人魚の眠る家 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 5126
レビュー : 410
  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344427303

作品紹介・あらすじ

「娘の小学校受験が終わったら離婚する」。そう約束していた播磨和昌と薫子に突然の悲報が届く。娘がプールで溺れた―。病院で彼等を待っていたのは、“おそらく脳死”という残酷な現実。一旦は受け入れた二人だったが、娘との別れの直前に翻意。医師も驚く方法で娘との生活を続けることを決意する。狂気とも言える薫子の愛に周囲は翻弄されていく。

感想・レビュー・書評

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  • 「この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。そして子供たちのために狂えるのは母親だけなの」

    ある日突然子供が事故で目覚めなくなる。
    そんな状況を誰が想像できるだろう?
    しかも「脳は機能していないが奇跡的に体の機能は保たれている」というかなり特殊な状態。
    娘は生きている?死んでいる?そんな曖昧な状態に置かれ、翻弄される母・薫子と家族の物語。

    おそらく脳死、という診断を受けながら、
    娘は生きていてまた目を覚ますかもしれないと希望を捨てない薫子。電気信号を体に流すことで娘の手足を動かしたり、笑わせたり…
    「彼女はすでに死んでいるのに気味が悪い」と周囲との溝が深まっていく。

    それにしても薫子の完璧主義というか、没頭ぶりには鬼気迫るものがあり、「こんな奴いる…?」と途中から若干引き気味…
    薫子の我が子を思う気持ちは十分分かる、けど近親者にこんな人がいたら堪らないなぁ…

    倫理的な問題は、他人と意見を合わせる必要がない
    また、意見を押し付けない
    最終的にそんな境地にたどり着いたとき、私もフッと力が抜けた。

    ラストとキレイにまとまって
    テーマは難しくても驚くほど読みやすくて
    さすが人気作家さんだなぁと

  • 他の作品のところでも記したが、著者の小説(文庫化後であるが笑)には、つい手が出てしまう。
    魅力的なタイトル(どういう内容だろうと興味をそそられる)と、読みやすさから。
    平易な文章と、読者の胸に問いかけるテーマの多様性により、普段あまり本を読まない人々も手に取り、ベストセラーになるのだろう。
    本作のテーマは、諸外国からは遅れているとみなされる日本の脳死と、臓器提供を巡る問題。
    娘の脳死を受け入れられない夫婦が、驚くべき方法(最先端の技術の応用)で、娘との生活を続ける。ここら辺は、如何にも理系出身の著者らしい発想。娘はこの先どうなるのだろうかと、読者は目が離せない。
    そして終盤、現代日本の法制の不完全さを衝く母親の行動には、頁を繰る手が止まらなくなった。
    遂に迎える終局は、著者のストーリーテラーとしての巧みさに瞠目。
    最後、母親が娘の遺影を前に語る。
    「この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。そして、子供のために狂えるのは母親だけなの」
    母は強し!

  • 【感想】
    かなり残酷でディープで、救いようのない物語でした・・・
    脳死した自分の娘を臓器提供せずに何とか生きつないでいく母子の物語。
    読んでいるとやはり母親の狂気性が目に余りましたが、いざ自分が同じ立場になったら決して非難できるものではないのかもしれないとも思えた。

    娘の死後、母親が言った台詞が胸に響きました。
    「何とも思いません。私がその人たちを説得する理由なんてありませんから。
    たぶんその人たちが私を説得することもないでしょう。」

    必ずしも、それぞれに色んな価値観がある中で、人と人とは分かり合えないものなのかもしれない。
    というより、他人と分かり合う事なんてそもそも必要ではないのかもしれない。
    色んな価値観を否定することなく生活する事は、普通に生きていく上でも必要な考え方だと読んでいて感じました。


    【あらすじ】
    答えてください。娘を殺したのは私でしょうか。
    娘の小学校受験が終わったら離婚する。そう約束した仮面夫婦の二人。
    彼等に悲報が届いたのは、面接試験の予行演習の直前。
    娘がプールで溺れたー。
    病院に駆けつけた二人を待っていたのは残酷な現実。
    そして医師からは、思いもよらない選択を迫られる。
    過酷な運命に苦悩する母親。その愛と狂気は成就するのか。
    愛する人を持つすべての人へ。感涙の東野ミステリ。


    【引用】
    p126
    横隔膜ペースメーカー。
    人工呼吸器を付けなくとも自発呼吸ができる。
    一言でいうと、横隔神経に電気刺激を与えることで、人工的に横隔膜を動かす装置。
    心臓のペースメーカーと発想は同じら、

    考案されたのはかなり前で、1970年代にはすでに成功法がある。

    日本では殆ど実施されておらず、器具の入手が困難な上、メンテナンスも複雑で、おまけに費用が高額である。


    p426
    「何とも思いません。
    私がその人たちを説得する理由なんてありませんから。
    たぶんその人たちが私を説得することもないでしょう。
    この世には、意思統一をしなくていい、むしろしないほうがいい、ということがあるの思うのです。」

  • 命についてとても考えさせられる小説。
    一見本編にはさほど関係のない、重要でないような事柄も、最後の最後に全部すっきりと回収される。
    手放しでハッピーエンドと言えるかは分からないけれど、いい終わり方だった。絶対に一度は読んだ方がいい。
    私は映画を先に見たので、映画のイメージがどうしても離れなかったが、生身の人間が演じた方が、よりこの作品のテーマをよく表していると思った。私は原作を先に読むことを普段は推奨しているが、この作品は映画を先に見ることを絶対におすすめする。

  • 眠れる人魚はいつ眼を覚ますのだろう
    いつ覚めるかはわからない眠りに
    それでも人魚の母はいつ眠りが覚めてもいいようにと
    娘をそっと優しく撫でる
    そっと
    そっと
    その手に狂気を孕みながら

    狂おしいほどの母親の愛情
    脳死、臓器提供に対する考え方を改めさせられた
    この本に出会えてよかった

  • 日本の死の定義によって、暫定脳死の娘とどう向き合うかをめぐる家族の話。久々に泣きました。いつが人間の死なのか、理屈と感情では死の線引きをさるラインも違う。自分自身の命なら合理的に処理できても、大切な人だったら?大切な人の死の線引きをする立場だったら?読みながら想像して答えが出せなくなって、それぞれの視点や価値観から考える死の在り方が、どれも正しくて、でも1つには絞れなくて切なくなりました。クローバーのくだり、母の葛藤、弟の苦しさ。映画も見たかったなぁと悔やみました

  • 興味深いも含めた面白かった。
    物語としても楽しめるし、命について考えさせられる。

    私が印象に残った言葉

    「この世には意思を統一しなくてもいい、むしろしないほうがいい、ということがあると思う」

    ありきたりだけど、葛藤し抜いた末に出た結論には、説得力があった。

    明るい話ではないけど、暗すぎるわけでもない。

    オススメ〜〜〜

  • かけねなしに面白いし、実際一気によめちゃうんだけど、テーマが重いなぁ。終わり方はきらいじゃないけどね。

  • 娘を愛するからこその母親の物語。少し前ならSFですが、今の科学なら本当にこんなことがありそうなお話でした。ミステリーというジャンルよりも空想科学的なものを感じました。

  • 離婚間際の夫婦の娘は、プール事故で突然脳死の状態になってしまう。一度は脳死判定を受け入れ臓器提供を承諾したが、娘の体が周囲に反応しているように感じ、延命処置を選択することに。

    脳死判定と延命処置というテーマがとても良かった。
    医療が進歩したゆえに、新たに生まれる問題。正解がないからこそ、人は他の選択肢の未来に思いを馳せてしまう。
    日本は臓器提供者がものすごく少ないそう。
    ただ、脳死判定を受け入れられない家族を責める理由はない。これを機に、自分の家族とも臓器提供について意思を確認しあった。

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著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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