弟切草 小烏神社奇譚 (幻冬舎時代小説文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344429963

作品紹介・あらすじ

小烏神社の若き宮司である竜晴は、人付き合いが悪くて無愛想。唯一の友人は、神社の一画で薬草を育てている医者で本草学者の泰山。ある日、薬種問屋の息子が毒に倒れる。懸命な治療によって一命を取り留めるが、何も語らない。さらに、彼の兄も行方知れずとわかり……。竜晴と泰山は、兄弟の秘密に迫り、彼らの因縁を断ち切ることができるのか。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの弟切草、漢字で書くと何とも意味深で怖い。
    その由来はというと、鷹の傷に効くというこの植物のことを秘密にしていた鷹匠だがその弟が他人に明かしてしまったために鷹匠に切られて殺されたという。葉に散った無数の黒い点はその時の弟の血飛沫だとか。
    …という禍々しい由来の植物をタイトルにしてあるが、作品の雰囲気はそこまで暗くない。

    主人公は小烏神社という古い(というかボロい)神社のただ一人の宮司・賀茂竜晴。
    一言主命と縁が深く言霊を操る力に長けている竜晴には二柱の付喪神が側に付いている。それが普段は白蛇の姿の抜丸と烏の姿の小烏丸だ。
    二柱とも由緒ある刀の付喪神だが、小烏丸の本体である刀、その名も同じ小烏丸は行方不明。本体が傍にないからか、付喪神の小烏丸は時折自分でも制御出来ない動きをする。
    この二柱の付喪神が愛らしく、人間的にはどこか危なっかしい竜晴を生活面でも精神面でも支える頼もしさもある。

    そして竜晴の唯一の友人・医者の泰山も良い。貧しい者からは見料を取らないとかで常にお腹を空かしているくらいのお人好しだが、竜晴のことも常に気にしている。

    事件は竜晴が寛永寺の大僧正・天海に頼まれ、敷地内で見つかった埋められた生首の主とそれが江戸城へ向けられた呪詛かどうかを調べることから始まる。
    同じ頃、泰山は小烏神社近くで苦しむ男を見つけ神社へ運ぶのだが…。

    読み進めるに連れてタイトルの意味が切なく響いてくる。
    相手を想うが故に相手を苦しめ、誰かを強く想うが故に他の誰かを知らず知らずのうちに蔑ろにしてしまう。
    そしてその念はこんなにも強く続くのかと驚かされる。

    竜晴の力は一時的に物事を鎮めることは出来ても真の解決は当事者たちの心の有り様を変えるしかない。
    そうしたスーパー陰陽師ではないことが描かれ、最終的には人と人のドラマにしてあるところは良かった。

    小烏丸の本体の行方が分かっていない辺り、続編がありそうだ。
    キャラクターや展開にはぎこちないところもあるが、続編があれば読んでいきたい。

  • 小烏神社奇譚 シリーズ1

    江戸、上野の奥まった場所にある、小烏神社の若き宮司・賀茂竜晴は、整った顔立ちゆえに、少し冷たく見える。
    小烏神社の庭に、2年前から薬草を育てている、醫者で本草學者の立花泰山が、唯一の友達であるが、陰陽師の血を引く、竜晴には「抜丸」と「小烏丸」という付喪神が二柱いる。
    白蛇の姿をした「抜丸」の本体は神社に祀られているが、烏の姿をした「小烏丸」の本体は、海の底に沈んでいるらしい。

    ある日、泰山が、幼馴染の薬種問屋の次男・千吉が、毒を飲み、倒れている所に出くわし、小烏神社に運び込んだ。
    幸に一命を取りとめるが、同じ頃、千吉の兄の遺体が、将軍家の菩提寺・寛永寺で見つかった。
    天海は「江戸の鬼門を揺るがす一大事」と、竜晴に事件の解明を求めた。

    竜晴は、泰山と二柱の付喪神の協力を得、兄弟の秘密と、因縁に迫る。

  • 小烏神社の宮司・竜晴は、底抜けのお人好しで本草学に詳しい医師・泰山の他は親しい付き合いを持たず、静かに神社を守っている。
    実は竜晴は強力な陰陽師の家系で、烏の姿を持つ小烏丸と、白蛇の姿を持つ抜丸の二柱の付喪神と暮らしており、彼らの本体である剣を探しているのだが…


    怜悧な美貌の青年と、天然お人好し青年のコンビという組合せで、付喪神が探索のお手伝いをするミステリ仕立ての人情時代物。

    うーん、何故だか、どこがだかがわからないけれど、筋立てが面白くない訳でもないのに、なにか相性が合わないのか…登場人物の誰にもピントが合わないまま読了。

    付喪神たちの描写が、一番人間らしく感じたというのもおかしな話ですが。

  • 小烏神社の宮司・竜晴は風水や陰陽道にも通じていた。ある日寛永寺の大僧正に呼び出された。不忍池近くに身元不明の男の首が埋められているのが発見された。その男の正体、そしてどういう経緯でそこに埋められたのか内密に調べてほしいと頼まれる。

    遺体の身元は薬種問屋の長男であると判明した。彼が殺されたと思われる夜、怪しい男も目撃されている。竜晴の親友、医者の泰山は道端で死にかかっている男に出くわし、神社で手当する。その男は泰山の幼馴染みで薬種問屋の道楽者の次男坊。そして目撃された怪しい男に風貌が似ている。
    ーーーーーーーーーーーーーーーー
    何の前触れもなく、本屋でタイトル書いしちゃいました。てっきり梨木果歩みたいな小説を予想していましたら…ありゃりゃ?時代小説でした。普段時代小説ってあまり読まないのです。でも、あらすじに書いたように若干ミステリー仕立てになっていたので、そこそこ楽しめました。

    陰陽師とかそういうスピリチュアル?な力を使って事件を解決するので、本格ミステリー派の人からみたら、ちょっと反則でしょうが…
    謎も、まあ、想定の範囲内でドンデン返しなどありませんし、若干説教臭いところもありますが、毒はそんなになく隙間時間を埋めるのにはいいでしょう。

  • 読みやすくて、ぐいぐい引き込まれて、一気に読んでしまった。
    陰陽師の血を引く宮司、人の良い医者、本体が行方不明で記憶を失っている付喪神、登場人物が魅力的で、これからきっと、どんどん人物像が深まっていって、面白くなっていくに違いないと期待させてくれる本だった。
    この本は、薬種問屋一家の事件の話で、兄弟をついつい比べてしまう親や劣等感に苛まれる弟、そこに怨霊が絡んできたりと盛りだくさんなのに、違和感なく話が進んでいく。
    小烏神社奇譚、続きがでたらまた読みたい。

  • 軽いタッチで読めるライトノベルより時代小説(ファンタジーかな)
    キャラが立っているので登場人物が多くても読みやすいです。
    時代小説が苦手な人も手に取りやすいシリーズだと思います。

  • 式神なんかも出てくるけど、事件はそんなに大きなものではなくて、気軽に読める内容。

  • 続編が気になる終わり方!
    ちょっと漫画みたいな感覚で読み進めた.
    なんて言うか…弟にソレを頼むのは無しでしょ??

  • 弟切草の謎解き。続編がありそうな展開。

  • 舞台は江戸初期。主役は小烏神社の宮司、竜晴。陰陽師の家系である賀茂一族の生まれだ。クールな竜晴と対照的に、友人で医者の泰山は人情派。最初は夢枕獏「陰陽師」のような感じかな?と思ったけど、それほどのコンビ感はなかった。でも付喪神が二柱でてきて、彼らが良い味を出していて楽しい。江戸鎮護に係わっていた歴史上の人物、天海大僧正も登場して、ちょっとワクワクした。明らかに続編がある終わり方だったので、続きも読みたい。

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著者プロフィール

篠綾子/埼玉県生まれ。東京学芸大学卒。『春の夜の夢のごとく 新平家公達草紙』でデビュー。主な著書に『白蓮の阿修羅』『青山に在り』『歴史をこじらせた女たち』ほか、成人後の賢子を書いた『あかね紫』がある。シリーズに「更紗屋おりん雛形帖」「江戸菓子舗照月堂」など。

「2023年 『紫式部の娘。 1 賢子がまいる!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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