うつくしい人 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 2238
レビュー : 268
  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344417229

作品紹介・あらすじ

他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。ある夜、三人はホテルの図書室で写真を探すことに。片っ端から本をめくるうち、百合は自分の縮んだ心がゆっくりとほどけていくのを感じていた-。

感想・レビュー・書評

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  • 自分探しの旅のおかげなのか、自分忘れの旅のおかげなのか、いずれにせよ自意識過剰な人間は、ぶっきらぼうな人間に目覚めさせられるんかな。「うつくしい人」に気づけた主人公はさぞ心が軽くなっただろう。

  • 「ゆりちゃんが満タンになった」
    「私は他人の苛立ちに敏感である。ほとんど超能力と言っていいほどだ。」
    このあたりの表現が印象に残った。

    読み始めた時は、こんなお話を書けるってことは、西加奈子も同じような経験があるのかと驚いた。その答えは、あとがきに綴られていてぐっとくる。『円卓』なども面白いけど、こういう一面もあると知ったことで、西加奈子をより好きになった。

  • しんどい心情は理解できる。

    マティアスはちょっとわざとらしい外人だけど、かわいい。のです!

    その時の心情によって景色は変わるものだよなーと思った。誰がどこで誰かの救いになるかわからないものですね。

    最後、百合はきっとまた悩むだろうけど、また乗り越えるを繰り返すって感じのあとがき(?)の所が好きです。

  • 前半。主人公が姉を蔑んでいた。題名の『うつくしい人』はきっと姉のことになるのだろうなとすぐ推測はついた。

    だけども、どこに「うつくしい」と主人公が感じるようになるのか、これがなかなか想像がつかなかった。とにかく主人公の機微を表す言葉はドキリとして捕まってしまう。これが困ったことに胸にストンと落ちそうで落ちない。そして、ギュゥ…と苦しい切迫した感じが残る。ところどころにそういうものがあるから、じっくりと主人公を観察する自分になった。そして、いつしか、この拗らせてる主人公と自分にパイプができていた。

    終盤の少し前には、次の文がある。

    「姉の『美しさ』は、何なのだろう。(中略)それは私を、いつも悩ませた。壊してやりたいという欲望をかきたて、そう思った次の瞬間、私を心底惨めにさせた。」(文庫214p)

    これだけ抜き出すとそのままに見えるのだが、『うつくしい人』の主人公にすでにパイプが繋がってる自分には、とても大きな変化の文章に見える。この文章がどんな色に見えるか、人それぞれ違うだろうけれど、これは最初から読むとまず必ず色が変わって見えるはずだと思う。

    ----

    結局「うつくしい人」は姉?主人公?
    いや、読むときの読み手の心持ち次第で変わるものでした。そういう仕掛けに自然となっているのだと思います。

    あ、そういえばですが、「ホタテ」を絶賛している描写があるんですが、これはきっとタイラギ貝の貝柱を意味してるんじゃないだろうかと思いました。瀬戸内海だし。冬でもないし。

  • 「本を置きに来るんです。吸収するだけじゃなくて、置いていくことも必要なのかもしれない、と思います。」吸収すること、身につけることだけが、人間にとって尊い行為なのではない。何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ。

    ブローディガン「愛のゆくえ」をいつか読んでみたい。

  • P.14
    私は他人の苛立ちに敏感である。ほとんど超能力と言っていいほどだ。…
    苛立たせている自分がとても無能な人間であるように思うし、相手の私に対する評価が下がることの恐怖で、いてもたってもいられなくなる。


    最近気になったので読んでみた本。西加奈子2冊目。なんとなく疲れている今の自分に、なんでこんなに心に寄り添ってくるのか、と思えるほど染み込んで来る本だった。穏やかな藍色の海が見える風景と明るいホテルの部屋、そして不器用でみっともないけど心地よい人との語らい、読んでいるだけで落ち着く。
    女性の一人旅に出たくなりそう。
    そしてシスコンの本だった。

  • 他者からの評価ばかり気にして、余計な気を使ったり、勝手にイライラしたりという百合が、まさに自分のような気がして、入り込めた。逃げるように旅立った先のホテルで、同じように不器用に生きる2人の男性との出会いから、自分を見つめ、気持ちがほどけていく。読了後、自分も前向きになれる本。

  • 自分で自分を追い込んでしまう主人公の百合。突発的に会社を辞めてしまった彼女は、美しい海が一望出来る離島のホテルへ旅立つ。
    百合の内面がこれでもかこれでもかと描かれる。
    文庫の巻末に収められた女優のともさかりえとの対談も素晴らしい。
    「自分で不幸になれるんやったら、自分でも幸せになれるんだ。トンネルが長い人とか、うぅーって悩む人ってやっぱり、パワーがある人やからね」
    開けない夜はない。
    闇が深ければ暁も近いのだ。

  • 主人公百合の心のきゅうきゅうとした感じが
    読んでいて痛々しく、少し鬱陶しくもあり辛い時に
    坂崎とマティアス、離島の青い海に少しずつ心を委ねる気分で
    百合が図書室で心がほどけていくのと一緒に気持ちが寄り添う
    不思議な気持ちだけど、読後感の良い小説でした

  • 衝動的に会社を辞め、高級リゾートホテルに滞在中に知り合った人たちと交流するうちに、少しだけ自信を取り戻していく女性が主人公。

    自分の心の内側を見つめ、ほじくり返して分析しては苦しむ姿は、『サラバ!』とも共通する。ただ、『サラバ!』はストーリーに勢いがあって力作だったし、登場人物を応援する気持ちにもなって素直に感動できたのに、本作は違った。
    たぶん、主人公に感情移入ができなかったからだと思う。家賃もクレジットカードも裕福な親を頼り、上司に叱られれば会社を辞める。他人の視線ばかりを気にして、自分の核を持たないままに大人になってしまった32歳に対して、優しい目で見ることは私には難しかった。

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プロフィール

1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。
プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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