明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.70
  • (10)
  • (28)
  • (22)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 258
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344423824

作品紹介・あらすじ

ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。それは幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。しかし、落雷とともに訪れた長男の死をきっかけに、母がアルコール依存症となり、一家の姿は激変する。「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう」。絶望から再生した温かい家族たちが語りだす、喪失から始まる愛惜の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • それぞれが違う形で前のパートナーをなくした男女が再婚し、お互いの連れ子合わせて三人と、新しく出来た一人の子どもで、合計六人の家族が出来上がった。
    素敵な家に移り住み、家族仲も良好で、素晴らしいスタートを切る。それは幸せな人生づくりの完璧な再出発かと思われた。
    しかし落雷が原因の長男の死をきっかけに、長男を溺愛していた母がアルコール依存症となり、一家の姿は激変する。

    家族だからと言って何でも遠慮なしに振る舞って良いわけではなくて、むしろ家族だからこそお互いが少しずつ我慢をしたり役割を演じたりしてどうにか家族というものは形成されていく。
    この本を読む以前から思っていたことが、この本を読んでますます深まったように思う。

    突然不在になってしまった長男の存在が、長きに渡って家族たちに影響を与え続ける。
    見える形で壊れてしまった母親はある意味では一番幸せで、あまりにも出来過ぎたヒーローのような存在だった長男の夭逝は、兄弟たちを様々な形で苦しめる。家族内でも、そして学校でも。
    人間は必ずいつか死ぬのだから、死というものは全く特別なものではない。だけど幼い頃に兄をなくしてそれぞれに苦しんだ兄弟たちは、死に対して偏った思いを抱くようになっていく。

    大切な人の死を、時間をかけて昇華して、自分を取り戻していくということ。
    それを放棄してしまった母親に振り回され続けた家族が、長い時間の後にした選択は、けして前向きではなく切なく見えたけれど、それが長い時間をかけて流れ着いた場所なのだと思った。出来うる限りの、最良の選択。
    そして最後のページで驚きが。

    長女、次男、次女、そしてみんな。という視点で綴られた四章の短編連作。
    長男の死や家族に対するそれぞれの思いと苦しみ。人間の黒い面や綺麗事では済まされない部分もたくさん描かれていて、山田詠美さんの小説の中に垣間見える哲学は今回も健在。
    「かわいそうという言葉は、言われる側に言ってもらいたい人を選ぶ権利がある。決して自分のプライドを傷付けない、と信じている人にだけ言われたい」という次男の言葉が印象的だった。
    上から目線ではなく心から人を「かわいそう」と思える人は、果たしてどれくらいいるのだろう。

  • 父と母が再婚して作られた新しい家庭。
    そこから作り出される幸せと不幸。
    長男の死をきっかけに、その不幸の色が濃くなってゆく。
    しかし、そこには血の繋がりを感じさせない結び付きも生み出した。
    本来、強いイメージを持つ母親という存在の脆さが際立つ作品に、心に寂しさを誘う。

    2016.10.30

  • 家族は血が繋がった他人だということ。
    血が繋がっているから感じる温かさと
    血が繋がっているから感じる残酷さ。

    血が繋がっていないから努力する儚さ。

    夫婦は他人が家族になること。
    他人というは、変わらない事実。

    同居する2つの家族。
    壊れたものを直そうとする様、温かく苦しい。

  • すごく久し振りに山田詠美の本を読んだ。
    あーそうそう、こういう感じ!って思い出す。
    らしい本だと思った。
    創作自体読むのが久し振りだけど、最後まで読めた。

  • 面白かった。長男が亡くなって、その喪失を埋めることが出来ない母や、それをフォローする家族たち。
    面白くて最後は一気読みをしてしまった。1人の死を他人事とみるか他人事と見るかで、受け取り方が違うんだけれど、絶妙に文章が書かれていて、引き込まれた。

  • 数年ぶりに読み返したらあらすじボヤッとしか覚えてなく新鮮に読めて、すごく良かった
    うまいの一言に尽きる。小説って技術が要るけど、これ見よがしだったり、奇をてらいすぎるものが技術と評価されるのでは無い。無駄のない適切な言葉のチョイス、感情の機微に敏感な描写ことこそがそうなのだ、と再認識させられる

  • 血の繋がりとか、幸せとか不幸とか絆とか、家族ってなに?ということを考えた。
    子連れ同士で再婚し、新たに子供も生まれ、男女男女の四人兄弟になったのに、長男が雷に打たれて亡くなってから家族が壊れ始める。もともと『義理の』という枕詞がつくからか、気を使って必死に幸せに、家族になろうとしてたのに、お互いを思うが故に崩れていくのが、もどかしいし、愛おしかった。
    かわいそうというのは、言われる側に、言う側を選ぶ権利がある、っていうの、分かるなぁ!

  • 終わり方が…。
    中盤までおもしろかったのに、残念。

  • ドキッとするタイトル。普段、意識的に考えないようにしていることです。考えてしまうと、恐怖に覆われて頭がおかしくなってしまいそうだから。

    ある日突然、落雷で長男を喪った澄川家。
    同じ家族でも、故人に対する想いの形は違うもの。違うなかでどうやって死を乗り越えていくのか。
    重い話ではありますが、ページを捲る手が止まりませんでした。
    最後のからくりには全く気付かずびっくり。泣きそうになりました。

  • ポートランド旅行中に読んでいた。旅先という非日常で読んでいたせいもあるかもしれないけど、わりと現実にありそうな小説を書く(と思っている)山田詠美のなかでは珍しく、現実っぽいんだけどどこか別世界の物語のようでもあり。

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

山田 詠美(やまだ えいみ)
1959年、東京生まれ。明治大学文学部中退。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。同作品は芥川賞候補にもなり、衝撃的なデビューを飾る。87年には『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞受賞。89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年 『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16「生鮮てるてる坊主」で川端賞を受賞している。その他の著書に『無銭優雅』『学問』『タイニー・ストーリーズ』『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』などがある。

明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち (幻冬舎文庫)のその他の作品

山田詠美の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
又吉 直樹
山田 詠美
西 加奈子
朝井 リョウ
西 加奈子
山田 詠美
宮下 奈都
有効な右矢印 無効な右矢印

明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち (幻冬舎文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする