パリの国連で夢を食う。 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344426177

感想・レビュー・書評

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  • 著者の川内有緒さんが、パリの国連に採用されてから辞職するまでの経験や葛藤の記録。

    国連は、目指すゴールは立派だが、200ヶ国近くの公平性などを考慮する必要がある大所帯で、外から見ているときに描いていた"国連像"と実態はかなり違うということがよくわかる。
    職員の福利厚生は手厚いが、組織内のリサイクルルールを決めるだけでも大モメするようなところ。職員の間でも、雇用の形態によってその処遇は大きく違う。
    世界の貧困や紛争をなくすことに貢献したいと思っても、現地に行くことはおろか、担当になることも簡単ではない。

    夢と意志を強く持っている職員が離職するのもムリもないかも。
    一方で、そうしたインターナショナルな環境で働くことは大変なことも多いが、いろんな考えを持った人たちにも会えて、とても魅力と刺激に溢れていることも間違いないだろう。

    著者が離職を決めてから、職員に行ったインタビューで、仕事で嬉しかったことを答えられる人がいなかった一方で、"あなたにとって国連とは?"と質問したら、"ドリーム"と答えた人が複数いた、というのが印象的だった。
    やはり、日常的にはどうであれ、根幹には、平和な世界という人類の夢を実現するための組織だという意識を持って働いている人がいると思うと、応援したくなった。

    著者は、アメリカでマスターを取って、日本のシンクタンクに務め、国連の直接公募するポストに採用されたくらいだから、元々能力が高いのだと思うが、そのバイタリティーに感服。と同時に、自分に正直に、思い切りよく決断できることを羨ましくも思えた。

  • 川内有緒さんの著書を初めて読んだけれど、鋭い着眼点と思いの丈を言葉に表す技術とセンスが抜群な印象でした。

    おそらくアリオさんと同じ境遇で同じ生き方をしていても、アリオさんにしか気付けない発見や面白みがあって、それを敏感に感じ取り、面白く巧みに文章にするスキルが羨ましく、興味津々で読み進めました。

    「L字ウォーズ」や「椅子を巡る下剋上」など、標語付けのセンスも最高。

    ただ面白いだけではなく、国連のリアルな内部事情や働く人たち、パリの文化、異邦人ならではの心境など、学べる部分がとても多く、目から鱗でした。


    「誰もが誰かと一緒だった。いやおうなしに、自分は一人だと思い知らされた。自分には、知っている場所もなく、電話する人もおらず、一緒にご飯を食べる人もいない。でも、それは寂しいというより、愉快な気分だった。私は、ここからまた一人で出発するのだ」

    この文章にアリオさんのポジティブさが詰まっていると思う。
    私だったら愉快な気持ちにはなれないかもしれない、、
    新しい生活、人間関係を存分に楽しむ。
    悲しみや苦しさが相まっている時も、その経験自体を誇りに思う。
    生きていることを存分に味わう。

    沢山のことを教えてくれる素敵な本でした。

  • 夢を叶えた自叙伝ですが、本当に映画の様な人生で、川内さんの魅力にあっという間に引き込まれてしまいました。
    はあちゅうさんの解説もとても素敵です。

    「大きな決断というのは、人から見ると時に突然で、大胆なように見える。しかし、本人の中では、一滴ずつ水がしみ出すように始まっている。その水は、いつか流れになり、小石を動かす。小石とは自分の奥深くに堆積した塊。ふだんはじっと動かないので、気にもとめない。」
    という部分が大好きです。大きな決断をするのに大きな石を動かす必要があると思ってしまっていましたが、小石が転がるような一歩でもいいんだと思うとなんだか勇気が出てきました。

    そして「私は世界を変えたかったのではない。いつも自分を変えたかったのだ。」という言葉が印象的でした。
    国連で働きたい人、行ってみたい場所がある人、やりたいこと、やりたい仕事がある人。
    今の自分を否定する「変わりたい」ではなく、もっと自分のことが好きになるために「変わりたい」と思う。そんな「変わりたい」気持ちが芽生えること自体が幸せな人生なんだろうなと思います。夢がゴールではなくて、もっと大好きな自分になること。そのために皆生きているのかもしれないと思いました。自分をアップデートさせたくなる、とても素敵な一冊です。

  • 国連で仕事をしていた体験談を綴った本。国際的な話と接点のない人でも知らなかった世界が顔を出して、びっくりすること間違いがない。日本も世界の一部分でしかないのだと気づくことだろう。

  • 誰もが踏み出す前は「未経験」なんだよね。
    この人は、あらゆることに踏み出す天才なんだなと思う。

    二年前ごしに国連から面接の案内が届き、えいやあとパリへ。
    合格するかどうかも分からないけれど、それまでに働いていた日本の勤め先ではもう働けないと思い、辞めてしまう所から始まる。

    国連で働いた五年間の話が、とてもスムーズに読めて、面白い。
    ……のだけど。
    結局、アリオさんは国連で何をしたんだろう、そしてなぜ辞めたんだろう、そのことが、書かれているのに掴めないまま終わってしまったような気がしている。

    ソルボンヌ大学で講義を受けるつもりが、先生になるくらいだから(笑)きっと、たくさんのメッセージや経験を持っているはずなのだけど。
    どちらかというと、生活上のあれこれが中心になっているエッセイだった。

    自分自身のために、働くこと。
    アリオさんには、譲れないものがある。
    そして、それを譲れないと決断できる彼女には、どうしたって憧れるなぁ。

  • 著者の書いていることは自分の体験だし、国連の仕事も多岐にわたるので一般化はできないが、それでも国連という「職場」の雰囲気はよくわかった。
    いい職場だなあ。(正規職員ならば。)

    こういうのが世界のトップクラスの職場なら、やっぱり日本の職場というか社会は特殊というか、人間のQOLに配慮しないという印象を受ける。
    日本の職場や学校で鬱になる人は多いが、学校や職場がこうだったら心を病む人はずっと減ると思う。服装自由、何食べてもよし(ランチのワインもOK)、昼休みも各自適当に取り、宗教行事でも休める。残業なし。いろいろな国籍・人種の人がいて、宗教・個人的事情を認め、休暇はたっぷり。自分の待遇に不満があれば直接交渉して勝ち取る。その交渉で印象を悪くし、人事や給与に影響が出るということもない。国連パスポートや免税は国連だけの特殊な優遇だろうが、様々な国籍の人々が、お互いの違いを認め合って、世界の平和と自分の幸せのために働いているのが本当にうらやましい。
    若い人は読んで、英語力・交渉力・コミュニケーション力つけて、日本なんか出て行ったらいいと思うよ。
    有能な日本人がごっそり海外に流出しないと、日本のトップはこの社会を変えようなんて思わないだろうから。
    もちろん簡単じゃないだろうし、リスクもあるけれど、スクワットの人たちも含め、出てくる人は皆生き生きしていて、何より自分の人生を謳歌している。
    そういうところが今の日本に生きる若者・大人に足りないところだと思う。

    こんな素晴らしい待遇の(しかも名誉ある)職場をやめる勇気はすごい。
    川内さんの著作はこれと「白鳥さん」しか読んでいないが、生き方がちゃんと今の仕事につながっているんだなあと思う。
    川内さんは大変能力の高い方なので、もちろんみんながこんな生き方ができるわけではないけれど、とても明るい気持ちになった。
    こんな方が日本にいてくれることも嬉しい。

    私も中高生くらいでこれを読みたかったなあ。

  • 私は今、転職する直前でこの本を読んだ。
    パリとか国連とは、私には遠い存在ではあるけど、登場する人物が面白い方ばかりで。出来事が面白いことばかりで。アリオさんの人柄がそうさせているような。
    終盤の方の心境、今の自分と重ねてしまうところもあり、とても共感した。どこにいようと、どこで働いていようと同じことを感じるものなのかと思った。
    どうなりたいのか。何をしたいのか。

  • この方の書く文が好きだなぁ。裏表や飾ったところがひとつもなくて、スンと心に入ってくる。

    読みながら、小学生の時の夢が国連職員になる事だったのを思い出した。あの時は努力すればなんでも叶えられる、報われると思っていたのに、歳を重ねるにつれて勝手に自分でハードルを置くようになってしまった。微塵も挑戦せずに、スマホでぱぱっと調べて、「こりゃ無理だわ」って諦めることが何度あったのだろう。

    あとがきの「今日をちゃんと生きてますか?」というのが、心に刺さった。以下引用。
    「今日の自分」ほど絶対的なものはない。どんなことがあっても誰にも取られない。「今日」をきちんと生きていれば、いつしか点と点がつながって、未来の岸辺に続く道になる。

  • 違うなと思ったら、未知のことにもぱっと飛び込んでいけるところが川内さんの素敵なところなのだろうと思う。応募したことを忘れかけていたところに届いた採用通知。彼女は単身、パリに飛びだす。パリの家探しの大変さから始まり、働き方の違いに遭遇し…でも、彼女はまず受け入れる。その姿勢が素敵な出会いを引き寄せる。そして、あっという間に国連職員の職もちがうと思ったら惜しげもなく手放す。すごいの一言。

    今の国のありかたもそうだけれど、国連も大きくなりすぎて、やはり機敏性には欠けてしまっている。それはそれで仕方がないし、必要なこともあるだろう。でも、もどかしさを感じるのもわかる。大きくなりすぎると身動きがとりにくくなる。どう本来の原点に戻るか、もしくは原点を活かせるように更新していくかが大事なんだろうなと思った。

  • 「パリでメシを食う」を楽しんだので、筆者の国連での経験を書いたこの本も読了。

    筆者の人柄が素敵で、毎日の生活も痛快!
    自分も国連で働いて波乱万丈にやってる気分になり楽しかったです。

    一方、現在、国連がイマイチ機能してない理由もわかった気が...お給料もらって国際交流してるだけに見えてしまう。平和な世の中ならそれでもいいけど、問題山積みなこの世の中で、やらなければいけないことだらけのはず。

    せっかく世界のエリートが集まってるのにもったいない。

    私の文句は置いておいて、パリでの生活事情、異なる文化や価値観を持つ人と一緒に働くことの楽しさや難しさがわかり、おすすめの1冊です。

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著者プロフィール

川内 有緒/ノンフィクション作家。1972年、東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業後、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏の国連機関などに勤務後、ライターに転身。『空をゆく巨人』(集英社)で第16回開高健ノンフィクション賞を受賞。著書に『パリでメシを食う。』(幻冬舎)、『パリの国連で夢を食う。』(同)、『晴れたら空に骨まいて』(ポプラ社/講談社文庫)など。https://www.ariokawauchi.com

「2020年 『バウルを探して〈完全版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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