往復書簡 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 6530
レビュー : 665
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344419063

作品紹介・あらすじ

高校教師の敦史は、小学校時代の恩師の依頼で、彼女のかつての教え子6人に会いに行く。
6人と先生は20年前の不幸な事故で繋がっていた。
それぞれの空白を手紙で報告する敦史だったが、6人目となかなか会うことができない(「20年後の宿題」)。
過去の「事件」の真相が、手紙のやりとりで明かされる。

感動と驚きに満ちた、書簡形式の連作ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルから想像できるとおり、物語は手紙のやり取りを通して綴られています。
    私は筆まめではないけれど、手紙が好きです。
    なかなか返事が手元に届かないのがいい。ゆっくりと待つ時間は今の時代、かえって貴重な気がします。

    手紙だから言えること、偽れること、明かせることがあって、それを余すことなく活用しています。
    静かなトーンは湊さんらしくありながら、あまり毒がなくて安心して読めました。内容は軽くないはずなんですけどね。

    4編の中では、「20年後の宿題」が一番印象的でした。
    どうして大場くんに白羽の矢が立ったのか、最後になってわかるのですが、なんともまあ自己中心的な手紙もあったものだ、と読み返してみると思います。
    それどころか、少し見方を変えると誰もかれもが自己中心的。そして、それは大抵悪気がない。悪気がないからこそ、かえって厄介で、なんでもない時ならさらっと流せるような自己中心さも、ひとたび大きな事件が起これば見過ごせない傷になるようです。

    通常は見えない何かを、目線を変えさせることで気付かせるのが日常ミステリーだと思っています。
    時間が経過して物事の捉え方が変わることによって気付くものもありますし、手紙を通してうまく読者に新たな目線を与えてくれた気がします。
    最後の短編のおかげで少し明るい未来も垣間見えて、珍しく読了後心がざわつかない読み心地でした。

  • 今テレビで湊かなえ先生原作のドラマがあっていたので読みたくなり借りてきました。

    手紙のやりとりで話が進む。その進め方はとてもハラハラするし面白い。主人公たちの気持ちになりやすい。

    しかし…どんでん返しがなんか弱い。読み返さなくても良いかな。

  • 手紙だけで構成された物語は他にもいくつかある。
    とりたてて目新しいものではないし、ある程度話の流れが読めてしまうのも仕方がない。
    「あれ?」と思ったのは、湊作品の特徴である人の心の奥底に潜んでいる毒のようなものがなかったこと。
    それだけが湊作品の売りだとは思わないけれど、少しだけ地味な感じがしてしまった。
    同じ出来事を経験しても、その時の立ち位置や関わり具合によって大きくその記憶は変わってくる。
    二十年前の事故で当事者となり、生き残った六名の児童と一名の教師。
    彼らの二十年間は、良くも悪くも「事故」の影響を受けている。
    現場に駆けつけることがなかった児童は、教師を素晴らしい先生だったという。
    事故直後の様子を直接目撃した児童は、教師の身勝手さを許せずにいる。
    事故のきっかけを作った児童たちは、自分たちのせいでは?と悔いる時間を過ごしている。
    そして、事故の被害者でもある児童は、自分だけが助かった事実を真正面から受け止められずに生きてきた。
    すべては偶然に起きた出来事で誰のせいでもない。
    教師の取った行動にしても正解などないのだ。
    それでも、誰かのせいにしたくなるのが人間だ。
    そして、自分のせいだと自虐し、自分の人生が上手くいかないのはすべてそのせいだ、罰があたっているのだと逃げ道を残しておきたくなるのも人間だ。
    事故当時はいろいろなことを話し合うには子どもたちは幼すぎた。
    けれど、どこかで話す機会を作ることは出来なかったのだろうか。
    ただ一人の死者となった人間が泳げなかったこと。
    彼の命はもともとそれほど残りがなかったこと。
    だからこそ、未来ある子どもに託す思いがあったこと。
    つまらない意地で諍いをおこしてはいたが、本心は別にあったこと。
    教師の教育方針を押し付けられ、そのことを苦痛に感じていたこと。
    いろいろな事情がわかったとしても、それは感情とはまた別の問題だ。
    それでも、知らないよりは知っていたほうがいいこともある。
    知らないままに誤解し、知らないままに勘違いしていることが意外に世の中には多いのかもと感じた。

  • なかなかに、面白かったです。
    手紙のやりとりならではのトリックや、オチがなるほどなあ、と思えるものや。
    どれも事件が絡むことや、そのことを引きずってしまう人たちや、愛する人の為にあえて嘘をつく人や。
    読み応え、ありました。

  • 手紙のやりとりで明かされてゆく、連作のミステリー。湊さんらしい淡々とした冷たさと恐ろしさを備えた作品。

  • タイトル通り手紙のやり取りだけで物語が進む3+1の短編集。
    人の手紙を勝手に読んでるような恥ずかしさを感じつつ。
    だってあまりにも説明的だったりとかすると、物語としては読み手にわからせるために必要なんだろうけど、わざわざ「一応書くね!」と前置きして「こうだったよね?」と過去の出来事を教えてくれたりとか、読んでると恥ずかしくなっちゃうんですよね。
    ↑悪い意味ではないですよ。
    本人かどうか確かめるなら手紙じゃなくて電話すればいいじゃん!とか思ったりもしたけど全体的な物語の内容として面白いと思います。
    手紙スタイルじゃなく小説としてあの物語たちをミステリーとして書くならどうなるんだろう?とかそんな事も考えつつ読ませていただきました。
    実際手紙って後から読み返すと恥ずかしくなったりするからね。意外と怖いですよね。

  • 一番ミステリらしくて好きなのは第1話。あとは何か作り物っぽくて好きじゃない。

  • 手紙のやりとりのみで構成される点は、「告白」の語りのみの構成同様、想像力を掻き立て、小説ならではの面白みが感じられる。

    当然手紙を書いている人によって視点が異なり同じ事象にも違う見方を提示する。何人かの文面を読み進めるうちに、事件の真実のパズルが少しずつ集まり、全容を把握するに至る。そのプロセスが、見てはいけないものをゆっくりと覗きみるようで、気持ち悪くも癖になるのだ。

    三部(四部)構成で、全て、過去の事件に囚われる人間心理を色濃く描いたもの。特に一部目は、手紙の文面から滲み出る女性特有の僻み妬みが、人間のエグみを表現しており秀逸。

    背筋がぞっとするような湊かなえ作品の薄気味悪さはしっかりありながらも、各話最後には小さな希望がもたらされ、ほっとできる一冊。

  • 高校の同級生同士、小学校の先生と教え子、恋人たち…
    十数年前の出来事に想いを馳せ、手紙を通して明らかになる事実と、それぞれの人の悩み、トラウマ…
    手紙の文面だけで描かれる、過去を乗り越えるための人々の姿。短編3作+α。

    湊かなえさんの作品は、最初は穏やかな雰囲気で始まるのに、だんだん雲行きが怪しくなり、突然雷鳴が轟くから怖い。
    でもその怖さが刺激的で、はまってしまう。
    怖いけど、人間の優しさが源にずっとあるから。
    弱い人、ずるい人、も登場するけれど、その弱さを理解してくれる人も登場する。その存在に、読者である私も救われる。

  • 手紙の交換により、過去に起こった事件が次第に明らかになるという珍しい形の小説。一つの事実も見方を変えたり、自身の思い込みによって解釈はいくらでも変化する。またそれによって当事者同士の関係性も大きく関わっていくものだと改めて感じた。

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プロフィール

湊かなえ(みなと かなえ)
1973年、広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒。
2005年に第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。2007年には第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。読んだ後に嫌な気分になるミステリー「イヤミス」の優れた書き手として著名。
「聖職者」から続く連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。デビュー作でのノミネート・受賞は、共に史上初。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)、2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。ほか、直木賞で度々候補になっており、2018年『未来』で第159回直木賞に3度目のノミネート。同年『贖罪』でエドガー賞候補となった。
映画化・ドラマ化された作品多数。特に映画では、2010年『告白』、2014年『白ゆき姫殺人事件』、2016年『少女』、2017年『望郷』と話題作が多い。

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