風に立つライオン (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎 (2014年12月26日発売)
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  • 本 ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344422971

感想・レビュー・書評

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  • ケニアの戦傷病院で働く医師、航一郎は、"オッケー、ダイジョブ"と何でも引き受けてしまう、内に熱いものを秘めた医師。
    入院した子供たちの中でも一際心を閉ざしたンドゥングは、航一郎と日本人看護婦(本書の中では、まだ"看護婦"が使われている)の和歌子の元で次第に心を開き、やがて医師になる。
    そして、東日本大震災直後に東北に渡り、被災地医療に携わったンドゥングは、避難所のリーダーとして活動する木場さんに、航一郎と似たものを感じ、さらに、そこで出会った被災児童にかつての自分を見る。

    戦争や震災でツライ立場にいながらも、他人のために動ける人たちがいる。そうしたバトンを繋げていく人たちがいる。人間の残酷さ、理不尽な世界がある一方で、人の社会はまだ捨てたもんじゃないと思えた。

  • 感動で涙が止まらなかった。

    さだまさしの歌「風に立つライオン」を初めて聞いたのはいつだったか。そのメロディの美しさと感動的な歌詞に即座に引き込まれた。それ以来何度も聞いている。
    歌の方が遥かに前に作られ、この小説はそれから随分と経ってから書かれたものだ。その甲斐あって、歌で描かれていたアフリカで献身的に活動する医師の話だけではなく、小説は2011年の東日本大地震にまで繋がり、まさに「魂のリレー」が描かれた感動作品となった。

    「風に立つライオン」のモデルはご存知の方も多いと思うが、実在の柴田紘一郎氏でさだまさしさんとは数十年来の交流があるという。
    歌にしろ小説にしろこの作品がすごいのは、この事実に感銘を受けた人々が実際の基金を立ち上げたり、アフリカへ赴いたりと数多くの人々の行動へと繋がっているところだ。まさに小説の中の航一郎や木場くんのように一人の人間がこうも組織や世の中を変えるのかという見本だと思う。

    本作で描かれている高潔で純粋な魂のリレー。読者の私たちもほんの少しでもそのバトンを受け継ぎたいと思う。

  • 映画を見てから本を読んだ。そのせいか航一郎さんは大沢たかおさんのままだったけれど、良い効果は有ってもけして邪魔をしなかった。崇高な志を持ち、敬遠される危険な地で命をかけて医療に携わっている方々に心から敬意をはらいたい。そんな真摯な行動は多くの若者にも大きな影響を与え、バトンタッチされる事は素晴らしい。
    (2023.3.3 映画観賞)

  • アフリカで活躍した実在する日本人医師のフィクションの物語。
    東日本大震災と絡めてくる物語は所々が実話なので胸が苦しくなる…ちっとキレイ過ぎる物語だが涙腺が緩むし、人に優しくしたくなる物語。また、著者は医師には、こうあって欲しいと訴えているのだろうか…?

    まず、アフリカという異国の地の事も全く知らなかった…戦争や病気の事など…知らない事が沢山あった…ここに行く全世界の医師や、なにも知らなくても極限の中に再度身を投げ出す医師は、医師たる認識が絶対的違うと思う。
    私も経験ある。よく聞く話だが病院に行って五分で診察終り、質問するとこうだと断定する医師、顔を見ないで話す医師、この物語でもあるように、見下している事が多々ある。そんな態度だと、治ってないし…治してみろ!!と言いたくなる時が多々ある!

    私達は医師に対して恐縮する事があるが治してて欲しいから、謙虚な態度というのがわかってない。普通の企業だったら超クレームものです。
    勿論そんな医師じゃない人も私は知っている。その様な医師は、まず患者の話を真剣に聞いていると思う。病は気からって言葉があるけど、言葉を聞きちゃんと説明して不安を取り除くのも医師の仕事だと…思った事がある。この物語でもそんな事が、書かれていたので共感した。

    この本で書かれている言葉…
    「笑わなきゃ人間じゃない。笑うのは人間の特権なんだ!」
    これって、人間にとって一番の特効薬な気がした。この物語の医師と、震災地の避難所の男性に常に暖かく、笑っていたと思う。
    最後に。
    キレイ過ぎる本も、読書の心を浮き彫りにする事も学んで本だなーお思いました。

  • やはり作家さだまさしは最高だ。
    読後、曲を聴いてまた泣いてしまった。

  • ケニアの戦傷病院と孤児保護院に命を捧げた日本人医師(島田航一郎)、その彼と関わった人々の回想を交えて語られる物語に身悶えを覚え、読み終えるまでに幾度も込みあげてやみませんでした。未曾有の大災害(2011.3.11)のなかで、航一郎に救われ成長したケニア人医師(ミケ・コイチロ)と避難所のリ-ダ-、震災孤児との出会い、命を育む絆のドラマに改めて深い感動を覚えました。航一郎の言葉〝誰かのせいにしなきゃ耐えられない悲しみってあるんだよ〟 航一郎の手紙〝お願いだからしあわせになってください〟


  • 年始の「生さだ」で聴いた曲。読んでみて、ケニアの某病院の現状は若かりし日、研修で度々登場していた事を懐かしく思い出し、この作品にご縁を感じました。島田医師の人として、医師としての高い志に胸を打たれました。そしてそれが時間と場所を越えて伝えられていく事に感動しました。 人として大切なことは何なのか深く考えさせられました。

  • さだまさしさんの本を初めて読みました。作詞、作曲、歌手、俳優、監督、トーク、そして小説も書く!天は二物も三物もこの人に与えてるんだなぁと思いました。「ガンバレ」は人に言う言葉ではなく「自分を叱咤するときの言葉なのだ」航一郎のバトンはンドゥングへあつおへと渡されていく。終始涙がとまりませんでした。★の数が5個ではたりません。是非とも読んでいただきたいです。また、さだまさしさんにこの作品を書くことを懇願した大沢たかおさん主演の映画も見たくなりました。

    • shukawabestさん
      わかった、わかった、読みますよお。特に中学時代は、音楽といえば、さだまさしとYMOのことしか頭になかったもので。1か月1,000円の小遣いを...
      わかった、わかった、読みますよお。特に中学時代は、音楽といえば、さだまさしとYMOのことしか頭になかったもので。1か月1,000円の小遣いを3か月溜めて、「帰去来」、「風見鶏」、「私花集」、「夢供養」、「印象派」、「うつろひ」とミュージックテープを買って、「夢の轍」からは買っていませんが、今はカセットデッキに入れて、テープが絡まる恐怖感があり、30年くらい、まともにさだまさしを聴いていません。
      僕は本作は読んでませんが、かつての僕が、曲を聴いて感動していたような感動が味わえるような気がしています。

      でも、読むのはかなり先になるよ。
      僕にも、読みたい本が本当にいっぱいあるので。

      サンキューにブクログを紹介されてから、本漬けになってしまった。

      老眼やめんどくささで遠ざかっていた読書の楽しみが約20年ぶりに戻ってきてるよ。

      今度会うの、楽しみにしてる。会話するだろうけど、酔っぱらって記憶には残らないと思うけど、少々、おつきあいくだされ。
      2022/06/14
    • shukawabestさん
      読み終わった。
      いい本だった。
      何度も泣いてしまった。
      ありがとう。
      読み終わった。
      いい本だった。
      何度も泣いてしまった。
      ありがとう。
      2022/07/18
  • 震災直後の石巻にやっとの思いで到着したンドゥングが目にした光景は、彼が子供の頃に体験した空爆よりも酷いものだった。彼が大好きだった航一郎の祖国で、ンドゥングから、そしてさらに次の世代へと命のバトンが引き継がれていく。この物語には実際にケニアの診療所で医療に従事されていた医師のモデルがいるそうで、そのことがいっそう作品のリアリティを高めて読者に感動を与えるのだと思う。

    • momchapさん
      はじめまして。
      わたしもこの本、好きです(*^^*)
      元はさだまさしの同名の歌が好きだったからです♪( ´θ`)
      映画も見ましたが、本の方が...
      はじめまして。
      わたしもこの本、好きです(*^^*)
      元はさだまさしの同名の歌が好きだったからです♪( ´θ`)
      映画も見ましたが、本の方がやはり細かいところまで想像できるので、よかったです。
      でも震災から復興とは名ばかりの今の状態では、ンドゥングの部分は映像化は難しかったのでしょうね。
      2019/04/03
    • 月の栞さん
      momchapさん、コメントありがとうございます。確かに映画より本の方が伝わって来ますよね。さだまさしの本はわりと好きで、「解夏」や「眉山」...
      momchapさん、コメントありがとうございます。確かに映画より本の方が伝わって来ますよね。さだまさしの本はわりと好きで、「解夏」や「眉山」なんかもお気に入りです。
      2019/04/03
  • 映画を見て、元の小説はどのようなものなのだろうと思って読んだ。

    映画では時系列に沿って話が展開されていたが、小説では日本(現在)→ケニア(過去)→日本(現在)と、過去と現在を対照化させ、過去では子供だった登場人物も大人になるなど、人々の成長や別れを描いており、心温まる話になっていると思う。

    また、この本には日頃私達がよく使うであろう、頑張れという言葉の独自の使い方が書かれており、これからはその意味でも使っていこうと思うようになった。

    一読しておけば、今後の人生、考え方に少なからず良い影響を与えてくれるかもしれない。

    幻冬舎 さだまさし著
    5月9日2回目チャンプ本
    徳島大学蔵本2階中央閲覧室所蔵
    請求記号 913.6 sa
    マッケン

    • tokudaidokusho2さん
      頑張れ、という言葉をどんな意味で使っているのかが気になったので、読みたいと思いました。また、映画もあるということで、合わせて見てみたいです。...
      頑張れ、という言葉をどんな意味で使っているのかが気になったので、読みたいと思いました。また、映画もあるということで、合わせて見てみたいです。
      えかんあけ
      2018/05/30
    • tokudaidokusho2さん
      映画化もされており前から少し気になっていたのですが、評価を見て私も心温まりたいなと思いました。
      ゆたたゆ
      映画化もされており前から少し気になっていたのですが、評価を見て私も心温まりたいなと思いました。
      ゆたたゆ
      2018/05/30
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著者プロフィール

一九五二年長崎市生まれ。シンガーソングライター。二〇〇一年、初小説『精霊流し』がベストセラーとなる。『精霊流し』をはじめ、『解夏』『眉山』アントキノイノチ』『風に立つライオン』はいずれも映画化され、ベストセラーとなる。その他の小説に『はかぼんさん―空蝉風土記』『かすていら』ラストレター』『銀河食堂の夜』など。

「2021年 『緊急事態宣言の夜に ボクたちの新型コロナ戦記2020』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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