アントキノイノチ (幻冬舎文庫 さ 8-8)

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  • 幻冬舎
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  • / ISBN・EAN: 9784344417175

感想・レビュー・書評

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  • 地球っこさんのレビューを見せていただき、是非読みたいと思った一冊。

    悩み苦しむ杏平が周りの人に接しながら「生きる」ことを考える。
    途中は読んでいて苦しくなるところも沢山あったけれど、最後は素晴らしい読後感。
    杏平くんもお父さんも佐相さんもとても素敵。
    雪ちゃんは本当にすごいと思う。
    「生きる」ということはずっと考えてきたように思っていましたが、これを読んでまたヒントをもらったように思いました。

    解説では遺品整理の吉田さん、佐相さんと著者のさだまさしさんはずっとつながっていて、3人ともこの世界をよりよき世界にしたいと思っている、とそのことにつきるような気がします。


    メモ
    父から息子へ
    「イジメかって訊いたのはね、逃げるんだったら、どんどん逃げろって言おうと思ったんだよ。僕はどこまででもつきあうぞ。いや、原因が・・・そういうのじゃなきゃいいんだ。学校なんて命懸けて行かなきゃならないような場所じゃない」

    六根清浄

    人と人をつなぐ仕事。子と孫をつなぐ仕事、迷子になった「愛」を宛名の人に伝える仕事。故人が届けられなかった何かを届ける仕事。それでも、僕らの役目はただ一生懸命に部屋を片付けること。

    緘黙症

    「うん。命ってすごいね。生きているだけで、すごい、と思う。私ね、老人ってホントにすごいと思う。だってね、ずっと生きていないと老人になれないんだよ。なりたくてもなれない人の方がずっと多いんだよ。いろんな、それこそ沢山の苦労をしていきたっていうだけで老人は尊い、と思わない?私は素敵なお婆さんなりたいなぁ」

    • いるかさん
      地球っこさん 
      素敵なコメントありがとうございます。
      ゆきちゃんの強さ、すごいですね。
      これを書かれたさだまさしさんもすごいとおもいます。
      ...
      地球っこさん 
      素敵なコメントありがとうございます。
      ゆきちゃんの強さ、すごいですね。
      これを書かれたさだまさしさんもすごいとおもいます。
      ずいぶん前に何度かさださんのコンサートに行ったことがあります。
      優しい口調なのに人間の強さを感じました。

      そして、今 「星野道夫著作集 5巻」が届きました。
      本当に本自体が星野さんを表しているようで、眺めているだけで幸せになります。
      これは時間をかけてじっくり味わいたいと思います。

      いつもありがとうございます。
      2020/09/18
    • 地球っこさん
      いるかさん、お返事ありがとうございます。

      さださんのコンサートで歌を聴かれたことのあるいるかさんなら、なおさら「アントキノイノチ」に込...
      いるかさん、お返事ありがとうございます。

      さださんのコンサートで歌を聴かれたことのあるいるかさんなら、なおさら「アントキノイノチ」に込められた、さださんの想いが伝わってきたことでしょう(*^^*)

      そして、星野さん。届きましたか!
      そうです、見たり触れたりするだけで幸せになりますよね。
      そう、ゆっくり読んでいきましょう。

      わたしも何度も読み返します……
      2020/09/18
    • いるかさん
      地球っこさん ありがとうございます。
      こうして読書の幅が増え、自分だけでは到底出会えなかった本に出会えたのは地球っこさんのおかげです~。
      プ...
      地球っこさん ありがとうございます。
      こうして読書の幅が増え、自分だけでは到底出会えなかった本に出会えたのは地球っこさんのおかげです~。
      プロフィールのところの地球っこさんの好きな本を見せていただきました。
      知らない本が沢山。
      また、参考にさせていただきたいと思います。
      本当に感謝です。。
      2020/09/18
  • ─「さ、永島君、仏さんを助けに行こう」
    と佐相さんが言った。
    「仏さん?」
    僕はまだ遺体が部屋にあるのかと思って
    緊張したけど、そういう意味じゃなかった。
    「いつか君にもわかるに」─  p7-8 

    76歳で孤独死をして、1ケ月経ってから発見されたという男性の部屋。遠くで花の腐ったような、今まで嗅いだことのない臭いの籠る、驚くほど飾り気のない六畳間。

    ─「さ、始めるら。俺らの仕事はね、亡く
    なった方のお部屋のあと片付けだに」
    佐相さんが柔らかく笑った。
    「つまり、ま、仏さんの忘れ物の、天国へ
    の引っ越し屋さんなんだに」─ p8

    遺品整理会社の見習いとなった永島杏平は、会社で一番長いキャリアを持つ佐相さんとともに、初めての現場に立った。


    杏平は高校時代、同級生だった松井の巧妙で陰湿な「悪意」をきっかけに2度、彼を殺しかけ、3年の秋に学校をやめる。それ以来、彼は他人とうまく関われなくなっていた。

    じわりじわりと松井の「悪意」によって、杏平が心を閉ざしていく過去パート。
    遺品整理会社“CO-OPERS”で、佐相さんをはじめとする先輩たちの仕事に対する真摯な姿に、自分を取り戻しはじめる現在パート。

    交互に語られる杏平の過去と現在を通して、わたしたちは「命」の意味を問いかけられる。


    今、杏平の目の前には佐相さんの背中がある。
    仏さんを助けるために、仕事を誠実にこなす背中がある。凄惨な現場でも顔色ひとつ変えず、仏さんの思い出を助け出すために、粛々と仕事をこなす汗まみれの背中がある。
    その格好いい背中が杏平に生きる力を取り戻させる。

    亡くなった人の言葉は聴こえない。亡くなった人に二度と出会うことはできない。そんなことはありませんよと彼らのプロフェッショナルな仕事は教えてくれる。一所懸命に部屋を片付けることが、人と人をつなげ、時間や空間をもつなげる事に結びついていくことを、杏平に、遺された人たちに教えてくれる。

    そしてもうひとり、杏平が過去からずっと囚われてきた死から解放されたのは、ゆきちゃんの存在が大きい。
    行きつけの居酒屋「おふくろ屋」でアルバイトをするゆきちゃんと過ごすうちに、杏平の凝り固まった心が少しずつほぐれていく。
    壮絶な過去に向き合い、悲しみ苦しみ葛藤し、ここに生きてきたゆきちゃん。その強さに触れたことが、杏平にとって本当の自分を取り戻した瞬間だったのだろう。


    読んでるあいだ、ずっと伝わってきたのは、人はひとりでは生きていけない(……ってある意味絶望的にも感じてしまう言葉だなと、ふと思った)なんてことじゃなくて、人はひとりじゃないんだよということ。
    死に向き合うということは生命に向き合うこと。わたしも自分の生命を見つめ直す。わたしは生きているか。ちゃんと生命を持って生きてるか。
    生まれたからにはいつか死ぬ。そのときが来るまで生きていく、わたしは生きてやる。

    • 地球っこさん
      はい、了解です。
      スタートしましょう(*>∀<*)ノ

      あ、読まれた方からレビューをアップするとのことでよろしいですか?

      はい、了解です。
      スタートしましょう(*>∀<*)ノ

      あ、読まれた方からレビューをアップするとのことでよろしいですか?

      2022/05/24
    • 松子さん
      やったー!読みまーす♫

      はい、レビューは読み終わった方から、
      どんどん、どうぞっ!
      遅読ですが、がんばりまっす(^^)
      やったー!読みまーす♫

      はい、レビューは読み終わった方から、
      どんどん、どうぞっ!
      遅読ですが、がんばりまっす(^^)
      2022/05/24
    • aoi-soraさん
      皆さん、こんばんは。
      いるかさん、もう入手したんですね!

      では、読み終わったらレビューですね♪
      私、時間かかると思いますが、お許し...
      皆さん、こんばんは。
      いるかさん、もう入手したんですね!

      では、読み終わったらレビューですね♪
      私、時間かかると思いますが、お許しを(*´ω`*)
      2022/05/24
  • ん?アントキの猪木?
    あっ、ちがうアントキノイノチ…
    プロレスの話かと思ったら全然違ったぁ。汗

    心が壊れてしまった21歳の男の子が主人公。
    心が壊れてしまうまでの過去の話と
    現在の話が、交互に進んでいく。

    男の子は遺品整理の会社に勤める。
    尊敬する先輩、佐相さん曰く
    『…亡くなった方のお部屋の後片付けだに』
    『つまり、ま、仏さんの忘れ物の、天国への引っ越し屋さんだに』

    亡くなり方も色々。
    亡くなった方のお部屋も色々。
    遺品整理を依頼する人も色々。
    作者の優しくしなやかな言葉で赤裸々に語られる。

    読みながら、小川糸さんの
    『ライオンのおやつ』を思い出した。
    優しくゆっくりと力強く、真正面から命に
    向き合った作品。

    『アントキノイノチ』も、作者の
    視点と言葉と優しさ溢れるストーリーで
    命と心、生と死について真っ直ぐに語られる。

    そしてその表現から作者の優しさと心のしなやかさが伝わってくる。

    主人公と先輩の佐相さんが『孤独死』について会話する場面は本当に勉強になった。P64
    死に際について改めて考えさせられ自分の孤独死に対する浅はかな考えを反省した。
    他にも大切な事が沢山散りばめられていて夢中になって読んだ。
    昨日から今日読み終えるまで、10分、15分と時間を見つけては何度も本をひらいた。それぐらい面白かった。

    この本はブクログでフォローしあった方の本棚にあったもの。竹を割ったようなさっぱりした感想がいいなぁと思い手に取った。
    読んで本当に良かった。
    ブク友さんありがとう。

    • 松子さん
      ひろみっ♪ ゲンキデスカー!(←読後けらずっと言いたくてしょうがないっ)笑!
      うんうん、私もタイミング見てたらコメント遅くなった!コーダ気に...
      ひろみっ♪ ゲンキデスカー!(←読後けらずっと言いたくてしょうがないっ)笑!
      うんうん、私もタイミング見てたらコメント遅くなった!コーダ気にしてくれてありかとう!
      2022/05/19
    • 松子さん
      嬉しいっ♪ もう少しで、ひろみに教えてもらった
      映画の感想書くから待っててね♡ 映画、脚色賞ってあるんだね!驚!初めて聞いたよ。ひろみと映画...
      嬉しいっ♪ もう少しで、ひろみに教えてもらった
      映画の感想書くから待っててね♡ 映画、脚色賞ってあるんだね!驚!初めて聞いたよ。ひろみと映画の話もっとしたい!ちと待っててね(^^)
      2022/05/19
    • hiromida2さん
      まっちゃん!了解で〜す(^_−)−☆
      楽しみに待ってます♪♪
      『コーダ』まだレンタルしてないので(-。-;
      私も観たらコメントします(。◠‿...
      まっちゃん!了解で〜す(^_−)−☆
      楽しみに待ってます♪♪
      『コーダ』まだレンタルしてないので(-。-;
      私も観たらコメントします(。◠‿◠。)♡
      2022/05/19
  • H29.5.10 読了。
    命の重さ・・・。私は理解してるかな?
    さだ まさしさんって、すごい人なんですね。

    • 土瓶さん
      映画では見た覚えがあります。
      原作もいつか読んでみたいな。
      映画では見た覚えがあります。
      原作もいつか読んでみたいな。
      2021/05/23
  • 心の病気を抱える21歳の永島杏平が
    遺品整理業という仕事を通して
    生きる意味を知っていくストーリー。


    さださんの名曲は知っていても
    小説を今回が初めて。

    クセのない
    優しく読みやすい文章だからこそ
    「命の重さ」を描いても
    いい意味でサラッと
    素直に沁みてくるし、
    「元気ですかー!」のラストの締め方が上手いですね。


    孤独死して
    虫がわいてしまった部屋や
    自殺者や事故死した人の部屋、
    若い頃に子供を置いて駆け落ちした老女の部屋など
    亡くなった人の部屋のあと片付けをする
    遺品整理という仕事の壮絶さは
    あまりにもリアルで
    目を背ける人もいるかも。

    自分自身引っ越しの仕事をしているので
    同じような現場を経験したこともあり、
    亡くなった人の面子を護り
    「仏さんを助けに行こう」と言う
    佐相さんの心意気やプロとしての姿勢には
    本当に頭が下がる思いでした。


    現在と過去が交互に語られる中
    次第に増していく杏平の
    松井への殺意と

    頭で描く死と
    実際の死の対比など
    サスペンス風な構成も秀逸で
    グイグイ読ませます。


    言葉に重きを置いて
    物語のある名曲を生み出してきたさださんだからこその
    心に響くセリフの数々。

    中でも
    「自分の寿命を知って納得と引き換えに死んでいく人はほんの稀で、人間は決して思い通りには死ねない」という
    ゆきちゃんの言葉が印象的だったし、
    深く考えさせられました。


    故人の部屋を片付けるという遺品整理の仕事が
    親と子を繋ぎ、
    時間や空間を繋ぎ、
    故人が届けられなかった何かを届けていく。


    たった一つの言葉が
    人をどん底から救い出すことがあるということ、
    (言葉の重要性と力を再認識したなぁ)

    生きていることは
    当たり前ではないということ、

    だからこそ
    沢山の苦労を乗り越えて生き続けないと
    決してなれはしない
    老人という存在の尊さ。


    10代の頃の自分は
    老いぼれてしまう前に
    パッと咲いて
    パッと散ってしまいたいなんて思ってたけど、

    杏平とゆきちゃんと同じく
    「あの時の命」の重さを知った今は、
    どんなにカッコ悪くても
    生きて生きて
    生き抜かなきゃって思うし、

    自分もシミやシワを生きてきた証として
    隠さず笑う、
    カッコいい老人になることが
    これからの最大の目標です。

  • さだまさしは言葉の魔術師だ。巧みに言葉を操り歌と同様に小説でも人の心を揺さぶる。
    この作品では命の重さと心の葛藤が描かれているが、実在する遺品整理業者の事を詳しく知ることが出来て良い。厳しくも重要な仕事なので、こういう作品で少しでも理解が深まるとよいと思う。
    唯一不満があるとすれば、悪い奴にいつかは罰が下されると思いきや何もなかったこと(厳密には何もとは言わないかもしれないが)。勧善懲悪推進派の私としてはストレスが残りましたが、それも大事な命のひとつというこの作品のメッセージです。

  • しみじみと、良かった。
    遺品整理業者の故人に対する向き合い方や、萩原先生の生徒を想う気持ちも物凄く良かったが、やはり一番は杏平のお父さんの言葉一つ一つが胸に熱く残った。
    私自身も、ふさぎがちで口下手な息子を持つ父親。杏平のお父さんのように、いつまでも心寄り添える存在でありたいなぁと、何度も泣きながら読み終えた今、そう思う。

    いやぁ…さだまさしさん、凄いです。

  • これはもう読む前から名前勝ちやね。負けてしまって「読みたい」の欄に登録。

    読み始めたら重い、話が重たい。
    そして、泣ける。

    最後らへんの明るさが救い。

  • 「あの時の命」、「アントキノイノチ」、アントニオ猪木(笑)
    うまくつなげたなぁって感じ。
    タレントが片手間で書いた様な物語ではなく、しっかり「命」をテーマに重い話を、さらりと読みやすく描かれています。

    心が壊れてしまった青年の再生のストーリ。

    主人公は同級生の「悪意」をきっかけに二度、その男を殺しかけます(その時殺さなかった命)。結果、心が壊れて、高校を中退して、人とうまくかかわる事が出来なくなってしまいます。
    父親の紹介で、遺品整理屋で見習いとなって働くことになり、凄惨な現場で誠実に働くベテランの先輩に付いて仕事をしていくことで、いろんなことを学び、さらに行きつけの居酒屋のアルバイトの女性とも仲良くなって、心がほぐれていきます。
    しかしながら、彼女にも壮絶な過去があることを知ります。
    その話を聞くことによって、閉ざされた心が開かれていく事になります。

    本書のポイントとなっているのが3つ
    一つは、主人公の心を壊すきっかけとなった同級生。
    この悪人っぷりがすごい。いくらなんでもこんな人いないでしょ。と思いながら、いやいや、世の中に存在していそう(笑)。結果、ちょっと、いや、かなりいやな感じになります。

    もう一つが、遺品整理屋さん。
    実在の遺品整理屋さんの協力の下、その凄惨な現場を描いています。とくに辛い描写は、虫が湧いている現場と、自殺者の現場の話。
    しかし、そんな現場でも先輩のベテラン社員の行動は、プロとして矜持、心意気を感じます。さらに遺族に対する思いやり、死んでいった方への思いやりが強く描かれており、結果、主人公の心をいやしていく事になります。

    さいごは、もちろん、居酒屋のアルバイトの女性

    こうした構成の中、この女性と主人公が前を向いて生きていく決意はすがすがしい。

    映画視てみたいと思いました。(でも遺品整理の現場は厳しい(笑))

    とてもお勧め

  • 誹謗中傷、命の重さを知る
    世間では自分の責任を回避した形で、人の悪口を勝手に誇張し吹聴する輩がいる。特にSNS、Twitterで誹謗中傷的で言いたい放題の輩もいる。例えそれが誰かの売り言葉・表現でも現在では犯罪であり刑罰(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金等)が徐々に厳しくなっている。その被害者が「命を落とす」ことに繋がれば重刑となる。ネットでは「プライバシー保護」も逆に保護できない域になりつつあることを自覚しておくべきだ。

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著者プロフィール

一九五二年長崎市生まれ。シンガーソングライター。二〇〇一年、初小説『精霊流し』がベストセラーとなる。『精霊流し』をはじめ、『解夏』『眉山』アントキノイノチ』『風に立つライオン』はいずれも映画化され、ベストセラーとなる。その他の小説に『はかぼんさん―空蝉風土記』『かすていら』ラストレター』『銀河食堂の夜』など。

「2021年 『緊急事態宣言の夜に ボクたちの新型コロナ戦記2020』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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