往復書簡 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 7287
レビュー : 716
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344419063

感想・レビュー・書評

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  • 手紙のやりとりのみで構成される点は、「告白」の語りのみの構成同様、想像力を掻き立て、小説ならではの面白みが感じられる。

    当然手紙を書いている人によって視点が異なり同じ事象にも違う見方を提示する。何人かの文面を読み進めるうちに、事件の真実のパズルが少しずつ集まり、全容を把握するに至る。そのプロセスが、見てはいけないものをゆっくりと覗きみるようで、気持ち悪くも癖になるのだ。

    三部(四部)構成で、全て、過去の事件に囚われる人間心理を色濃く描いたもの。特に一部目は、手紙の文面から滲み出る女性特有の僻み妬みが、人間のエグみを表現しており秀逸。

    背筋がぞっとするような湊かなえ作品の薄気味悪さはしっかりありながらも、各話最後には小さな希望がもたらされ、ほっとできる一冊。

  • 高校の同級生同士、小学校の先生と教え子、恋人たち…
    十数年前の出来事に想いを馳せ、手紙を通して明らかになる事実と、それぞれの人の悩み、トラウマ…
    手紙の文面だけで描かれる、過去を乗り越えるための人々の姿。短編3作+α。

    湊かなえさんの作品は、最初は穏やかな雰囲気で始まるのに、だんだん雲行きが怪しくなり、突然雷鳴が轟くから怖い。
    でもその怖さが刺激的で、はまってしまう。
    怖いけど、人間の優しさが源にずっとあるから。
    弱い人、ずるい人、も登場するけれど、その弱さを理解してくれる人も登場する。その存在に、読者である私も救われる。

  • 手紙の交換により、過去に起こった事件が次第に明らかになるという珍しい形の小説。一つの事実も見方を変えたり、自身の思い込みによって解釈はいくらでも変化する。またそれによって当事者同士の関係性も大きく関わっていくものだと改めて感じた。

  • 過去に読んだ『告白』がエグイ作品(ホメ言葉ですが)だったこともあり、イヤミスを期待して読んだら、意外や意外、いい人物ばかりで不覚にも涙涙。ひさびさに小説読んで泣いたな。
    全て手紙だけで構成された連作ミステリーです。
    「十年後の卒業文集」
    高校の放送部だった男女6人が過去の事件と現在行方不明となっている千秋について探る話。
    「二十年後の宿題」
    小学校の恩師だった元教師から、教え子だった6人の近況が知りたいと頼まれ、彼らと会う主人公。当時小学4年生だった6人と教師が共有する不幸な記憶。
    「十五年後の補習」
    中学時代からつきあっている恋人たちの手紙のやりとり。二人ともある事件で深く結びついていて…

    真相としては辛いことばかりなんだけど、不思議と後味は悪くない、いい作品だと思います。

  • 以前から湊かなえは一度読んでみようと思っていたのだが、評判の高い「告白」はテーマの重さから手に取るのを躊躇っていた。そんな中、たまたまブックオフで見つけたのがこれ。書簡体の短編小説が3篇収められた短編集。書簡体小説が好きなため、初湊かなえにはいいかなと思い購入した。
    書簡体や日記体の小説は「書かれていない」部分で何が起こったのかを想像するのが楽しい。神の視点にたった小説では本来「読者」は本の記述そのものに疑いを持つことなく素直に筋のみを追って楽しめばいい。だが書簡体や日記体の小説や、「信頼できない語り手」の小説は、その読者と本との信頼関係を揺らがせる。
    書いていることが「ある程度の事実」ではあったとしても「真実の全て」ではないのではないかと感じさせる。私はその揺らぎそのものが楽しくてついそういった作品を手に取ってしまうのだが。
    さて、この作品はというと、そこまでは行かなかったかな。書簡体小説ならではの仕掛けもあるが、その仕掛けも作中で完結しているので、読者がその記述を疑うまでにはいかない。
    綺麗にまとまっているので、読みやすくはあったし楽しめたが、私の求めるものとは違っていた。
    世の評判を見るとこの著者の作品はほぼ同じような手法らしいが、その中でも一番評価が高いのはやはり「告白」のよう。次の湊かなえはそれにするかなあ。

  • 久しぶりにミステリー小説を読んで、やっぱりいいな、好きだなと再認識しました。
    過去の辛いできごとをどのように乗り越えるのかということがテーマのひとつなのですが、大人になってから子どものときのことを知ると、違った事実や側面が見えてくるものなのかもしれません。それを知った方がいいのか知らない方がいいのかとなると、私はどうするだろうと考えてしまいました。

  • 登場人物ごとの手紙の書き分けが絶妙。
    「十年後の卒業文集」の毒気に当てられ、他の作品の印象が霞んでしまった。ドロドロした積年の暗黒面、とりわけ静香の不快指数が凄まじい。女性の深層心理を見透かし、ここまでネチネチの手紙をそれぞれに書かせてしまう、湊さんの筆力はすごく怖いと思った。
    「二十年後の宿題」は重たい中にも救いがあった。学校の先生から受けた影響って、自分で意識しているより大きいのかもしれないなぁ。

  • 今年最後の読了本は湊かなえの短編集『往復書簡』。

    この中に収められている『二十年後の宿題』が映画『北のカナリアたち』の原案だったことを初めて知りました。

    書簡のみで綴られるという今作はどんな感じかなと思ったのですがいつもの湊かなえ作品でした。
    他作品でも基本独白が多いからかな。
    そう言えば手紙って独白のようなものだよなぁと改めて思いました。

    だから後から読み返すと十中八九恥ずかしいのか。。
    久しぶりに手紙を書いてみたくなったり。

    面白かった。

  • 手紙というのは特定の相手に向けて送られるものであり、普段見ることは出来ないものであるため、読者としては、何か私信をのぞき見る感覚を持ちながら読んでいた。
    手紙の内容には過去の事件・事故に対する新事実であったり各人の思い込みであったり、読み進めるうちに何が真実か分からなくなるように構成されており、サスペンスとしても楽しめるものであった。
    過去の同じ事象であっても、立場や得られた情報等によって見え方・とらえ方が違うということ、人間の思い込みによってバイアスがかかってしまうことを改めて考えさせられた。

  • 4編からなる短編集。特に「二十年後の宿題」は、映画「北のカナリアたち」の原作ということで読み始めたのですが、映画とは異質なものでした。
    「二十年後の宿題」は先生から教師になった教え子の男性に託された依頼に対しての先生への報告形式の往復書簡。
    二十年前、生徒と先生夫妻でピクニックに行き、そこの川で先生の教え子を助けようとして亡くなった先生の夫。
    その場にいた6人の生徒たちそれぞれの目線により、その事故の事が語られ、次第に明らかになっていく事故の情況。
    そもそもクラスで喧嘩をし、仲直りの為のピクニックに行く原因を作った生徒は、自分たちが先生の夫を死なせたと悩み続け、また、現場を見た生徒は先生への不信感・・・溺れる生徒を助けに行って逆に溺れた夫。先生の取った行動はまず二人を引きはがして、夫を救おうとした。何故先生はそのような行動を取ったのか。
    手紙のやり取りの中で、次第に真相が明らかになっていく。
    最後に、少し明るいオマケが付いていて、心が和まされる。

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著者プロフィール

湊かなえ(みなと かなえ)
1973年、広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒。
2005年に第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。2007年には第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。読んだ後に嫌な気分になるミステリー「イヤミス」の優れた書き手として著名。
「聖職者」から続く連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。デビュー作でのノミネート・受賞は、共に史上初。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)、2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。ほか、直木賞で度々候補になっており、2018年『未来』で第159回直木賞に3度目のノミネート。同年『贖罪』でエドガー賞候補となった。
映画化・ドラマ化された作品多数。特に映画では、2010年『告白』、2014年『白ゆき姫殺人事件』、2016年『少女』、2017年『望郷』と話題作が多い。

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