七十歳死亡法案、可決 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344423053

作品紹介・あらすじ

高齢者が国民の三割を超え、破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法案」を強行採決。施行まで二年、宝田東洋子は喜びを噛み締めていた。我侭放題の義母の介護に追われた十五年間。能天気な夫、引きこもりの息子、無関心な娘とみな勝手ばかり。やっとお義母さんが死んでくれる。東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。すぐそこに迫る現実を描く衝撃作!

感想・レビュー・書評

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  • そろそろ該当年齢に近づこうかという読み手にとっては、その刺激的なタイトルに、思わず引き付けられてしまう(笑)。
    日本人は七十歳で死ぬことになるという「七十歳死亡法案」が可決され、その施行が2年後に控える日本。しかし、ここでの主要なテーマは、法案よりも主婦の家事だろう。介護問題に、ひきこもり、ブラック企業も俎上に載せられる。
    姑の介護を一手に引き受けている主婦が、主人公。
    介護されている姑はわがままで感謝の気持ちもない、夫は自己中で家庭のことは妻に任せきり、息子は就職で失敗し引きこもり、娘は自由を求めて家を出て一人暮らし。
    そんな家族に愛想をつかし、主婦は家出。
    それがきっかけで残された家族は・・・
    著者は、深刻で悲惨なテーマをユーモアで包み込む明るい筆致で、読後感の良い物語に仕上げている。

  • ものすごくインパクトのあるタイトル!

    垣谷美雨さん。
    まだ8冊しか読んでいないけれど、好きな作家さん。
    インパクトのあるタイトルの本、そんな設定あり?と思う本、熱い本、等々。
    面白い!

    今まで読んだ本は(読了順)
    1.リセット
    2.あなたの人生、片付けます
    3.結婚相手は抽選で
    4.if さよならが言えない理由
    5.あなたのゼイ肉、落とします
    6.農ガール、農ライフ
    7.老後の資金がありません

    そして、【七十歳死亡法案、可決】
    実はこの本、かなり前に古本屋さんで手に入れていました。
    が、
    なかなか読む気持ちになれずにいました。
    最近、ようやく気持ちが落ち着いてきたのでしょうね。
    気が付けば、読み始めていましたから…


    2020年2月、『七十歳死亡法案』が可決された。
    これにより日本国籍を有する者は誰しも七十歳の誕生日から30日以内に死ななければならなくなった。
    例外は皇族だけ。
    施行は2年後の4月1日。

    冒頭に、法案可決の週刊誌記事。
    ものずごい設定だ、と驚きつつ読み始める。

    84歳の義母を自宅でたった一人で介護する東洋子(とよこ)55歳。
    58歳の夫。
    一人暮らしをする長女、引きこもりの長男。

    この家族が直面する問題。
    2年後の法案施行に向け、5人の心には変化が。

    タイトルから想像していた内容とは違った。
    少子高齢化問題、介護問題だけでなく、家族の問題、就職難やブラック企業等々、現代の生きにくさが描かれている。
    そして、70歳と言っても、誰一人として同じ状況の人はいない。

    絶望的な未来を暗示するかのようなタイトルの小説だけど…
    ラストはちょっと違う。
    良かった。
    まだまだ未来は変えられる!

    『七十歳死亡法案』
    現実ではこんなバカげた法律はあり得ないけれど…
    自分自身のこをちょっと考えさせられた。

    著者の垣谷さんは1959年生まれ。
    この本は2012年に出版された。
    すごいテーマの小説に挑戦されたのですねぇ…

  • 垣谷さんの本は2冊目。
    この本、凄く面白かった。タイトルが過激すぎてカバーをかけなければ読めないが、いろんな世代の人に読んでほしい!
    両親の現在、自分の老後を考えている今、これほど共感して読んだ本はここ最近なかった気がする。七十歳以降の生死を選択できたらなあ!と思いながら、あっという間に読み終えてしまった。前向きなラストでちょっと戸惑ったが(笑)いささかホッとしてる自分がいる。元気なら…元気なら長生きしたい!でも、もしも寝たきりだったら…。いろいろ考えさせられた。

  • 最初読んだときは、「百年法」と、「火の粉」の嫁姑部分を足したような話だな、と思ってました。
    ちょっと違ったけど。

    「百年法」はすでに施行されてからの話だったけど こちらは施行されるまであと2年の時。

    70歳死亡法案だとしたら、私の父はいま71なのでもうダメだ。
    だとしたらこんな法案受け入れたくない……と思うけど、義父母もその案でいくと……?と考えると、なかなかいい案じゃないの、なーんて思ってしまう。

    でも確かに、ここまで思いきった法案を出したら、みんなよく考えて世の中ちょっとはよくなるかもな。

  • 七十歳になると死亡しなきゃいけないという法律が可決され、2年後に施行される事になった日本。
    その法律により、それまでとは意識の変わった一家を描いた本。
    宝田一家は、大手企業に勤める父親、専業主婦の母親、寝たきりの祖母、ニートの息子、自活している娘という家族構成。
    その中で、寝たきりの祖母の面倒をみるのは母親の役目。
    夫も家に一日中いる息子も介護を手伝う事はない。
    一時は娘にも介護を手伝って欲しいと願うも、彼女は家を出てしまい、今はヘルパーの仕事をしている。
    そんな一家は、七十歳になると死亡するという法案により、その施行を2年後に控え、祖母はあと2年で死ぬのだからと投げやりになり、夫は会社を早期退職し、親友と世界旅行に出た。
    2年後の死を前に、祖母は実の娘たちに遺産を贈与しようとするが、その際の彼女たちとその夫の態度により、すぐに贈与するのを見合わせる。
    法案が通るまでは嫁に気を遣っていた祖母は嫁にきつくあたるようになり、今や息子のいない時は呼び捨て。
    夜中も平気で呼びつける。
    そんな姑の介護や勝手な夫、小姑たちに腹を立て、ついに妻は家を出るー。

    こういう風にあらすじを書くと、ヘビーな内容かと思うけど、実際読んでみるとそんな事はない。
    こんな重いテーマなのに、軽くさらっと読めた。
    もちろん、こんな法案は絶対に現実的にありえない話だから・・・というのもあるけど、それを踏まえつつも現実的に書いてある。
    現実味のある話だし、文章だけど、それを軽妙に書いてあるな~と思った。

    この話のあらすじを見ても分かるように、嫁の周囲・・・特に夫の能天気さにはあきれる。
    彼女がいなくなって初めて存在のありがたみに気づく訳だけど、いないならいないなりに何とかしようと考えて行動するようにはなっている。
    それなら嫁がいる時にそうしろ、と思うけど、そうはならないんだよな・・・と思う。
    一度本当にいなくならないと分からない。
    それなら、ちゃんと嫁がガマンするだけじゃなく、こうして欲しいという要求をしたり、自分の考えを素直に言えばよかった・・・と言うと、それでは彼らは変われなかったと思う。
    ただ、彼らは救いようもないほどの悪人だとかいうのでなく、普通の人々で可愛げもある。
    その辺がリアルだな・・・と思う。

    まあ、後半の展開や結末は少しご都合主義かなと思ったけど、それはそれで読後感が良かった。
    読みやすくて、深刻になりすぎずにすぐに読み切った。

  • 人生100歳という時代に、このタイトルの本を手に取ってしまった。
    破綻寸船の政府が打ち出した法案。
    施行まであと2年。
    宝田家の東洋子の義母は、ベッド生活で、我儘放題、何かあると、すぐに、東洋子を呼ぶ。
    夫は、母の面倒も見ずに、仕事一途で、家庭の事は東洋子任せ。
    息子は、難関の大学から、エリートコースの会社に就職したのだが、やめてしまい、引きこもりのニート。
    娘も、祖母の介護や、家庭の事で縛られたくなく、家を出てしまう。

    さてさて、頭と、口はしっかりとしている義母は、昔人間で、家に、赤の他人が入って自分の世話をしてもらいたくないと、来る。

    もう、必要とされなくなった高齢者は、70歳で、この世から去って欲しいと願いたくなる位、介護をする方は、大変であり、まして、1人で担うなら、自分の自由の時間が無くなる。

    そして、自由奔放の家族、父親は、仕事から解放されたら、海外旅行の夢、、、を実現したいと、、、
    今まで、苦労させた妻と一緒にでなく、友人と共に、、、と言われた東洋子の気持ちは、、、どれほどの落胆であろう。
    自分の肉親でなく、義母である。

    実の娘たちは、遺産相続の話なら、飛んでくるのだが、介護の話だと、パートがあるから、、と、断る。

    息子も甘えがあり、自分の部屋に、食事を持ってきてもらうのを当たり前としている。

    皆それぞれ、理由があるのだが、、、、

    我儘だけを通して、通用しない。
    未だ、義母が、ボケていなし、皆家族が、協力的に、介護やリホーム出来る算段があるから、この小説は、丸く収まってくれて、ほっとするのだが、、、そうでないと、修羅場であろう。

    昔は、60歳を超える人が少なかった時に、年金積立が、どんなにありがたいか、、、と考える事もなかったが、今は、100歳の人が、沢山生存できる時代。

    年金も65歳からでなく68歳では、、、との案も出ているみたいだ。

    さてさて、今後政府がどのような法案を打ち出の小づちのように出していくか、、、、
    今本で、少し、読書三昧出来る我が身が、とてつもなく贅沢しているみたいに思えた。

  • 何とも過激なタイトル。
    かなり荒治療な政策だけれども、馬飼野総理の逞しさには感服。
    親の立場で自分の子供の事を思うと、世話にならず逝きたいなぁと思うけれど、子供の立場から親を思うと
    やはり長く一緒に居たいと思う矛盾。

    しかし、男性群のダメっぷりが酷すぎて笑えてくる。

  • 高齢化社会、引きこもりの若者、ブラック企業…。
    今の社会の問題そのもの。
    一人の主婦がなぜこんなに苦労を背負わなきゃいけないんだろう。
    逃げ出してようやく周りがその重荷について考え始め動き出しても、それは東洋子の為では無く降りかかってきた自分を守る為。
    家庭での介護には限界がある。
    みんな誰かの助けが必要だし、助けを求める声をあげる事も必要だと思う。

  • 想像でしかないけれど、介護されるということは、人として何かを捨てることなのかもしれない。
    誰かの手助けがなければ生きていけない。
    それはとても悔しいし、情けない思いをするのではないだろうか。
    だからといって、それを介護する人にぶつけるのも間違っているような気がする。
    感謝の気持ちがあればこそ、互いにいろいろな我慢ができるのでは?とも思う。
    家族だから、余計に我儘も出るし、取り繕った対応は出来ない。
    感情のぶつかり合いは、誰も得るものがないような気もするのだけれど・・・。
    健康で自分のことが自分で出来る。
    何でもないことのようだが、そんな当たり前のことが一番の幸せなんじゃないだろうかと思った。
    実際に介護している人たちは、きっと作品に描かれている以上の厳しさに直面しているのだろうな。
    そう考えると、能天気すぎる夫の態度はちょっとムカつく。
    能天気にもほどがあるだろ!と。

  • 『七十歳死亡法案、可決』 垣谷 美雨 幻冬社文庫

    第一章のタイトルが、いきなり「早く死んでほしい」!
    ページをめくると時は2010年、「七十歳死亡法案」の可決と解説の雑誌記事の抜粋が。

    「日本国籍を有する者は誰しも七十歳の誕生日から30日以内に死ななければならない。」例外は皇族だけ、政府は国民に安楽死の方法を数種類用意する方針だと言う。
    予想を上回る少子高齢化で、年金制度は崩壊し、医療費はパンク寸前、介護保険制度に至っては財源が追いつかなくなっている。それがこの法案を施行することで、一挙解決する予定。

    例えチラリと心で思っても、表立って口には出せない事が、5年後のこの国では法案施行初年度、次年度の死亡者数まで政府が試算して、大真面目に語られている。勿論この法案が世界中から非難を浴び、人権侵害の最たる物と糾弾されている事も書かれてはいるが…。不穏だ。

    しかし、「本来ならば喜ばしいはずの長寿が、国の財政を圧迫する原因となっただけでなく、介護する家族の人生を台無しにするような側面があることは今や誰も否めない」と詰め寄られれば、今の日本の状況が、あと5年経たなくても既にそうだとしか言えない。

    そんな穏やかでは無いタイトルと始まり方の本書であるが、実は内容は介護家庭あるあるの、人間ドラマ。面白くて一気に読めてしまった。寝たきりの84歳の菊乃を抱える「宝田家」の人々を通して法案可決後の市井の人々や一家庭の姿を重すぎず、軽快に書いていく作者の力は凄い。

    介護負担が嫁にだけ被せられる現実、遺産の話には飛んでくるが後は知らん顔の親戚、引きこもりの息子、家に寄り付かない娘、仕事人間で信じられないぐらい鈍くて自己中心的な夫、それぞれの立場からの本音が語られる。勿論あと二年で死ななくてはならない菊乃の本音も。
    特に全てを背負い込んで介護に縛られる嫁の東洋子が、法案施行で奴隷の様な日々が終わるのをひたすら待つ姿は不憫を通り越してイライラするほどだ。

    若者の雇用実態や、病院では元気に回復していたのに、老人施設に入れられ、胃瘻と気管切開で、ただ生きているだけの老人の姿も書かれ、自分の経験から身につまされる部分もあった。
    そして、余りの家族の非協力と夫の脳天気な自己中、義母の我儘に遂に東洋子がキレて家出を決行する辺りから話はどんどん動き始め…。

    この中に出てくる人物で、最も現実的で生き生きしているのが離婚して一人暮らしをしているある女性と、独身を通して仕事をしている東洋子の同級生だと言うのもちょっと考えさせられた。

    さて…法案は施行されるのか、「宝田家」に明日は来るのか?それは読んでのお楽しみ。

     

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プロフィール

一九五九年兵庫県生まれ。ソフトウェア会社勤務を経て、二〇〇五年『竜巻ガール』で小説推理新人賞を受賞し、デビュー。テレビドラマ化された『リセット』『夫のカノジョ』の他に、『ニュータウンは黄昏れて』『あなたの人生、片づけます』『子育てはもう卒業します』『避難所』『農ガール、農ライフ』『あなたのゼイ肉、落とします』『嫁をやめる日』『後悔病棟』『女たちの避難所』など著作多数。

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