骨を彩る (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.78
  • (79)
  • (120)
  • (105)
  • (17)
  • (4)
本棚登録 : 1533
感想 : 111
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344425699

作品紹介・あらすじ

十年前に妻を失うも、最近心揺れる女性に出会った津村。しかし罪悪感で喪失からの一歩を踏み出せずにいた。そんな中、遺された手帳に「だれもわかってくれない」という妻の言葉を見つけ…。彼女はどんな気持ちで死んでいったのか-。わからない、取り戻せない、どうしようもない。心に「ない」を抱える人々を痛いほど繊細に描いた代表作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最近一通り色んな作家さん巡りをしてます。
    めっちゃ好み!と思ったら2冊目を買います。
    なので、作家さんの初読みに選ぶ本は、私の中で重要です笑

    今回、彩瀬まるさんも初読み。
    これを1冊目に選んだのは、本屋さんが宣伝として最前列に並べており、表紙が綺麗(結構表紙で惹かれて買うのも多いです、ミステリー以外は)

    指のたより
    古世代のバームロール
    ばらばら
    ハライソ
    やわらかい骨

    と、短編の連作集というのでしょうか。
    登場人物は次の話にも出てきたりしますが、
    それぞれの短編毎に主人公がいます。

    人間多種多様とは言えども、骨はみんな同じ。
    頭蓋骨、肩甲骨……
    それに肉がついていて、
    心は見えないがみんな違う。
    なんか色々考えさせられました。

    人それぞれ何かを抱えていて、
    傷つかない人なんていないということ、
    ただし、なるべく傷つかないように防御したり、忘れたり、諦めたりと。大人になるにつれて身についていき、これがないと生きていけないのかもしれないなと。

    ※背表紙の抜粋※
    わからない
    取り戻せない
    どうしようもない。

    心に『ない』を抱える人々を痛いほど繊細に描いた代表作。

    読み終えて数日経過してのレビューなので、、
    やはり今後は読んだ後にすぐに書こうー
    その方が大事な事が鮮明に記憶に残る気がする。
    他の方のレビューも見てみよーと☆

    • さてさてさん
      なんなんさん、こんにちは!
      いつもありがとうございます。
      私も彩瀬さんのこの作品読みました。そもそも書名に『骨』が入るというのもインパク...
      なんなんさん、こんにちは!
      いつもありがとうございます。
      私も彩瀬さんのこの作品読みました。そもそも書名に『骨』が入るというのもインパクト大ですよね。おっしゃる通り、とても繊細に紡がれた作品だと思いました。
      また、お書きになられている通り初読みは重要ですよね。私も彩瀬さんはこの作品がスタートで、六冊まで読み進めています。良い作品との出会いはその作家さんを印象づけていくと思います。私は同じ作家さんの作品、三冊ワンセットで読むと決めています。合う合わないを三冊も読めばわかるかなあと。そこから次の三冊に進むか、そこで終了するか、そんな読書をしています。
      彩瀬さん、「新しい星」もとても良かったです。面白い視点という点では「さいはての家」もなるほどと思いました。
      すみません、自分のレビューのごとくコメントが長くなりました。失礼しました。
      今後ともよろしくお願いいたします!
      2022/09/29
    • なんなんさん
      さてさてさん、こんばんは!
      いつもレビュー読ませて頂いてます。
      なんでこんなに素晴らしいレビュー書けるんだろうなあってアウトプットスキル含め...
      さてさてさん、こんばんは!
      いつもレビュー読ませて頂いてます。
      なんでこんなに素晴らしいレビュー書けるんだろうなあってアウトプットスキル含めて尊敬しておりますっ!!!

      3冊ワンセットで読んでるんですね。
      素敵です!
      私、1冊目が飽きてしまうと、次にいってしまっておりました……。皆さんのこのようなサイクルというか読み方というか、選び方など知りたかったので参考になります!

      新しい星、さいはての家、要チェックします。教えて頂きありがとうございます!

      これからも宜しくお願いします☆
      2022/09/29
  • 「妻の夢」から始まる静かな物語である。
    津村は、妻の朝子を10年前に大腸がんで亡くしている。
    弁当屋の相川光恵と親しくなっているが、いまひとつ踏み出せない津村。
    イチョウが黄金色の雨を降らせ、朝日を受けてきらきらと輝くその情景が繊細で、心に深く刻まれていく。

    連作短編のようで、まるでバトンを繋ぐように、お話が少しずつ緩やかに繋がっていた。
    誰もが、他人にわかってもらえないものを抱えて生きている様子がありありと描かれていた。
    光恵の高校の同級生だった真紀子や玲子、津村の経営する不動産事務所に勤める浩太郎が主役となって登場し、それぞれ面白く読み進めていたのだが、最後の「やわらかい骨」でガツンとやられてしまった。
    ここまできてやっと、この本で言いたかったことにたどり着いたような気がした。
    3歳で母を亡くした津村の娘小春が、中学時代に体験したことによって何を感じ、何に気づいたのか。

    私自身が、この本によって大事なことを教えられたし、理解していないことがたくさんあるということに気づかされた。
    綾瀬まるさん、凄いです。読んでよかったです。

  • みんな誰だって隠しておきたい事、心に暗い影をもっているものなんだなと改めて思う作品でした。
    読み終えてみると、愛情や人の優しさ、思いはもっていても中々伝わらないものなんだな、と。
    相手を思う気持ちがかえって相手との距離を生み
    、ささいな誤解が大きくなり。
    人と繫がれる事は奇跡に近くて正解はないのかな。
    でも思う気持ちさえあればいつかまた理解しあえるのかも。
    感想は自分の気持ちも相手の気持ちも、理解するのは難しいでした。

  • 少し前のなんなんさんのレビューに惹かれて買ってみた。

    5つの話からなる短編の連作。
    前の話に出た人が次の話では全く異なった感じの人として登場し、人というのは他人から見える姿からは推し量れないものを心の内で持て余しながら生きていることを改めて思わされる。
    登場人物が持つ何か欠落しているという思いは、境遇だったり親や子のことであったりと様々で、人と関わることによって痛みを感じたり少し満たされたり。そうした行きつ戻りつの胸の内の描写が、自分に同じことが起こっているわけではないけれど、とても生々しく感じられた。
    それぞれの話で読み終わってもどのようにでも解釈できるようなところが残っているところも、人の心の在りようが単純なものではないことをよく表していたように思う。

    息子への処し方に悩みながら自身の過去の記憶と向き合い欠落を埋めていく母親を描いた三話目と、幼くして母を亡くした少女が"普通"について模索する最後の話が、私には良かった。

  • 静かにゆっくりと流れる文章。
    なのに心の奥をぐいぐい抉られた。
    5つの物語が穏やかに繋がる連作短編。
    「隣の芝生は青い」というように、つい自分以外の人を羨ましく思ったり時に妬んだり…。
    でもその妬まれた人だって実は他人には明かせない弱さを抱えていることもある。

    自分の中で骨が一本足りない気がして落ち着かなくて、足りないものを補うみたいについ力が入ってしまう…この気持ち、なんか分かる。
    一人一人の喪失感が丁寧に描かれてあり何度も切なくなった。
    そして最初と最後の短編の、イチョウの黄金色の雨が繋がった時、とても泣けた。

  • 初めて読む彩瀬まるさん。
    登場人物それぞれの視点での話を集めた短編集だった。
    外からは華やかで満ち足りた人生に見えても、その人の中には決して埋められない何かを必死で抱えていたりすることを、物語を通して感じました。
    登場人物それぞれの幸せを切に願ってしまう、繊細で温かいお話だった。

  • そのまま描かれている訳ではないのに、なぜか心にストレートに響くみたいな、そんな小説でした。
    みんな黒を抱えてる、わざわざ見せないし、だから他の人のそれにも気づかない、そしてそれを忘れちゃうから羨んでしまったり、憎んでしまったり、踏み込んでしまったり。どっちが悪いとかじゃない、違う部分にはあまり触れず、加減しながら付き合っていくのが利口。それが全てではないと思うけど、とても良いお話でした。

  • やがて海へと帰る。を読んで自分が死んだ事に気付かず歩いて歩いて同じ場所に戻って、また歩いて、歩かなくていいんだよとお婆さんが言ってくれる、顔が菊の花で、その大元が震災で、何度読んでも切なくて、でも切ないと自分とは関係ないと人事みたいに考える浅はかな自分がいる。どんどん記憶が消えて行き最後に歩かなくていいんだよと、救われる、最後に救われた思いです。小春の話が印象的だった、自分から見たら今の子供達は複雑で、逃げる術を持たないと生きれない、小春は自分が変わる事が正しいと知り実際そうした、葵とまた会えるはず

  • なんだこの小説。
    いままで生きてきた時間の中で感じたことのある、
    違和感、疎外感や、人と歯車が合わないと思った瞬間が、
    全部詰まったような物語。
    思い出して痛くて痒くて、胸を掻きむしりたくなる。

    それでも、そんな経験が、今の自分を作っているのだと、
    登場人物を自分を重ね合わせながら、
    息をつめて最後の1ページまで読み進めた。
    ページを進める毎に、各章の登場人物たちに起こることに
    怯え、次のページで起こりそうなことを想像して、震える。

    どうか、この人の人生がうまく進んでくれ、
    この人の不幸が降りかからないように、頼む頼む神様。
    と、昔の自分を庇うように登場人物たちを見守った。

    読み終わってすぐに、著者の別の本を購入しました。

  • 読み終えた時、こころがすごく温かくなった。
    欠けたピースを欠けたもの同士でぎこちなく繋ぎ合わせて、でも形が違うから上手くはまらないんだけど、それはそれで良い、ピース同士が少し重なるだけで万々歳。

全111件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

彩瀬まるの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
宮下 奈都
西 加奈子
辻村 深月
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×