天帝のはしたなき果実 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 465
レビュー : 53
  • Amazon.co.jp ・本 (765ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344417533

感想・レビュー・書評

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  • 古野まほろ『天帝のはしたなき果実』読了。
    第五の奇書を求めて。奇書を追っていくと、どうしても行き当たる本作。端々に見られる『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』『匣の中の失楽』へのリスペクトからも、その流れを踏襲していることがわかる。何より、「天帝の」というタイトルそのものが、冒頭の奈々村久生の引用文が、この作品の『虚無への供物』からの影響を物語る。
    序盤は世界観が嫌でも解る吹奏楽部の青春劇。「帝国」と名のつく日本。この世界は現実の日本とはパラレルな関係にある。それは多くの謎の真相に接続する世界の親和性を高めている。というのはまず措くとして、それよりも先んじて強烈な「まほろ語」の連発、外国語ルビの多用という読み難さから始まる本書は黒死館の疲労感を思わせ、奇書好きとしては俄然スイッチが入った。
    内容としても、『黒死館殺人事件』や『虚無への供物』を踏襲した衒学的な会話や推理合戦は圧巻だ。しかし、奇書だからといって本格ミステリの純度が低いかというと全くそうではない。推理パートの論理は作者が師と仰ぐ有栖川流で、精緻そのもの。推理合戦の形式から導かれる公理、演繹推理の果ての真相。論理の純度が恐ろしく高いことは証言しておきたい。
    但しそれだけで終わらないのが「奇書」たる所以。終盤の展開は「唖然」の一言。だが個人的には終盤の展開そのものよりも主人公「古野まほろ」の行為の方が衝撃的だった。正直なところ「こいつ」は好きになれない(笑) なんだこいつ、嫌いだ、地獄に落ちろ(笑)
    しかし、それでもやはりどうしようもなく楽しかった。読みにくい、わかりにくい、荒唐無稽、主人公嫌い、それでも楽しい。純粋に面白かった。その論理と、唯一無二の奇特さと、先達への想いに脱帽する。

  • 面白かったです。
    学生の部活動の音楽の情熱と、芸術語学軍国主義…情報量が多くてお腹いっぱい。
    濃い登場人物、文学や歌劇(たぶん創作だろう歌詞が凄かったり)、美術、日本語に仏語独語露語伊語のルビがカタカナでふってあったり、見え隠れする軍国主義、どぎつく際どい性的発言…と世界観に翻弄されて、ミステリ部分はははぁと読むだけになってしまいましたがそれでも犯人にはびっくり。由香里ちゃんが実際に手を下したのは全員でないけど。
    表の修野家と裏の上巣家のあれこれはよく分からなかった…オカルトで。
    でもまほろくんが結果的に切間を死なせちゃってるのつらい…元々、精神的に不安定っぽいのに。二条さんのところ行くのかな?
    大会の演奏の描写は短いながらも胸に来るものがありました。彼らが今後も穏やかに過ごせるといいです。
    登場人物は例のごとく、一馬が1番好きです。

  • 何度目かわからない再読。といっても前まで読んでいたのは講談社ノベルス版だったので幻冬舎文庫版で読むのは初めてとなる。ノベルス版より読みやすくなっているのは確かなのでさくさくと読めた。このシリーズの特徴といえばなんといってもそのまほろ節!それが諄いとはわかっていながらも何度読んでも痺れる!しかも数々の小道具など前座といわんばかりの終盤の怒涛の謎解き、そしてそれによって得られるカタルシス。天帝シリーズは全作読んでいるがやはりこの「果実」が一番美味しい…。

  • 著者:吉野まほろ(小説家)

  • 2011-10-14

  • 初読:2012年4月12日(ノベルス)
    再読:2017年12月28日(文庫)

    新刊が出たので、そのために久しぶりの再読。
    はふう。疲れた。
    もういわゆる「旧訳」を読んだのが5年も前だから記憶がおぼろげだけれど、文庫版、「新訳」はかなり改稿を加えられている。
    一番気になったのはパロディネタ、メタネタの多さ。「探偵小説」シリーズなんかもそんな感じだったけど、個人的にこれはあんまり受け付けない…。
    ただ文章自体はだいぶ読みやすくなって、なおかつこの人の個性を残しつつ、というラインを維持してるのではないかなと。
    とりあえず新作を読みまーす。

  • 1990年 日本帝国。
    勁草館高校を舞台に演目はブラスバンドの青春と斬首事件。
    噎せ返るほど濃密な仮想ゴシックワールドのフレーヴァー。
    過剰にルビが振られた台詞と気障なやりとりがキマって舞台上に映えている。
    情報の奔流の中に沈む大切なものを掬う読書となった。

  • 好き嫌いが分かれるとは聞いていたが、読み終わってそれがよく分かった。
    ミステリーとしての物語に、過剰な装飾が付いているのが、その原因なのかなと思う。
    高校の吹奏楽部の日常からコンテストに至るまで、のだめっぽい感じに、やたらと出てくる当て字の数々、ときおり4大奇書とか、ガンダムとかを踏まえた小ネタをぶち込んでくる。
    それなのに、本格推理小説だっていうからなんなんでしょうね。
    解説見て、メフィスト賞ってことなんで、まあなんか納得してしまったところもあります。
    シリーズ続いてるけど、まあ読まないだろうなあ、、

  • なんだかへんなものを読んでしまったぞというまさしく「狐につままれた」ような読後感
    世界観に馴染むまで100ページくらい、そこからだんだん文体や登場人物に慣れていって、最後にトンデモ展開が待っているんだけどこの作者さんはわざとやってるから余計たちが悪いよ~…要するにその部分も面白かったのです…。
    ただこのままだと、まほろくんは最後に某さんを否定したのに先に読んだ聖アリスガワ学園シリーズでのみづきさんがなぜあんな立場なのか全然わからないので…今私の手元には続編があっての。

    しかしやっぱり、周りの人間に自分の抱えているものを知られることは、すなわち死だよね、うん。

  • ノベルスで読んだときの訳がわからなかった部分が整理されて、狐さん関係のストーリーも組み立てなおした感じなのかな。『セーラー服とシャーロキエンヌ』とか、新訳設定で書かれているから変更点をまとめてほしいというのが正直なところ。

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著者プロフィール

東京大学卒。リヨン第三大学法学部第三段階専攻修士課程修了。元警察官僚。2007年『天帝のはしたなき果実』でデビュー。以後続く「天帝シリーズ」は、高校生、大学生を中心に熱狂的なファンを獲得。他著作に『絶海ジェイル』『背徳のぐるりよざ』『その孤島の名は、虚』など。

「2021年 『監殺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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