漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
4.05
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本棚登録 : 6559
レビュー : 711
  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344421844

作品紹介・あらすじ

男にだまされた母・肉子ちゃんと一緒に、流れ着いた北の町。肉子ちゃんは漁港の焼肉屋で働いている。太っていて不細工で、明るい-キクりんは、そんなお母さんが最近少し恥ずかしい。ちゃんとした大人なんて一人もいない。それでもみんな生きている。港町に生きる肉子ちゃん母娘と人々の息づかいを活き活きと描き、そっと勇気をくれる傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 「肉子ちゃん」という名前のつけ方とか、あの男の子たち、嵐やん、とか名前に関して思うところはあったものの。

    最初は、肉子ちゃんと、漁港の愉快な仲間たち、のような感じで始まり、しばらくそれが続くものだから、あの怒涛のラストには、いい意味で、とてもいい意味で、引いた。ラストの70ページに、全てが詰まってる。

    とても敏感で、繊細なキクりん。自分と重ねて、読んだ。当たり前のように、空気を読み、生きていくということ。
    自分では楽な方、と思っている選択でも、それはちっとも楽な方ではないということに、本人が一番気づかない。いや、こういう生き方をしていると、我慢しまくっていて、自分の気持ちなんてものはずーっと封印されたままで、だから、本当は、自分のその選択が楽な方でないことになんて、気づけないのだ。
    攻撃される方が楽。確かにそうかもしれない。でも、そもそも攻撃される時点で被害者なのであって、ちっとも楽ではないわけで。それなのに、人の顔色を見て生きていると、そういう生き方を身につけてしまう。その生き方が楽だと、思いこんでしまう。なんという残酷な支配。マインドコントロール。

    キクりんの周りに、サッサンのような人がいてくれたこと、キクりんが肉子ちゃんに大切に育てられたこと、二宮がキクりんの話を聴いてくれたことは、とても尊い。キクりんの力だ。そして、生まれてきてよかったんだ、生きていていいんだと、キクりんが今、知ったことで、これから先、強く生きてゆけると思った。
    最後のサッサンの言葉と、キクりんの告白と、肉子ちゃんの涙に、わたしも涙した。

  • H29.7.19 読了。

    ・肉子ちゃんと港町の人々の息遣いを活き活きとしたまま閉じ込めた物語であるとともに、ありのままでいたいとという気持ちと、それに抗おうとする自意識を同時に抱えたキクりんが、様々な出来事を通じて成長していく話である。
    ・天真爛漫な肉子ちゃんのファンになっちゃいました。
    ・まさに一気読み、そして後半は大号泣な展開でしたが、読後は心温まりました。
    ・「キリコについて」に続いて西加奈子さんの作品2冊目でしたが、ますます西加奈子さんの作品が好きになりました。

    ・この話のモデルになられた宮城県女川町の焼肉屋さんのおかみさんのご冥福をお祈りします。

  • 最後がもう、大号泣です…!
    今まで読んだ西さんの作品の中で一番好きです。

    太っていて不細工で、底抜けに明るい肉子ちゃん。キクりんは最近そんなお母さんが少し恥ずかしい。キクりんの成長、漁港に生きる肉子ちゃん母娘とそこに生きる人々の息づかいを活き活きと描いた一冊。

    焼肉屋のサッサンがかっこいい。キクりんとの病室でのシーンが最高にぐっときました。
    キクりんのことが大好きな肉子ちゃん、家族のように思ってくれるサッサン。
    ちゃんとした大人なんて一人もいない、肉子ちゃんを見ても、ほんとうのお母さんを思っても、憧れのマキさんだって、町の大人たちみんなだって、どこかしら歪で…、それでも生きている。生きてていいんだ。望まれて生まれたわけではないと、ずっと思ってきたキクりんは、サッサンから叱られ、肉子ちゃんの大きな愛に触れ、涙を流します。

    うまく感想が書けませんが、本の帯に「ラスト100ページ、感じてください」と書かれてあるのがその通りだと思いました。
    笑えて、泣けて、勇気をもらえました。

  • 太っていて不細工で、明るい。
    肉子ちゃんと呼ばれる破天荒な母をちょっと恥ずかしく思う少女キクりんが語る港町の物語。
    肉子というインパクトがあり過ぎる名前に少々腰が引けつつ読み始め、気づいたらどっぷりとはまり、そこに住まう人々の一喜一憂に一緒に揺さぶられた。
    最後に畳みかけてくる、真実。
    胸に残る、温かい何か。
    人間って、愚かだけど、いいな、という思いが残った。
    西加奈子さん、やっぱりすごい。
    「顔をあげた肉子ちゃんは、不細工を通り越して、もう、特撮みたいだ。」p313
    泣きそうなシーンなのに、キクりんと一緒に私も笑ってしまった。特撮って。肉子ちゃんの愚かさ優しさ愛おしい肉々さたるや。
    心に残ったのは、焼肉屋のおじさん、サッサンの言葉。
    温もりを感じられる言葉との出会いは幸せだ。
    「迷惑かけたって、大丈夫ら。俺は、おめに遠慮なんてしねぇ。他人じゃねんだ。分かっか、キク。血が繋がってねえからって、家族になれねわけじゃね。俺は、おめを、家族として、ちゃんと怒る。おめが腹立てるくれ、鬱陶しいぞこらって怒鳴り返してくるくれ、ちゃんと、怒るすけ。」p291
    文庫版あとがきまでが、作品かもしれない。私は読めてよかった。ずしんと。私も爪痕の残る石巻に、女川に、行ったから。
    読むことで、またこうやって書くことで、「肉子ちゃん」がより強くこの世に存在する一助になれたことが、嬉しい。

  • すっかり西加奈子にはまってしまった。
    きっかけはNHKで椎名林檎と対談していたのが面白かったからだったりしますが、どの作品も自然体なキャラクターが魅力的に描かれており、とにかく明るい気持ちになれる。
    肉子ちゃんみたいな人間、リアリテイは無いんだけどすんなり受け入れられる、それだけの魅力を感じられる良作でした。

  • 愛だ、と思った。温度があった。暖かかった。
    みうにダリアがいて良かった。
    不特定多数の周りの人たちをほっと包み込む肉子ちゃんは、ずっとそのままでいて欲しいと思った。
    いつでも明るくて真っ直ぐな肉子ちゃんに敵うわけない。

    こんな話が書けるなんて西さんはすごいな〜。
    ぐっと心を掴まれて、ずっと温かいです。文章に抱きしめてもらっている気持ちです。

  • 西さんの本はこれで2冊目。まだ手に取って買うまでに ちょっと躊躇いがある。たいていは1冊読んで面白かったら 躊躇いなく とりあえず次々読んでみるんだけど。西さんも1冊目は面白かったし。ただ 面白かったんだけど 独特の西ワールドがわたしに合うのかどうかは わからなかったというか ビミョーなラインと思ったからかなぁ。いや 西ワールド自体がわたしの中では ぼんやり輪郭しか感じられなかったからかなぁ。
    この本もさんざん迷って 手に取って何回目かでやっと買って読んだ。面白かった。でも次も躊躇うだろうな。
    この本読んで わたしの中の西ワールドが具体化したかも。
    すごく切ない話なんだけど 笑いで包んで軽妙に読ませるっていうのが わたしの感じる西ワールドなんだけど それが好きか嫌いかっていうと ビミョーなんだよね。こういうのは西さんにしか書けないものなんだろうけど わたしはもうちょっと直球勝負の方が好きかも。
    でもきっと躊躇いながら 次の一冊も読むと思う 笑。

  • 肉子ちゃんは、本当に実在してるんじゃないかと思ってしまう。心が温かくなる本。

  • 2020年7月21日読了。

    さまざまな糞男たちに騙されて、紆余曲折ありながら北陸の港町までやってきてしまった菊子。通称『肉子ちゃん』
    肉子ちゃんはデブでブスで貧乏でちょっと頭が悪いけど、底なしに明るい38歳。
    そして、その娘の喜久子。通称『キクりん』
    キクりんは肉子ちゃんとは対照的に、スラッとした美人で冷静な小学5年生の女の子。
    苗字は『見須子(みすじ)』、母娘とも名前はきくこ。変わった親子である。

    そんな肉子ちゃんは、漁港にある焼肉屋『うをがし』で働いている。
    店の主人のサッサンや、常連客のゼンジさんや金子さん。
    商店街の鍵屋のマキさん、お茶屋さんの重松の奥さん。
    キクりんの同級生のマリアちゃんや二宮。
    ペンギンのカンコちゃん。

    肉子ちゃんとキクりんとたくさんの港町の人々とのほのぼのとしたふれあいを描いた物語。


    ここ何冊か、重く暗い内容の本が続いていたので少しほのぼの系を。
    物語の初めは、肉子ちゃんとキクりんの他愛もない生活の様子や港町の面白い話が続き、クスりと笑える場面が多かった。
    このままグダグダ終わるのかと思いきや、中盤からキクりんの学校での問題や、肉子ちゃんの過去の話など展開があり、
    終盤、サッサンとキクりんの語り合いの場面では思わず涙。

    肉子ちゃんはだいぶめんどくさいキャラだけど、周りからどう見られ、どう思われていようが自分は自分なんだとありのまま生きている様が強いな〜と感じるし、羨ましくさえ思えてくる。
    だが、解説の『ありのままは憧れるものではなくて、今、もう既にここにある。』という言葉を読んでなんだか納得した。
    羨望するのではなく、自分は自分らしくいればそれでいいのだと思う。


    港町は宮城県石巻市がモデルになってるそうだが、作中に出てくる会話文はほぼ全てコテコテの新潟弁である。
    新潟の人はあまりの新潟弁に驚く事だろう。
    こんなにもコッテコテの新潟弁を喋る小学生は恐らく現代には存在しないでしょう笑

  • もう冒頭から引き込まれた。西さんはやっぱり凄い。
    出てくるキャラクターは、やっぱり愛おしくて、切なくて、ふざけてて…西さんワールド全開。
    温かい涙が溢れる作品だった。肉子ちゃんのような不器用だけど固まった心を解してくれるような人が、キクりんの側にいて良かった。というか、キクりんがあーなったのは、肉子ちゃんのせい?おかげ?だと思うけど(笑)
    温かくて哀しいのに感動して、読み終わった後前向きになれる作品。さすが西さん。
    やっぱりこの作品も大好きでした。読んで損なし。

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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