一緒に絶望いたしましょうか (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 503
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344429413

感想・レビュー・書評

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  • 「一緒に絶望いたしましょうか」

    なんとなく、このタイトルに惹かれて。
    絶望って救いのない言葉だけれども、読み終わると、このタイトルがとびっきりの愛の言葉に感じられて、ほんとはぁ〜ってなる♡

    すご〜く良かった!!
    初読みの作家さんですが、言葉のセンスといい、物語の空気感といい、とても好みな作品だった。
    全9章。
    最初に9章が描かれてて、全章読み終わると最初に繋がるという構成がまたじわっとくる!

    人を殺す夢を見る津秋と、人に殺される夢を見る正臣。
    なんの繋がりもないように思える2人の話が交互に語られる。
    大切なものをなくしたり、希望を失ったり、絶望感に襲われる事って人生の中できっと誰にでもあるんだろう。
    その絶望と共存したり、断ち切ったり、それぞれ選択しながら折り合いをつけて生きていくものなんだろうなと思った。
    いっぱい刺さる言葉があったんだけど、1つだけ抜粋するならキムさんのこの言葉。

    「恋人同士は希望がなくちゃ一緒にいられないものかもしれない。けどな、一緒に絶望できるのが夫婦ってもんなんだよ」

    一緒に絶望できる相手がいるって、それは凄く幸せな事なんだな〜。

    きれいごとばかりじゃないとこも好き○
    終わり方もめっちゃ好き◎
    甘々キュンキュンな恋愛小説ではないけど、とても素敵な恋愛小説でした


  • タイトルだけで読んでみたいと思って探して探してやっと入手したこの本
    まさかの恋愛小説でした
    恋愛小説にありがちなキラキラした内容も展開もないけれど、そういうのが苦手な人はこんな恋愛小説なら読めるんじゃないかと思います

    人生で一度も絶望したことない人なんていないよね
    そしてその絶望を救ってくれる人、救ってくれた人は自分にとってかけがえのない人だよね

  • 日常と非日常が交差する。
    東京都と、京都が交差する。そして世界が。

    久しぶりの狗飼さん。刊行されてから約1年ですが、新刊の存在を知らず、慌てて入手したところです。
    読み終わったら、すぐ2週目に入りたくなること間違いなし。

    何とも不思議な質感の物語です。
    確かに肌で感じられる現実があるのに、どこか夢みたいな、ふわふわした感じ。それでいてヒリリと焼き付くような痛み。
    ああそうか、これが「生きる」ということだ。
    今読むからこそしっくりくる。いや、絶望を味わったことがあるからこそ、かもしれない。形は違えど、絶望はこんなにも身近にあって、それを内包して人は生きているんだ、ということに想いを馳せられる。

    そして、もう1つ伝えられるのは、食べることは生きること、ということ。
    私たちは、食べたもので形作られる。
    生きることを大切にすることは、食を大切にすることに繋がる気がしている。だからこそ、とても共感を覚えた。サムゲタン、アリョンカのチョコレイト、崎陽軒のシウマイ弁当。

    いい読書時間を過ごさせてもらいました。
    タイトルも末尾に「か」があることが優しい。あるのとないのとでは大違い、ですね。

  • 優しい言葉、優しい人々、優しい文体。
    津秋と彼
    正臣と恵梨香
    キムさんと香子
    哀しみも絶望も誰だって持っている。
    そんなの抜きに生きていける人はいない。
    自分なりの折り合いをつけながら今日と明日をつないで生きている。
    優しい運命を信じたくなる一冊。
    大人の御伽噺。
    サムゲタン食べたいなぁ。
    今年の7冊目
    2020.3.19

  • 高校生の時に「冷蔵庫を壊す」に出会った時の衝撃をよく覚えている。著書の描く真面目で、感じやすく、繊細というには自意識の強すぎる主人公達が、自身と重なったことだけでなく、言葉の使い方が信じられないほど美しいと思った。
    あれから20年たっても新刊を読んで同じ気持ちでいる。多分一生好きな作家だと思います。

  • こんな始まり方でこんな展開の本は初めて読んだ。

    こんなにもつよく読み終わった瞬間からもう一度分かった上で読みたくなる本は初めて。

    タイトルの暗い重そうな感じはあまり感じず出てくる人も変わっているけどすごく好き。

    雑学王がもうこの世にいないって分かった時から
    私は全然わからず読んでいたんだと。

    一見全く関わりもなくこれからも関わることのなさそうな2人が最後ロシアという共通の部分で出会うことになる。
    こういうのを読むと運命ってこうやって見えないところで実はちょっとずつお互い関わっているんだと思った。

  • 婚約者と共に暮らす津秋と、たまに泊まりに来る年上の恵梨香に恋する正臣
    東京と京都で離れている二人の人生が交錯する物語

    人を殺す夢を見る津秋と、人に殺される夢を見る正臣
    夢占いではどちらも吉夢だと言うけれども、夢占い自体が信憑性が低いからなぁ

    そう言えば最近、知り合いが笑顔で自らをメスで傷つけながらこっちも切ろうとしてくる夢を見たけど、吉夢とは思えないんだよなぁ……

    冒頭で最後のシーンが描写されているけど
    東京と京都
    韓国バーの店員と大学生
    交わる要素がない二人
    それが最終的にはああなるとはねぇ

    本編で「許される問い」の話題とか、香子さんの言う色も言及されているので、時系列通りの構成になっていてもいい感じに伏線が張られているわけで、倒叙にしなくてもよかったのでは?と思う
    叙述トリック的なものもあるので、そっちの意外性を強調するための仕掛けなのかな?


    狗飼恭子さんの作品は20年前に「冷蔵庫を壊す」とかを読んだ気がするけど、内容は殆ど覚えていない
    でも、今回読んで、文章の表現が適度に面白く文学的な面もあってバランスが絶妙だと思った


    それにしても、恵梨香さんは恐ろしい女ですねぇ
    恵梨香さんみたいな人を好きになると、いずれ嫉妬の炎で身を焼く事になる

    古沢さんもかなりエキセントリック
    ファッションセンスもそうだし、迫り方や脅し方、決着の付け方など、絶対に友達にはなれなそうな気がする……

    まぁ、津秋さんにしても結構変わった人なので、登場する女性の中で普通の人はいないのかもしれない


    タイトルの意味
    津秋さんや正臣くんに関係するものではなく、キムさんと香子さんの関係性のセリフというのは意外でしたねぇ


    「恋人同士は希望がなくちゃ一緒にいられないものかもしれない。けどな、一緒に絶望できるのが夫婦ってもんなんだよ」
    というキムさんのセリフは納得
    タイトルは返事と考えるならば、キムさんは香子さんを見つけられたってことなのでしょうねぇ
    結婚式の誓詞で、病めるときも健やかなるときも云々というのがあるけど、苦難を共有できてこそ本物の夫婦の愛情という事でしょうね

    ただ、ここで言う絶望に関してはあまり共感あはできないかな
    私個人としては血縁の有無にかかわらず子供がいるけど、夫婦の関係性に於いて子供の有無ってそんなに重要なものかね?
    いないならいないで成り立つと思うんですけど、そうは考えない人もいるのでしょうね


    あと、香子さんの見える色に関するセリフ
    香子さんには二人が出会う未来が見えてたのかなぁ?
    どこまで認識してたのでしょうかね?



    津秋さんの、「不在」がいるという感覚はわからないでもない
    私の場合は、ずっといるわけでもないけど、ふと「いない」事を感じる
    これて、誰にでもあるんじゃなかろうか?

    ま、津秋さんはずっと感じると言うのが特殊性かな


    全体を通して、一度読んだだけではわからない味がある
    いずれ読み返すと思う

  • 集中が続かず、本をしばらく読めなくなっていたなか、久しぶりに引き込まれて最後まで一気に読めた。物語の最初は少し不穏な空気が漂っていて、タイトルも相まって怖い話?と思っていたけれど、穏やかな描写が多くホッとした。読み進めると、伏線回収が気持ちよくて、物語の組み立て方に惚れぼれしました。登場人物が全員優しくて、考えが柔軟で、自由で奔放で、とても好きな空気感を持った小説。読んで良かった。

  • 想像していたのとは違うけれど、だからこそとても良かった1冊。

    一緒に〝絶望〟した後のことが見えるようで、微笑ましかった。人間、ドン底まで落ちたらあとは浮上するしかないように…きっと彼らは絶望した後に希望を見い出せる気がした。

    不思議な始まりで、どこかズレていて噛み合わないなぁと思っていたら、ある時からカチリと歯車が噛み合って走り出した。感動した。

  • 読み終わったそばから、読み返したくなる一冊。
    甘々ではない、けど人を愛したいと思わせられる恋愛小説。うまく表現できませんが、刺さるフレーズが沢山あって、これはもう好きなやつだと確信しました。

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