うつくしい人 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 2684
レビュー : 303
  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344417229

作品紹介・あらすじ

他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。ある夜、三人はホテルの図書室で写真を探すことに。片っ端から本をめくるうち、百合は自分の縮んだ心がゆっくりとほどけていくのを感じていた-。

感想・レビュー・書評

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  • 一人の女性が、心理的抑圧から解放され、自立に向かっていくお話。
    読み始めたら、少し前の自分のことが書いてある!と思うほどに、自分と重なった。みんなそんなにわたしのことなんて気にしてない。なのに、なんか悪口言われてる感じがする。ちょっとしたやりとりの中にある言葉を被害的に受け取って、勝手に落ち込む。自己肯定感の低さ。人間関係が、うまくいかなくなる。

    人って結構、自分が一番嫌い、というか許せない!と思う人に、一番認めてもらいたかったりするもので。
    そしてそれは、案外近くにいる人だったりする。そして、近いからこそ、言いたいこと言えるから苦しいし、感情もぐわんぐわんと、波打つ。こうした感情の揺れは、なかなかに人を、疲弊させる。わかってもらいたいのに、わかってもらえない。とっく忘れられている許せないことを、忘れられない。
    だから、感情が安定している、坂崎やマティアスのような人に、うっかり喋ってしまう。

    わたしもきっと、自分と正反対の生き方をしているいとこや、正反対の価値観を持った母に、ずっと認められたい。
    けれど、自分で自分を認めてあげたら、なんだかどうでもよくなってしまって。違う人間として理解して、壁をつくって生きてる。
    たぶんこれからも、その諦観のまま、生きていく。
    ほんとは、きちんと「あなたが嫌い」「あなたのことを許せない」「あなたに認めてもらいたい」「あなたに褒めてもらいたかった」そう伝えたいのだけれど。

  • 「ゆりちゃんが満タンになった」
    「私は他人の苛立ちに敏感である。ほとんど超能力と言っていいほどだ。」
    このあたりの表現が印象に残った。

    読み始めた時は、こんなお話を書けるってことは、西加奈子も同じような経験があるのかと驚いた。その答えは、あとがきに綴られていてぐっとくる。『円卓』なども面白いけど、こういう一面もあると知ったことで、西加奈子をより好きになった。

  • 自分探しの旅のおかげなのか、自分忘れの旅のおかげなのか、いずれにせよ自意識過剰な人間は、ぶっきらぼうな人間に目覚めさせられるんかな。「うつくしい人」に気づけた主人公はさぞ心が軽くなっただろう。

  • そうか、西加奈子。メンタルがしんどい時にこれ書いたんやね。プロ作家の矜持、しんどくても書く、自分がしんどい時のそのままを書く、その心意気は素晴らしい。
    作家は五感を通して入ってきたものを心で精査して筆で表現するする仕事。その中の精査器官が疲弊しているんだから、そういう作品になってしまうんだろうな。

    心が疲弊した状態や病んだ状態で小説を書く作家は古今東西数多いるし、名作と呼ばれる作品もたくさんある、中には書ききれなくなった人や、残念だが命を絶つ人だっている。

    心の再生を促すものは人それぞれ、この小説の主人公のようなやり方では俺なんかは絶対立ち直れない(むしろ病み度を増しそうな気がする)が、こういう刺激とも言えないユルい波が、疲弊を癒し心をほぐしてくれることもあるんだろう。なんとなく分かる。

  • 西加奈子さんの本2冊め。文章が美しいし、普段何気なく思っていることを的確に文章で表現をしているのがとても好き。

  • 「本を置きに来るんです。吸収するだけじゃなくて、置いていくことも必要なのかもしれない、と思います。」吸収すること、身につけることだけが、人間にとって尊い行為なのではない。何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ。

    ブローディガン「愛のゆくえ」をいつか読んでみたい。

  • しんどい心情は理解できる。

    マティアスはちょっとわざとらしい外人だけど、かわいい。のです!

    その時の心情によって景色は変わるものだよなーと思った。誰がどこで誰かの救いになるかわからないものですね。

    最後、百合はきっとまた悩むだろうけど、また乗り越えるを繰り返すって感じのあとがき(?)の所が好きです。

  • 初の西加奈子小説でした。
    なんだか後味はすっきりしない物語でしたが、総合的に面白かった。

    自分が分からず見失い、もがき苦しむ主人公が、
    旅先で二人の男性に出会い、色々なしがらみから解放され、
    大切な人に気づき自分を徐々に取り戻していくお話。

    私も百合のような性格で、常に他人からの視線を気にしている方。いつも周りにいる自分をもっていてブレない人のことを羨ましく思っていました。
    主人公の百合に感情移入して読み進めることができました。

    最後、百合の発した、
    私はこれからもずっと変わらないし、変わらなくてもいい、
    皆が美しい人なんだという言葉に救われたかなと思います。

  • "うつくしい"姉のようには決して生きない、ただその一心であった百合。それがただ"うつくしい"姉のようになりたいがなれないから遠ざけていただけで、地下の本の墓場でマティアス、坂崎の目の前で号泣する百合。うつくしい景色。楽しい気持ち。人間の感情の機微が凄い。何度も読み返したい本。

  • うつくしいという姉の存在は、誰が決めているの

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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