東芝の悲劇 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344427594

感想・レビュー・書評

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  • 日本の産業のトップを走ってきた東芝
    先日、その東芝が上場廃止した。

    この本は東芝王国が崩れていく内部を描いたルポ

    東芝の悲劇は「模倣の西室、無能の岡村、野望の西田、無謀の佐々木」と評された4人のトップの起こしたまさに”人災”。

    「バイセル取引」と粉飾決算
    名誉と権力にこだわったトップ
    「おれがおれが」の手柄自慢
    プライドが高く間違いを決して認めないトップ
    そして時代を見ることができなかった原発推進

    結局、東芝は半導体、メディカルとこれから伸びゆくものを切り売り。で、社運を賭けたのがWHの原発事業って…。(のちにWHは倒産するんだけどね…)

    東日本大震災の時の原発事故で原発よりも他のクリーンな電源…とドイツは舵を切ったのに日本の政府・エネルギー庁は逆に「原発の必要性をごり押し」って…
    原発なんて田中角栄時代のもんでしょ。
    この本を読むと、東芝だけを笑うことは絶対にできない。日本政府のとんちんかんで時代を読めない対応はある意味、読めば読むほど怖い。

    まさにタイトル通り悲劇でしかない。

  • 大鹿靖明『東芝の悲劇』幻冬舎文庫。

    東芝に降りかかった悲劇は、悲劇と言うより、起こるべくして起きた自業自得の経営不祥事の結果と言って良いだろう。粉飾決算、原子力事業の失敗により事業の柱である半導体事業も放出する事態に陥った東芝……決して東芝だけではなく、組織が肥大化し、動脈硬化で小回りの利かなくった日本の大手メーカーが辿っていく末路ではないだろうか。

    形振り構わず多角経営に走り、民需をないがしろにした上で、利幅の大きい公共にしがみつく。それでも止血出来なければ、看板事業であろうが構わずに国内外問わず簡単に売り飛ばす。さらに傷口が広がれば、人材をも切り捨て、コンプライアンス違反をしてまでも財務諸表を整えようと躍起になる。こんな企業がいつまで生き残れるのか……東芝だけではなく、三菱自動車にしろ、日本電気にしろ、生き残っていることが不思議だ。

  • アメリカ出張帰りに一気に読了
    自分の会社との共通点が多く、危機感を抱いた。

    自分ができることに集中すること、環境を選ぶことは肝に銘じたい。

    下記は類似点
    ・穏健な社風。胆力のある人がいない。
    ・チャレンジ制度。無理な目標が粉飾を招く
    ・買収の失敗


    傍流+院生は赤信号

  • 東芝は酷すぎる

  • 東芝の粉飾決済の不祥事を中心とした経営危機について、粉飾を行った歴代社長に焦点をあてて書いてある。

    歴代社長の人柄に関わる背景が書いてあることが面白い。入社後のエピソードだけでなく、幼少期や学生時代のエピソードまである。権力や競争を好む性格の人もいれば「こんな人が不正をするの!?」と言いたくなるほどの品行方正な学生時代の人もいて、人間ドラマとして面白く読めた。

    東芝内部の権力闘争について書かれていることがこの本のキモだと思う。
    経団連のトップのための条件である会長職・社長職のポストを巡って東芝の歴代社長で争ったり、社内での求心力を高めるために自身の出身の部署の赤字を隠すために粉飾決済を行うなど、権力を求めて倫理から外れていく様が滑稽だった。

    【印象に残った場面】

    ・ウェスチングハウス社の買収に関して、不必要に企業の買取価格を上げた場面。

    東芝は売り手側の内部と繋がって競合相手の三菱重工などの入札額の情報を手に入れていた。しかし、実はそれがブラフで売り手側は入札する各社に情報を流し、当初の予定額の3倍に価格を吊り上げたというもの。この入札額が、理屈では説明がつかない値段になったことで東芝は信用を失い、原発事業のお金の工面に苦労する。
    売り手側に商売上手を感じると共に、挑戦するときには身を引くラインを考えておくのが大切だなと教訓を得た。

    ・東日本大震災の話。

    東日本大震災で東電の原発が爆発したことで、東芝・東電の原発事業への信用が無くなり、また世界的にも原発が歓迎されにくい方向に進んだことが東芝失墜の1つの要員になった。たらればを言うと、この爆発が無ければ東芝は現状ほど悪化しなかった可能性もあるので、運命を決定づけるのは予想もできない何かなのだなと無常を感じた。


  • 良本。技術力があっても、トップがダメなら全てダメを分らせてくれる。しかし、トップを育てるのも企業の役目なのだとしたら、そもそもの企業文化にも問題があったのだろうか。
    大企業であるがゆえに、ここにいれば安寧だろうと、苦難を自分ごとと捉えられない人は多い。自分が、どれほど会社のことを自分ごとと捉えているのだろうか?やはり自分ごとと捉えてこそ行動に移せるのではないかと強く思う。
    改めて見直すよいきっかけであり、会社である以上技術だけでなく経営面にも注意を払うべきと改めて気付かせてくれた。

    しかし、最後東芝メモリに救済の手が差し伸べられていく様には、やっぱりメーカーは技術力さえあれば生き残れるのか…と強く感じた。

  • 会社の運命は,トップにかかっているということでした.

  • 凄い取材力。そして取材対象に媚びず徹底的に責任追及の描写。素晴らしい。西室、西田、佐々木、田中の四代でいかに物事がおかしくなったかや、傍流からのトップがなぜ成功しないのかの理由もよく分かった。

  • 当時、上場廃止かというニュースを横目で見ていた程度で、大企業なのに大変だなと漠然と思っていた。最近、ビジネス会計検定を受けて財務諸表の分析や各種指標など勉強したこともあって、きの文庫が目にとまり購入。
    読み進めるうちに、愕然とし気分が悪くなるくらい当時の経営陣に嫌悪感を抱いた。
    一般に仕事ができる=経営ができるというのも違うんだなと感じたし、結構前から利益重視よりキャッシュフローと言われていたけれど、当時の社長たちの利益固執の酷さ。その行き着く先が粉飾。『粉飾』という明確な意識はなくとも、「バイセル取引で乗り切るしかない」という表現をしていること自体、正常ではないと認識していたはず。著者が語るように、傍流からのトップと院政はセットで企業を崩壊させるのは納得。
    うちには東芝REGZAがあって愛着があったのだけど、いつの間にかこれも中国の傘下に。。
    財務の独立性の大切さが身にしみた。
    利益重視に走るおかげで、法人税と配当金を不要に巨額流出。キャッシュフローを合わせて見たときの、経営の危機がよくわかる。

  • 何代にもわたる経営トップの強引で良識に欠けるデタラメなマネジメントと、組織ぐるみの利益水増し工作が東芝を崩壊させていった。その経緯を関係者への取材を通じて丹念に描いたドキュメンタリー。

    独善的で強引なトップが道を過とうとしているとき、部下がそれを諌めようとしても聞き耳持たず、逆に叱責され、左遷させられる可能性があるというような状況下で、部下として一体何をやり得るだろうか。馘覚悟で諫言するのが格好いいのだろうが、自分の生活基盤をも失うことになりかねないし。考えさせられるなぁ。最後の手段として内部告発という手もあるが……。

    東芝の悲劇は、どの組織にも簡単に起こり得る事だけに、とても他人事とは思えなかった。

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著者プロフィール

ジャーナリスト・ノンフィクション作家。1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。88年、朝日新聞社入社。アエラ編集部などを経て現在、経済部記者。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』(講談社)をはじめ、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』(以上朝日新聞社)、『ジャーナリズムの現場から』(編著、講談社現代新書)、『東芝の悲劇』(幻冬舎)、近著に取材班の一員として取り組んだ『ゴーンショック 日産カルロス・ゴーン事件の真相』(幻冬舎)がある。

「2021年 『金融庁戦記 企業監視官・佐々木清隆の事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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