにされている小学生の名はショウコ。勝気なショウコちゃんと翔子を同じ名前に設定しているところがナイス。
    そして、前電車で隣の席になるはずであった翔子とミサが再会。結局、座席も隣同士で座ることに失敗したにもかかわらず、座れなかった縁(横取りされたという縁)で、翔子とミサの人生が今後絡んでいく。これも車内の取り持つ縁である。

    逆瀬川駅
    時江とおばさん軍団のとの戦いの物語り。

    「さすが、時江さん」である。あのおばさん軍団のリーダー格をユキの援護もあり、撃退した時は胸がスーとした。
    それにしても時江が「私たちに向けられた常識がないという発言には根拠がないということになるわね。これは阪急電鉄が作った規則だから、文句があるなら阪急電車に言うがいいわ」と、おばさん軍団の意味のない反撃が余計に虚しく聞こえ、乗客はきっと心の中でおばさん軍団の愚かさを笑っていたことであろう。そして、加担するユキの彼氏・征志の「券売機でモラルは売ってへんからなあー」は、さすが図書館好きの彼!なんと気の利いた言葉なんだろう。


    宝塚南口駅と宝塚駅
    物語は征志とユキの話に戻る。

    征志がユキにロックオンされていただけでなく、ユキも征志にロックオンされていた。なんと、本の趣味も合えば、タイプも一致するのだろうか?
    征志とユキの出会いは図書館ではあったが、阪急電車が取り持つ仲に運命と奇跡を感じる。

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著者プロフィール

有川浩(ありかわ・ひろ)
高知県生まれ。二〇〇四年『塩の街』で電撃小説大賞大賞を受賞しデビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊三部作」、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』など著書多数。

「2017年 『ニャンニャンにゃんそろじー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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