フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
4.02
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本棚登録 : 6971
レビュー : 667
  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344418974

作品紹介・あらすじ

二流大を卒業しやっと入社できた会社をたった3カ月で退社、その後は実家に引きこもりゲームに興じる毎日。プライドばかり肥大化させた、そんなへなちょこダメダメな25歳が、母の病を機に突如、一念発起。「就職する。金を貯める」という目標を掲げて向かった先とは……。

感想・レビュー・書評

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  • この本は前半部分と後半部分で相当な感じ方が違います。前半、全く予想していなかった深く・重いテーマ。母親の重篤な鬱病とそれにまつわる家族の狼狽・衝撃・衝突・葛藤、、かなりリアルに描かれています。是非ここで挫折しないで後半まで読み進めていただきたい。
    後半、主人公が徐々に立ち上がります。少しずつ少しずつ、いろんなことが良い方向へ向かっていきます。有川浩さんらしい、惹きつけ力でグイグイ物語に引き込み、読後はふわぁ~と幸せな気持ちが広がります。

    この本はたくさんのテーマを取り上げているように感じます。まずは母親の鬱病、しかも重篤。前半部分はかなりずっしり来ます。実は私にも似たような経験があります。私の母親もかなり深刻な鬱病にかかったことがあります。治るまで2年以上かかりました。ですので、そのときの衝撃・戸惑い・苛立ち・根気強く接することの大切さなど、自分の経験と照らし合わせてもかなりリアリティのあるものだったと思います。寿美子さんの挙動不審な行動、私の母親も相当なものでした。それを目の当たりにしたときの衝撃は今でも忘れられません。きっかけは姉が嫁ぎ、なにかと細々と面倒を見ていた私が家を出たことです。(味気のない親父と二人になってしまったのです) 年を取ってから転居したため、ご近所づきあいもなく、一気に症状にでました。そこからはまさしく家族の中での葛藤たるや、相当なものでした。この物語はそういう意味ではかなりリアリティのあるものだと思います。メンタルというのは本当に難しいもので、まずは本人はもちろん、周りも正しく理解してあげないと改善できない非常にやっかいな問題です。依然として誤解をしている人もいまだに多いのではないかと思いますが、現代ではこの病にかかりやすい今の日本社会。心の病気を理解することが最も大切だと思います。

    次に大きなテーマだったのはやはり主人公の成長でしょうか。いい加減で短気で入社3か月で会社を辞めてしまう。バイトも長くは続かない。再就職もままならないままずるずるいく主人公。そんな彼が鬱病を発症した母親を前に、今までの自分をようやく振り返ることができるようになっていきます。そして父親との確執、ここで出てくる父親はいかにもいそうな、やや古めのタイプの典型的親父。鬱病にも無理解、家族へもつっけんどん。そんな父親との確執を乗り越えていく主人公。そして母親のために必死で夜間バイトしていくうちに、就職の糸口をみつけ、自分の未熟さ・足らないところに気づきを得ていく主人公。これもまた、日本のあちこちでありがちなシチュエーションだなと思いながら、主人公の成長していく姿にいちいち感じ入っていきます。

    読み終わった後、なかなか重いテーマを、、まぁ、よくこんな爽やかな読後感にもっていけるなぁと感心しました。有川浩さんの筆力はさすがです。

    タイトルからは想像がつかない内容でしたが、間違いなく良本です。おススメします。

    • hs19501112さん
      はじめまして。
      自分も数か月前に読みました。身近な人が(診断されたわけでないけど)精神的に不安定になり苦しんでいる時期だったので、参考にな...
      はじめまして。
      自分も数か月前に読みました。身近な人が(診断されたわけでないけど)精神的に不安定になり苦しんでいる時期だったので、参考になるかと。。。この本を読んで接し方を変えたりして、少しだけ落ち着いた感じは受けていますが。。。まだ元に戻ってはいません。

      レビュー内で、お母様が深刻なうつ病に・・・治るのに2年、と書かれていました。

      それは、「治る」ものなのですか?
      「ちゃんと治るものだ」と希望をもって良いのでしょうか?

      はじめましてのコメントなのに、重めの質問をしてしまい申し訳ありませんが・・・お返事がもらえたらうれしいです。
      2019/04/13
    • kanegon69 さん
      こんにちは。hs19501112さん。

      私は医師ではありませんので、あくまで一個人としての意見として聞いてください。

      鬱病は医学的にも証...
      こんにちは。hs19501112さん。

      私は医師ではありませんので、あくまで一個人としての意見として聞いてください。

      鬱病は医学的にも証明された病気であり、治療方法もちゃんとあります。私の母の場合は、幸いにも治りました。ただし、この本の誠一さんのように「気の持ちよう」とか「気が弱いのが悪い」とか、いわゆる精神論の問題と周りがとらえてしまうと絶対ダメですし、がんばれ!がんばれ!と励ますのも絶対禁句です。(本人はすでに一生懸命どうにかしようと頑張っているので、自分を否定するようになってしまいます)

      これは立派な病気であり、自力(努力)でどうにかなるものではないです。ちゃんと専門家(心療内科や精神科)を受診されるべきかと思います。薬などに抵抗がある方もいると思いますが、薬が処方されるかどうかは、専門家に委ねることであり、個人判断するものではありません。症状によっては処方されず、経過観察もあります。医師がちゃんと判断するはずです。

      一般的に言われるのが、治りかけのときの問題です。この本では薬を抜いてしまうという話がありました。完治できずに長期化してしまう問題です。
      あと、周りがかなり注意してみていてあげる必要があります。治りかけのときの自殺率が高いからです。おそらく一定の回復をしたときに、自殺という行動ができるようになる、、ということのようです。

      基本的には、鬱病になりやすいタイプというのがあるようです。ですので、同じ生活習慣・同じ考え方・同じ行動パターンを継続していた場合、一度治っても、再びなる可能性があります。医師とよく話し合い、家族や周りの人ともよく話し合い、できるだけ原因となる要素を極力取り除くことが必要です。(この本の場合は引っ越し)

      まずはその身近な方を、是非、専門家のところへお連れしたほうがいいと思います。昔と違い、今は精神科ではなく、心療内科という、やや気軽にいけるクリニックも多いです。行ってみると、本当にたくさんの人が来ていますので、自分たちだけではないんだと安心します。(春や秋など季節の変わり目や、低気圧が続く時期などは患者がどっと増えるそうですよ)

      周りは、とにかく寄り添う気持が大事です。ただ一緒にそばにいて、優しく接してあげることが大切かと思います。

      (こちらは予備軍の方へ)
      実は私自身も母の性格に似ているものですから、鬱になりやすいという自覚があります。また、それに近い状態のときもありました。猛烈に仕事をしていたときです。かなり危ないところまで行きましたが、専門家にアドバイスをもらいました。最近は、自分で切り替えスイッチをもつようにしています。人によって違うと思いますが、私の場合は、読書・映画鑑賞・スイミングです。自分の大好きなものにより仕事脳を意識的に切り替えようと心がけています。アロマやハーブティ、ヨガ、瞑想などもいいですが、ひとによって好みが違うと思います。自分の大好きなこと、気持ちの切り替えができるものをできるだけ多くのもっておくといいと思います。

      参考になれば幸いです。
      2019/04/13
    • hs19501112さん
      kanegon69 さん
      お返事ありがとうございます。

      とても丁寧な回答をくださっていたのに、、、これを読んだのが、まさしく今日、...
      kanegon69 さん
      お返事ありがとうございます。

      とても丁寧な回答をくださっていたのに、、、これを読んだのが、まさしく今日、今さっきだったもので、お礼が遅れてしまいましたm(__)m。

      ・・・ですよね・・・。
      いくつかの書籍でにわか知識を入れてはみたものの、最終的にはやはり「専門家」に委ねるべきですね。

      こちらの現状は・・・とある書籍にて、「栄養バランスが心の症状を引き起こす」という考え方を知りました。著書に記載された知識をもとに食生活や生活習慣を変えてみたところ、若干の回復を見た気がします。

      若干の回復は、若干とはいえ自分も相手も確実に実感できるレベルのものであるので喜んでいますが・・・

      その「若干」を、「もっとたくさん」にしたいと思い、、、、その本の著者さんの営むクリニックの受診を検討しているところです。


      ご助言、励ましのお言葉、ありがとうございました。
      2019/05/23
  • 有川浩の2冊目。連ドラ原作。ちゃんと観てはいないけど。

    自他共に認めるダメ男が更正(?)してゆく過程が心地好い。

    "作業長"が、恰好良すぎる!!!

    主人公が近所のおばさんに一矢報いた、玄関前で啖呵を切る場面、スッキリしたね♪

    心の病…恐ろしや。ヒロインの台詞にもあったように、ぎりぎり「間に合った」のがせめてもの救いかな。故郷の父母に電話をしたくなった。

    ★5つ、10ポイント。
    2018.11.27.新。

    ・・・夏の再放送で連ドラ版を20分ほど眺めてみた時、面白そうだったからと手に取ったのだけど、たった20分であっても、映像のインパクトって強烈なのね・・・

    二ノ宮、竹中、浅野、香里奈、丸山、大友たちが、そのまんまの姿で脳内変換され続けていた(苦笑)。

  • ドラマでニノがやってたのは知ってたけど、うつや家族問題を扱った重いテーマっていうのは知らなかった。(結局ドラマと原作は全然違う内容だったみたいです)

    それでも最後はすっきり爽やかな気持ちになれる作品。
    ちょっと登場人物が素直すぎるんでないかと思ったりもしたけど…でも実は読んでて涙が自然と溢れてきた場面が多々あり。本当は心の中でみんなこんな風に前向きに進んでいける人間ばっかりだったらいいと、願っていたようです。

  • 人生応援本、に入ると思う。
    ひとが立ち直る姿はいいなあ。
    そこかしこに散りばめられた反省や教訓とかの類いのものが、有川さんのことばだとすっと心に届く気がする。
    たぶん、ひねくれものにも、後ろ向きさんにも。
    そういう意味では、全人類愛というか、性善説というか、なんというか、そんなものすら感じる。
    家族を大事にしよう。

  • ドラマを先に観てしまったので、その印象が薄らぐ頃になって、やっと手に取る。
    テーマは、フリーターだの、うつ病だの、あるいは家庭不和だとか、けっこう重いテーマだけれど、そこは有川浩、深刻にならない展開で最後はハッピーエンド。
    後半、あんまりとんとん拍子で全てが好転してしまうのは、ちょっと?というとこかな。それも、有川浩だから許せる(笑)

  • ドラマ化もされてタイトルは見かけたことがあるこの小説、タイトルから夢がある明るい話なのかと思いきや、苦くて重くてやるせない展開に正直戦きました。そして、結構泣きました。
    ネタばれは極力防いで書きますが、物語前半を覆っているどす黒いオーラが本当に凄まじいです。取り返しのつかないことをした、という後悔があまりに苦くて、主人公のふがいなさに共感しながら苦しくもなりました。

    人って、楽な方に楽な方に流されがちだし、自分の考えが当たり前のように思ってしまいがちで、誠治のだめだめっぷりはもはや救いがないようにすら見えるけど、だからこそ直向きに変わっていく彼がかっこよくて。面倒なことを全部捨ててきた彼の成長物語でもあるこの小説には、随分と勇気づけられるものがありました。

    個人的には誠一さんがお気に入りです。
    最初はイライラさせられっぱなしで誠治を上回るだめだめ男だと思ってましたが、そもそも完璧な人なんていないし、虚勢を張らずにはいられない弱さだとか、不器用な愛情表現とか、仕事にかけるプライドとか偽りない親心とか、読み進めているうちになんだか尊いなぁなんて思うように。きっとお母さんもそのあたりのことが全部わかっていたんでしょうね。

    完全なる機能不全家族に見えたのに、それが修復されていく様も見どころです。
    そして就職後の話も大好き。これぞ有川さんという読み心地で、どの登場人物も愛があるいいキャラ。ラストもラストでいいんですが、もっと先まで読んでいたいくらい。
    なんなら豊川の恋愛が実る話を読んでみたい・・・!

    総じてこの本は1つ1つ築いた信用が今の自分を作っていること、人は変われるということを身の丈いっぱいの心意気でもって伝えてくれる、大人に読んでほしい1冊でした。

  • ずっと読もうかな、どうしようかなと思いつつ読んでいなかった作品。
    想像していたよりもずっと良かった。今まで読んだ有川浩さんの作品の中では一番好きかもしれない。ドラマも観てみたい。

    重度のココロの病気に罹った母親を救うためにフリーターでどうしようもない生活を送っていた武誠治が一念発起するストーリー。家を変えれば母親の妄想が収まるということでがむしゃらに頑張る。
    これ、自分も頑張らねばと思わせる。

    個人的に好きなのは豊川かな。ヘラヘラしているように見えるけど、人間味があるし、仕事も上手くこなしているし。

  • 胸に響く。就職難。自分の耳にも痛い主人公誠治の生き方。でも後半になるにつれ希望が湧く作品。がんばることって必ずポジティブな結果を生むってことが伝わってくる。言い訳するな。悪口を言うな。人生回り道でも、間違いなんてないんだ。そんな作品。

  • 以前ドラマ化もされていたのが、文庫に落ちていたのでさらっと。
    どうにも怠惰な主人公が、自身を見つめなおしていく物語。

    ん、"真っ直ぐで強い女性"が彩りを添えてくれるのは、有川さんならでは、でしょうか。
    相変わらずのテンポの良い文体に、一気に読んでしまいました。

    主人公の怠惰さが決して他人事でなく感じられて、いい刺激に。
    さて、自分も軸足を見失わないようにしないと、です。

  • 久々に、本を読んで、じわじわと涙が止まらなかった。

    幸せだった、それに気づかなかった、気づいた時には取り返しのつかないことになっていた。
    ――間にあわなかった。
    そんな中、周囲は言うのだ「間にあった」。

    思わず自分の親に勧めて、読んでもらってます。

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著者プロフィール

有川 浩(ありかわ ひろ)
1972年高知県生まれ。PN由来として、「有川」は書店に本が並んだ時に「あ」から始まる名前として、著者五十音順で棚の最初のほうにくるから。「浩」は本名から。
2003年『塩の街 wish on my precious』で第10回電撃ゲーム小説大賞を受賞。2006年『図書館戦争』で「本の雑誌」が選ぶ2006年上半期エンターテインメントで第1位を獲得し、さらに2008年には同シリーズで第39回星雲賞日本長編作品部門を受賞。映画化もされた代表作となる。
『植物図鑑』で第1回ブクログ大賞小説部門大賞、『キケン』で第2回ブクログ大賞小説部門大賞を2年連続で受賞。2011年には『県庁おもてなし課』で「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2011」で総合1位と恋愛小説1位、第3回ブクログ大賞小説部門大賞を3年連続で受賞。2012年『空飛ぶ広報室』が「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2012」で小説部門第1位。
その他、ドラマ化作『フリーター、家を買う。』、映画化された『阪急電車』『県庁おもてなし課』『植物図鑑』などが代表作。

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