55歳からのハローライフ (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.59
  • (73)
  • (173)
  • (206)
  • (20)
  • (8)
本棚登録 : 1559
感想 : 181
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344421875

作品紹介・あらすじ

晴れて夫と離婚したものの、経済的困難から結婚相談所で男たちに出会う中米志津子。早期退職に応じてキャンピングカーで妻と旅する計画を拒絶される富裕太郎…。みんな溜め息をつきながら生きている。ささやかだけれども、もう一度人生をやり直したい人々の背中に寄り添う「再出発」の物語。感動を巻き起こしたベストセラーの文庫化!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2012年刊行の本の文庫化。
    「ハローワーク」ではなく「ハローライフ」。
    なので、「再就職」ではなく(再就職に苦戦する話もあるが)、「人生の再出発」に関する中編五篇。

    人生の折り返しはとうに過ぎた後の、第3コーナーから第4コーナーにかけての時期なので、先の視界はまだ十分ではない。(死へと向かう)ラストの直線に出た際に人生が開けているかどうか、微妙なお年頃。

    五篇とも、微妙な辛気臭さが漂うが、これが世間のふつうの姿だろうと思う。

    五篇の中では、ラストの「トラベルヘルパー」が最も救いを感じられる一篇だった。

    村上龍がこんな小説を描くのか、と少々意外。

  • 55歳…微妙な歳。子育てもひと段落。介護するまでは親は老いてない。
    人生経験浅いが故の若い時のような勢いはなくて、でもまだ何かやれるんじゃないか…みたいな根拠のない淡い自信があって。
    この中途半端な年頃。めんどくさい年頃。

    5つの短編それぞれに、色気や、虚しさ、優しさ、強さ、人間関係、家族関係、ほんとに混沌としてる。こんなモヤモヤっとした時間も人生の中には必要なのかな。ちょっとした彩りとして。

  • 村上龍著の5作品が詰め込まれた1冊。55歳って、人生の折り返し地点。これからの人生をどう生きていくかがこの本の最大のテーマ。夫婦の事や親や子供の事、自分を取り囲む環境や状況が変化して自分の置かれてる場所や立場も今までとは違ってくる。だから不安がいっぱいのお年頃なのだ。みんな寂しくてその気持ちを満たされたくて何かに依存しながらも日々を過ごし奮闘している。主人公達がバットエンドでは無いのが救いかな。同世代としては考え深い作品だった。50代からは希望を持つ勇気と気持ちに余裕を持てる資金が大切なのかもしれない。

  • 中高年の主人公たちの人生の転機を描いた作品で共感するところが多く、ストーリーの中にぐいぐい引き込まれました。さすが村上龍先生という感じです。
    『人は、何か飲み物を、喜びとともに味わえるときには、心が落ち着いているんですよ』というフレーズが心に残りました。

  • 人間は誰しもドラマを持っている。「青春」という言葉が叫ばれる近年、どうしてもクライマックスをこの若い頃に求めがちだが本当にそうなのだろうか。華々しい話では無い。まるで道草のようにそっと恋し、そっと悲しみ、そっと感動していく。 55歳という人生の後半戦をただの消化試合で終わらせなかった人々の物語。

  • 55歳から再就職する話の切迫感がリアリティがあり過ぎて、怖かった

  • 中年男女5人それぞれの、誰にでも起こりそうな出来事が他人事と思えない。些細な出来事によって、思いがけず気持ちが揺さぶられることは、誰にでもあるのかもしれない。人間の厄介さと面白さを感じた1冊でした。

  • タイトルに具体的数値が書いてあると
    「あたしにはまだちょっと早いのか」
    と敬遠していたのだが、どうやらドラマ化されているようなので気になり図書館で借りてくる。
    借りてくるまで『13歳のハローワーク』のイメージが強く、てっきり『55歳からのハローワーク』だと思い込んでいた。
    55歳になってからの職探しする話しか……と。
    そんな訳ないか(笑)。

    短編5つ。
    どの話しも主人公が50代。
    自分にも近い将来似たような出来事が起こるのか!?
    それぞれの話しに出てくる飲み物が印象的。
    飲み物は心を落ちつかせるものかぁ。
    そんな、おまじない的なものが自分にもあると、何があってもそれを飲めばホッとできそう。

  • 55歳、老後の入り口に立ち、これからの人生をどう生きるかに迷う男女を主人公にした5つの物語。
    この歳で離婚した主婦、体を壊しながら細々とバイトで食いつなぐ男、ハッピーリタイアメントに見えた早期退職から再就職に苦労する元サラリーマン、夫に冷めペットに入れ込む女性、トラックドライバーの老いらくの恋。
    あまり自分の境遇に嵌るものは無かったけれど、それぞれ、この歳になると身につまされる話ではあるな。
    嫁さんが近くにいずに、あるいは、居ても自分の時間を大事にと言われたら、これはどうなんだろう。
    その内に仕事が無くなるのは必定で、仕事するのが好きでもないので、まあ、それは良いけれど、今と同じように気楽に競馬が出来ないと困るな。
    などと色々考えることはあるけれど、その時に向けて何か準備する訳でもなく、何とかなると思っているけど、それで良いのかぁ?

  • まさにこれからこの世代に仲間入りしようとしてる私にはみにつまされる話ばかり。これまではピンときていなかった『老後』という言葉が急に身近に感じ不安になってきた自分にはどの話もリアルで少し読むのが辛かった。それでもみんな一生懸命に生きていて最後は少し希望が持てた。

  • 自分も同年代なので共感する部分も多かった。50代のリストラはキツイよなぁ。よっぽどの貯えが無ければ、生活や体調の不安を抱えながらも働かざるを得ないし。甘くない現実や中高年の悲哀がリアルで身につまされた。

  • 読み進めていて、分かりやすく優しい文章なので作者は女性かなと思ったら村上龍さんでした
    こういう文章を書く方なんだと初めて知り、別の本も読んでみようと思いました
    ちょうどワタクシ世代の登場人物が主人公の短編5話、テンポ良くそして共感できるものがありました
    著者あとがきの後の解説が株式ストラテジストの方で、当時のバブル景気前後の世の流れを見つめる視点からの解説も興味深く読めました

  • 5つの中編小説で構成されている。タイトルから割とハッピーな話を期待してたが…そこそこ重めの内容が多かった。自分自身55歳にはまだ達してないが、少し将来が不安になってしまった。投資信託でも始めようかな…と思った。

  • 正直、ひねりも落ちもなく、本当に珍しく途中で挫折しそうになった。。

  • あとがきで、村上龍は、
    "主人公たちは、人生の折り返し点を過ぎて、何とか再出発を果たそうとする中高年である。体力も弱って来て、経済的にも万全ではなく、そして折に触れて老いを意識せざるを得ない。そういった人々は、この生きづらい時代をどうやってサバイバルすればいいのか?"
    その問いが作品の核だった。
    …と書いている。

    この作品に思いを込めた作者・村上龍の意図は、55歳という老後を意識するとば口に立った人々が、様々な環境の中でこれからの自分の生き方を見つめ直すことへの応援歌にあるようだ。
    主人公のスタイルも、お金に困って老後が不安な人や、60歳を過ぎても一人身のその日暮らし、熟年離婚した主婦、早期退職して自分の夢を追うも妻との考え方の乖離に悩む人等、様々なパターンを取り上げている。

  • 55歳後半くらいの年代が主人公の、中編5編による短編集(中編集?)

    リストラされた夫と熟年離婚した50代後半女性が、結婚相談所で婚活する『結婚相談所』、リストラされ、腰痛を抱えながら交通誘導員などをしてギリギリの生活を送る男の話『空飛ぶ夢をもう一度」など、すごくリアルな描写がいいし、リストラ後の再就職の厳しさの現実が恐ろしい。

    村上龍といえばドラッグやSM、ひきこもりなどショッキングな題材を扱うことが多かったと思うが、これは現代の日本をリアルの書いたら同等の衝撃になってしまってるところが、またすごい。

    結局「人生ってなんなんだっけ?」という根源的かつ最も恐ろしい問いを突き付けてくる作品なので、誰が読んでも深く考え込んでしまうことになる作品じゃないかと思う。

    最終話の60過ぎの元トラックドライバーが古本屋のおっさんと絡みつつ、お客の女性と恋をする物語は、笑えるし、泣けます。

    昔の作品のようなするどさはないですが、これはこれで素晴らしい作品だと思います。

  • 指南書とかではなく、小説集である。
    村上龍さんについては、割と好きな方で、過去にはいろいろ読んできた。近年はあまり名前を見かけなくなってきたが、1952年生まれだから今やもう68歳のはずだ。
    いつも自己中心的・自己弁護的な世界観の内部に閉じこもっていて、妄想の範囲でしか「都合の良い他者」としての女性イメージしか描くことのできない村上春樹さんは好きではなく、あまり読んでいない。対して村上龍さんの言葉は必ずしも普遍的ではないが、動物的なところがあって、かつ、現実主義者的な傾向があると思ってきた。もっとも、SMとかきわどい世界を書こうとするとしばしば現実離れする部分もある。
    本書は2012年に刊行されたもので、東日本大震災の直後と思われる。国内を震撼させたあの震災の直後、ちょうど龍さんのインタビュー記事をネットで見かけた。『希望の国のエクソダス』で「この国には希望だけが無い」と書いたが、それは違った、今ならこう書く、「この国には希望だけがある」と。と、そこで語っていたのが感動的で、記憶に残っている。
    本書は中編というか、長めの短編小説が5編集められている。主人公はみな50代半ばから60歳くらいまでの、「人生の折り返し地点をとうに過ぎてしまった頃」の人物で、そんな歳に離婚したり、退職し新たな生活を始めようとして家族との齟齬が生まれたり、ペットが死んだり、何やら新しい恋に目覚めたりと、<いまさらながらの>ターニングポイントに直面し、もう一度人生を構築していこう、とする物語だ。
    自分も50歳目前にして23年間の結婚生活に終止符を打ったので、まったく人ごとではなく、興味深く読んだ。
    どの話も「現実的」である。その辺に住んでいる、ごく普通の人間たちの小さなドラマなのだ。
    その中で最も異様なのは、中学生時代の同級生がホームレスになってしまっていたという「空を飛ぶ夢をもう一度」だ。
    ホームレスの世界という、私にはよくわからない極限の生活世界を描写していて、迫力がある。さすがこの辺は、きわどいものを大胆に書いてきた作者だ。取材もいろいろやってきたのだろう。
    ホームレスなんていう「負け組」なんてやつは、努力ややる気がなくて自分で落第した連中じゃないか、といまネットでよく見かけるような奴らは言うのかもしれないが、人にはそれぞれ、やむにやまれぬ事情があり、どうにも出来ない運命のようなものもあるのだから、そうした「断罪」には肯定できない。そのような、包摂するかのような眼差しを、村上龍さんも持っている。
    一方、かなり純粋に感動させられたのは「ペットロス」。
    愛してきたペットが死んでしまうという話だが、それまでやたら冷たく、ひどいことばかり口にすると思ってきた夫が、実はそうではなく、妻の気持ちもじゅうぶんに理解していたのだ、と知れるストーリーで、これは電車内で読んでいたのだが危うく泣きそうになった。
    村上龍さんがこんなにストレートに「いい話」を書くのは珍しいのではないだろうか。とはいえ、単に「いい話」で終わらないように気をつけてはいるようだが。
    最近村上龍さんはどんなものを書いているのだろう? と、ちょっと気になってきた。

  • 読んだ後すごく憂鬱な気持ちになってしまったので星5
    どれくらい憂鬱になったかというとバスで読んでいる途中本を一旦閉じ、外を眺めて心の平均を保とうとしたくらい。

  • 解説にも書いてありましたが私も「55歳からのハローワーク」だと思ってました。
    ハローライフですね。なるほど…。

  • 解説の人も書いていたが、「ハローワーク」かと思っていた。間違い。「ハローライフ」である。
    村上龍っぽくない気もしたが、読みやすく、楽しく読めた。
    55歳かあ。どんな生活してるかなあ。

全181件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村上龍の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×