弱いつながり 検索ワードを探す旅 (幻冬舎文庫)

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  • 幻冬舎
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レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344425019

感想・レビュー・書評

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  • 「観光客」であることを、惨めに思う必要はない。
    むしろ、「観光客でいること」に自覚的であるからこそ生み出せるモノがあるのではないか。
    そんなことを考えさせられた。東浩紀さんの本を読んだのは初めてだけど、言葉を扱う仕事をしている人が書くものは、私達が読んでもスッーと身体に入っていくものなんだなと感じた。
    今この時代にこの本と出会えて、本当に良かった。
    自分がなんでこの本を選んだのかはよく思い出せない。この本との出会いも偶然性によるものだったのかなと感じている。
    先行き不安とはよく言われるけど、そもそも未来が予測できる人なんていない。あした自分が、生きていることすらわからない。自分自身のことですら予測できないのだから、まわりのことなんて予測できっこない。だからこそ、今自分がここにいるということに、少しでも意識をむけられたら、けっこう幸せなんじゃないかと思う。だって、いまを意識できるってことはそれだけ余裕があるってことだから。
    東浩紀さん、ありがとう!

  • とてもわかり易い。
    普段の生活ではついつい相対化して人間(自分含めて)の愚かさに絶望してしまいがちだけど、この本を読んで多少元気になった。
    多少というのは、読んだことですぐにでも旅行に行きたくなったが、行くにしても新型コロナのため気を使うことが多く腰が重くなる…。

    すぐに行けないにしても、書かれている内容に元気づけられた。
    日々なんだかクサクサするのは、所詮頭で考えた予測可能で(記号)効率的なことばかりだから。予測/制御できない身体や偶然(非記号)や非効率的なことに身をまかせることで、日常ではたどり着けない記号に出会え新しい欲望が生まれる。

    体力勝負と消耗戦のくだりも膝うち度高。ほんとそういう場面を減らしていきたい。

    バンコクのターミナル21も行ってみたい。

    解説も愛に触れつつ語られていて熱かった。新しい「カゾク」について自分でも考えていきたい。

  • 「私は批判が起きる事を良しとして書いていますよ」と批判が起きることを狙っていると先に示してから持論を展開することで、まずは全ての読者に持論に耳を傾けてもらう、という表現スタイルが巧妙だと感じた。そのうえで、
    ・チェルノブイリ観光地化計画
    ・裕福なYOU TUBER達が中流の暮らしを演じていること
    ・観光客として観光地化された場所を巡ること
    などについて述べられている。
    心に残ったのは106ページ113ページ。社会である前に個人対個人の間にある弱い絆が必然であることをルソーを引き合いに出しながら説いている箇所が印象に残った。

  • あとがきがすごくいい。

    当事者至上主義のような雰囲気、やっぱりおかしいよなと感じた。

  • 東浩紀(1971年~)氏は、東大教養学部卒の、批評家、哲学者、小説家。
    1999年に発表したデビュー作『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』は、浅田彰氏が「自著『構造と力』が過去のものとなった」と評して脚光を浴び、哲学書としては異例のベストセラーとなった。
    領域横断的な「知のプラットフォーム」の構築を目指して2010年に創業した(株)ゲンロンでは、批評誌『ゲンロン』や書籍の出版のほか、カフェイベントの主催やアート・カルチャースクールの運営なども行っている。
    本書は、2014年に出版され、2016年に文庫化された。
    本書の「はじめに」には次のように書かれている。「ぼくたちは環境に規定されています。「かけがえのない個人」などというものは存在しません。ぼくたちが考えること、思いつくこと、欲望することは、たいてい環境から予測可能なことでしかない。あなたは、あなたの環境から予測されるパラメータの集合でしかない。・・・しかしそれでも、多くのひとは、たったいちどの人生を、かけがえのないものとして生きたいと願っているはずです。・・・ここにこそ、人間を苦しめる大きな矛盾があります。・・・その矛盾を乗り越える・・・有効な方法は、ただひとつ。・・・環境を意図的に変えることです。」
    著者は、グーグル等のカスタマイズ検索の進化により、我々はネットによっては他者の規定した世界でしかものを考えられなくなっており、その統制から逃れるためにグーグルが予測できない言葉で検索すること、即ち自分の環境を意図的に変えて、自分に定期的にノイズを入れることにより、グーグルが与えた検索ワードを意図的に裏切ることが必要だと言う。そして、それは、自分を深めていく「強い絆」のほかに、自分の人生をかけがえのないものにするために「弱い絆」を取り入れていくことであり、そのためには、偶然の出会いを見つけるために身体の移動、旅が必要だと語っているのだ。
    本書が発表されてから僅か5年ほどであるが、近年の(個人)情報のビッグデータ化は目覚ましく、我々はあらゆる言動をGAFA等に(中国などでは“当局に”)把握され、知らず知らずのうちに、思考や行動を監視され、更には誘導さえされている。これは究極的には、オルダス・ハクスリーのディストピア小説の古典『すばらしき新世界』(1932年)が暗示する世界に向かっているともいえる。そうした人間性の否定・喪失を避けるためにも、著者が提唱するような「環境を意図的に変え、ノイズを入れる」という視点は今後一層重要になってくるものと思う。
    ただ、他方で思うのは、「弱い絆」を取り入れるために「強い絆」を否定してしまうことへの違和感である。本書の帯には「人間関係を大切にするな!友人に囚われるな!」とも書かれているのだが、その方向性は本当に「かけがえのない人生」につながるのか。。。
    と考えると、望ましい姿はおそらく、「強い絆」と「弱い絆」のバランスをとった中間にあるということなのだろう。
    ITの進歩した今の時代だからこそ、「弱い絆=弱いつながり」を指向する重要性に気付かせてくれる一冊である。
    (2014年8月了)

  • 読む前と読んだ後でものの見方ガラッと変わるような内容だった。
    膨大な情報にいつでもアクセスできるって思い込んでいたけど、検索ワードは自分が選んだものだし、だからバイアスがかかった都合の良い情報にしかアクセスできていないってこの本読まなきゃ気づかなかった。
    SNSが促進する村のような強いつながりが、強固になる程見える世界は狭く届く情報は限定されていくし、だからこそ多様な検索ワードを得るために偶然性による弱いつながりを疎かにしないことが大切。
    当事者として盲目に被害者の声を上げることも、専門家として見下ろすような議論を交わすことも避けたいからと言ってそこに距離を取るのではなく、ただ観光客の目でそこにあることを知る、考える、第3の態度を得ることができた気がする。
    旅行に行きたくなった!堂々と観光するって言える。

  • よみやすすぎてすごい。その昔、読了≠読解するのに何か月も要した『存在論的、郵便的』の読書体験とは明らかに違う。そう言えば当時の己は、本自体から何か“答え”を得ようと頭をフル回転させながら、頁を行きつ戻りつしていたのだった。そういういみでは、ここに“こたえ”はなく、己がかわるきっかけをもらえた(かもしれない)きぶんである。

  • 読みやすくてさらさらーっと読んじゃったからあまり残らなかったな。
    でも解説は何言ってんだかわかんなくて読めなかったのですごいわかりやすく書いてくれたんだなーって。
    福島原発の観光地化の話はいいなって思ったんだけど、今もすすんでるのかな?それを検索しろよってことなんだろうけどなんか嫌なものも見ちゃう気がして気が引けるな。
    うまくいくといいね。

  • 何よりも読みやすかった。インターネットの今まで気付きもしなかった特色に目から鱗というか、妙に納得。気軽に読み終える厚さで、哲学過ぎるわけでもなく、しかし考え込む素材が散らばっているような。手に取りやすい本だと思う。

  • 思想家・東浩紀氏が旅についてとインターネットの検索ワードについての思索を交差させて書いたエッセイです。ネット社会と呼ばれる現代において検索ワードを考えて情報を得ることが自らの世界観を構築するうえで重要な要因といえます。しかし、普段と変わらぬ日常に身を置いていると検索ワードは凡庸になりがちです。そこで旅をして自身を普段と異なる環境を置くことで新たな着想を得、今までになかった世界観を見出すことができるとしています。また、言葉によって世界観は支配されていますが、現物を見聞きして得られるものは言葉以上のちからがあり、言葉重視からモノ重視へとシフトすべきという持論を展開しています。平易な文章で読みやすかったです。

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著者プロフィール

東浩紀(あずま ひろき)
1971年東京生まれ。批評家・作家。ゲンロン代表。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。専門は哲学、表象文化論、情報社会論。
著書に『存在論的、郵便的』(サントリー学芸賞思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞受賞作)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015受賞作)ほか多数。『ゲンロン0 観光客の哲学』は第5回ブクログ大賞人文書部門、第71回毎日出版文化賞受賞作。

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