どうしても生きてる (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎 (2021年12月9日発売)
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  • 本 ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344431416

作品紹介・あらすじ

死んでしまいたいと思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(「健やかな論理」)尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が写されているような気がした。(「そんなの痛いに決まってる」)生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(「籤」)等鬱屈を抱え生きぬく人々の姿を活写した、心が疼く全六編。

感想・レビュー・書評

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  • 「どうしても生きてる」
    ここには「もういちど生まれる」にあった青春の輝きも爽やかさもない。あるのは、自分の中も見たくない部分への仕方ない共感があるだけだ。「正欲」で慣れたはずなのに陰鬱な気分はなかなか拭えない。
    『健やかな論理』
    「あるとき何の前触れもなくこの世界から消えてしまいたくなるときがあるように、何の前触れもなく、この世界にいる誰かを想う自分の存在を熱烈に感じるときがある。」
    『流転』
    「どこに向かって進んだって後ろめたさの残る歴史を歩み続ける以外に、この人生に選択肢はない。」
    この二つの引用で伝わっただろうか。
    やはり本を読んで韓国ドラマのようにハッピーエンドも味わいたい。

  • パンチの効いた短編集。油断して読むと痛い目をみるかもしれない。
    「どうしても生きてる」というタイトル。「生きる」でも「生きてく」でもなく「生きてる」としたところに、生きづらさや、生きることのままならなさ、同時に力強さが表れている。
    人間の弱さや醜さが鋭い視点で描かれており、それでも「どうしても生きてる」のが人間なんだよなぁと突きつけられた。

  • 朝井リョウさん初読です。
    年末に購入したものの、なかなか手をつけれずにいました。

    一言でいうと、すごい!個人的に期待以上!です。

    話は明るくはない、もちろん。人間の本性本質が垣間見える感じ。
    わかるわかる、こゆ人いるよねーと思いつつ、私はこゆひととは違うなんて心で思ってしまっていたりと、私自身も都合の良い解釈してるーって。。

    短編で読みやすかったです。次何が良いかな、、皆さんの感想評価を参考に選ぼう〜!

    朝井リョウさんについても、調べたくなっちゃいました。

  • 本の題名になんだか嫌な予感をしながら読んでみる事に。
    話は面白いけれども中身は読んでいて救われない気持ちになる。
    確かにそれでも生きていくしかない。
    もし自分がそれを止めてしまえば周りの人も巻き込んでいく。
    そんなに悪い事をしたのか、他に方法はあったのか。
    誰だって味わう事のある気持ち。
    読んでいて気分が悪くなるけれども、痛いところをついている。

  • 生きる6人分のリアル。重い。
    正欲は好きだったのですが、これは救いがなくとにかく読むのがしんどかったので☆2でm(__)m

    『健やかな倫理』
    『流転』
    『七分二十四秒めへ』
    『風が吹いたとて』
    上の者がルールを破っているのに、下の者にはどうにもできないよ。そんなことより目の前に考えることは山のようにある。生きていくために。というメッセージには頷けた。
    「自分の誠実さに酔うのは、目の前の話を片付けてからにして」
    「誰かが破ったルールの上を、快適に歩いている。」

    『そんなの痛いに決まってる』
    現代のレスや不倫の何%はまさしくこれなんじゃないかと感じさせられた。
    「心のままに泣いても喚いても叫んでも驚かない人がひとりでもいれば、人は、生きていけるのかもしれない。それが誰にとっても誰でもない存在としてでしか向き合えない人であっても、それでも。」

    『籤』
    「自分はこんなに醜いのだ、ということを明かしたところで、本当は何の区切りにもつかない。なぜ、吐露した側はそこで悦に入ることができるのだろう。こんなにも醜い部分を曝け出せたという点を、自分の強さ、誠実さだと変換して勘違いできるのはどうしてだろう。さもその一秒後から新たな自分が始まるとでも思っているらしいことも、不思議だ。
    ラストは少し希望を感じさせる作品かな。

    6作品とも「どうしても生きてる」でした。

  • 短編集6話の作品ですが、内容が現実に生きている時にふと感じるネガティブな状況を思い起こされます。
    実際に自分では解決できない問題と直面して、逃げることも受け入れていくこともままならず…。抱えたままという表現というか、付きまとった状況というか…そのままな状態で生きていることはあります。著者はその場面を描くのが上手く、読んでいて心をグリグリとえぐられるような感覚を抱きました。
    作中では『籤』が唯一先が僅かに明るく向く気配を感じますが、それでもハッピーエンドにはならないです。ついていない人生であっても得られるものはある。そのようになった事実と向き合っていきていかなければならないと思わせられました。

    全体を通して生きていく上で影を感じる場面を描かれています。読んでいて辛いな、しんどいなと思うかもしれません。そう思ったということは、その場面に出会った事があるのではないかと思います。
    それでも、現実では生きている。人の弱い所をついてくる作品なので、読むときは元気があるときの方がいいかと思います。

  • 〇〇だから✕✕、という一見常識的で自然の摂理にのっとっているように感じられる現象。
    だけど現実で起こるありとあらゆる出来事全てにこの常識が当てはまるわけではない。
    絶対的なルールからこぼれ落ちてしまう人がいる。
    大通りの真ん中を堂々と歩いて生きることができる人は、こぼれ落ちてしまう人の存在に気づかないし自分の奇跡的な幸福にも無自覚。
    当書ではこの堂々と歩ける人とこぼれ落ちてしまう人との対比がいくつか描かれていて、 思考回路の全く違う者同士の間にある絶望的な壁を感じた。
    もっとも、堂々と歩いているように見える人だって裏では その人なりの悩みや疎外感があるのかもしれない。
    ただその苦痛を自己愛が上回り、無理やりにでも肯定しようとし続けたり問題解決よりも自己弁護に走ることで同時にいろんな人が傷ついているのかな。

  • けっこう前から気になっていた本作、文庫化したのを見つけて購入、読了。

    うーーん、思ったほど…という感じだったかなぁ…
    ものすごいスピード感で色んな負&闇を見せつけられたもんで、ちょっと消化不良というか…問題提起?だけされまくったものの、自分の理解と考えが追いついてないというか…

    一つのテーマを深々と掘られる方が、個人的にはしっかり向き合えて好きかなぁ…とか思いました。
    短編なら長嶋有さんとか、ああいった雰囲気が良いさっぱりもんの方が好みかなぁと。

    あと、本作がイマイチ共感できない自分って、やっぱ圧倒的にのほほん生きてるんだろうなと(笑)
    まあそれが自覚できただけでも、良しとするか…(´∀`)

    <印象に残った言葉>
    ・なんか、もう、いっか。って、思ったんだろうな。わかるな、なんか。こういうことがあった辛くてたまらないもう死にたい死にたい死にたいって助走があるわけじゃなくて、ふと、別にもういっか、ってなる瞬間。いきなり風が吹いたみたいに、わって。(P53)

    ・どこに向かって進んだって後ろめたさの残る歴史を歩み続ける以外に、この人生に選択肢はない。(P125)

    ・生きていくうえで何の意味もない、何のためにもならない情報に溺れているときだけ、息ができる。(P151)

    ・心のままに泣いても喚いても叫んでも驚かない人がひとりでもいれば、人は、生きているのかもしれない。それが、誰にとっても誰でもない存在としてでしか向き合えない人であっても、それでも。(P278)

    <内容(「Amazon」より)>
    死んでしまいたいと思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(「健やかな論理」)尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が写されているような気がした。(「そんなの痛いに決まってる」)生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(「籤」)等鬱屈を抱え生きぬく人々の姿を活写した、心が疼く全六編。

  • タイトル通りの一冊。
    読み終えるのに体力も気力も必要。

    解説を万城目学さんが書かれているのだが、私は万城目さんの描く〝虚〟の方が好きだな…
    今という時代は〝実〟を求めているのかもしれないけれど、救いが無さすぎるのは現実だけでいいかなと思う。

    男性はどこまでも弱く、女性はその分生きなければならないと言われている気がする。
    書中にもあったけれど、それを曝け出したからといって赦されるものではないし…どうにも時代遅れな男性像に感じられるのだ。

  • 朝井リョウは天才。
    リアルを切り取る能力がすごい。
    建前を捨てたら自分の奥底にもこんな気持ちがあるんだろうな、というものを言語化できるところ

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

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