もういちど生まれる (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 2366
レビュー : 233
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344421714

作品紹介・あらすじ

彼氏がいるのに、別の人にも好意を寄せられている汐梨。バイトを次々と替える翔多。絵を描きながら母を想う新。美人の姉が大嫌いな双子の妹・梢。才能に限界を感じながらもダンスを続ける遙。みんな、恥ずかしいプライドやこみ上げる焦りを抱えながら、一歩踏み出そうとしている。若者だけが感受できる世界の輝きに満ちた、爽快な青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • あまりにも瑞々しい感性で、20歳前後のあのひりひりした時代を書き起こしていて、胸がぎゅっと締め付けられました。
    若さ特有の焦燥感だとか、自分が「何者か」であるという夢や期待、甘酸っぱい恋心、友人との距離感、何もかもが懐かしくて、輝かしく感じました。
    改めて、朝井さんの感性とそれを表す絶妙な比喩表現に舌を巻きました。

    「そう褒めてくれた桜の声だけが、ミルクティーの中に落とした角砂糖のように溶けて耳の中に沈殿している」
    「あたしはベッドの上にとぷんと横になる。火を通す前のホットケーキ記事に放り込まれたチョコチップのように、ぬくぬくと体が埋もれていく。今日1日の疲れが体の中でじっとりと熱されて、手足の先から見えないけむりとなって蒸発していくみたいだ」

    この物語はそれぞれ、登場人物が連作となって繋がっている。
    西加奈子さんの解説がまた秀逸でそこに書かれている通りなのですが、ある一面ではかっこいいクールな子が、実際のところは劣等感を抱えながら生きている、とか、その描き方が絶妙で。

    どの章も好きですが、ままならない恋をしているひーちゃんが登場する「ひーちゃんは線香花火」と自分が特別であるという自負と才能の限界の板挟みになりながらもがいている「破りたかったものすべて」が特に好きです。

    あまりにもいい物語で、読了後もう一度最初から読んでみた。2ターン目もやっぱりよかった。
    同じ時代に生きれて嬉しい作家さんです。

  • 単行本時に書いたレビューを読み直して再掲載。

    高校生や大学生の青春小説といえば、古くは、庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」、さらには三田誠宏「僕って何」などが、芥川賞を受賞した名作だ。
    ともに、その時代の若者の心情や困惑や葛藤を良く描いていると評された。

    朝井リョウ君のこの作品もそれらに匹敵する。
    この短編集が直木賞候補にまで選出されたのも当然という気がする。
    この作品は、彼の他作品同様に、今の若者の心情を見事に鋭く描いている。
    その斬新さは切っ先の鋭いナイフでスパッと切り取ったようだ。
    天賦の才能としか言いようがない。
    このような小説を書けるのは、現在では彼か綿矢りさぐらいではないか?
    もちろん、表現手法は全く異なるけれど。
    若き天才作家は綿矢りさ、辻村深月だけかと思っていたら、ここにも隠れていたのだ。

    中学や高校時代に、どれほど「すごい」と周りから言われても、大学や専門学校に進めば、ちょっとかっこいいぐらいに変わってしまう。
    社会人になれば、そんな人間は星の数ほどいて、優越感を感じるような物差しにはならなくなる。
    「二十歳過ぎればただの人」になってしまうのだ。

    この作品は、高校時代から普通の大学や美大やダンスススクールや予備校や、階段を一つ上ったところでの
    それまでとの変貌、周りからの視線の違いが、瑞々しい言葉で表現されている。
    そこで生まれる新たな自意識と苦悩。
    この感覚は、直木賞受賞作「何者」までにつながっていく普遍的なテーマだ。

    朝井リョウ君が描くところの若者は「僕って何」的な、自己のアイデンティテイの模索。
    彼はこれからもこのことを自らに課せられたテーマとして書き続けていくのかもしれない。
    今度は一般の社会人になった人間として、何が目的で、何のために恋愛をし、何のために生きているのかを考えるために。

    前の入れ物の中では一際光り輝いていたビー玉も、新しい容器に詰め込まれて、新たな別のビー玉も加えられシャッフルしてやり直しになれば、もはやほかの玉との見分けがつかなくなる。
    小学校、中学校、高校、大学、社会人と人生はシャッフルの繰り返し。
    だから、若い頃抱いていた夢も、
    あなたならなれるよとおだてられていた夢も、
    儚く破れ、否応なしに厳しい現実の世界に引き戻され、その他大勢のひとりとなる。

    でも、たしかに光り輝いていた時期はあったのだ。
    夢を叶えられると思える時期があったのだ。
    その気持はいつまでも持ち続けなければならない。
    どんな年齢になっても、どんな立場になっても。
    人間は、そんな微かな望みを抱くことができるから生き続けられるのではないか、と思う。

  • 大学生の、もうおとな扱いされるけど大人じゃない部分と、高校生より自分らしく周りに流されないで生きられる感じから生まれる不安定さが伝わる作品。

    高校生見たく甘酸っぱいだけじゃない恋愛や、自分の存在の示し方とか、大学生ならではってのが結構感じられる。

    登場人物が誰かしらつながっている短編です。

    2016.2.12

  • やっぱり朝井リョウの描く痛さが好きだ。

    「若かった」とか「未熟だった」とか都合のいい言い訳で蓋をして見ないようにしていた、あの気持ちやこの気持ちを、目の前にどかんと置かれるよう。

    どんなに見ないように、気づかないようにしていても確かに存在していたいろいろな気持ちが思い出されて、胸がちくちく痛みます。

    きっと、今と切り離された完全な過去の気持ちであったら、懐古の気持ちだけで済むのかもしれないけど、まだ痛みを感じるということは、大人になっても相変わらず同じところをぐるぐるしているってことなのかもしれません。

    完璧な丸にはどうしてもなれない。
    もがいてもがいて、妥協を覚えて、たまにはっと気づいて、またもがいて…
    自分の形を見つける、まだまだ途中なのかしら。

    引用にもいくつか書いたのですが、なんといっても朝井リョウの表現が、私にはとてもしっくりきて、読んでいてとても心地がいいです。

    「心地いい痛み」の存在に気づかされる作品。
    痛いけど、くせになってしまいます。

  • 口の中が酸っぱくなる。言葉がグサグサ刺さってくる。点と点が線になって、それが世界を作ってることが感じられる。全ての言葉に込められた思いは受け取る人によって違う風に捉えられ、それがいい道に進むか、はたまた逆かはその人自身に込められてるのかもしれない。映画監督の話が読みたいわ。

    海を分母に、空を分子にしたら、1を超えるのだろうか。泣きたいのを我慢しているような空を電車の窓から見上げると、イヤフォンが少し動いて、耳の中から音楽がこぼれ落ちそうになった。

    この言葉が心にストンと落ちた。

  • あの、20歳前後のヒリヒリした感じを、なつかしみつつも、まだわかる、と思ってしまう。これは描き方がうまいのか、私が育ってないのか(両方だ)。「すごい」人に対する妬みからの自己比較からの諦め。からの一筋の光。ここが、大人になると「身の丈」に落ち着く。甘んじるのではなく。それはやっぱりちょっとさみしいけど、ってなんの話だっけ。若さ、甘酸っぱさ、青臭さ。ああ、なつかしい、だけじゃない感情も、ちゃんと引っ張り出してくるこの人の作品、50近くにもなって言うのは恥ずかしいが、好きだなあ、と思います。

  • 中だるみなく、一気に読める短編集だった。
    人はそれぞれ、憧れの対象や尊敬する人、
    好きな人や恋人がいて。
    その人たちにもそれぞれ、
    また別の好意の対象、あるいは逆に、嫉妬の対象となる人がいて。
    各々が様々な葛藤を持ち、自己不全感と戦っていて。
    ある人が何気なく言った一言が、
    他の人の行動を変えるきっかけとなり。

    同年代としては、時々プッと笑いを堪えなくてはならない、現代の若者ならではのユーモアセンスもたまらない。
    やっぱり朝井リョウさんの作品は面白い。

  • 朝井リョウさんの本を読むと胸が苦しくなります。リアルな悩みや人間関係をストレートに映し出しています。日頃、目を逸らして心の中で埋まっている感情を本を通して抉られるような感覚です。時間をかけて、苦しみと直面しながら読みます。現実の悩みは本を読んでも解決しないけれど、自分を見つめる勇気をくれる作品です。いろんなことから逃げかけている自分をふと立ち止まらせてくれると思います。


  • 若者の脆い部分をえぐっていく。

    連作短編となっていて、20歳の5人が主人公の物語。

    5人は決まって、同じような視点で、自分の周りの同級生をバカにしているところがとても面白かった。
    朝井リョウさん自身の、冷静かつイジワルな視点が生み出す言葉であると思った。

    1「大学って、そういうところだ。無責任を背負って、自由を装っている。未来どころか、三歩ほど先のことだって、本当は誰にも見えていないんだ。」

    これは、大学生が全員感じているけれど、なかなか言葉にできない感情だと思う。
    将来のことなんて、何も見えていないのに、この自由な環境の中では、どこか安心してしまっている。

    そして、僕が一番、心をえぐられたのが、
    最後の「破りたかったもののすべて」

    20歳になるダンサー、ハルが主人公。

    2「高校生の頃は、日常の繰り返しの中で、非日常を見せてくれる人間のことを、すごい、と思っていた。日常に根差している才能を、すごい、と感じられるのは、もっともっと後のことなんだ。」

    高校生の頃から、「すごい」と言われてきたハル。
    その言葉を、信じ切って20歳になった彼女は、その「すごい」がもうすでに、賞味期限切れである事に気付いた。

    そして、同じダンススクールには、圧倒的な才能のある有佐がいる。

    3「私は、ただ単に普通になることを選べなかったから、今の学校にいる。有佐は、特別になることを選んだから、今の学校にいる。その違いは、とても大きい。」

    ハルは、周りから認められたくて、ダンサーになった。

    けど、有佐は、純粋にダンスを求めて、ダンサーになった。ダンサーになる決意の固さに、あまりにも差があったことに、ハルは気がついたんだと思う。

    僕自身も、ハルのように、周りから認められたくて、突き進んでいると感じた。
    自分が選ぶ道を、考え直すきっかけとなった。
    僕は、20歳になって、もういちど生まれる。

  • それぞれの登場人物がリンクしてる短編集のような長編のような連作?といえばいいのかな。
    他の人から羨ましがられる人も、やはり悩みや思うことはあり、それがそれぞれの短編で一人称で書かれている。

    自分が、この本の主人公達と同じ大学生の頃、同じようなことは思っていたはずだけれど、自分の語彙力ではそのことに未だに名前をつけられなかったり、うまく表現できないことが「あぁー、それ!その感じ!」と思ってしまうようにうまく表現されていて、もどかしさとともに胸が締め付けられた。

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著者プロフィール

朝井 リョウ(あさい りょう)
1989年、岐阜県生まれの小説家。本名は佐々井遼。早稲田大学文化構想学部卒業。
大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、後年映画化された。
大学では堀江敏幸のゼミに所属し、卒論で『星やどりの声』を執筆。2013年『何者』で第148回直木賞を受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少。『世界地図の下書き』で、第29回坪田譲治文学賞受賞。
その他代表作に『少女は卒業しない』、映画化された『何者』がある。

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