ウツボカズラの甘い息 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 215
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  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344428027

作品紹介・あらすじ

鎌倉で起きた殺人事件の容疑者として逮捕された主婦の高村文絵。無実を訴えるが、鍵を握る女性は姿を消していて――。全ては文絵の虚言か、悪女の企みか? 戦慄の犯罪小説。

感想・レビュー・書評

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  • 次々と他人に成りすまし、甘い餌でおびき寄せ、金を搾り取ると殺害し捨て去る犯人を、食虫植物であるウツボカズラに例えられている。

    そんな犯人の正体をじわりじわりと暴き追い詰めていく警察小説ミステリー。

    私は著者が好きで、本作で13作品目。

    率直にストーリー、展開、結末までハラハラドキドキさせられてとても読み応えのある作品であった。
    著者の描く警察ものはリアリティがあって特に好きだ。

    結末は、著者らしくないエピローグだったが、本作品ならではと私は快く受け取った。

    作中、犯人の真相と事件の全容にたどり着いた時に、刑事の秦が心で呟いた以下の言葉が、私のハアトにぶら下がったまま離れないので、記しておく。


    人の欲は、限りがない。 たとえば、子が生まれるとき、親は我が子の健康を願う。無事に生まれると、健やかな成長を願い、それが叶うと頭の良さを求め、有名大学への進学へと、欲はかぎりなく膨らむ。 多くのものを求めすぎていたと気づくのは、当たり前が失われたときだ。

  • どうなんやろ?
    知らん人が「小学校の同級生やけど憶えてるか?」って来たら…
    確かに小学校からの付き合いあるヤツは限られてるけど、まだ、地元近くに住んでるんで大丈夫かな?自信ゼロ(-。-;
    私自身を褒めまくって、更に相手がキレイだったりすると、のぼせ上がって…(単純なんで、褒められてたりすると直ぐに本気になります…^^;)
    想像するだけで、ウツボカズラの捕虫袋の中に進んで入りそう…

    犯人は、文絵?それとも、所々にチラチラ出て来るサングラスの女?
    細〜〜〜い糸(手掛かり)を手繰り寄せて、追い詰める刑事達にハラハラ〜
    ページ数多いけど、一気に読んでしまいました〜
    しかし、刑事さんの仕事って、ほんまにコツコツとやな。更にそれで、全て解決する訳ではないし…
    ご苦労様です〜!

    自身は、影。
    自分として生きていかない事ってどうなんやろ?とは思う。過去が過去だけに、大変なんは分かるけど、全て偽りの中で生きて楽しいというか、満足できるんかな?

  • 私は今夜も余震に怯えながらこの本を読み終えた。
    もう嫌だ。家が壊れる位の揺れでスマホ片手に思わず外に飛び出した数日前の夜。
    キッチンの悲惨さに目を背けて、二階へ行くと棚から私のお気に入りの本達が、信じられない位の飛距離で部屋の中央に投げ出されていた。
    一冊ずつ拾い上げて最後に手にとったこの一冊。
    電車が止まりまだ帰らぬ家族を待ちつつ、現実逃避したまま階段に腰掛け読み始めた。
    有名な方だが、作品は初読み。
    タイトルになっているウツボカズラとは?とスマホで検索、甘い香りで誘惑し罠に落とす。
    うまい話には裏があるはずなのに、どうしてマルチ商法は無くならないのか?
    かと言って自分も騙されない自信は無い。
    松井玲奈さんの解説で、読書好きで解説部分を楽しみにしているとあり共感した。
    私も隅から隅まで読みカバー裏に仕掛けは無いか?絵や写真にヒントは無いか?まで疑いながら読んでしまう。
    ガチャと玄関の開く音。一気に現実世界に引き戻され、朝方まで片付けは続いた。
    私には本があって良かった。





    • naonaonao16gさん
      奏悟さん

      おはようございます!
      こちらもかなり揺れましたし、多少物が落ちてきましたが、大きな被害はありませんでした。
      夜遅かったこともあり...
      奏悟さん

      おはようございます!
      こちらもかなり揺れましたし、多少物が落ちてきましたが、大きな被害はありませんでした。
      夜遅かったこともあり、次の日のテレビのニュースで東北の被害の大きさを知り驚きました。

      怪我がなかったのはよかったですね。ただ、怖い思いをした、ということや、これからもその恐怖とともに生活をする、というのは精神的な怪我に近いのでは、とも思いますが…

      このような繋がりではありますが、安心しますよね。
      御自身が安心を感じられるSNSがあるってわたしは素敵なことだと思うのです!

      今後ともよろしくお願いします!(話の落としどころを見失いました笑)
      2022/03/24
    • 奏悟さん
      ゆうママさん
      そうですね、日本に暮らす限り地震からは逃げられないんだと思っています。
      日々、備えるしか無いですよね。
      頼りになる息子さんがい...
      ゆうママさん
      そうですね、日本に暮らす限り地震からは逃げられないんだと思っています。
      日々、備えるしか無いですよね。
      頼りになる息子さんがいて、羨ましいです。
      今日も余震が何度かあり、まだ油断しないでおこうと思います。コメントありがとうございました( (;_;)
      2022/03/24
    • 奏悟さん
      naoさん
      やはりそちらも揺れが大きいかったのですね(;_;)
      お互いに怪我が無くて、本当に良かった!
      緊急地震速報の音が鳴ると、身体が硬直...
      naoさん
      やはりそちらも揺れが大きいかったのですね(;_;)
      お互いに怪我が無くて、本当に良かった!
      緊急地震速報の音が鳴ると、身体が硬直してしまいます。
      やっとの思いで止めたら、追い討ちをかけるように、すぐに津波警報の音で、もう本当にトラウマかも。
      まだ一週間、油断せずに過ごします。
      コメントありがとうございました。
      2022/03/24
  • おもしろかったです。
    550ページと結構な文量がありましたが、先が気になってどんどん読み進められました。
    物語は常に、文絵目線と刑事の秦目線の話を行ったり来たりする構成。どちらも次の展開が気になるので読むのをやめられませんでした。

    柚月さん作品は『教誨』に次いで2作目。
    どちらも幸せになれない女のお話でした。
    恵まれない家庭環境に育ち、少女の頃から男に利用されてきた知世。
    平凡ながらも幸せに暮らしていたが、不慮の事故で子どもを喪い精神に異常を来した文絵。
    知世に利用され殺された加奈子や敦子も、幸せになれなかった。
    柚月先生は女の弱さと怖さを描くのが上手すぎると思いました。

  • やっぱり終盤から場面が変わり突然スピードが上がる。大切なことは幸せのはかり方、どうしようもない状況になっても人生ブレないこと。

  • 文絵に捜査の手が回ったところまでは予測がついた。が、その後の意外な展開にぐいぐい引き込まれ読みが止まらなくなった。
    メンタルに不調を抱え心療内科に通院する文絵、ではあったが、一見平穏な生活に身を置き、平凡な主婦。かつての美貌を失いもんもんとした日々を送っていた。
    あるとき、20年以上も会っていない同郷の同級生加奈子にばったり再会する。危ない。(それほど親しくない同級生と)その後連絡を取り合ってもろくなことはない。
    鴨葱状態の文絵は、まんまと加奈子の罠にはまってゆく。

    加奈子はなぜ文絵を落とし入れたのか。刑事秦、菜月の捜査により次々事件の謎が解き明かされてゆく。なんとも手に汗握る展開だった。
    加奈子の本当の名は。
    最後に本名で呼ばれたことがいつだったか、懸命に考える。いくら記憶を辿っても、思い出せない。と。
    知世は狂っているよ。
    一度狂ってしまったらなかなか元に戻せない金銭感覚の恐ろしさを感じた。そして、「繰り返すうちに感覚が麻痺する」恐ろしさ。
    自分の生活を守り続けることの大切さ、難しさ。

  • このタイトルは犯人の生き様というか信条を表しているような感じで悪くないが、この作品のメインは所謂「幻の女」だ。本当にサングラスの女はいるのか?容疑者のでっち上げか幻想ではないのか?
    後半で子供の話が明らかになり一層その疑惑が強まる。
    まあ「幻の女」といえば歴史に残るミステリの名作があるので同じタイトルはつけにくいとは思うが、その線でも良かったのではないかと個人的には思う。

  • やっぱりこの人の作品は短編よりも、ある程度の長さがあったほうが好きだ。終盤は続きが気になって読むのを止められなくなる。起承転結が、とくに結の部分で盛り上げるのがうまい。

  • 初めて読む作家さん。

    文恵の解離性離人症の描写から始まるので
    それが事件に関係してくるのかと
    読んでいたら別な方向だったのでびっくり。
    文恵、加奈子の話と
    捜査する刑事達の話が交互にあり
    なかなか絡んでこないので
    中盤までは少々退屈だった。

    反対に事件が解き明かされる場面からは
    あっという間で、え、もう終わり?という感じで
    肩透かし感があった。

    他の作品を読もうか読むまいか
    悩む。。

    松井玲奈さんの解説が丁寧で優しくて好み♪

  • 柚月裕子『ウツボカズラの甘い息』幻冬舎文庫。

    文庫化されたので、再読。

    これまでの柚月裕子の作品には無かった、ラスト3分の1からの物語のテンポの変化には驚いた。

    毎日を家事と育児に追われる平凡な主婦の高村文枝の前にかつての同級生が現れる。同級生が文枝に持ち掛けたのは、多額の報酬を約束する大きなビジネスの話だった。

    前半は文枝が同級生の加奈子の罠にはまっていくストーリーと鎌倉の殺人事件を捜査する秦圭介と中川菜月の二人の刑事のストーリーが交互に描かれる。

    ここまで読むと詐欺からの殺人事件を描いた、ありきたりな作品かなと思うのだが、二つのストーリーが交錯すると、物語のテンポが明らかに変わる。次々と明らかにされる驚愕の事実にラストは息をつく暇も無かった。

    お見事!

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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