たゆたえども沈まず (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344429727

作品紹介・あらすじ

19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画
商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で
浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの
前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホ
と、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇
跡の出会いが”世界を変える一枚”を生んだ。
読み始めたら止まらない、孤高の男たちの矜
持と愛が深く胸を打つアート・フィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 2018年本屋大賞第4位。<もうひとりのゴッホ>弟テオの物語。

    フィンセントを最期まで支え続けたテオ。彼の人生は。

    フィンセント・ファン・ゴッホは、常人には理解し難いあれこれによって、圧倒的主人公(良くも悪くも)であり、私たちからは遠い存在だともいえる。

    しかしテオは私たちであり、その姿に容易く感情移入できる。
    彼は兄が稀代の怪物フィンセントだということ以外ふつうの人なのだから。

    テオとフィンセント、そして彼らと交わる日本人。
    19世紀後半のパリ、「たゆたえども沈まず」の思いで生きた彼らの姿は、とても眩しく映る。

  • 史実とフィクションとを混ぜた、ゴッホ兄弟と絵画との関わり
    彼らを見つめる、パリへ来て画商を営む2人の日本人
    日本の美術すら無知なので、浮世絵とゴッホの作品の関係も興味深く読めた

    読後は何とも言えない切ない余韻が残り、両表紙の絵画に慰められる

    そんななか表題でもある、
    たゆたえども沈まず

    という言葉が力強く響いた
    生きていると色々あるけど、そうやって生きていくんだよね

    ゴッホの展覧会に行って、本作を思い返しながら鑑賞してみたくなった
    (図書本)

    • shokomamaさん
      ひよりさんの本棚見ました。なんか好きな作家が同じでビックリでした。本は私の知らない世界に連れて行って来れます。絵画を見る時も本を読む時も自分...
      ひよりさんの本棚見ました。なんか好きな作家が同じでビックリでした。本は私の知らない世界に連れて行って来れます。絵画を見る時も本を読む時も自分だけの世界で想像を膨らませて見ていましたが、原田先生の本を読んでからは、時代とか周りの人達の事が何となく分かるとこんなにも面白く絵を鑑賞できる事を教えて来れました。絵画を見る事も本を読む事も同じ何だなァと・・・想像を膨らませることが益々楽しくて原田先生の本に感謝です。
      2024/03/05
  • すごく読みごたえがあった。ゴッホ兄弟、林忠正、加納重吉4人の織り成す重厚なドラマが心をつかんで離さなかった。明治、日本が近代国家の体をなしていない時期に、渡仏しジャポニズムを広めた林忠正の生き様は端から見ていてカッコいい。武士道をフランスで体現してるかのようで魅力的な人物だ。一方重吉は、渡仏し足が地につかない様子に親近感を覚える。その後の成長にも。美術史は聞きかじりの自分がこんなにはまるとは思わなかった。美術に関して、原田マハさんの造形の深さが魅力を溢れんばかりに伝えてくれる。新しいものが受け入れられるのに時間がかかることを歴史は繰り返し伝えてくれる。あのゴッホですらそうなのだから。アルルの跳ね橋や星月夜など素人の自分でも思わず感動してしまうというのに。美術×歴史のダイナミズムを終始感じることができた。すごく楽しい時間を過ごせた。

  • ゴッホ兄弟と日本人の画商との交友関係を描いた本作ですが、アートの歴史に触れられたような感覚があって、個人的に新しい世界を体験でき、満足した読書体験でした。

    本作の主人公は画家である兄のフィンセントと画商である弟のテオドルス。その2人が日本人の画商である林忠正、加納重吉と関わり合い、画家として大成していくというストーリー。

    本作の注目ポイントとしては、まずは兄弟愛があります。時には曲がったり、離れ離れになったりしてしまいますが、心の奥で深く繋がっている描写が多く、心打たれる感じがありました。

    もう1つは日本と画家、ゴッホとの関係性です。私自身、アートに疎いので、ゴッホという人物をあまり知らなかったこともあって、ゴッホがこんなに日本美術の影響を受け、日本美術に影響を与える存在になることに素直に驚きました。

    本作はアートを題材にしながらも、どこかお仕事小説や青春小説のような瑞々しさや、熱さがあって面白い作品だったなと思いました。

  • 前回「生きるぼくら」で辛口レビューを書いた私に、それでは原田マハさんの魅力は伝わらないとコメントをくださった方がいた。その方に何作品かオススメしていただいたので、その中からタイトルが好きな本書を選んでみた。

    いや~、本当におっしゃる通りだった。これまで読んだ「旅屋おかえり」と「生きるぼくら」は私にはハマらなかっただけなんだろうけど、今回はすごく物語に引き込まれ、一気に読んでしまった。(終盤、涙が・・・。職場でお昼休みに読んだのは失敗でした。)

    重吉、林、テオ、そしてフィンセント。彼らの人となりがよくわかる描写がたくさんで、これまで感じていたセリフの一人歩きや、物語の進行にあまりついていけない感じが、なかった。

    実在の人物をフィクションで描かれると、ついつい史実と思い込んでしまいそうでその点注意は必要だけど、事実を全く無視したフィクションというわけでもないので、その時代や、その人物に思いを馳せることのできる、充実した読書だった。あまりにも有名なゴッホを題材としているからこそ、美術に明るくない私でも、「いや、それはないでしょ」と思ってしまうところがあるものの、原田マハさんのキュレーターとしての豊富な知識という裏付けがあるからこそなのか、妙にリアルなところもあり、その、フィクションとリアリティ溢れる感じとのバランスが絶妙で、物語の世界に没入してしまう。

    今や印象派といえば、巨匠ぞろいというイメージだけれど、印象派がまだ広くは認められていない時代の、芸術家や彼らをサポートするテオのような人々の熱い思いがびしびしと伝わってきて、そんな熱気がムンムンと溢れているパリをすぐそこに感じられるようだった。
    そして、そんなパリに受け入れられないとわかり、アルルへ向かうフィンセント・・・。自分の「日本」をアルルで探す、というのは建前で、パリがフィンセントを拒否した・・・。ここのところ、なぜかすごくわかる気がして、切なかった。

    フィンセントは悲劇へと向かっていってしまうのだけども、テオのフィンセントへの複雑だけれど、深い愛情と信頼、そして自信(フィンセントの絵はすごい!という)、それから重吉とテオの友情が丁寧に描かれる全体の流れは、決して悲劇的ではなく、現代には感じられない時代を切り拓いていくようなガムシャラに突っ走っていく疾走感があり、先述した熱気とともに、なんだかとても羨ましい思いがした。

    美術にはとても疎くて、リビングにモネとシスレーのポストカード大の絵を飾っているくらいなのだけれど、ゴッホの絵のポストカードも飾りたくなった。ゴッホの作品の中では「夜のカフェテラス」や「ローヌ川の星月夜」がわかりやすくて好きだったけど、本書を読んで、糸杉がメインの作品もいいな、なんて思ったり。
    読後、昔買った印象派を特集した雑誌を引っ張り出してみた。(単純)

  •  前から書店などで見かけ、タイトルと表装が素敵だったので気になっていましたが、やっと読めました。
     めちゃくちゃよかったです❕
     史実なのかフィクションなのか区別がつかないくらい描写が活きていて設定もリアルで素晴らしいです。
     著者は、美術館で勤務されていたみたいですね。      
     美術に対する知識と熱量がすごく伝わってきます。
     作家さんは、とても勉強して作品を作ってるんだなーと感心しました。
     
    ぜひぜひ読んでみてください

    • すずのねれいれいさん
      原田マハさんの作品は美術初心者でも話に引き込まれますね。他の作品も素晴らしいですよね!
      原田マハさんの作品は美術初心者でも話に引き込まれますね。他の作品も素晴らしいですよね!
      2021/05/10
  • マハさんのアート小説は、大好きです。
    弟テオの兄を思う気持ち、兄のゴッホの不器用ながらも画家として生き抜く様、2人の兄弟愛に涙しながら一気読みでした。
    改めてゴッホの作品を観てみたいと思いました。

  • あー、特に最後が哀しい(>_<)
    『フランダースの犬』を思い出してしまった!
    事実と想像が混ざる原田マハさんの小説はいつも面白い
    実在の人物なんだけど、何処までが事実で何処までが小説なんだろうって
    そしていつ、どうやってゴッホの絵が世の中に知られる様になったんだろうか、と想像さぜるおえない

    ゴッホの作品が沢山出てくるので『楽園のカンヴァス』と同様、検索しながら読んだ
    ゴッホの『薔薇』は見た事があるが、絵に無知な私でもずっと観ていたいと思う程惹かれるものがあった(^O^)

    • まいけるさん
      フランダースの犬。なるほど。
      子どもの頃は本に感動し、後には映画に感動しました。
      ありがとうございます!
      フランダースの犬。なるほど。
      子どもの頃は本に感動し、後には映画に感動しました。
      ありがとうございます!
      2024/04/24
  • 急な土砂降りで駅に足止め。
    家に帰れないので、飲み屋で焼き鳥食べながら書いてる。そういえば、生ビール飲むのもメチャクチャ久しぶりだ。
    店が閉められてしまう10時までに雨止むといいけど...

    マハさんの絵画系の小説。
    2018年本屋大賞第4位、となれば、読むしかないでしょ。

    題材はゴッホ。
    ゴッホと言うと、「ひまわり」の絵と狂気のイメージ。耳を切り落とすとか。

    この小説は史実とマハさんの想像が入り交じっているとのこと。
    うるさいこと言わず読んでいる分には、充分リアルだ。19世紀後半のパリの情景が頭に浮かんで来るし、ゴッホの絵画の世界を深く理解できる気がする。

    日本人の画商、林忠正とゴッホの交流が実際にあったことは確認されていない。でも、日本人とゴッホに、こんな幸せな関係があったのなら、とても素敵なこと。遠い存在だった「狂気の天才」ゴッホに急速に親近感を抱いた。

    この小説読んで、表紙の絵の「星月夜」は僕にとって特別な絵になった。あと、「花魁」も。

  • この作品が何を書いているものなのか?
    この作品のジャンルが何なのか?全く調べず、ただ作者名と、Amazonでの好評価からポチっとしてしまった。

    あら?私には少し高尚なお話すぎるかしら?
    ちょっとジャンルの選択間違ったかしら?
    と思ったが、読み進めていくと、この物語の世界に没頭してしまった。

    今では誰もが知る、画家ゴッホ、その兄を献身的に支える弟のテオ。
    そして、日本人の画商、林忠正、加納重吉とゴッホ兄弟の出会い。

    フィクションと書いてあるが、まるで現実のような壮大な物語だった。

    原田先生によるアート作品は、猛烈な力を感じる。登場人物が物語の中から浮き出てきそうなほど。

    素晴らしい作品。
    読書をしているのに、アート鑑賞しているような錯覚にも陥る。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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