僕らのごはんは明日で待ってる (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 1393
レビュー : 145
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344424500

作品紹介・あらすじ

兄の死以来、人が死ぬ小説ばかりを読んで過ごす亮太。けれど高校最後の体育祭をきっかけに付き合い始めた天真爛漫な小春と過ごすうち、亮太の時間が動きはじめる。やがて家族となった二人。毎日一緒に美味しいごはんを食べ、幸せな未来を思い描いた矢先、小春の身に異変が。「神様は乗り越えられる試練しか与えない」亮太は小春を励ますが…。泣いて笑って温かい、優しい恋の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 親知らずという歯がある。人生50年と言われていた時代には、自分の子どものこの歯を見ることなく亡くなる親が多かったところからついた名前と言われている。平均寿命が長くなり子供時代に身近な人の死と接することが少なくなった現代。そんな時代に身近にいた兄を突然に亡くした弟は何を思うのか、何を背負うのか。物語はそんな背景から始まります。

    『兄貴が大好きで、兄貴のことを慕っていて、きっと兄貴のために一生懸命だった。でも、両親の愛情のほとんどを受けていた兄貴をうらやましく思う気持ちがないわけがなかった。そう思う自分に対する嫌悪感は底知れなかった。』兄の死は複雑な思いを弟に残しました。『まだ兄貴、高校二年だったんだよ。将来は消防士になりたいとか言って、キラキラしてたのに。』中学生だった弟には一つの憧れの存在でもあった兄。それは弟の中に『兄貴を失った空虚感だけが、気持ちの隅々まで埋め尽くしていた。』という状況を作り出し、どうにか気持ちを繋いで高校に入学しても、クラスの輪にも入らず、窓の外を見てたそがれる毎日を過ごすだけの日々を送ることになります。

    そんな時に体育祭で『ミラクルリレーの第三走者で米袋ジャンプ』を一緒に走ることになった上村。いつも一人の葉山を思いやっての心配りかと思いつつも彼女がかけた言葉は『そうだよね。葉山君、一年の時から、ずっと嫌われてるもんね』という辛辣なもの。でもここから二人の歩みは始まりました。

    何事も後ろ向きにしか考えられない葉山。『最初からなければ、素敵な思いも楽しい思いもできないけど、でも、なくなった時の悲しさも味わわなくてすむだろ。最初からなければ終わりが来ることもないんだから。』そんなことを言っていては何も始まりません。人との繋がりも生まれていきません。自分にはないものを持つ彼女。彼の中で何か気になる存在として彼の内に大きな部分を占めていく上村。兄の死の呪縛を乗り越えて、次第に明るさを取り戻し、上を向く葉山。上手いなぁと思ったのは、いつまで経っても二人の下の名前が明らかにならず、名字だけで繋いでいくところ。下の名前が出てくるのはずっと後半。下の名前は予想外の場面で突然に登場します。

    章が変わるごとにポンと少し時間が経過して、次の章では、前章の結果論の世界がまず描かれる形で物語はテンポ良く進んでいきます。作品によっては本来そこを描くだろうという部分が敢えて飛ばされるある意味独特なリズム感。瀬尾さんが描きたい部分はそこではないこともよくわかります。そして、作品は全部で4つの章から構成されていますが、見事なくらいに各章が『起・承・転・結』の役割を果たしていて、気持ちいいくらいにスッと体に入ってきます。

    瀬尾さんの作品では食事の風景が、それぞれの場面に強い印象を与えてくれます。『二人とも学生の時は、ケンタッキーやマクドナルドで食事をしていたけど、それがガストやココスになった。わずかなことだけど、少し大人になったような気がする』この作品ではファーストフード店のことがよく登場します。それが『転』となる第3章での自宅での食事場面と見事な対称を見せます。そしてとにかく全編に渡って『ごはん』が描かれていきます。それは葉山のちょっと豪華なお弁当であったり、それは大好きなはずの牡蠣が固くなって残る鍋の場面だったり、それは不知の病と闘う人に贈る八十種類ものふりかけだったり…。人が人である限り、私たちは『明日』も『ごはん』を食べるだろうことを特に意識したりはしません。『ごはん』を食べるということは日常を象徴するものでもあります。普通の日常が明日も続いてくれることを願って。『僕らのごはんは明日で待ってる』ことを信じて。

    離れて気付くお互いの存在の大きさ。『神様はなんだっけ、乗り越えられる試練しか与えないって言うからさ』という二人が乗り越えていく日常。『こんなふうに自分たちで未来を思いえがいて、それに自分たちで近づくことができる。そしてすぐそばにその未来が待っている…全部が全部思いどおりにはいかないだろうけど、それでも少しずつ形づくっていける。こういうのを幸せっていうんだ。』真っ平らな道は歩きやすいかもしれません。でも、人生だから山もあれば谷もある。起伏のない人生なんてない。思いどおりにいかないこともある。でも焦る必要はない。神様が時々与えてくれる試練を乗り越え前に進んでいく。そうそう試練なんてやってくるものじゃない。そして、その先にきっと乗り越えたから見える未来がある。起伏があったからこそ見える未来がある。

    人の繋がりがとてもあったかくて、優しく語りかけてくれるようにスッと気持ちの中に入ってくる、そんな作品でした。

  • 兄の死以来、人が死ぬ小説ばかりを読んで過ごす亮太。けれど高校最後の体育祭をきっかけに付き合い始めた天真爛漫な小春と過ごすうち、亮太の時間が動きはじめる。やがて家族となった二人。毎日一緒に美味しいごはんを食べ、幸せな未来を思い描いた矢先、小春の身に異変が。「神様は乗り越えられる試練しか与えない」亮太は小春を励ますが……。


    うわぁ・・・・
    いい小説でした。

    ホワホワとまったりし、
    ゲラゲラと大笑いしw
    ウルウルと涙し、
    簡単に読めてしまう一冊だったが、この短い時間の中で心のアップダウンが凄かった(*´▽`*)
    上がったり、下がったり、まったりのんびりしたり、ヒヤヒヤしたり。

    瀬尾先生の作品のキャラクターって、どうしてこんなにイイ人ばかりなのだろう。

    誰を見ても兎に角いい人。
    キャラクターが本当に素敵。

    たまたまブックオフで作者買いした作品だったが大当たり!!

    本当に良かった(*´▽`*)

  • (色々あるけど)普通の男女の恋愛(青春)小説。日常の描き方が上手だなぁと改めて思う。思っているだけでは伝わらない心を形にするということ...。前半は会話・コミュニケーションがダメダメな亮太が後半に進むにつれ、小気味いい返しをしているのが「うんうん、人との関わり方、成長したね」と嬉しくなる。終わり方もマジョリティに迎合しない感じで良。

  • 恋愛小説なのですが、剽軽で悲壮感はないけれど部分的に悲しくて、みんなの幸せを願いたくなる本です。ある意味瀬尾まいこさんの本全般的に同じ印象を持ちます。
    男の子が超絶不器用で黄昏れているのに、もてない訳では無かったり。ぼっちなんだけれどいじめられてなかったり。本当のぼっち経験者としてはリアルじゃないよなんて思ったりもするのですが、瀬尾さんの本は何故か許せてしまうんだな。
    これは多分瀬尾さん自体が人間を本気で信じているからなんではないかと思います。
    「そしてバトンは渡された」なんて普通の人が書いたら、ンなわけあるかい都合よすぎるわ!!と突っ込まれてしまう所を、大感動で涙が止まらない大傑作に仕上げてしまうのですから。
    これも色々突っ込みたくなりますが、結局ジンとしてしまいました。いいなあ瀬尾まいこ。

  • やさしい気持ちにしてもらいました
    瀬尾まいこさんの本を読むといつもそうですね
    温かいお話でよかった
    「神様は乗り越えられる試練しか与えない」
    そうです

    ≪ 向き合って ごはんを食べる 温かさ ≫

  • 大好きな瀬尾まいこさんの、一冊。

  • またあたたかいお話だった。
    「葉山」と「上村」の高校時代から始まって、家庭を築いていくお話。米袋がきっかけで仲良くなっていく、体育祭ってステキ、青春って素晴らしい。葉山と上村の会話がすっとんでいて面白い。

    「神様は乗り越えられる試練しか与えない」よく聞くような言葉だけど、これを「自分に対する神様の評価」に置き換えて考えるスタイルもいいな。ときには過大評価されたり、認めてもらったりしながら、受け入れて生きていく登場人物たち。

    「会いたい人とか一緒にいて楽しい人って何人かいるけど、いろんなことを平気にしてくれるのはひとりだけ」
    なんでも大丈夫にしてくれる人を、大事にしていきたいと思った。

  • 恋愛小説というのか、日常小説というのか。とにかく、今回も瀬尾まいこさんの小説らしく、平和で、主人公が自分の幸せを探すはなしです。
    瀬尾まいこさんの小説は自分に合ってる!と改めて感じました。自分の性格的にもなにか共感できるものが多くて、申請の参考にもなっています。
    今回の一番素晴らしいです!と感じたところは、この本では4章に分かれているのですが、1章終わると、次の章では急に2.3年時が進んでいるところです。つまり、どんなことが空白にあったのかを読者に想像させています。これが秀逸でした。ぜひ、読んで体感してみて欲しいです。

  • ★3.5
    主人公・イエスこと葉山くんの高校時代から結婚生活までが描かれるけれど、誰もが経験するように数年の間に出会いがあれば別れもある。中でも、えみりちゃんが可哀相だとは思うものの、決して落ち度がなくても一筋縄ではいかないのが恋愛なのだと思う。そして、葉山くんの兄の死や上村さんの家庭事情といった、暗く重くなるような事柄をサラリと描いてしまうのが、やっぱり瀬尾まいこならでは。最終章で「小春って誰!?」と思わせるのも上手い(笑)。何はともあれ、常に前を見ているタイトルが、力強くて優しくて、とても素敵だと思う。

  • 生きてるのに、耳も目も心も閉じたくて仕方ない時期ってきっと誰にでもあって、意外とそういうのってほんとにどーでもいいきっかけで、笑っちゃうぐらいにどーでもよくなるもんだ。しあわせな小説だ。

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著者プロフィール

瀬尾まいこ(せお まいこ)
1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒。2011年の退職までは、中学校で国語教諭として勤務する傍ら執筆活動を行っていた。2001年『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、これが翌年単行本デビュー作となる。2005年『幸福な食卓』で第26回吉川英治文学新人賞、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞をそれぞれ受賞。これまでに映画化された作品に、代表作『幸福な食卓』、『天国はまだ遠く』『僕らのごはんは明日で待ってる』。『そして、バトンは渡された』は第31回山本周五郎賞候補、2018年「本の雑誌が選ぶ上半期ベストテン」1位、「キノベス2019」1位に選出、さらに2019年本屋大賞を受賞。2019年6月13日、『優しい音楽』(新装版)を刊行。

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