- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344424227
作品紹介・あらすじ
父母の故郷天草の雑煮、今はなき三浦屋のレバカツ、母にねだった塩おにぎり、少年期の大好物焼き蓮根、自ら絶品と称した手製の豚ロース鍋…。食を通じて蘇る記憶はどれも鮮やかに「家族の日常」を浮かび上がらせる。あわせて、長女・ハルノ宵子が愛情とユーモア溢れる筆致で晩年の父の姿を瑞々しく綴る。胸と胃袋を打つ、珠玉の食エッセイ。
感想・レビュー・書評
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ハルノさんの容赦ない、そして愛に満ちた文章が胸を打つ。平松洋子さんの解説もいつにもましてキレッキレ。隆明さんの文章は、病気と老いを抱えている時期とあって、少し息切れしている感じだった(それもまたファンにとっては新たな一面という意味でたまらないのでは)。
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思想でも、文芸批評でも、状況論でも、五十年間出ずっぱりで、巨人だのカリスマだの、でも死んじゃった、吉本隆明の、最後の著作かも。まあ、誰でも死んじゃうんですが。ほとんど要介護老人のわがままと、食いしん坊と、家族のヤレヤレ感がなかなか良い。吉本って、最初の頃から、貧乏生活の料理レシピを書いてたって知ってますか?
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吉本隆明さんと長女ハルノさんの食にまつわるエッセイ。
吉本さんは子どものころの食べ物の思い出を多く語り、最後の方では同じネタをだしたり食とは関係のない話題を載せていたり。そこをつっこむハルノさんはそうとう豪快な感じだ。
中でも笑ったのが、締め切りを抱えた漫画家のハルノさんは、亡くなった吉本さんの上にロックアイスを置き仕事にかかった。朝七時半に終わり、死んでる父に出来上がった原稿を見せ、その額を原稿でぺちぺち叩き2ショットの写メを撮ったという。
吉本さんは魚がお嫌い。「おれにはわからない何かが魚にはある」
これ、魚の部分を変えて、使えるなあ。
「信念はどこへいったのかと、嘆かわしくなる。良いことばかり言う集団や個人が増える社会は衰退していく。私はまず、私自身を”良いこと言いの悪癖”から切り離したい。」(211頁より)
ハルノさんのいうように、コロッケは男爵イモで作るのが一番だ。 -
「dancyu」連載だった食べ物の思い出をめぐる父親の文章+娘による補足的文章。最晩年で少しずつ記憶もあいまいになっていくなかで、食べ物の話題から幼年時代を回想したり、いまどきのお菓子におどろかされたり、というエッセイに対して、娘の方は執筆当時の父親の状況を説明したり、勘違いや間違いをつっこんだり、娘としてみてきた父母や家庭の思い出を語ったりと、それぞれの持ち味があるから、二度おいしい。それにしてもエキセントリックな一家だな。
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単行本の時から読みたくて仕方がなかった本。文庫になったので、購入。楽しく読めました。吉本隆明さんという方はもっと難しいことをたくさん書くようなイメージがあったのですが、エッセイという形だからか、読みやすくて驚きでした。ハルノ宵子さんの文章も非常に読みやすくて、他の作品も読みたくなってしまいました。
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吉本隆明さんの本は難しそうで読んだことがないという体たらく
エッセイも難しいのかなと思って、立ち読みしたら、読みやすい
そして、独特の考え方とユーモアが興味深く楽しい
ひとつひとつのエッセイをうけて、娘のハルノ宵子さんが
お父さまとの思い出などを書いているのがまた楽しく読める
ハルノ宵子さんは漫画家なので、ちょっと載っている絵もとてもいい