- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344427617
感想・レビュー・書評
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久しぶりに小川糸さんの作品を読了した。温かく優しく包まれているような感覚で読み終えた。目次には、夏、秋、冬、春と記されていて、季節を感じながら読み進めていくのだろうなと想像世界が広がった。その後のページには、鎌倉案内図。この案内図に描かれている鎌倉の名所や店などが、どのような舞台となり、物語が展開されるのか、わくわくしながらページを捲った。
まずは、夏の物語。舞台は神奈川県鎌倉市とそこにあるツバキ文具店。その文具店を営みながら住居としているのは主人公、雨宮鳩子。通称ポッポちゃん。その他にも魅力的な登場人物が登場する。鳩子のツバキ文具店の左隣に住んでいる、通称バーバラ婦人。鳩子にとって、気が許せる食事も共にできる相手。パッと海外旅行に出掛ける行動的で快活なイメージ。
雨宮家は江戸時代から続く代書屋でもあった。そのような生業が受け継がれてきたという世界が、作品世界へと想像を膨らませる。代書屋に依頼する必要感がある人がいるということが、作品世界を作っている。鳩子は11代目であり、10代目は鳩子の祖母。物語では先代という呼び名で登場する。古くは右筆と言われ、やんごとなき身分の方やお殿様に代わって代筆を行っていた。それが、受け継がれて鳩子の代まできたということ。歴史と伝統を感じながら、作品世界へと入っていった。鳩子の時代は、祝儀袋、命名書、看板、賞状等、とにかく書く仕事であれば請け負っていた。ただ美しく書くというだけでは成り立たないだろうなといろいろな書き物があることから想像した。
先代が亡くなって半年経っていた。2人の関係も徐々に明らかになっていく。先代と鳩子は離れて暮らしていたこと、鳩子が戻ってきたこと、その理由も。鳩子の回想シーンでは、先代からの指導が丁寧に描かれている。墨磨りから教わる場面は、静寂と緊張が伝わってくる。しかし、6歳の鳩子の様子は、きらきらしていて、喜びの方が伝わってくる。習い事の始まりは、そういったこともあるかな、ただ、その後の気持ちはどうなっていくのだろう、必ずしも気持ちは高いままではないだろうなとも想像していた。先代の指導は厳しかった。鳩子が先代に対して反抗したのは、高校2年の夏。同級生たちの楽しい夏の生活が、自分の練習の日々との違いからくる不満となって爆発した。この頃は、そうなる時期なのかもしれないな。この先の展開がどうなっていくのか、現在の代書屋としての生活にどうつながっていくのだろうと気になりながら読み進めた。
そして、話は現在に戻る。依頼された代書仕事、元夫という方の知人への離婚の報告。元夫39歳、元妻42歳、結婚15年、元妻に好きな人ができたことが原因。訳ありな感じが漂う。鳩子は、元夫に質問しながら書く内容を考えていく。依頼者の要望を聞きながら、また鳩子からも尋ねながら、文書が作られる。こういった手紙が、この後も同様に出てくる。依頼者の背景や要望、渡したい相手は、それぞれ違う。けれども、どの依頼主にも誠意をもって接し、プロの代書屋として誇りをもって、書き上げ完成させる。自筆と分かるように掲載されている手紙に、小川糸さんのこだわりと繊細さを感じる。臨場感が高まり、作品世界の中に入り込んでいった。便箋にもペンやインクにもこだわり、内容が伝わるものを選ぶ、そこに楽しさも感じつつ、文具店の魅力も感じる。
秋の物語で登場する小学校の先生、楠帆子、通称パンティー。名前が「はんこ」で「ティーチャー」だから、「ハンティー」から「パンティー」に。ひょんなことから鳩子と出会い、バーバラ婦人ともつながっていた。人との出会いとつながりが楽しい。それは、小川糸さんが描く登場人物が個性的で魅力を感じるからだろうな。想像の世界が広がり、楽しくなる。もう1人の登場人物、着物姿でツバキ文具店の界隈を歩いている偉丈夫の男性、通称男爵。鳩子が幼少のころを知っていて、先代からの付き合い。言葉は乱暴だけれど優しさが滲む。鳩子との掛け合いが楽しい。様々な背景を抱えた登場人物が、ツバキ文具店を訪れ、鳩子に代書仕事を依頼する。どの登場人物も細かく丁寧な小川さんの描写により、引き込まれていく。鳩子や依頼人の感動が、胸にぐっとくる。先代から受け継いだ代書屋にやりがいを感じていく鳩子。人との出会いや仕事の充実感が、そう感じさせていくのだろうな。
冬の物語。ひょんなことから、旧暦の正月に鎌倉の七福神めぐりに誘われ、行くことにする鳩子。メンバーは、バーバラ婦人、パンティー、男爵の4人。この間の会話や行程は楽しく、読んでいて心地よかった。こういうことができる関係って、いいものだろうな。この七福神めぐりは、ラストに向かって起こる新たな展開はの伏線になっていることが明らかになっていく。小川糸さんのさりげなく細かな描写が嬉しくなってくる。
ツバキ文具店を訪れるイタリアからの客、アンニョロ。通称ニョロ。訪問の目的には驚かされた。ニョロの母、静子と先代が文通をしていたということ。そして、紙袋の半分ほどに入っていた先代が送ってきた手紙113通を持参していた。そこには、鳩子の知らない先代の思いが溢れていた。書いた先代、読む鳩子の思いを想像し、胸にぐっとくる。特に、先代が病に倒れ、最期を悟り病床から静子に送った最後の手紙には、字にも内容にも胸に迫ってくるものがあり、ぐっときた。
最後の物語は、春。重要な登場人物で、母親がいない、父親が1人でカフェを営んでいる娘、守景陽菜。通称、QPちゃん。バーバラ婦人宅で桜を愛でる花見に誘われる。当日は、気のおけるメンバーが集まって、賑やかな穏やかな空気が感じられた。自己紹介タイムが始まる、この中で衝撃の告白もあり、楽しくも賑やかな雰囲気が楽しく伝わる。ラストに向かって、守景父娘と鳩子に新たな展開が起こる。そこには、守景の妻の事実が明らかになり、衝撃を受ける。とつとつと話す守景と衝撃を受けながらもその話を受け止める鳩子。ざわざわした感じがありながらも、2人の様子は穏やかでいいなと思う。2人の間にあるいい空気を感じる。そして、先代のことを話す鳩子。自然に語り合う2人が優しく温かく微笑ましい。ラストは鳩子から亡き先代への手紙を書くシーン。穏やかでありながらも、すっとした気持ちになる。思いを表出することの大切さを思う。
この作品には続編があり、読むのが楽しみになった。どのような展開が待っているのだろう。 -
これはよかった!
ほんわりと暖かい気持ちなる物語。
鎌倉が舞台です。鎌倉に遊びに行きたくなってしまいました。
とくに、出てくるお店をググりました。実在なのね!
これはいかなければ(笑)
主人公鳩子はポッポちゃんと言われる手紙の代書屋。
鎌倉で文具店を営みながら、様々な人からの依頼をうけて手紙の代書を行います。
これが単純に手紙を代筆するということだけでなく、紙を含めた用具にもこだわり、さらに、何で書くのか、どんな書体で書くのか、そして切手にまでこだわります。
その代書の目的に応じて、その依頼主のために真心こめた形として手紙を創作(そう、創作だと思います)していきます。職人技!
この設定がすごい。
さらにさらに、手紙の書き方やマナーを学ぶこともできます(笑)
本書をよむと、やっぱり字がきれいになりたいなぁって思います。プロの字じゃなくてもいいから、味のある字を書きたい(笑)
自分自身、字が汚いので、もっぱらパソコンでの印刷で、どんどん手書きをしなくなっているなぁ
ということで、本書はとってもお勧め。
手書き文字が好きになる
鎌倉に行きたくなる
美味いものが食べたくなる -
「後悔しないなんてありえないんです。
なくしたものを追い求めるより
今掌に残っているものを大事にすればいいんだって」
たとえ祖母に直接恩返しができなくても
祖母はポッポちゃんの身体の中に生きている
手紙の中に
人に寄り添うことができる文字のなかに
ふだんの挙措動作の中に
離婚を伝える手紙も
絶縁状も
天国からのラブレターも
祖母への手紙も
みんなみんな素敵だった。
鎌倉に行くと行きたくなるパン屋さん
お土産には欠かせないあがり羊羹
鎌倉に行きたくなる
そして手紙が書きたくなる
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小川糸は、好みの文体なのでハマることを怖れて手をつけなかった。昨年夏に妹が脚を骨折して2ヶ月間入院した。暇なんでなんか本を持ってきて、とのたまうので宮部みゆきやら北方謙三やら東野圭吾やら上橋菜穂子やら持ってゆくと、半分近くは読んでくれたようだ。その時に、「私が読んで良かったのは、ツバキ文具店、あれは良かった」と言った。テレビでやっていたので、だいたいの中身は知っていたので、あ、そう、と応えておいた。が、ずっと引っかかっていた。妹が本を薦めるのは、かなり珍しい。
やっと手をつけた。
古い佇まいの文具店。先代の遺したものを、どのように生活に取り入れるのか。私たち兄妹にも共通の景色と課題があり、少し彼女の気持ちが見えたところで、話の中に次第と入ってゆく。
まさかひとつひとつの手紙を、全てプロの書家に頼んで我々に提示してくれていたとは知らなかった。テレビドラマでは一瞬で終わる手紙を、じっくり味わうことができる。萱谷恵子さんの描く字は、芸術家の書ではなくて、いわば職人の書だ。注文に応じて、注文者が満足するように仕上げる。決して展覧会に掲示されることはなく、でも誰かが喜んでくれる。ペットのお悔やみ状、離婚報告書、元カノへの近況報告手紙、借金御断りの手紙、天国から妻へのラブレター、近所の5歳の女の子QPちゃんへの手紙、絶縁状、そして大切な亡き祖母へ書くあるがままの自分の手紙。総てを、こうでなくてはいけない文具の体裁を整えて我々に提示する。ほとんど芸術だけど、アートじゃない。発信する人と受け取る人、その人たちの気持ちがあってこそのかけがえのない世界で、一つの手紙だ。断じて芸術じゃない。職人は丁寧な生活をして、丁寧な作品を仕上げる。
作家・小川糸がどうやらそういう生活を送っているだけでなく、字描きの萱谷恵子さんも、「書道家」ではなくて、普段は映画の美術などをしている職人らしい。
でも単なる代書屋じゃなくて、唯一無二の職人だろう。私の県に代書屋ってあるのだろうか、と検索したら案外あるわあるわ。表彰状から選挙の必勝まで、考えたらプロの書は巷に出回っている。でも決して鳩子さんのように、相手の意を汲んだ「手紙」は書かない。書けない。少なくとも、調べた限りでは鳩子さんのような代書屋はいない。「続編」は紐解くことに決めた。
妹が発見することは決してないだろうけど、文庫の左上スミにパラパラ感想を書いて置いてみた。一画一画描いていけば良いので、左下スミのパラパラ漫画のように凝ったもんじゃない。90ページ分使った。
「初小川糸、面白かったよ」と。 -
ああー、私ったら何故この作品に今まで手を出さなかったのでしょう?!
週末のちょっとお疲れ気味の私の心に、ドストライク直球を投げ込まれました(*_*)=3=3=3
涙腺が緩み、胸の奥がザワザワしています
まずは、なんといっても地元の人との心地良い距離感が気に入りました
決して押し付けがましくなく、心の痛い所にスッと入っていく温かくて憎い演出に心揺さぶられました
__後悔しないなんてありえない
失くしたものを追い求めるより、今、手のひらに残っているものを大事にすればいいんだ__
本当にそう思います、わかっているんです
でも時々忘れちゃうんです
次に代書屋の仕事をする時の凛とした空気感が良かったです
依頼人の気持ちに寄り添って、また送られる側の気持ちも考えて代筆する訳ですが、とても一筋縄ではいかない商売ですよね
字そのものですら、自分の字以外にそうそう簡単に変えられないですよね
またそれに見合った筆記用具や便箋、封筒、切手の選択
求められているものが多くて、本当に奥深い職業だと思いました
あとは、物語を通して鎌倉の海と山に囲まれた自然の美しさや、四季の移り変わりが感じられて素敵でした
鎌倉は若い頃からずっと私のお気に入りの場所の一つで、年始の初詣から始まり、年に何度か訪れます
作中に出てくる神社、寺、店巡りを是非したいと思いました
読んで良かった。。。
次の『キラキラ共和国』も勿論読みます-
ハッピーアワーをキメたK村さん、おはようございます!
ぜひぜひ「キラキラ共和国」と
「椿ノ恋文」を読んでくださいね(*^^*)
私、こ...ハッピーアワーをキメたK村さん、おはようございます!
ぜひぜひ「キラキラ共和国」と
「椿ノ恋文」を読んでくださいね(*^^*)
私、このシリーズも大好きです♪
鎌倉にも行きたくなるし、
手紙を書いてみたい思いにかられますよね!2023/12/11 -
かなさん、おはようございます
良いですよね、このシリーズ!
癒されちゃいます
鎌倉も行きたくなりますよね
今朝から早速続編読み始めています
...かなさん、おはようございます
良いですよね、このシリーズ!
癒されちゃいます
鎌倉も行きたくなりますよね
今朝から早速続編読み始めています
もう入籍していてびっくりなんですけどね(*≧∀≦*)2023/12/11
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年が明け、元旦最初の私の仕事。子どもの頃のさてさては家族に届いた年賀状の山を仕分けするのが毎年の役割でした。父宛に届く300通ものハガキの山に、自分も大人になったらこんなに多くのやりとりをするのだろうかと思ったものでした。大量のハガキを仕分けする中で、作業的に仕分けるものと、ふと手を止めて眺めるものが明確に分かれました。仕分けですから見るのは宛名です。ゴシック体なんか使うなよな、とか郵便番号欄ずれてるよとか、印字されているもので手を止めるのはマイナス視点で見るものばかり。一方で、本気で手を止めるのは手書きのもの。これ凄いなあ、自分の住所と名字、この人なんかよりずっと書くことが多い自分の属性。それにも関わらず自分にはとても書けない美しいそのハガキの上の手書きの文字に見とれることがありました。印刷ボタンを押して自動で差し込まれた文字と、宛名の人を思い浮かべて書かれた文字。それを受け取った人が自分宛に届いたものとして両者を見た時に違う思いを抱くのは当たり前なのかもしれません。でも、手書きだからと言って果たしてそれは差出人本人が書いたかどうかはわかりません。この作品は、そんな手書きの文字の裏に隠された物語です。
『私は、小高い山のふもとにある、小さな一軒家に暮らしている』という主人公・雨宮鳩子。『三年ほど前に先代が亡くなったので、今は古い日本家屋で一人暮らしだ』という鎌倉に暮らす鳩子。『雨宮家は、江戸時代から続くとされる、由緒正しき代書屋』であり『江戸時代に大奥で働いていた右筆のひとりが、雨宮家の初代』とされ、鳩子が十一代目と聞かされて育ちました。『代書屋』とは『古くは右筆と呼ばれた職業で、やんごとなき身分の方やお殿様に代わって代筆を行う』お仕事。しかし時は流れ、今は『祝儀袋に名前を書いたり、記念碑に彫る文書を書いたり、看板、社訓の類の文字を書くのが主な業務』で、『表向きは、町の文具屋にすぎない』と『歩いて数分のところに小学校がある』立地の『ツバキ文具店』をひとりで切り盛りする鳩子。そんな鳩子は小さい頃から先代である祖母に書道を学んできました。『私にとって六歳の六月六日は、待ちに待った書道デビューの日だった』と振り返る鳩子。『小学校時代はひたすら習字の修練に明け暮れた』という鳩子は『先代がつきっきりで』最初は『○』、次に『平仮名』、そして『漢字』と順に学んでいきました。しかし、生活の全てが習字の修練に当てられ、他の楽しみをすっかり奪われた高校時代、ついに鳩子の気持ちが爆発します。『うるせぇんだよ、糞ババアだまってろ!』と『わかりやすい形で不良』になり『ガングロ街道をまっしぐらに』ひた走ります。それも大人になり『今となってはガングロ時代の自分を知る人に会うのは、とても恥ずかしい』と感じる鳩子。先代の後を継ぎ、次から次へと訪れる代書の依頼に向き合ってゆくのでした。そしてこの作品はそんな鳩子の『夏』から始まる一年を季節の移り変わりを巧みに取り入れながら描いていきます。
『他の人に代わって文書を書くこと』それが代書。そして、それを家業とする雨宮家。例えばお悔やみ状を代筆するには『墨の色をあまり濃くしない』。これは喪中ハガキでよく見ます。『墨の色を薄くするのは、悲しみのあまり硯に涙が落ちて薄まったため』という理由があること。『たびたびや再び、重ね重ね、繰り返しなど、忌言葉を使わないこと』などの決まり事があること。そして、代筆に向かう姿勢を『私は、静かに筆を持ち上げた。世界中の悲しみという悲しみを、瞬間、涙腺を磁石のようにして吸い集める』と表現していきます。『離婚を報告する手紙、就職失敗を励ます手紙、絶縁状』、と面と向かって言いにくいことを文字にする場合が大半を占めるその仕事は思った以上に多岐に渡りました。また、これは面白いと思ったのは切手選びのシーンです。金銭絡みの『謝絶状』の依頼を請け負った鳩子。便箋を作成し、封をした後に切手を貼ります。ここで『切手は、金剛力士像の図柄を貼った。厳然たる謝絶状である』と封筒に貼る切手にまで拘わりをみせます。『金剛力士像の切手は五百円だが、絶対にお金は貸せないとする強い意志を示す』ためには切手の額面の金額は関係なく、図柄のインパクトを重視するという発想。『優しい印象の切手を貼ったら、相手はまた無心するかもしれない』という理由。自分の仕事の隅々にまでこだわりを見せる本物のプロの仕事をとても感じた瞬間でした。
また、小川さんらしく食べ物に関する表現もとても魅力的です。庭で手紙を燃やして供養するという一幕でバウムクーヘンを焼くという光景が出てきました。『外側の皮はふんわりと柔らかくなり、中のクリームはトロトロになっていた』、とそもそもそんな食べ方があるのか!ととても興味をそそります。そして『そのトロトロのところを、フランスパンにつけたり、おにぎりにのせたりする。でも、一番相性が良かったのは、意外にもさつま揚げとの組み合わせだった』というまさかのさつま揚げとの組み合わせを持ってきます。これはまさしく経験者が語る記述。すぐにでも試してみたくなりました。また、『ツバキ文具店』のある『鎌倉』という街の食にも焦点を当てたシーンがありました。例えばカレー。『老舗だとキャラウェイが有名だし、若者たちに人気なのはオクシモロンだ。長谷の方まで行けばウーフカレーがあるし…』と実在する人気店を紹介していく様は、この作品自体のリアルと創作の垣根が分からなくなるとても面白い効果を生んでいるようにも感じました。『鎌倉』に暮らすみなさんにはたまらないシーンなのではないでしょうか。
『代書屋っていうのは、昔から影武者みたいなもので、決して陽の目は見ない。だけど、誰かの幸せの役に立つ、感謝される商売なんだ』と語った祖母。『自分で自分の気持ちをすらすら表現できる人は問題ないけど、そうできない人のために代書をする。その方が、より気持ちが伝わる、ってことだってある』と気づき、代書という家業を継いだ鳩子。様々な事情を抱え、悩み、苦しみ、鳩子の元を訪れる人々。そんな人々の代わりに代書を行う鳩子はいつもそれらを自身のこととして、依頼の一つひとつに誠実に丁寧に向き合ってゆきます。『昔から、餅は餅屋って、言うじゃないか。手紙を代書してほしいって人がいる限り、うちは代書屋を続けていく、ただそれだけのことなんだよ』という祖母の言葉。時代が変わっても、世の中が変化しても、人と人の間にコミュニケーションが存在する限り、代書屋という仕事は続くのだと思います。
この作品では、依頼を受け、鳩子が仕上げた手書きの代書がそれぞれのシーンに画像として掲載されています。活字とは違う、『手書き』で書かれたその代書を読んだ時、同じ本を読んでいるにもかかわらず、心の違う部分が動くのを感じました。時代が変わっても、それを書いた、書いている人の顔が思い浮かぶ『手書き』の価値はいつまでも変わらない、そんなことも感じさせてくれた作品でした。-
kurumicookiesさん、こんにちは!
私も作家さんということでは偏りが大きいですが皆さんの読書歴を参考にさせていただいています。ku...kurumicookiesさん、こんにちは!
私も作家さんということでは偏りが大きいですが皆さんの読書歴を参考にさせていただいています。kurumicookiesさんとは結構似た感じの読書歴にも思い感想参考にさせていただいています。
ありがとうございます。2020/05/31 -
こんにちは、さてさてさん。ご無沙汰しております。
さてさてさんのレビューを全て拝読しておりませんが、この作品がとても鎌倉好きな私にとり、印...こんにちは、さてさてさん。ご無沙汰しております。
さてさてさんのレビューを全て拝読しておりませんが、この作品がとても鎌倉好きな私にとり、印象的でした。事後報告で申し訳ございませんが、私の本棚に登録させて頂き、ブックリストの説明にさてさてさんのお名前をお借りさせて頂きました。手順が逆で本当に申し訳ありません。
言い訳になり私事ですが、体調により中々タイムラインのレビューを全て読みきれないのですが、今後もさてさてさんのレビューを楽しみにしております♪
今年もあと僅か、良いお年をお迎え下さいませ。
来年もよろしくお願い致します。
2023/12/30 -
村上マシュマロさん、こんにちは!
読みたい本でブックリストを作成されたのですね。全く大丈夫です。
鎌倉が舞台のなるこの作品、とても良いで...村上マシュマロさん、こんにちは!
読みたい本でブックリストを作成されたのですね。全く大丈夫です。
鎌倉が舞台のなるこの作品、とても良いです。現状三冊まで出ていますが私もブックリストを作成しました。
https://booklog.jp/booklists/62940
こちらこそありがとうございます。
村上マシュマロさんも良いお年をお迎えください。
よろしくお願いいたします。2023/12/30
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ツバキ文具店シリーズが最近刊行されたこともあって、興味があって本作を手に取りました。鳩子さんの頑張りと依頼者の思いにホッコリする作品でした。
本作は文房具屋さん兼代書屋さんを営む主人公、鳩子の物語。代書屋とは文字通り、文字を代筆する職業で、主な依頼としては、結婚式の案内や公的な文書、年賀状などの代筆が一般的なのかなと。本作では絶縁状や離婚通知など様々な文章の代筆が依頼され、それを鳩子が依頼者の想いに寄り添い、文字を認めるというお話し。
SNSや電子機器の流行で文字を書くことが少なくなった現代において改めて、手書きの持つパワーを感じる作品だなと思いました。本作では鳩子さんがしたためた文章が実際に載っているのですが、文字から読み取れる印象が全然違うことに驚きを隠しきれませんでしたし、そこまで文字にこだわって依頼者の想いに寄り添う鳩子さんの姿は素敵だなと思いました。 -
続編が3冊目まで出たお知らせを見て、最初の1冊目を読みたくなり購入。四季の名前を冠した各短編は内容が重く、心温まる内容。シリーズ化される理由が分かる。
代書屋として出した手紙も掲載されていて、相手に応じた書式や文言、字の美しさに感嘆する。年賀状含め50年来、パソコンで作って来たことが恥ずかしくなる。(といって、元上司に御礼状を昨日出したのも、迷った末にメールだが···)
古都鎌倉の風景も相まって物語に深みを与えるが、気になったのが人の名前。バーバラ婦人、男爵、ポッポちゃん、QPちゃんときて、パンティーちゃんは恥ずかしくなる。『食堂かたつむり』のおっぱい山を思い出す。
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どうしても車に乗ることが多かった今月。
本が読めない!ああ、ストレス溜まるぅ...。
はっ!こういう時にこそ「Audible」なのでは?
この本は再再?読で内容をうっすら覚えていたので、私の初Audibleとしてはとても最適だった。
何故ならたまにぼーっとしてしまう時があって、先に話が進んでるぅ...車中で話を戻すのはちょっと難しい...ところどころ想像で繋ぐ(^^;)
それでも、景色を見ながらの読書もなかなかよかったです。
多部ちゃんの朗読だったこともあり、とーってもとーってもよかった。大好きな本ではあったけど、こんなに心に沁みるとは...人の奥底にある見えない哀しみを、みんなの優しさで多部ちゃんの声で包んで癒してくれるこの空気感。日々少しずつ硬くなってた心がじわぁ〜っと解けた瞬間が分かりました。
紙の本も昔手放してしまったけれど、今日また買いに行きました。疲れた時とか、自分をニュートラルに戻したい時とかに手に取れるように。これからもずっと側にいてもらう本にしようっと。-
ぽんたさん、今年もよろしくお願いします♪
この本いいんですよ〜ほっこりなんですよ〜
私も始めは「ふっAudibleなんてさ...本はやっぱ...ぽんたさん、今年もよろしくお願いします♪
この本いいんですよ〜ほっこりなんですよ〜
私も始めは「ふっAudibleなんてさ...本はやっぱり紙で読むものよ」なーんて思ってましたがこれがなかなかいいんですよ...負けた感...(勝負はしてない笑)
是非是非Audibleチャレンジを〜*\(^o^)/*2025/01/03 -
へぶたんさん、こちらこそ今年もよろしくお願いいたします!(^^)
そしてご返信もありがとうございます。
確かに普段紙派からしたら、そんな感...へぶたんさん、こちらこそ今年もよろしくお願いいたします!(^^)
そしてご返信もありがとうございます。
確かに普段紙派からしたら、そんな感じになっちゃいますよね笑
せっかくの新年なので、Audible含め色々新しいことに取り組もうと思います!!
今年は昨年よりも沢山本を読むこと目指してお互い励みましょ!( 'ω' ≡ 'ω' )2025/01/04 -
新年には、ポコポコとやりたいことは浮かんでくる笑
新しいことしてみたいですね、ほんと。
新ジャンルにも挑戦したい(毎年言ってる?笑)
とりあ...新年には、ポコポコとやりたいことは浮かんでくる笑
新しいことしてみたいですね、ほんと。
新ジャンルにも挑戦したい(毎年言ってる?笑)
とりあえず楽しい本、読みましょ!*\(^o^)/*
2025/01/04
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とてもよかった。じんわりと優しさが心の内に広がるような作品。
鎌倉の小さな文具店で手紙の代書屋さんをやっているポッポちゃんこと鳩子。彼女の周りには、バーバラ婦人や男爵など、温かく素敵な人柄の人たちがいて、彼女らによって物語は優しく紡がれていく。
自分で手紙を書きたくても書けない事情のある人たち。その人たちのために代書屋はある。彼女のもとへやってくる依頼は、友人への絶縁状や借金のお断り、天国からの手紙など、どれも一風変わったものばかり。
そんな依頼人の心に寄り添って手紙を綴る。一字一字に想いを込めて。やはり手書きの手紙は温かい。
想いに触れた瞬間、心の奥深くにある繊細でやわらかい部分に触れられたみたいに、胸がキューっとなる。手紙を書くという行為はとても尊いことだと思った。
小学生の頃に友だちと文通をしていた頃が懐かしい。毎回手紙が届くのが楽しみだったっけ。手紙を送りたい相手がいるって素敵なことだったんだなぁ。
もっともっとこの物語に浸っていたかったくらい良かった。続編も出ているのが嬉しい。またポッポちゃんたちに会えるのが楽しみ。-
かなさん、はじめまして!
でもなかったですね♪私もコメント欄でお見かけしておりました(*^^*)
いいねとフォローありがとうございます♪
...かなさん、はじめまして!
でもなかったですね♪私もコメント欄でお見かけしておりました(*^^*)
いいねとフォローありがとうございます♪
「ツバキ文具店」とてもよかったです!
手書きの手紙っていいですよねぇ。
最近は手紙を書く機会がほとんどないですが、描きたくなっちゃいましたっ♪
「キラキラ共和国」のあとに「ツバキ文具店の鎌倉案内」ですね!ふふっ楽しみです(*´∇`*)
かなさんの本棚はちょこちょこ覗かせていただいて、好きな作品がたくさんあるなぁと気になっていました!
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。2023/07/06 -
ひろさん(@^▽^@)初めまして
アールグレイと申します!
フォローバックありがとう!
この本は今、図書館予約中です。もうそろそろ廻ってく...ひろさん(@^▽^@)初めまして
アールグレイと申します!
フォローバックありがとう!
この本は今、図書館予約中です。もうそろそろ廻ってくるようです。雑食系でいろいろな分野に手を出す私です。まことさんに影響されて、短歌まで考えるようになりました!
遅読ですが、楽しんでいきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします!2024/04/20 -
アールグレイさん、はじめまして(*^^*)ひろと申します。
こちらこそ、フォローありがとうございます♪
『ツバキ文具店』素敵な作品ですよね!...アールグレイさん、はじめまして(*^^*)ひろと申します。
こちらこそ、フォローありがとうございます♪
『ツバキ文具店』素敵な作品ですよね!アールグレイさんのレビューを拝読し、またジーンときてしまいました(∩˘ω˘∩ )♡続編も楽しみですね!
そして私もまことさんの影響で短歌に興味を持ちました!楽しみにとっておいている一冊があって、今取り組んでいる勉強が落ち着いたら読むつもりです♪
同じく雑食系かもしれませんwいろいろ楽しめたらいいですよねヽ(* ´ ∀`*)ノよろしくお願いします!2024/04/20
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著者プロフィール
小川糸の作品






この作品、途中まで読んで、ずっと図書館から借りてきた他の作品(貸出期限のあるもの)を優先して...
この作品、途中まで読んで、ずっと図書館から借りてきた他の作品(貸出期限のあるもの)を優先してきたのですが、続編も含めて、次は読んでみます。ヤンジュさんのレビューがいい予習になりました。