人生解毒波止場 (幻冬舎文庫 ね 1-2)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344415775

感想・レビュー・書評

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  •  「町山智浩が書いた解説がスゴイ」と、ネット上で評判になっている本。
     元本は1995年に洋泉社から刊行されたもの。短命に終わった宝島社の月刊誌『宝島30』(じつに面白い雑誌だった)に連載されたものの単行本化で、町山はその連載の担当編集者だったのだ。
     私は連載時にリアルタイムで読んでいたが、1冊の本として通読するのは初めて。

     町山の解説の何がスゴイかといえば、連載のうち1回(「ゴミの求道者村崎百郎の巻」)の主人公・村崎百郎が昨年7月に統合失調症の男に惨殺されたあと、根本敬が村崎への供養としてとった「ある行動」を明かしている点。それがどんな行動かは、実際に解説を読まれたし。
     ううむ、これはたしかにスゴイ。何か粛然とした気持ちにすらなる。

     その解説を読むためだけにでも買う価値のある本だが、本文も当然面白い。根本のエッセイ分野の最高傑作は本書ではないかと思えるほど。

     町山の解説によれば、『宝島30』での連載開始にあたって、根本はこう言ったという。

    《「今の日本は気取った、綺麗な物ばかりになっちゃったでしょ」
    「でも、それってかえって毒が溜まるんだよね」
    「それを解毒するような連載にしたい。毒を以て毒を制するみたいな」》

     そのような意図をもってつけられたタイトルが、「人生解毒波止場」。
     なるほど、本書に収められたエッセイ(その大半は根本が取材して書いた、「ノンフィクション・エッセイ」ともいうべきもの)はどれも強烈な毒と醜悪さに満ち、世の良識派が眉をひそめ鼻をつまんで通りすぎるようなものばかりだ。が、そのゴミの山の中に、宝石のような「人生の真実」が隠されている。並のエッセイ集の数十倍はディープに……。
     根本のエッセイがいつもそうであるように、これは世にあるエッセイに対するオルタナティヴであり、世のまっとうな生き方、まっとうな物の見方の反対側に突き抜けた「真理」を教えてくれる本である。

    《「人生解毒波止場」もまた、ゴミの中に大切な物を探す連載だったのだ。》

     町山の解説のそんな一節に、私は深く首肯する。

  • 解毒しました。

  • どんな本なのかは、解説にある作者の言葉が1番良く表している。

    「今の日本は気取った、綺麗な物ばっかりになっちゃったでしょ」「でもそれってかえって毒が溜まるんだよね」
    「それを解毒するような連載にしたい。毒をもって毒を制するみたいな」

    上品な哲学よりも、より汚いものに目を向けるべきだという考え方は面白いし、もっともだと思う。

    ただ、タブーに触れたがるあまり、問題を面白がってひやかしているだけのように見える部分も多かった。どうしても「この表現は人を差別にすることにつながらないのだろうか」と納得のいかないモヤモヤを抱えたまま読み終わった。

  • 私がやってみたいと思っていたことのすべてが詰まっていた。

  • 外道、因果者。ダウナー系、アシッド系、電波系。ありとあらゆるアウトローの生態を温かい(笑)目線で捉えたフィールドワーク。リリー・フランキーの「誰も知らない名言集」と共に一家に一冊置いておきたい香ばしさ。女子供にゃお勧めできない。PTA子供に読ませたくない本ワースト5に入ること必至。・・・大好きです。

  • こちらの文庫版も町山智弘氏の解説目当てで購入&再読。
    その解説が噂に違わぬ素晴らしさで、単行本版を持っていても購入すべき。吉外に殺害された村崎百郎の供養としてとった根本氏の行動に絶句する事間違いなし。
    本編もこれでもかというくらいのイイ話が満載で、何度読んでも心が洗われる。まさに人生の解毒のための書。

  • 根本敬のエッセイが再び文庫化されたので読んでみたが、もうお腹いっぱいかな。
    所謂「触れてはいけない人」に接触して、その生態を報告するというエッセイ。
    でもね、当時は面白かったかもしれないけど、今ではやはり古くなっている。
    とち狂った政見放送をしたインディーズ候補者にネット媒体が取材なんかすると、実はまともな人であんまり面白くなかったりするケースを見てきたから。
    この本に登場する村崎百郎はゴミを漁って、それをネタに鬼畜ライターとして活動していたのだが、統合失調症の読者に刺殺されるという事件が今年起こった。
    彼の死後、その素性が明らかになったが、公表していた経歴は全くので出鱈目で、有名私大卒の編集者だったというのもまさにこのパターンではないか。
    それでもまだ第1部は読めるのだが、第2部の日記は下らな過ぎて出版するレベルにないと思った。
    「また知恵遅れの集団と出くわした」ことをたった数行書くことに何の意味があるのだろうか?
    人間生きていれば誰だってそういう人としばしば遭遇する。
    ただいちいち報告しないだけで。
    僕の知人女性にこの手のサブカルに詳しく、そっち系の施設で働いていたりする人がいるのだが「ああいう人たちとクリスマスカード作ったりするの、しんどいだろ?」と訊くと、「いや、そういうのは仕事としては全然楽」なのだそうだ(因みにこの質問はイギリスのバンド、ザ・スミスの歌詞より剽窃)。
    この本でやっていることは「福祉の仕事として楽」なクリスマスカードに書かれた内容を晒して笑っているようなものでしかない。
    因みに上述の鬼畜ライター村崎百郎を刺殺した犯人は、元々この著者である根本敬を狙ったものだそうだ。
    その後日談も文庫版解説としてしっかり載っているのだが、果たしてこれもどこまでがリアルなのか少し疑わしいと感じている。
    サブカル自体にはまだ可能性はあると思うけど、時代背景と共に転換期を迎えているんだろう。

  • 電波喫茶取材の裏話、村崎百郎の話、など、町山智浩の解説はこの奇書にふさわしい。単行本持っている人も必読。

  • かの佐川一政と共著?を出していたので気になっていたが…面白かった。一般的にタブーとされるようなものに果敢に飛び込んでいく姿勢って、自分はできないから人の話聞くのは好き。

  • 単行本で既読。

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著者プロフィール

上智大学教授

「2019年 『東南アジアの歴史〔新版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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