うつくしい人 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.43
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本棚登録 : 2288
レビュー : 274
  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344417229

作品紹介・あらすじ

他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。ある夜、三人はホテルの図書室で写真を探すことに。片っ端から本をめくるうち、百合は自分の縮んだ心がゆっくりとほどけていくのを感じていた-。

感想・レビュー・書評

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  • 自分探しの旅のおかげなのか、自分忘れの旅のおかげなのか、いずれにせよ自意識過剰な人間は、ぶっきらぼうな人間に目覚めさせられるんかな。「うつくしい人」に気づけた主人公はさぞ心が軽くなっただろう。

  • 「ゆりちゃんが満タンになった」
    「私は他人の苛立ちに敏感である。ほとんど超能力と言っていいほどだ。」
    このあたりの表現が印象に残った。

    読み始めた時は、こんなお話を書けるってことは、西加奈子も同じような経験があるのかと驚いた。その答えは、あとがきに綴られていてぐっとくる。『円卓』なども面白いけど、こういう一面もあると知ったことで、西加奈子をより好きになった。

  • しんどい心情は理解できる。

    マティアスはちょっとわざとらしい外人だけど、かわいい。のです!

    その時の心情によって景色は変わるものだよなーと思った。誰がどこで誰かの救いになるかわからないものですね。

    最後、百合はきっとまた悩むだろうけど、また乗り越えるを繰り返すって感じのあとがき(?)の所が好きです。

  • 西加奈子さんの本2冊め。文章が美しいし、普段何気なく思っていることを的確に文章で表現をしているのがとても好き。

  • 前半。主人公が姉を蔑んでいた。題名の『うつくしい人』はきっと姉のことになるのだろうなとすぐ推測はついた。

    だけども、どこに「うつくしい」と主人公が感じるようになるのか、これがなかなか想像がつかなかった。とにかく主人公の機微を表す言葉はドキリとして捕まってしまう。これが困ったことに胸にストンと落ちそうで落ちない。そして、ギュゥ…と苦しい切迫した感じが残る。ところどころにそういうものがあるから、じっくりと主人公を観察する自分になった。そして、いつしか、この拗らせてる主人公と自分にパイプができていた。

    終盤の少し前には、次の文がある。

    「姉の『美しさ』は、何なのだろう。(中略)それは私を、いつも悩ませた。壊してやりたいという欲望をかきたて、そう思った次の瞬間、私を心底惨めにさせた。」(文庫214p)

    これだけ抜き出すとそのままに見えるのだが、『うつくしい人』の主人公にすでにパイプが繋がってる自分には、とても大きな変化の文章に見える。この文章がどんな色に見えるか、人それぞれ違うだろうけれど、これは最初から読むとまず必ず色が変わって見えるはずだと思う。

    ----

    結局「うつくしい人」は姉?主人公?
    いや、読むときの読み手の心持ち次第で変わるものでした。そういう仕掛けに自然となっているのだと思います。

    あ、そういえばですが、「ホタテ」を絶賛している描写があるんですが、これはきっとタイラギ貝の貝柱を意味してるんじゃないだろうかと思いました。瀬戸内海だし。冬でもないし。

  • 人の目を必要以上に気にしてしまって素の自分を見失ってしまった30代の女性が会社を辞めて瀬戸内海の離島に一人旅をして、そこで出会った二人の男性との交流を通してカチコチになった心を解放していくお話し。どこかにありそうな素材だけど、心理描写が丁寧で繊細で、旅の独特の空気というか不安とか興奮とかも伝わってきて読んでいて好感が持てた。「置いていくことも必要」というバーテン坂崎の言葉が染みた。自分を縛り付けているものは周りの誰かではなくてまぎれもない自分自身だったりするものだ。
    これを読んだ人の中には、私も日常を離れて旅に出てみようかな、とか思ったりする人がいるかもしれない。実は私も…。

  • わかる、わかる、知ってる。それがときどき苦しくなるけどリアル。ひとりじゃないんだなあ、なんて思った。
    2017.11.14

  • 「本を置きに来るんです。吸収するだけじゃなくて、置いていくことも必要なのかもしれない、と思います。」吸収すること、身につけることだけが、人間にとって尊い行為なのではない。何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ。

    ブローディガン「愛のゆくえ」をいつか読んでみたい。

  • 上司からお借りした本。
    ある意味めちゃくちゃ有名な著者はまだまったく読んだことがなかったので
    「いよいよ読む機会に恵まれたのか・・・!」
    と、ドキドキしながら読んだのだけど、

    以下、めっちゃネタバレですけれども



    なかなか「うつくしい」人が出てこなくて大変困惑した。笑


    一口にまとめちゃうと、ものすごい他人の目を気にしちゃう女性が、
    「もう、いいや!」
    と、ふっきれる話。

    巻末の対談を読むと、当時著者が作中の百合のように第三者の目を気にしすぎて病的になっていたので、その気持ちを吐露したのだとか。

    それは、わかる。
    ちゅうか、ひつこいけど私もふっと気を抜くと百合のように、他人を気にして、他人が他人にいう言葉にすらがんじがらめになって、最終的には「自分より劣っている人」を見つけて溜飲を下げる(くせに、そんな自分に対して自己嫌悪になり自分を責める)といったような最低なことになりがちなタイプなのだけれども、もしかして世の中にはそういう人が多いのかな、と、思った・・・。

    (この手の本が人気なのだったら)


    せやけど、残念ながら百合が
    「もう、いいや!」
    と、吹っ切れる瞬間に全然共感ができなかった(笑)。

    たぶん、自分(=百合)のことを全く気にしない人が、ありのままで楽しむ姿を見て、百合も共感されるというところなんやろうけどさ・・・。

    まあ確かに、他人の目を病的に気にするときって、その関係の人にいくらいいことをいわれても疑心暗鬼になって、悪い解釈しかしなくなるもんね。
    だからこそ、全然違う世界でパーッと(健全に)はじけちゃうと、
    「ああ、スッキリした」
    「なんでこんなしょうもないことで悩んでたんやろ」
    と、思えて前に進んでいける・・・。

    物事にとらわれすぎない(いい意味で)さっぱりしてる人は、たぶんこの「ガス抜き」がうまいんやろうと最近はよく思うけれども、そのガス抜き具合が、この本ではなんだかよくわからない(笑)。

    たぶん、著者の表現ってこういう感じなんかな。
    否定的なことはすごい的確にというか、細かく描写していると思う。
    ただ若干、暴力的に感じる・・・(のは、あんまりにも私がのめり込みすぎて読むからか)。
    とにかく良し悪し以前に、私にはさらっと読めないんだな。(;^ω^)

    もっとわかりやすく、お花畑が入っていてもいいから、世界が一瞬で色を変えるような劇的な変化がほしいわ。
    好みの問題やと思うので、どうもすいません。
    身につまされることが多すぎて、どこを切り取っていいやら・・・。

    ここまで細かく描写する著者の感性はほんま豊かなんやろうね。ただ黙って座っているだけでも、頭の中でいろいろ考えてはるんやろうなあ。
    話題の著者を読めてよかった。


    誰に対して、誰と優劣をつけるのか。
    他人の目と他人からの評価に縛られるときってそういう迷宮に入ってしまう。
    いくら、
    「他人はいうほど(他人のことを)気にしてないよ」
    と、いわれても、自分で自分を追い込んでいっちゃうから、どうしようもないのよ・・・。

    その気持ちは、痛いほどわかる・・・。

    百合ちゃんが感じたように、「世界は自分が思うほど悪意に満ちていない」と、自分でわかる瞬間に出会いたいよね。
    他人との距離感ってほんま難しいね。

    辛くするのも他人やし、それを救ってくれるのも他人やし、他人との距離感ってほんまに難しい・・・。
    (人間関係なんて)狭い世界でいいやと、年齢を重ねるごとに思うのだけど、そのくせ、家族だけやと
    「無理」
    と、思ってしまう。

    ぜいたくやなあ。


    私も意味のない「すみません」が、多い。
    「すみません」よりも「ありがとう」に、替えようと努力しているけれど、「謝る気のないすみません」に、関しては、(この本を貸してくれはった)上司に対しては言わないでおこうと思った。

    冒頭のコピー機での百合ちゃんは、まさに、私やなあ。(;^ω^)
    ここまで追い詰められたことがある、二十代にも一度、三十代でも一度・・・。
    えっ、大丈夫、私・・・。


    ■■■■


    ■突堤

    港や河口などで、陸から海や川に長く突き出た堤防。防波堤・防砂堤など。


    ■類推

    1 類似の点をもとにして、他を推しはかること。「過去の事例から類推する」
    2 論理学で、二つの事物の間に本質的な類似点があることを根拠にして、一方の事物がある性質をもつ場合に他方の事物もそれと同じ性質をもつであろうと推理すること。結論は蓋然的。類比推理。類比。比論。アナロジー。
    3 ある語形または文法形式との関連から、本来の語形または文法形式とは別の新しい語形または文法形式を作ろうとする心理的な作用。この種の働きによって、多くの不規則な語形が規則化されていくことがある。


    (2017.02.12)

  • P.14
    私は他人の苛立ちに敏感である。ほとんど超能力と言っていいほどだ。…
    苛立たせている自分がとても無能な人間であるように思うし、相手の私に対する評価が下がることの恐怖で、いてもたってもいられなくなる。


    最近気になったので読んでみた本。西加奈子2冊目。なんとなく疲れている今の自分に、なんでこんなに心に寄り添ってくるのか、と思えるほど染み込んで来る本だった。穏やかな藍色の海が見える風景と明るいホテルの部屋、そして不器用でみっともないけど心地よい人との語らい、読んでいるだけで落ち着く。
    女性の一人旅に出たくなりそう。
    そしてシスコンの本だった。

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著者プロフィール

1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。
プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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