夢を売る男 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 2664
感想 : 255
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344423190

作品紹介・あらすじ

輝かしい自分史を残したい団塊世代の男。スティーブ・ジョブズに憧れるフリーター。自慢の教育論を発表したい主婦。本の出版を夢見る彼らに丸栄社の敏腕編集長・牛河原は「いつもの提案」を持ちかける。「現代では、夢を見るには金がいるんだ」。牛河原がそう嘯くビジネスの中身とは。現代人のいびつな欲望を抉り出す、笑いと涙の傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 丸栄社の牛河原部長の饒舌なトークに、何が真実で何が詐欺か分からなくなります。オークションで、驚くような高価な値段で売れるように、その人その人の価値観が重要で、多少なりとも満足度の高い丸栄社やり方は正当な道でしょうか?

  • まさに、出版社にある問題点をうまく汲み取っている作品だなと思いました。

    読みながら、笑いが止まらなかったです。

  • 読めば読むほど、正当な商売に思えてきて、主人公の巧妙な話術に惚れ惚れした!


    ラストのスパーっとした決断力にはちょっと感動してしまった!!

  • 本当に存在していた、新風舎という出版社をモデルに、出版業界について書かれた小説。

    百田さんの小説は、現実の出来事を織り交ぜながら、面白おかしくそれを批判や暴露していくので、読んでいてすごく面白い。

    最初は主人公、牛河原の仕事が、調子のいいことを言って素人のカモをその気にさせてお金をぼったくる、詐欺のような仕事だという悪い印象を受ける。

    だが、段々と自己顕示欲を満たしたいカモと、利益を出したい出版社がWinWinの関係になれているのを見ると、“夢を売っている“というにも納得してくる。

    そして最後1行が物語っている、一線を越えない牛河原の姿勢を見て、“善いこと“とは、“善いビジネス“とは何だろうかと考えさせられる。

    また、百田さんの面白いところで、この作品でも様々なところで毒を吐いている。
    例を挙げると、 
    ・本を出版したい素人
    ・小説出版社
    ・有名文学賞
    ・純文学
    ・書評家
    など。そこもこの本の魅力。


    以下、メモ
    ・君はやればできる子なんだから、という言葉を使っていいのはら一度でも何かをやり遂げた人間だけだ

    ・出版社の編集者に褒められて、疑う親はまずいない。親というのは、どんなに出来の悪い子供でも、本当は素晴らしいところがあるんじゃないかと信じているからな。

    ・たかが千部の本なんか数十万円で作れるのを、世間の人は知らないんですね。

    ・賞を取れるかどうかわからない長編小説を最後まで書き切るという人間は、自分の作品を傑作と信じてる。だから傑作だと言ってやれば、疑う人間はいない。ああ、やっとわかってくれる人がいた、と心から喜ぶ。それを嘘かもしれないと疑う冷静な人間なら、そもそも小説なんか書かない。

    ・悔いは歳がいけばいくほど、大きくなっていくに違いない。中年になって、そんな後悔を引きずって生きたくない。やらないで後悔するよりやって後悔するほうがずっといい。

    ・根拠のない自信を持っている若者をその気にさせるのは簡単なもんだ。自分はやればできる男だ、と思っているからな。自尊心にエサをつけな釣り糸を垂らしてやれば、すぐに食いつく。

    ・後世に残る作家というのは、常に新しい読者を生み出す小説が書ける作家だ。たいていの作家は、ある世代の人たちに熱狂的に受け入れられても、その世代が消えたらお終いだ。

    ・いい文章とは、読みやすくてわかりやすい文章

    ・書評家や文学かぶれの人が言う文学的な文章とは、比喩のこと。日本の文学界には、主人公の心情を、事物や風景や現象や色彩に喩えて書くのが文学的と思っている先生たちが多い。

    ・純文学には、暗喩とか隠喩と言われるメタファーが含まれることが多い。ある事象を描きながら、実は別のあることを表現しているといったもの。文学的な素養に溢れたレベルの高い読み手が、じっくり考えた末にやっとわかるくらいの難しさが必要で、此の難易度が高いほど高度な作品と言われる。

    ・本を出したいという人間は減らない。いや、これからの社会ではそういう人間はどんどん増えていく。皆、自分は本を読まないのに、自分の書いたものは読んでほしいのだ。


    by.牛河原と荒木の会話
    ・大事なことはカモを逃さないことだ
    ・編集者の仕事は客に夢を売る仕事だ
    ・この商売は一種のカウンセリングの役目も果たしてるんだよ
    ・ジョイント・プレスは、完全無欠のビジネス
    ・(文学賞の過半数以上が自社出版本の現実について)結局は金なんだ

    一方で・・

    ・部下の編集者がどうしてもこれを出したい、何が何でも出したい、そう言ってきた本なら必ずしも出した。それが俺の編集者としての矜持だった。



  • 読む前は「眠る時見る夢」を売る不思議な話かな
    と、思っていたら
    人間の欲望の夢を食い物にして儲けている詐欺紛いの出版社の話
    と、思ったら
    昨今の書籍世界の状況などに深く切り込んだ話であった

    牛河原のちょいワルでユーモラスなキャラクターが魅力的
    最初は「こいつワルいやつじゃん!」って思ってたら実は…的な、ありがちなギャップだけど最後には牛河原を好きになってしまう

    出版情勢や牛河原の考えなど説明的な部分を大体部下の荒木との会話で表現している
    荒木は出版社の人間であるけども入って日が浅く、出版の深いところを知らないというところでは我々読者と近い視点を持った存在であると言えるので
    まるで私たち読者が牛河原に話しかけられている気分になる

    綺麗事だけでは世界は回らない
    夢を見るにも金がいる
    けど、それだけが全てじゃない

  • どこまで本当で、どこまでが嘘なのか分からなくて怖かった。日本人ほど自分を知って欲しいという願望が強いのはいないと思った。牛河原さんの話のテクニック、尊敬する!欲しい。

  • 読書好きに「出版業界の裏がわかるし、なかなか強烈でおもしろい」と薦められて読んだ。

    ほんとに強烈。
    丸栄出版に勤める牛河原という男が主人公。ジョイントプレスをメインに扱う出版社で、こういう形態の出版社が実際にあることを初めて知った。
    牛河原は出版、本、作家のことをひたすらこき下ろす。
    出版不況の最中、売れない本を出し続けるのは馬鹿だ…
    といった感じ。
    作家や小説の現実を突きつけてくる小説って矛盾してる〜と思うが、この作品は牛河原も認める「売れる小説、おもしろい小説」だから、出版する意味があるのだと思う。
    百田さんは売れる自信をもって書いているんだろうと思うと、清々しいし、才能のある人にしか書けないブラックユーモア。

  • 初・百田作品。

    ジョイントプレスという形で利益をあげる出版社の編集部長を務める牛河原を主人公(?)とした短編集。

    冒頭の作品を読み進める内に牛河原が勤める丸栄社が、あまり誠意ある出版社ではないことが分かります。

    ところが、決して誉められない事業を行っているはずの丸英社と牛河原を何故だか応援したくなる気持ちが
    徐々に生まれてきてしまう、奇妙な魅力がこの作品にはあります。

    なぜかって?
    それは是非一度読んでいただきたいとおもいます。

    さて、百田作品は初ですが、著者はとても頭のいい人なのだろうという印象を受けました。
    言葉の選び方や、文体からそれを感じます。

    著者本人は、とても語彙力がある方だと思いますが、
    難しい言葉だらけにせず、けれど読み手を選ぶかのように、一定の水準以上の言い回しをされているー。そんな印象です。

    さて、他の作品を読んだらどのように感想が変わるのか。それを楽しみに、またこの著者の作品を手にしてみたいと思いました。

    2014年6冊目。

  • 出版業会の現実が(多少の誇張はあるのかもしれないが)赤裸々に書いてある。
    自分自身、割と本を読む方だが、大半は図書館で借りていて、(住民税を納めて、市の図書館経由で購入する、という超超間接的な形でしか)出版業界には貢献できていない、対価を支払っていない、という点、自覚はしているので、心苦しかった。
    この点、東野圭吾さんが以前問題視されている文章を何度か目にした。

    さておき、作中の登場人物は、いずれも、『あー、いそう』と思える人たち。特にジョブズに憧れるだけで何もしない能書垂れの若者。

    ラストシーンで、主人公の牛河原編集部長が全額会社費用でおばあさんの文章のの文庫化にゴーサインを出す場面は、何かカッコよかった。

  • こんなビジネスがあったのかと驚くと同時に、人間の本能を上手くついているなあと感心しました。
    それにしても、最後の最後にきちんと落とし所を作ってくれているところか嬉しくなります。

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著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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