- Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344428539
作品紹介・あらすじ
2次予選での課題曲「春と修羅」。
この現代曲をどう弾くかが3次予選に進めるか否かの分かれ道だった。
マサルの演奏は素晴らしかった。
が、明石は自分の「春と修羅」に自信を持ち、勝算を感じていた……。
12人が残る3次(リサイタル形式)、6人しか選ばれない本選(オーケストラとの協奏曲)に勝ち進むのは誰か。
そして優勝を手にするのは――。
感想・レビュー・書評
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予選が進むにつれて、変貌していくコンテスタント。一人の天才少年の演奏が、他の異なる才能を覚醒させていく。
異世界のようで、異空間のようで、そこは、才能とそれを継続できる意思と環境を持った、コンテスタント達の表現の場。
小説の舞台をコンクール期間に絞り込むことで、緊張感が高まり、コンテスタントそれぞれの個性がより際立ったように思えました。
東京オペラシティへ、絵画系のイベントで初訪問。コンサートホールは見学できませんでしたが、これから開催される、ピアノやヴァイオリンコンサートのポスターが貼られていました。彼らも、コンクールを勝ち残った一握りなんだろうな、と意識が変わったような気がします。 -
音楽家の思い、音楽って何?ということについて、「ほおー」とうなづき、付箋を付けたところはいっぱいある。その中でも読んでいる間中、頭の中に残ったのは、養蜂家の息子として旅する天才少年、風間塵がコンクール中滞在させてもらっていた花屋さんの当主兼華道家の男性についての記述。
(抜粋)
それは塵にとってはよく知っているタイプの人間だった。農家や園芸家など、自然科学に従事する人たち、特に植物を相手にしている人たちに共通するのは気の遠くなるほどの辛抱強さである。自然界が相手では、人間が出来ることなどたいしたことではない。(中略)
毎日の暮らしの中で水をやり続ける。それは暮らしの一部であり、生活の行為に組み込まれている。雨の音や風の温度を感じつつ、それに合わせて作業も変わる。
ある日、思いがけない開花があり、収穫がある。どんな花を咲かせ、実をつけるのかは、誰にも分からない。それは人智を超えたギフトでしかない。
音楽は行為だ。習慣だ。耳をすませば、そこにいつも音楽が満ちている。
“生活者の音楽“があってもいいのではないかと考える、サラリーマン・コンテスタントの高島明石にも通じる。
感動したシーンは沢山あったが、一番感動したのは、第三次審査の後、“帰ってきた元天才少女“栄伝亜夜に第二次予選で落ちた高島明石が「栄伝さん帰ってきてくださってありがとうございました。」と声を掛けた時のこと。何故か亜夜も感極まって二人で抱き合って泣いた後、亜夜が明石に「高島明石さんですよね。わたし、あなたのピアノ好きです。」と言ったこと。
クラシック音楽は一部の才能と環境に恵まれた人が、人生の大半を防音スタジオのピアノに向かって育てるものではない。生活の中に音楽はある。自然の中で生きて、自然に耳をすませ、それらを拾い集めて、また自然に返すのが音楽。それはクラシックでも他の音楽でも同じなのだと思った。
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どこまでも
満ちてくる月の光
寄せる、うねる
寄せる、泡立つ
飛べる
どこまでも飛べる
(フライ・トゥー・ザ・ムーン)
音楽は何処から来たんだろう
太古では
ものがたるために
そして感じたことを
あらわすために
物語はほかに代わり
感じたことは
朗々とした唄へ
今は音楽は
小さな箱の中で
鳴らされているだけ
でも作り足りない
箱はいっぱいにならない
(音楽を広いところへ連れ出せ)
音楽をもとのところへ
人は生まれた時から
音楽を浴び続ける
(世界は音楽で溢れてる)
静かに始まり
さざなみが
寄せては返す
波は高まり
咆哮する
(音楽を広いところへ連れ出せ)
音楽は宇宙の秩序
叩く、叩く
叩く、叩くー叩く
森を通り抜ける風
いつか新しいクラッシックを
この手で
(音楽を広いところへ連れ出せ)
一瞬は永遠
永遠は一瞬
風間塵 世界は広い
栄伝亜夜 音楽の神様
マサル 野望の人
高島明石 修羅の人
(音楽を広いところへ連れ出せ)
貴方が世界を鳴らすのよ
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第二次予選の途中から開始。中心に書かれた4人が、そのまま勝ち上がると思われたが一人落ちた。
今まで知らなかったが、演奏者は三次予選、本選と凄いエネルギーが必要だと感嘆する。
文章からだけで、その演奏内容が見えるのは上巻と同じ。残念なのは本選の最後の演奏が描かれなかったことと、明確な順位の場面が無かったこと。余韻で読めという事か。最後に作者が力尽きたように思える。解説を見るとこの著作の編集者が書いているが、作家が遅筆なうえに短い内容の日もあり、また単行本化にあたり本選結果を末尾に入れたとか。 -
期待値が高すぎたのかなあ、、私の感性が足りてない問題かもです笑
もっとラストを勝手に期待してしまった自分がいて、、あら、もう解説?となってしまい、、
でも★3です!
ショパン、イケメンですよねー?笑
愛の夢、ノクターンが大好きです。浅田真央ちゃんの印象。
クラシックピアノをYouTubeでBGMにしながら読書すると、寝て、読書、寝て、読書の休日になります、、私だけか笑
評価でも感想でもない投稿すみません。
次はミ、、ミステリーか、、なんだかんだでミステリー好きな自分います〜積読たくさん。
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すごい満足感。
音楽を通して、風間塵やマサルに影響されて、亜夜の才能がどんどん開花していくのが面白かった。
天才少女のまま舞台を去った彼女。
この後どう音楽と向き合い続けるのか、葛藤しながらもコンクールで演奏を重ねるたびに演奏が進化する。
自分の全てを犠牲にしても、その才能を認められるのはほんの一握り。
そしてその選び抜かれた音ですら、空気を振動させたら最後、跡形もなく消えてしまう。
残酷、だからこそ美しい。
そんな世界を余すこところなく堪能できた読書体験でした!
編集者さんの後書きも良かった。
恩田陸さんのとてつもない産みの苦しみの末にできた物語だったんだねー
▼▼以下、王道が嫌いな私の「愛のある」ひねくれレビューです…この本が大好きな人はどうか読まないで…▼▼
・三次予選くらいから少しダレた。演奏の描写が続いて少々お腹いっぱい。
・みんな幻覚見過ぎ!怖い怖い!!
何かアフリカの風感じたり、背中に羽が見えたり、子供の頃の記憶が急に蘇ったり!
あと亜夜ちゃん…幻覚の中で塵くんと何回も会話しないでええ…
これぞ音楽描写の極みなり。
・結局風間塵って何だったの??
他の主要人物のように、生い立ちや音楽との関わりエピソードが欲しかった。
両親は日本人?何で海外で養蜂放浪生?コンクールとか興味なさそうだけど、何で出ようと思ったんだろう…
終始不思議な才能を持つ子、で終わってしまったのが残念。
彼が不思議な才能を持つに至ったバックグラウンドが知りたかったな。 -
誰が勝つのか早く知りたくて一気読みしました。
あー、この曲ね、っていうのが一曲もないのに、彼らの演奏に涙がこぼれてしまいました。特に、亜夜がステージごとに覚醒、成長するさまは、かっこよくて、清々しくて、本当にその「音」を聴きたくなりました。
読後、順位を追っかけてた自分に「そういうことじゃなかったんだよ。」って恥ずかしながら突っ込みましたけど、素敵なコンクールでした。
恩田さんの文章が、なんかつっかえることなくするするっと入ってきて、気持ちをクリアにしてくれるような爽やかさを感じるばかりでした。読めて良かった。お薦めです。 -
普段からピアノとは無縁でしたが、この本に出会って読んでいる間にYouTubeでピアノ音楽を何度も聞きました。音楽を聞いて景色や情景を思い浮かべると言う発想が素敵でした。登場人物のマサル、亜夜、塵が魅力的で、彼らの今後の活躍も見てみたいです。
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良かった、とても良かった。
ピアノなんて、弾いたことも、クラシックをしっかり聞いたことなんてなかったけど、
読み進めるうちに、
すごく世界観に惹き込まれていった。
コンクールに辿り着くまでの費用や努力、音楽家としてアツい想い。
そんなことをイメージせざるをえない
文章の構築。
自分は、イヤミスとかを好むのだけれど、
この作品は、とても綺麗だった。 -
十年の月日をかけた大作。
恩田陸 渾身の一冊。
著者プロフィール
恩田陸の作品






多くのいいね、ありがとうございます。この作品は映画しかみていませんが、おびのりさんのレビューで記憶が呼び起こ...
多くのいいね、ありがとうございます。この作品は映画しかみていませんが、おびのりさんのレビューで記憶が呼び起こされました。
東京オペラシティに訪問できるなんて、羨ましいです!
コンサートホールで演奏できる方々は、数々のコンクールを勝ち進んだ選ばれた一握りの皆さんという言葉にはっとさせられました。
私も今はほとんど図書館本を読んでいます。ですので、...
私も今はほとんど図書館本を読んでいます。ですので、皆さんの本棚から数年遅れという感じです。
オペラシティは、今回、初めて友人に誘われて行ってきました。新宿に近いこんな立地に素敵な建物があるなんて。まだまだ、知らない事ばかり。
今後ともよろしくお願いします。
お返事ありがとうございます♪私も図書館取り寄せ派で、人気本は予約して忘れた頃に届いて読んでまーす。
オペラシ...
お返事ありがとうございます♪私も図書館取り寄せ派で、人気本は予約して忘れた頃に届いて読んでまーす。
オペラシティ、地方在住者としては憧れの場所です。
読了本が共通していたり、読みたい本があったりで魅力的な本棚ですね♪これから時々お邪魔いたしますので、よろしくお願いいたします。