天才 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.20
  • (18)
  • (61)
  • (91)
  • (32)
  • (11)
本棚登録 : 955
感想 : 80
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344426924

作品紹介・あらすじ

高等小学校卒ながら類まれな金銭感覚と人心掌握術を武器に年若くして政界の要職を歴任。ついには日本列島改造論を引っ提げて総理大臣にまで伸し上がった田中角栄。「今太閤」「庶民宰相」と称され、国民の絶大な支持を得た男の知られざる素顔とは? 田中の金権政治を批判する急先鋒であった著者が、万感の思いを込めて描く希代の政治家の生涯。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 石原慎太郎氏が田中角栄元首相の本を書いた。それだけでも興味深い事だけれど、まるでご本人が人生を振り返りポツポツと話しているように、一人称で語られて行くせいかどんどん引き込まれていく。
    日中国交正常化を成し遂げた田中角栄氏、たしか石原慎太郎氏は、当時強硬な反対派だった。金権政治家としてイメージの強い田中角栄氏を、強く批判していたお一人だった様に記憶している。
    お互い政治の表舞台から降り、時間の経過と共に見えてきた人となり、功績、真実があったと言う事なのだろうか?
    田中角栄氏、石原慎太郎氏、癖の強さでは引けを取らないお二人に改めて興味を持った。

  • 「ロッキード」に続き
    田中角栄関係の本読了
    こちらはプライベートに
    ついても書かれてる
    この写真を表紙に選んだこと
    石原氏自身が出てくることが
    ご愛嬌...かな?

    主人の本棚から拝借

  • 2月1日、芥川賞作家で東京都知事等を務めた石原慎太郎氏が逝去された。享年91歳。

    その波乱万丈の人生を報じるニュースを見ながら、一度はその著書を読んでみようかと思い手に取った。

    「天才」--田中角栄元総理大臣について、かつてはその金権体質を追及もした著者が、田中氏になり切ってその生涯を語る形をとった。

    1969年生まれの私にとって、物心ついた時の田中氏の印象は、「何か悪いことをして捕まった元総理大臣」。

    ニュース番組では盛んに批判されるのに、バラエティー番組では氏のものまねをして笑いを取る人が後を絶たない。

    ともかく影響力が大きい人であったのだろう。

    高等小学校卒。

    生涯に30以上の議員立法を成立。

    ロッキード事件で逮捕・起訴後も政権与党の最大派閥の領袖として君臨した。

    彼が最も大切にしたものは、家族。

    故郷新潟の両親。

    第一子を早くに亡くした悲しみ。

    もう一つの家族との物語。

    人間くささが、良くも悪くもスケールの大きい活躍をした。

    田中氏も、著者の石原氏も、昭和という時代を駆け抜けた一つの象徴であったことは間違いない。

  • 田中角栄の人生を描いた小説。一人称で描かれている。とても長いモノローグ。いや、角栄の目を通して石原慎太郎が語っているようにも思える。石原は角栄を描き何を伝えたかったのか。そして、ロッキード事件とは何だったのか。答えは見つかるのか?

  • 石原氏は、田中角栄がきっと大好き。
    あとがきで自分が彼を批判した事も書いているが、でもきっと、政治家として人間として、田中角栄を好きなのだと感じさせられる。
    リアルタイムでは知らない政治家ではあるが、著者に誘導されて田中角栄を魅力的に思う自分がいる。
    『自ら反りみて縮くんば千万人といえども吾れ往かん。』
    土木作業員としての経験や、庶民感覚を忘れない発想が、出自から一流の政治家たちを凌駕する。
    今の世の中に彼が居たら、と思わされる一冊。

  • 私がもっとも好きな政治家の田中角栄の一生を石原慎太郎が一人称で書いた伝記小説。
    中国にもアメリカにも一歩も引かないで交渉をする強気の角栄は、現代の弱気の歴代総理に幻滅を感じさせ、今こそ本当に必要な政治家のように思う。

  • ◉前説… 遠〜い記憶の中の田中角栄
    田中角栄が1972年の自民党総裁選出馬直前に発表した政策綱領『日本列島改造論』。同時に出版もされ政治家の政策論集として空前のベストセラーとなった。

    僕がその本を目にしたのは小学校の図書の時間。周りが江戸川乱歩やヘレンケラーの伝記を読んでる横で斜め読みしていた。一政治家の著作が小学校の図書館にまで配本されるぐらい、時の人だった。

    続いてもうひとつ。
    同年、首相に就任して2ヶ月後に実現させた日中国交正常化に日本中は沸き立った。通ってた小学校近くの神戸市立中央体育館で開催された日中の国旗が掲揚された記念式典に参加した記憶がある。そこには多分中華同文小学校の生徒も参加していた筈。この正常化調印の翌月、パンダ2頭が贈られ、カンカン・ランランと名付けられ、一目パンダ見たさに大フィーバーが起こった。

    それから4年後の1976年、ロッキード事件が起こる。田中角栄は受託収賄党の嫌疑で逮捕され、報道は日を追って過熱し『記憶にございません』や『ピーナッツ』といった言葉はたちまち流行語となり、コント55号は早速ネタに取り入れ爆笑を誘い、小学生は学級会で真似するヤツが続出。

    『今太閤』と褒め讃えた国民は金脈問題と愛人問題に愛想を尽かし、そこに降りかかった大疑獄事件に掌を返し、その転落劇に喝采を送る人は少なくなかった。

    ◉かいつまんで… 異色も異色なノンフィクション
    本書は、そんな毀誉褒貶甚しき政治家 田中角栄の波瀾万丈の歩みを、金権政治を真っ向から糾弾した石原慎太郎が十八番の一人称で綴った『異色』のノンフィクション。

    ◉私見…石原慎太郎の天才 vs 大川隆法の霊言
    問題はこの異色さにある。一人称ゆえに角栄になりすました語りが丸々慎太郎節。浪曲(浪花節)で培われた角栄節を知ってる者からすると違和感ありあり。むしろ政治家 石原慎太郎の視点から書くべきだった。田中角栄が語るという形式ゆえに、日本列島改造論の功罪の功は語るも罪〈土地投機や狂乱物価〉について言及しておらず、自画自賛が横溢。ちなみに一人称で描くとするなら、町田康が最適では。

    それに加え、全編から漂う石原慎太郎のイデオロギー〈反米主義〉とロッキード事件もアメリカ陰謀説を下敷きにした見解を開陳。田中角栄の口を借りた自説演説とも取れ、大川隆法の霊言と同じ匂いを感じ苦笑い。

    ◉読みどころ…石原さん、あなた角栄に弓を引いたよね
    それは〈長い後書き〉にある。
    田中金権政治に対し著者特有の言辞をもって糾弾した者が、なぜ田中角栄について筆を執ったか…その理由。

    そこに綴られた文章には、田中角栄に対する尊敬の念を虚心なく吐露。自身が東京都知事時代実現に至らなかった政策も、もし田中角栄が存命で力を借りることができていれば実現していたかも…と、政治手腕を高く評価。

    政治家 石原慎太郎は福田派の重鎮ではあったが、党人派議員にある泥臭さもなければ、派閥のために汗をかく議員でもなく、かと言って政策通でもなく、マスコミ受けするパフォーマンスが目立つ一言居士的存在であった印象が強い。

    都知事になり、ようやく政治家の仕事を難しさを肌身で知り、田中角栄の実績を見直ざるを得なかったのではないか。

    世に角栄本は数多あり、そこには『コンピュータ付きブルドーザー』ぶりが溢れる。さながら『歴史は英雄が作る』を地で行くような礼賛の嵐で鼻じらんでしまう。

    大学時代から政治家本に目を通してきた者からすると、ツッコミどころが多すぎのトンデモ本の匂いを放つが、〈政治家と文学者というデュアルレンズで見た田中角栄〉の生涯を描いたという点では、一線を画す角栄本であり、田中角栄という政治家を知る上において、184頁で総覧できる入門書としては好適かも…。

  • 過去を振り返って「田中角栄」なる政治家について、当時、批判的だった石原慎太郎が、改めて政治家・一人の人間として彼のことを書き下ろしたところに、改めてその「天才」さが感じられる。
    日本列島改造論や派閥闘争、ロッキード疑獄・・・田中角栄氏への賛否あれど、今の国会・政治家は「お国のため」何を訴え、実行しようとしているのか・・・
    国会審議では、無駄とは言わないが重箱の隅を箸でつつくような揚げ足取りの毎日。
    角栄氏の掲げたような政策とその実行を何故行わないのか?
    やはり、彼は「天才」だったのだろうと考えさせられた1冊でした。因みに自分は「凡才」以下だろうなぁ~

  • 改めて角栄の偉大な政治家に気付かされた。
    また角栄も人間だったな。

  • 天才が天才を描いた1冊。晩年しか知らない氏だけど、今太閤なんてもてはやされたのはわかる気がする。いつの時代も永田町は魑魅魍魎や牛頭馬頭のうごめく世界なんだろうけど、50年にひとりの逸材だったんだろうなぁ。失意の晩年になってしまったことが悔やまれるが、時代が変わっていたのかな、寵児だったころからは。

全80件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1932年神戸市生まれ。一橋大学卒業。55年、大学在学中に執筆した「太陽の季節」により第1回文學界新人賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞受賞。『亀裂』『完全な遊戯』『死の博物誌』『青春とはなんだ』『刃鋼』『日本零年』『化石の森』『光より速きわれら』『生還』『わが人生の時の時』『弟』『天才』『火の島』『私の海の地図』『凶獣』など著書多数。作家活動の一方、68年に参議院議員に当選し政界へ。後に衆議院に移り環境庁長官、運輸大臣などを歴任。95年に議員辞職し、99年から2012年まで東京都知事在任。14年に政界引退。15年、旭日大綬章受章。2022年逝去。

「2022年 『湘南夫人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石原慎太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×