ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344421882

作品紹介・あらすじ

そばにいても離れていても、私の心はいつも君を呼んでいる-。都会からUターンした30歳、結婚相談所に駆け込む親友同士、売れ残りの男子としぶしぶ寝る23歳、処女喪失に奔走する女子高生…ありふれた地方都市で、どこまでも続く日常を生きる8人の女の子。居場所を求める繊細な心模様を、クールな筆致で鮮やかに描いた心潤う連作小説。

感想・レビュー・書評

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  • 閉塞感漂う地方の高校生や卒業してからの若者たち。
    彼ら彼女らの思い出の中にいる椎名君。
    その宝物のような想いが有るからショボい現実に向き合える、みたいな。

    作品紹介・あらすじ
    そばにいても離れていても、私の心はいつも君を呼んでいる-。都会からUターンした30歳、結婚相談所に駆け込む親友同士、売れ残りの男子としぶしぶ寝る23歳、処女喪失に奔走する女子高生…ありふれた地方都市で、どこまでも続く日常を生きる8人の女の子。居場所を求める繊細な心模様を、クールな筆致で鮮やかに描いた心潤う連作小説。

  • 表紙に惹かれて。
    大阪に生まれた私は大阪から出たいと思ったことはない。なので東京に憧れる気持ちはわからないけど、一度や二度、ここではないどこかへ、なんて願ったことはもちろんある。そんな私を癒してくれる一冊でした。

    椎名みたいな学生時代イケイケで大人になってからパッとしないのはあるあるだなーと懐かしいお顔が浮かんだり。
    短編なのでさらっと読めて楽しめました。

  •  読み始める前、軽く書評を読み、失礼ながら、あまり期待をせずに読みましたが、想像以上に面白く、スルスル読めました。

     田舎育ち若者特有のコンプレックス、話題、不便さ…
    あぁ、分かる分かる!と懐かしさを感じました。
     男性や都会育ちの方には共感は得られにくいかな。
     短編集で各話なんとも言えない終わり方をする。それもまた良かったです。

     期待値を上げたり下げたりすると、読んだ時の印象は変わりますが、何も情報を入れず、本を購入する事も勇気がいるので、どうしたものかなぁ…。

  • 『ここは退屈迎えに来て』読了。
    地方都市を舞台に8人の「退屈な」女の子がリア充の象徴、椎名と交わりながらも理想と現実を行き来する感じの短編集でした。
    ここでない場所でなりたい自分になることを夢みる彼女たちはそれが幻想でしかないことに気がついてからの急転直下が痛々しくも潔かった。
    すごーく健気なの。だから敏感なんだと思う。
    世の中の生き急いでる感じが彼女たちを焦らしている感じ。
    そんなに焦らなくていいのにって読んでいる方が心配になるくらい。
    最後の章は世間から目を背けるかのように延々と眠り続ける女の子の話だったんだけど。わかる気がするよ…延々の眠りにつきたい。
    あと地方出身の呪縛みたいなのが重なってしまったなぁ…私もルーツは東京だけど結果的には地方出身の身でしかないよなぁ…って読んでて思った。
    だけどそれでも人生を如何に豊かにできるかは自分でしかないんだなと問われた気がする。周囲の人らにやんや言われても私は私と強く思える自信が欲しいなぁ…

    2020.6.9(1回目)

  • 「椎名」という縦軸が通った連作形式の短編。

    地方都市に暮らす、様々な年代の女子達のあまりに繊細でリアル(なんだろうと思われる)な描写。

    作品全体に漂っているのは「ぼんやりトボケた地方のユルさの、なんとも言えない侘しさや切実な寂しさ」(p16)言葉にすればこういう事なのだろう。

    3話目にはすっかり引っかかりました。


    1刷
    2021.1.20

  • 大傑作。地方の若者のやるせなさが見事に描かれている。ここまで身に迫る共感と痛感は、なかなか体験できません。

    地方には現実がある。「ファスト風土」だ。幹線道路沿いに、同じようなショッピングセンターやチェーン店が林立する、あの風景です。いつでもどこでも(!)同じ現実が、郊外には広がっている。この平べったさに違和感を感じる人びと、適応しきれない人びと、それが本作にはたくさん登場する。
    彼らからすると、現実の風景はあまりにもつまらない。つまらないけど、世界を変えられるわけでもない。地方に順応するか、逃避するか、反抗するか、あるいは昇華するか...?どのような手段をとるかは、もちろん人によって違う。でも、どれも共感できる。
    それと男性への視点も絶妙だ。本作はどの話も女性が主人公ということになっている。男性は、ダメ男かオヤジ(=地方に順応した労働者)しか出てこない。悲しいことに、私はダメ男の心理・行動がすごく分かる。俺かよ!ってくらい。だからこそ、女性側の視線がひどく痛い。もう、読んでて何度心を痛めたことか。

  • 山内マリコさん2冊目。

    ここに出てくる女の子達と、環境は違うんだけど懐かしい様な、妙に共感出来ちゃう様な、短編集。
    椎名くんがあっちにもこっちにも出てくるから、うちの学校で言ったらあの人な感じだなとか思いながら楽しめた。

    結局どこに住んでてもみんな同じ様な悩みを抱えてるんじゃないかな。

  • 何度家出を繰り返しただろう。
    親に捨てられ児童養護施設で育った僕は
    中学から親戚の家に預けられ、
    『ここではないどこかへ』をいつも夢見ている子供だった。

    16歳の夏、Bruce Springsteenの歴史的名盤『Born To Run 明日なき暴走』や
    地方に暮らす10代の若者たちをコンセプトに作られた浜田省吾のブレイク前夜のアルバム『Down by the Mainstreet』を聴いて、
    アルバイトで貯めた4万ほどを握りしめ、意気揚々と東京に向かった。
    親戚の叔父さんに見つかり連れ戻されるまで歳をごまかし、
    一ヶ月ほど旅館の住み込みで働いた。
    その後も好きな女の子と駆け落ちしたり、
    高校生の身でありながら、ふらりと旅に出たり、
    とにかくこの町を出れば何かが変わると
    なんの根拠もなく、『ただ』思っていたのだ。


    ここではないどこかを希求する人たちは
    映画や物語の中にも沢山いた。

    『真夜中のカーボーイ』のジョーとラッツォ、
    『ギルバート・グレイプ』のギルバート、
    『ヴァージン・スーサイズ』の五人姉妹、
    『SOMEWHERE』の映画スターのジョニー、
    『ロシュフォールの恋人たち』の美人姉妹、
    『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の典道となずな、
    『子猫をお願い』の夢見がちな少女テヒ、
    『ミッドナイト・イン・パリ』の脚本家ギル、
    『キッズ・リターン』の落ちこぼれ高校生のマサルとシンジ、
    ドラマ化も映画化もされた角田光代原作の『紙の月』の梨花、
    『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』のケンタとジュン、
    『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のフュリオサ、
    そしてアニメでは記憶に新しい
    『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のオルガ・イツカ率いる鉄華団の若者たち。

    そしてこの小説の主人公たちも同じく。

    まず、『ここは退屈迎えに来て』
    という、
    吸引力に優れたタイトルが秀逸だ。

    第1話、『私たちがすごかった栄光の話』の冒頭、
    東京から都落ちした二人の会話を読んだだけで、 
    「ああ〜この小説、絶対好きなやつだ」 
    と感じた直感は見事に的中した。
    (本当に好きな小説は自分がこの物語にハマっていくことが1ページ目から分かるのだ)

    ありふれた地方都市で、どこまでも続く日常を生きる8人の女の子。
    自分の町を愛せずに『ここではないどこか』を夢見てもがき苦しみながら
    大都会へ出て行くことに憧れと希望を抱いている。
    ただそれだけの話なのに 
    どうしてこんなにもほろ苦く胸を打つのだろう。

    それなりに彼女も友達もいた。
    バンドを組んでライブハウスにも出ていた。
    でも満たされない心があった。
    誰とも分かち合えない趣味や夢。
    はじめからマイナスの自分の境遇。
    教室には本当の居場所なんてない。
    何もかもがセンチメンタルな、ないない尽くしの青春の日々。

    だからこそ、本が好きだった。映画や音楽に救われた。
    『ここではない、どこか』を夢見たのだ。

    そんな気持ちに共鳴する人たちには
    たまらない小説だと思う。

    歯切れのいいリズミカルな文体で綴られていく
    各話ごとに登場する女子たちが
    とにかくリアルで、
    電車の中で知らない女子たちの相談事を盗み聞きしたような
    気恥ずかしさと好奇心でページをめくる手が止められない。

    そして、閉塞感で窒息しそうな、不器用な女子たちの うまく生きられない焦りが 
    同じような学生生活を送った自分の胸の深いところに 
    とにかく突き刺さって、どっぷり共感してしまう。 

    全話に唯一共通して登場する
    スポーツ万能、サッカー部のエースでコミュニケーション能力にも長けた『できすぎ君』、椎名の存在が生きていたし、
    章が進むにしたがって、椎名がどんどん若返り煌めきを増していく仕掛けや、
    地方都市から出ていき、何者かになりたい彼女たちと
    地元に馴染み、そこになんの疑問も感じない椎名との対比が何より上手い。
    読了後は誰もが自分にとっての椎名を思い出すことだろう。
    (川上弘美の『ニシノユキヒコ』が思い浮かんだ)


    ここではないどこかを探し続ける旅も
    いつか終わりがくる。
    そんな場所はもう存在しないことに気づいて
    誰もがまた生まれた町に戻っていく。

    だとしても、
    家出して、飛び乗った電車の窓から見た 
    冷たく尖った夜の月を
    僕は生涯忘れることはないだろう。

    あの頃に戻りたいとは死んでも思わないけど、
    忘れたくない記憶があるから
    人は生きていけるのだ。

    ここは退屈だと思っていた故郷が
    いつかかけがえのない場所だったと気づくその日まで、
    はみ出し者たちの戦いは続く。
    この小説もまた
    諦めの悪い挑戦者たちに読み継がれていくのだ。


    監督は『ヴァイブレータ』『さよなら歌舞伎町』の廣木隆一、
    主演、橋本愛、門脇麦、成田凌で
    2018年秋に全国公開される映画版も気になるところ。


    ★映画『ここは退屈迎えに来て』予告編

    https://youtu.be/DBO20HCe10o

  • 女って自己中
    女が嫌い
    でも女が好き
    汚いけど綺麗
    薄っぺらいけど深い
    単純に見えて複雑と思いきや単純

  • 椎名くんってそんなに魅力的な人かな。
    なんて思いながら読んでいたけど、椎名くんみたいな男の子がいたらきっと私も好きになっちゃうんだろうなあ。笑

    椎名くん自身の心理描写が少ないから、あの時あの瞬間、彼がどんな事を考えていたのか分からなくて、どうしてこんな事をするのか掴めなくて、でもそんな事はぜんぜん重要じゃなくって、誰かの心に忘れられない思い出として残っているということ。
    自分の人生と彼の人生が少しだけ重なっていた瞬間。何もかもがキラキラして見えたあの日々と彼のこと。

    私も誰かにとっての椎名くんになれているのかな、そんな風に思った。

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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