うつくしい人 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 2715
レビュー : 307
  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344417229

作品紹介・あらすじ

他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。ある夜、三人はホテルの図書室で写真を探すことに。片っ端から本をめくるうち、百合は自分の縮んだ心がゆっくりとほどけていくのを感じていた-。

感想・レビュー・書評

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  • 一人の女性が、心理的抑圧から解放され、自立に向かっていくお話。
    読み始めたら、少し前の自分のことが書いてある!と思うほどに、自分と重なった。みんなそんなにわたしのことなんて気にしてない。なのに、なんか悪口言われてる感じがする。ちょっとしたやりとりの中にある言葉を被害的に受け取って、勝手に落ち込む。自己肯定感の低さ。人間関係が、うまくいかなくなる。

    人って結構、自分が一番嫌い、というか許せない!と思う人に、一番認めてもらいたかったりするもので。
    そしてそれは、案外近くにいる人だったりする。そして、近いからこそ、言いたいこと言えるから苦しいし、感情もぐわんぐわんと、波打つ。こうした感情の揺れは、なかなかに人を、疲弊させる。わかってもらいたいのに、わかってもらえない。とっく忘れられている許せないことを、忘れられない。
    だから、感情が安定している、坂崎やマティアスのような人に、うっかり喋ってしまう。

    わたしもきっと、自分と正反対の生き方をしているいとこや、正反対の価値観を持った母に、ずっと認められたい。
    けれど、自分で自分を認めてあげたら、なんだかどうでもよくなってしまって。違う人間として理解して、壁をつくって生きてる。
    たぶんこれからも、その諦観のまま、生きていく。
    ほんとは、きちんと「あなたが嫌い」「あなたのことを許せない」「あなたに認めてもらいたい」「あなたに褒めてもらいたかった」そう伝えたいのだけれど。

  • 「ゆりちゃんが満タンになった」
    「私は他人の苛立ちに敏感である。ほとんど超能力と言っていいほどだ。」
    このあたりの表現が印象に残った。

    読み始めた時は、こんなお話を書けるってことは、西加奈子も同じような経験があるのかと驚いた。その答えは、あとがきに綴られていてぐっとくる。『円卓』なども面白いけど、こういう一面もあると知ったことで、西加奈子をより好きになった。

  • 自分探しの旅のおかげなのか、自分忘れの旅のおかげなのか、いずれにせよ自意識過剰な人間は、ぶっきらぼうな人間に目覚めさせられるんかな。「うつくしい人」に気づけた主人公はさぞ心が軽くなっただろう。

  • そうか、西加奈子。メンタルがしんどい時にこれ書いたんやね。プロ作家の矜持、しんどくても書く、自分がしんどい時のそのままを書く、その心意気は素晴らしい。
    作家は五感を通して入ってきたものを心で精査して筆で表現するする仕事。その中の精査器官が疲弊しているんだから、そういう作品になってしまうんだろうな。

    心が疲弊した状態や病んだ状態で小説を書く作家は古今東西数多いるし、名作と呼ばれる作品もたくさんある、中には書ききれなくなった人や、残念だが命を絶つ人だっている。

    心の再生を促すものは人それぞれ、この小説の主人公のようなやり方では俺なんかは絶対立ち直れない(むしろ病み度を増しそうな気がする)が、こういう刺激とも言えないユルい波が、疲弊を癒し心をほぐしてくれることもあるんだろう。なんとなく分かる。

  • 西加奈子さんの本2冊め。文章が美しいし、普段何気なく思っていることを的確に文章で表現をしているのがとても好き。

  • 「本を置きに来るんです。吸収するだけじゃなくて、置いていくことも必要なのかもしれない、と思います。」吸収すること、身につけることだけが、人間にとって尊い行為なのではない。何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ。

    ブローディガン「愛のゆくえ」をいつか読んでみたい。

  • しんどい心情は理解できる。

    マティアスはちょっとわざとらしい外人だけど、かわいい。のです!

    その時の心情によって景色は変わるものだよなーと思った。誰がどこで誰かの救いになるかわからないものですね。

    最後、百合はきっとまた悩むだろうけど、また乗り越えるを繰り返すって感じのあとがき(?)の所が好きです。

  • よくできた姉
    とてもきれいな姉
    自分を縛り付ける姉
    うつくしい人

    主人公は、姉の存在にがんじがらめになり、一人旅に出る。
    心がキュウキュウとなり、どうにもできない感情に振り回される。
    旅先で出会った外国人とバーのウエイター。
    どちらもちょっとおかしくて、頓珍漢で、人の話を聞いていない。
    心が元気な人なら「なんだこいつ」とか「ふざけてるじゃん」なんて、突っ込んでみたり、ゲラゲラ笑ったりもできるのだろうけど、キュウキュウになっている主人公は、二人にうまく感情をぶつけられない。
    それでも、この二人只者じゃなかった。
    おかげで、キュウキュウだった主人公の心は次第に開放されて、うつくしい人からも解放されていく。

    読むのがつらいのに、めくる手は止まらない。
    きっと誰しもが抱える感情だからだろう。
    読んだ私もこの感情は身近すぎて苦しかったけれど、出会った二人に助けてもらった気がした。

    それにしても、坂崎というバーテンが本当は何者なのか、いまだ気になってしょうがない。
    西加奈子の本を読み続けていたら、どこかで坂崎という人物に再び出会えたりするのだろうか。

  • 主人公と全く同じ心情だったし、いまでもときどきそれに戻る
    そういうときどうすればいいんだっけっていうのがわかる
    くすっと笑いもあり、西加奈子さんの作品で一番好き
    疲れた時に読み直す

  • 歪んだレンズから、世の中はこう見えるのか。
    30代女性の主人公蒔田百合の視点と一人語りで、物語は展開する。
    というか、展開しない。何を見ても、誰と接しても自分を貶める思考パターンがこれでもかと随所に。

    いつも他人の評価や視点が気になり、自分自身で判断・行動できない。
    びくびくするばかりで、自分の立ち居振る舞いを後から反芻しては、殻に閉じこもる。

    どう思われているのか、どう人の目に映るのか。そんなことばかりを気にするあまりに、自分が自分で分からなくなる。

    ああ、これは私だ!

    「私は他人の苛立ちに敏感だ」(P.14)
    そうそう、私も相手の口調や間、表情、或いはメッセージへの返信のタイミング等を一人勝手に解釈し、一人落ち込み、自分を責めるのが常だった。

    と、終盤までは、まるで朝比奈あすかさんのような作品かと思いきや、終盤でハンドルが切られる。

    実姉への恋慕、憧憬、嫉妬、嫌悪等々が絡み合い、こじらせているんだなということは分かるのだが、敢えて両親についての描写を削ったため、全体像がぼんやり。

    きょうだい間の不全にはやはり、身近な親の存在と、その在り方が欠かせないと思っているので、そこが弱いかなと。
    或いは、姉自身からの視点が群像劇で語られると、また違うのかもしれない。

    自己評価や自己肯定感は自分で上げたり、下げたりできないものだと、信田さよ子さんが強く主張されている。
    あくまでも、他者(特に親)との関係性の中で決まるのだそう。
    「ケーキの切れない非行少年たち」の著者で精神科医の宮口先生も著作の中で述べている。

    だから、主人公百合の認知のゆがみ、つまり「私なんて…」の枠組みが、もう明かされていればなと、頁を閉じた。

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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