殺人鬼にまつわる備忘録 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344427921

感想・レビュー・書評

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  • これは読む人によってラストの解釈が違ってしまう話という認識で良いのだろうか。

    前向性健忘症で、数十分しか記憶がもたないという二吉。
    備忘録をノートにメモしているのですが、ある日、記憶を改竄できる超能力を持った殺人鬼、雲英光男(きらみつお)に出会います。

    この殺人鬼の能力と、二吉の健忘症との相性が悪く、殺人鬼にとって二吉は邪魔な存在になります。

    なくなる記憶と、重要な殺人鬼に纏わるメモ、記憶を改竄しまくる殺人鬼との戦いには目が離せなくなります。

    記憶に関するお話しは「失われた過去と未来の犯罪」と似たような印象がありましたが、数十分しか記憶が持たない点以外は全く趣旨が違うものでした。

    小林泰三の小説は、分かりやすい文体とテンポの良さで、あっという間に読み終えてしまいます。

    ラストですが「夏生」がキーワードのような解釈で終えて良いのか。
    そうであった場合、全てが「改竄」されている=超能力と変わらないではないか。怖い。
    疑心暗鬼になり、誰も信用できなくなってしまいます。

    真相がわかるか不明ですが、解説に載っていた「大きな森の小さな密室」も、読んでみようと思います。

  • 前向性健忘症を患った男が主人公「失われた過去と未来の犯罪」にも繋がるようなテーマです。主人公がすぐに忘れてしまうという状況で、よくもこれだけの物語を紡げるものだと思います。ラストはちょっとむずむずする感じ。すっきりとした後読感ではないです。

  • 設定は現実離れしているが面白い。
    スペックを思い出した。
    異常とも言える設定の中で
    その設定を最大限活かしているし
    テンポも良く1日で読み切れた。

  • 短期記憶に障害を持つ主人公が、他人の記憶を改ざん出来る能力を持つ男と対決します。
    主人公には、他者に影響を与える能力はないものの、自らの記録は改ざん出来る。ずっと疑心暗鬼のまま読み進めて、読み終わっても、なんとなくスッキリしない気分のまま。ラストもハッピーエンドとは言い難く、評価はちょっと低めです。

  • 「自分の記憶は数十分しかもたない」
    衝撃の警告文から始まる本作は、新しい記憶を長期記憶に移行できない前向性健忘症の主人公の物語だ。そして彼は今、記憶を改竄する超能力を持つ殺人鬼と戦っている。
    ……とこの時点で抜群に面白い設定だが、最強の殺人鬼とその能力に最も相性が悪い健忘症の主人公という組み合わせが複雑でスリリングな展開を創り出していく。目の前の男が殺人鬼かどうかも忘れてしまうのだから。
    そしてこの物語にも「記憶」と「意識」というテーマがある。記憶の代わりに記録を残すなら、記録こそが意志なのかもしれない。
    これについてはこの小説に先んじた『垝憶』でもそうだし、比較的最近の『失われた過去と未来の犯罪』ではかなり顕著に現れているテーマだ。
    ある意味『垝憶』で生まれたテーマは、『記憶破断者』でエンタメとして醸成され、『失われた過去と未来の犯罪』で一つの到達点に至ったのかもしれない。
    しかし、テーマ性の進化とは別ベクトルの魅力もある。田村二吉を巡る物語は未だ多くが謎のままであり、いつかそれが語られることを読者は待っている。
    そして相変わらずの「徳さん」の登場はやはり良い。彼の物語ももっと読んでみたい。

  • 面白いけど、最後に全て解決しないのが気になる

  • 初読みの作家さん、書店のポップに惹かれ購入、読み応えのある佳作であった。


    特殊設定が前提にある、主人公は前向性健忘症なる精神疾患があり、記憶が数時間しか保持できない、ということ。つまりは夜眠って起きたら昨日の記憶は全くない!とのことである。そして悪役には超能力が備わっている、他人の記憶改竄が可能なのである、発動条件があり、触れた状態で「言葉」で言い聞かせる。ということらしい。悪役は徹底的にクソ野郎であり、能力を使ってありとあらゆる犯罪に手を染めている。記憶改竄によって容疑者にもならない、目撃者の記憶を消す、被害者の記憶を消す、やりたい放題である。この完全犯罪能力を持つクソ野郎の天敵とないうるのが、記憶の保持ができない主人公である、つまりは改竄する記憶がないゆえクソ野郎の術には陥らないのである。


    この設定を踏まえた上で、主人公vsクソ野郎の戦いが非常に緻密に描かれている、元来知性に溢れ応用力の高い主人公であるが、失われた記憶を補完するものとして「ノート」を持ち歩いている。これを唯一の武器としていくのだが、クソ野郎もそれなりに頭のキレは良く、観察眼にも優れている。斯くしてそのバトルは息詰まる展開で読者を飽きさせない、最終局面においても読みあい騙しあいの末のどんでん返しが見事であった。


    総じて満足できる内容だったのだが、イマイチすっきりしない部分があった。よくよく調べてみると、この記憶が持たない主人公をシリーズとして、幾作かが存在するとのことであった。


    機会があればそちらへも行ってみたいと思う、そう思える出来栄えであった。

  • 記憶という不確かであやふやなものが大好きな私にはたまらない小説。

  • 怖くて、グロくて、進めたくないのに…気になって進めてしまう。
    何より、予兆なく現れる感に、毎回ハラハラドキドキ。やっぱり会っちゃってるよ…
    私なら…外に出られないな…

    しかしみなさんもおっしゃってるように、最後が…すっきりしない…。歯が黄色いって…うーん…。
    抱きしめてきたり、ベタベタ感も気になるけど。
    それにね、徳さんだって突然出てきた感。

    …もうちょっとヒントくれてもいいんじゃない?!

  • 面白いです。
    ほんとに面白いです。
    現実に起こり得ないこと(私の知る限り)が交えてある為
    好き嫌いは分かれるかもしれませんが、
    私にはどハマりでした。
    既に3回は読みました。
    小林泰三先生の文章が読みやすいことと、ストーリー展開が追いつきやすいので、とても読みやすいのだと思います。
    ぜひ読んでください。

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著者プロフィール

1962年京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2014年『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他、『大きな森の小さな密室』『密室・殺人』『肉食屋敷』『ウルトラマンF』『失われた過去と未来の犯罪』『人外サーカス』など著書多数。

「2023年 『人獣細工』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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