骨を彩る (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.81
  • (53)
  • (74)
  • (66)
  • (8)
  • (3)
本棚登録 : 923
感想 : 79
  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344425699

作品紹介・あらすじ

十年前に妻を失うも、最近心揺れる女性に出会った津村。しかし罪悪感で喪失からの一歩を踏み出せずにいた。そんな中、遺された手帳に「だれもわかってくれない」という妻の言葉を見つけ…。彼女はどんな気持ちで死んでいったのか-。わからない、取り戻せない、どうしようもない。心に「ない」を抱える人々を痛いほど繊細に描いた代表作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「妻の夢」から始まる静かな物語である。
    津村は、妻の朝子を10年前に大腸がんで亡くしている。
    弁当屋の相川光恵と親しくなっているが、いまひとつ踏み出せない津村。
    イチョウが黄金色の雨を降らせ、朝日を受けてきらきらと輝くその情景が繊細で、心に深く刻まれていく。

    連作短編のようで、まるでバトンを繋ぐように、お話が少しずつ緩やかに繋がっていた。
    誰もが、他人にわかってもらえないものを抱えて生きている様子がありありと描かれていた。
    光恵の高校の同級生だった真紀子や玲子、津村の経営する不動産事務所に勤める浩太郎が主役となって登場し、それぞれ面白く読み進めていたのだが、最後の「やわらかい骨」でガツンとやられてしまった。
    ここまできてやっと、この本で言いたかったことにたどり着いたような気がした。
    3歳で母を亡くした津村の娘小春が、中学時代に体験したことによって何を感じ、何に気づいたのか。

    私自身が、この本によって大事なことを教えられたし、理解していないことがたくさんあるということに気づかされた。
    綾瀬まるさん、凄いです。読んでよかったです。

  • 静かにゆっくりと流れる文章。
    なのに心の奥をぐいぐい抉られた。
    5つの物語が穏やかに繋がる連作短編。
    「隣の芝生は青い」というように、つい自分以外の人を羨ましく思ったり時に妬んだり…。
    でもその妬まれた人だって実は他人には明かせない弱さを抱えていることもある。

    自分の中で骨が一本足りない気がして落ち着かなくて、足りないものを補うみたいについ力が入ってしまう…この気持ち、なんか分かる。
    一人一人の喪失感が丁寧に描かれてあり何度も切なくなった。
    そして最初と最後の短編の、イチョウの黄金色の雨が繋がった時、とても泣けた。

  • 悲しいけれど、やるせないけれど、温かい。人が持つ傷から目を逸らさないで、痛々しいほどに抉りだすけれど、けして見捨てないで寄り添う。
    読んでいてそういう感覚を味わった。著者がそういう人なのかもしれない、と勝手に考えたりした。

    10年前に妻を失うも、最近心揺れる女性に出会った津村。しかし罪悪感で喪失からの一歩を踏み出せずにいた。
    そんな中、妻が遺した手帳に「だれもわかってくれない」という言葉を見つける。

    5つからなる短編集で、全てが細く繋がっている、というつくり。1つ目の物語で脇役だった人物が、5つ目の物語で主役になっていたり、という風に。
    普段はみんな普通に仕事や主婦業や学生生活をしていて、そこには大きな問題はないように見える。だけど表には出さない部分に闇のようなものを抱えていたりする。
    きっとそれは現実にもよくあることで、何ひとつ悩みや暗い部分を持っていない人なんてそうそういない。
    笑顔の裏側にある想い。そういう感情にスポットを当てて、深く抉っていく。

    全部それぞれに痛々しくて残るものがあったのだけど、最後に収録されている「やわらかい骨」がいちばん印象に残った。
    中学生の小春のクラスに転校生がやって来るのだけど、彼女は何かの新興宗教に入信していて、それを隠さなかった(そこにも事情がある)ことによってクラスから省かれていく、というお話。
    小春は、堂々とは出来ないけれどその転校生と友だちになって、だけど複雑な想いを抱えてしまって…というところに、思春期ならではの瑞々しさを感じて、学生の時の青い痛みのようなものを思い出した。
    あんなにも上手く生きられなかった10代の私は、30代になってそれなりに生きている。あの頃よりは、まだ上手く生きられるようになったかもしれない。
    本当なら誇らしく思ってもいいことが、なぜだか少し悪いような気がした。

    人間は、顔かたちや体型によって見た目の違いを認識するけれど、1枚皮を剥がしてしまえば皆、似たような肉に包まれ、その下に似たような骨がある。
    成分やつくりも大して変わらない骨…その人生を彩るものとは、一体何なのだろう。それぞれが抱える痛みや悲しみさえも、もしかしたらそれを彩るものなのかもしれない。
    「骨って、真っ白なんだな」。大切な人を亡くして、その骨を初めて見た時にふと感じたことを、不意に思い出した。

  • 二作目、読みやすい。
    登場人物は、辛い悲しいところもあるけど皆いい人たち。宗教の話は興味深い。チャットしながらゲームする描写があったが、それがただの一つの要素として描かれるほど、何年か前から一般的なことだったのかとびっくりした。
    船の上にて

  • 短編連作。
    穏やかに進むといったかんじ。
    富士山の話はなるほどな と思うところがあった。

  • 誰一人として同じ存在など有り得ない世の中で、何故私達は同じものを求める?皆と違うのが怖いから。一人になるのが怖いから。
    誰にも理解されず、独りで闘っている者を何故人は笑う?皆と違うから。一人になるのが怖いから。自分まで独りになるのが、怖いから。
    誰もいなくなればいい。皆一人になればいい。そしたら貴方達は生きて行けなくなる。
    私は本当の強さを知っている。
    嫌われたくない!と泣きじゃくる恐怖の意味を知っている。
    だから私は感謝するの。私を好きになってくれるような奇跡に。
    人肌、肉は熱くて優しくて、骨は力強く逞しい。
    砂浜、砂利道、星の砂。
    私が死んだら、その骨を砕いて淡く彩り小瓶に詰めて、貴方の元へ、残りは飛ばして下さい。
    波飛沫、銀杏並木、雪の結晶、桜吹雪。
    季節の彩りと共に、飛ばして下さい。
    どうか桜色に、染めて下さい。

  • 悠都の肩はいつも熱い。湿気のない、よく日射しに熱せられた石のような熱さだ。

    /やわらかい骨 
    p222

  • 5人は緩く繋がっている
    繋がっているけれど、それぞれに見えている景色は全く違うしそれぞれの世界を持っている
    謝りたい人変な人家族になりたい人大人になりたい人素直に生きたい人
    人が思ってるより色んな悩みがあって性格も違う
    3つ目の話が最後の台詞にとてもほっこりして好き
    美しい景色と雰囲気が浮かんできて心地良い、最初と繋がったとても素敵なラストで、晴れ晴れとした気分になれました

  • 新進気鋭の女流作家が描く喪失感を湛えた人の姿を描いた5つの連作短編はどれもただ寂しいだけに終わらないのが好印象でした。最初とラストとのシンクロ具合が読後の清涼感を誘います。感動溢れるとは言えないものの、そこがいい、お薦めの一冊です。

  • 短編集。もやもやーっとした捉えがたい不足感みたいなものを消化していく話。明るすぎず、重すぎず、帰り道に読むといい感じに染みる。

全79件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1986年生まれ。2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR-18文学賞読者賞」を受賞しデビュー。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』(新潮社)『骨を彩る』(幻冬舎)『神様のケーキを頬ばるまで』(光文社)『桜の下で待っている』(実業之日本社)がある。自身が一人旅の途中で被災した東日本大震災時の混乱を描いたノンフィクション『暗い夜、星を数えて――3・11被災鉄道からの脱出――』を2012年に刊行。

「2021年 『OTOGIBANASHI』 で使われていた紹介文から引用しています。」

彩瀬まるの作品

ツイートする
×