- Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344422056
作品紹介・あらすじ
電車での忘れ物を保管する遺失物保管所、通称・なくしもの係。そこにいるのはイケメン駅員となぜかペンギン。不思議なコンビに驚きつつも、訪れた人はなくしものとともに、自分の中に眠る忘れかけていた大事な気持ちを発見していく…。ペンギンの愛らしい様子に癒されながら、最後には前向きに生きる後押しをくれるハートウォーミング小説。
感想・レビュー・書評
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自分探しのハートフルストーリーですね。
四話の短編連作小説です。
電車の中に、何故かペンギンがいる。
乗客は慣れているのか、驚いた様子がないけど?
そんなメルヘンの趣を持つ、心温まる物語です。
ペンギンが何かするのでは無く、ペンギンはペンギンとして飼われていて、電車の中を散歩する。うらやましい鉄道会社の話。鉄道会社の遺失物係が飼育して、遺失物係「なくしもの係」が飼育している。そしてこの「なくしもの係」が物語の舞台になります。
電車の中でなくしものして「なくしもの係」を訪れた乗客と「なくしもの係」のイケメン駅員とペンギンが織り成す、自分探しの物語ですね。
第四話で、この物語の謎が、明らかにされます。
名取さん小説は、自分の中の迷宮を手繰り寄せて紐解くストーリーの名手です。心の格闘を柔らかな文章で綴ります。
わだかまりは、誰しもあるものですが、そこに光を当てて、ブルーになりすぎず、優しくハートフルに解き明かしていきます。最後は前向きにさせてくれる小説ですね。
ペンギンが可愛い。続編が有るようなので、そちらも読んでみたいですね。
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5,6年前に読んだ「金曜日の本屋さん」の作者さん。lisainuさんの「…リターンズ」のレビューで名前を見て、最初の巻から手に取ってみた。
電車で忘れ物をして、鉄道会社の遺失物保管所を訪れる人たちのお話。
そこに待っているのは赤い髪で笑うとフニャッと口角が上がったアヒル口がかわいい駅員とヘアバンドのような白い帯模様とオレンジ色のくちばしが目を引くペンギンのコンビ。
訪れた人は不思議なコンビのふんわりとした雰囲気に癒されるとともに、自分の中に眠る忘れかけていた大事な気持ちを発見していく…と、まあ、普通に佳い話。
ペンギンが電車に乗っているという突飛な設定だが、容易にその絵柄を思い浮かべることが出来、お話として違和感がないところが面白い。
第4話は頁数も少し長めのお話。昭和をがむしゃらに働いてきた親父の話にはそれでなくても感情移入しがちなのだが、息子との不器用な関係を描かれると尚更じ~んとしてしまい、加えて、そこまでに登場した人物のその後や駅員の秘密にペンギンの謎も明らかにされる展開を楽しませてもらった。
ペンギンはそれほど活躍するわけではないが、出てくるだけで惹きつけられるものがある。というわけで、★はちょっと甘め。
最近、水族館にも行ってないし、久し振りに行ってみたくなってきたなあ。 -
なぜ駅にペンギンが?!
遺失物保管所、通称「なくしもの係」で働く駅員の青年とペンギンのもとを訪ねる人たちの短編集。
もうね、みんな優しいのだけど、駅にペンギンがいる理由が明らかになった瞬間、あぁ、そうだったのねと、こころが温かくなった。 -
なぜかペンギンが乗車してくる、通称"ペンギン鉄道"の遺失物管理所を訪れる人たちが、そこで忘れ物だけでなく、自分がどこかで見失っていた気持ちを取り戻し、前向きになっていく様子を描いたストーリー。
ペンギンが電車に自由に乗り降りしたり、その世話をする駅員の守保くんも味があって、ファンタジーな世界観満載。 -
海の見えるローカル線に乗りたくなった。
最終章はこれまでの登場人物も出てくる深い話。
ペンギンが電車に乗る謎も明らかになる。 -
大和北旅客鉄道波浜線遺失物保管所。
担当の守保とペンギンがいる〈なくしもの係〉を訪れる人たちの物語。
登場人物がゆるくつながっていく、連作短編集。
なくしたものを、探すか、探さないか。
なくしたものを、受け取るか、預けたままにするか。
なくしものを通して、自分の中の問題と向き合っていく。
ちょこちょこ登場するペンギンがのどかで、ハートウォーミングなお話。
なくしもの係とペンギンの謎が明かされる、最後の話はじーんときた。 -
読んでよかったです!
この可愛いペンギンの表紙で、『ぶたぶた』さんを想像して手に取ったんですが、
また違った意味で良かったです。
大和北旅客鉄道波浜線遺失物保管所。通称「なくしもの係」
そこで繰り広げられる、心に傷を負った人々の再生の物語。
「なくしもの係」にいるのは、赤い髪をしたイケメン駅員・守保と、
白いカチューシャをしたような頭のジェンツーペンギン。
何といっても、ペンギンが可愛いのです。
両手(フリッパー)でバランスを取りながら、えっちらおっちら。
自分で電車に乗ってお散歩しては、ちゃんと帰ってきて。
「ペンギンを飼ってるんですか?」との質問に、
「というか、世話をさせてもらってます。」と答えた守保。
最終章で明かされる、この返答の意味に泣けました。
正直なところ、猫の遺骨を持ち歩いていた響子にも、
夫に赤ちゃんができたと嘘をついた千繪にも、モヤモヤしっぱなしでした。
でも、最終章で潤平をみつめるペンギンの、濁りのないつぶらな瞳を見ていたら、
そんなモヤモヤも、すっと消え去りました。
ヨチヨチと歩くペンギン。
その一歩は小さいけれど、着実に前に進んでいる。
時々立ち止まり、ゆっくりと周りの景色をながめては再び歩き出す。
なんだかんだ言いながら、私も少しずつ前進できていたらいいなと思えました。 -
どうせまた私を号泣させに来るんでしょ!と完全に身構えて望んだ。
一話で猫を扱ってる時点で感動ものではなさそうなのにもう眼がぷるぷるしてくる。
二話、三話と日常が続いて、最終話に「分かってるよ。今までのをクロスオーバーさせて想起させながら泣かしに掛かってくるんでしょ?」と思いながら読んだのに敢え無く号泣。
名取氏好きだわぁ… -
Big Waveに襲われた一冊。
遺失物保管所、通称なくし物係を舞台に紡がれる短編集。
電車に当たり前のように乗車するペンギンに疑問を持ちながらページをめくる。
一編進むごとに係の守保さんの言葉がさざ波のように心の真ん中に届く。
そして最終章、謎と繋がりはまさに涙のBig Wave。
そういうことだったのか…。誰かの言葉、サポートによって見つけられる心のなくしもの、そこにたどりつく瞬間は最高の景色を見せてもらった気分で心ほんわか。
最後は幸せのBig Waveに襲われたような読後感。最高だった。 -
名取佐和子さんの本を読んだのは2冊目。すごく暖かく、かつ平坦ではなく夢中で読み進めてしまうお話を書く方だなぁという印象。
とある駅にある遺失物保管所「なくしもの係」に訪れる4人の失くしものをきっかけにした短編集。失くしものを見つけたら返してくれるのは勿論のこと、必要に応じてずっと預かってもくれるというのが特殊なところ。
なくしものとそこで出会う人をきっかけにして、それぞれの主人公がその後どう生きていくかという軸を見つけていく物語。
なぜなくしもの係にペンギンがいるのか、ということも明らかになる第4章が一番良かった。