空にピース (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎 (2024年1月12日発売)
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感想 : 45
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  • 本 ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344433519

作品紹介・あらすじ

東京郊外の公立小学校に新しく赴任したひかりは衝撃を受ける。ウサギをいじめて楽しそうなマーク、ボロボロの身なりで給食の時間だけ現れる大河、日本語が読めないグエン。これまでの経験がまるで役に立たない現場で一人一人と向き合ううち、いつしかひかりは子どもたちの真の輝きを見つけていく……。新米教師の奮闘と成長に心震える感動作。

感想・レビュー・書評

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  • かなり重苦しかった。
    理想に燃える若い女性教師が、疲労でうつろな瞳になっていく姿が目に浮かぶ。唯一心を開いていた養護教諭の前でも自ら心を閉じてしまう。
    ネグレクトや昼夜逆転で不登校に陥る子、日本語をうまく話せない外国籍の子、給食費を滞納せざるを得ない子。そんな子たちに寄り添って擦り切れていく先生。
    最後はかすかな光が見え、報われたように見えるけど、きっと彼女は疲弊している。そしてそれが蓄積され、ボディーブローのようにひびいていく。
    理想に燃える一人の教師の存在が周りの教師に刺激を与え、活気づくことはあるだろう。
    でも、今の教育現場の抱える問題はチームで対応し、他の教育機関と連携しないと解決の糸口は見えない。
    「空にピース」をしながら卒業生と笑顔を見せる女性教諭。よかった。本当によかった。
    でも、もう一人の6年生担任は最後の力を振り絞って卒業生を見送り、教師を辞めていく。何年か前から教育の限界を感じて。元は若き女性教師と同じように子どもに寄り添っていた熱い教師が。
    藤岡陽子さんの描きたかったのはどちらの姿なのか。たぶんどちらもだろう。

    「あなたが、この世に見たいと願う変化に、あなた自身がなりなさい。」(マハトマ・ガンジー)

    • うるうるさん
      どこでお返事すればいいのかわからなかったのでここで失礼します( ˊᵕˋ ;)こちらこそフォローありがとうございます、よろしくお願いします!山...
      どこでお返事すればいいのかわからなかったのでここで失礼します( ˊᵕˋ ;)こちらこそフォローありがとうございます、よろしくお願いします!山登り楽しいですよね、お膝お大事にしてくださいm(_ _)m
      2025/02/06
    • まいけるさん
      ありがとうございます!
      レビュー楽しみにしています!
      ありがとうございます!
      レビュー楽しみにしています!
      2025/02/06
  • 藤岡陽子さんの作品は3冊目。
    教師になり5年めの澤木ひかりが、問題を抱える水柄小学校6年2組の、新しい担任になった時から約1年間の奮闘記。

    子どもは、親を選べない。
    家庭に入れば、子どもにとって親はすべてだと思う。子どもは過酷な状況でも、なんとか順応しようと試みるものだ。
    ひかりのクラスには、学校給食で命をつなぐ子どもがいる。私は(たくさん食べてたくさん眠る)は子どもの特権だと思っている。もし日本のどこかでおきていることなら悲しすぎる。

    子どもは先生も選べない。
    理不尽なことをされても、抵抗できない。
    自分のことを真剣に考えてくれる先生を、どこかで探している。

    そこに「光」がさす。ひかり先生の存在だ。
    ネグレクト、発達障害、児童虐待、外国人児童問題、小児性愛、次々と起こる問題を持ち前の行動力で突き進んでいく、ひかり先生は頼もしい。

    「神様、この世に生まれたすべての子どもたちを幸せにしてください」
    ひかり先生の言葉はやさしく尊い。

    どんな状況においても、子どもには未来があり、可能性を秘めていると思う。

    今、小学校の教師は激務だと聞いた。
    子どもたちの笑顔のためにも、先生にはいつも元気でいてほしいと願うばかりだ。

  • 貧困地域の学級崩壊、不登校、ネグレクト、不法滞在、小児性愛者等ありとあらゆるトラブルを抱えて、それに正面から取り組もうとする若い女性教師の姿を描いてます。
    構成が上手く物語の展開が面白いので大切なものを見落としがちですが、現実に主人公の様な先生がいたら、この展開では身も心も削られてしまい、定年まで勤める事は出来ないであろうと思います。あらためて「教師」が如何にハードな職業かと認識させられました。
    どなたかの感想で、(教職者かと思われます。)
    「先生の行動が美徳のようにして描かれてるのは違うと思う。これが世間の理想とする教職員の姿なのかと思うとぞっとする。」とありました。
    まさにその通りです。
    学校単位や特に教師個人の能力に依存したままの現在、限界は既にに迎えているはずで、国として真剣に学校教育を考えないと教育システムが崩壊するという警鐘が聞こえてきました。

  • 新しく赴任した小学校で6年2組の担任となった新米教師のひかり。そこで目の当たりにしたのは生徒たちの過酷な現状。これまでの経験がまるで役に立たない中、一人一人と向き合っていく。

    子供たちが希望を持てない現実が重く苦しい。ひかりが壊れてしまわないか心配になりながらも、目を背けずに読む。
    もっと多くの味方はいないのかと思うも、大人もまた心が折れてしまう過酷な現実。それでもたった一人の行動が生徒の心の灯となり、光へと繋がったラストは涙が溢れた。

    希望を持てる社会を諦めてはいけない。
    負けない人になろうと強く思う、大切にしたい物語。多くの人に触れてほしい。

    • まいけるさん
      みんとあめさん、こんにちは。まいけるです。
      この先生が子ども達の心を照らしてくれたんですよね!
      諦めない気持ち。いくつになっても持ち続けたい...
      みんとあめさん、こんにちは。まいけるです。
      この先生が子ども達の心を照らしてくれたんですよね!
      諦めない気持ち。いくつになっても持ち続けたいです。この先生が壊れなくてよかった。
      すてきなレビュー、ありがとうございます。
      みんとあめさんのレビュー拝読して、私も一気読みしました。
      2025/02/06
    • みんとあめさん
      まいけるさんのレビューを拝読して、そのとおりだな痛感します。
      マハトマ・ガンジーの言葉は私も心に刺さりました。
      読友さんにおすすめされて読ん...
      まいけるさんのレビューを拝読して、そのとおりだな痛感します。
      マハトマ・ガンジーの言葉は私も心に刺さりました。
      読友さんにおすすめされて読んだのですが、今年の初めに読めて良かったです。
      2025/02/06
  • 教師×小学生の設定は没入しにくく、昨今社会的に問題になっているような話がテーマのため読み進めにくい作品。でも終わりが素晴らしいので、挫折しそうな方はぜひ最後まで読んでほしい。
    初めての藤岡陽子さん、とても丁寧かつ実直な文章を書かれるような印象。

  • 最初の方はとても辛く、読むのをやめようかとも。
    澤木ひかり・・と同じ仕事をしていたのは、私の周りに複数います。
    なので読むのが辛いと思えるところが‥‥

    そしてきっとこの後、その仕事に就くかもしれない大学生がいるかも。
    穏やかな終わり方なので、よかったです。

  • 今年最後、素晴らしい終わり方でした。
    生徒に全力でぶつかって行く小学校教師の主人公にエールを送りながら読みました。

  • いわゆる《親ガチャ》で、どちらかと言えば残念なほうに当たってしまった子どもの担任になった若い小学校教師が主人公。

    今思うと、自分が小学生の時のクラスメイトだったあの子、もしかしてそうだったのかな(都内23区在住)というケースも

    時代が令和になると、そういう環境の家庭も聞かなくなったな、いたとしても珍しいのでは、と思っていたが…。

    《環境から生じる格差》
    子どもにはなんの責任もない。

    真冬の屋外、もこもこのダウンジャケットの子とお下がり何代目なの?の古いコートの子じゃ寒さの体感は違う。


    でも、子どもはみんな親が大好きだ。
    クソみたいな毒親でも子どもは親を庇うし親から好かれたい。

    子どもたちがかわいらしくていい子だからこそ、本人が、望む道を貧困を理由に諦めることがない社会になればいいと思う。

    大人目線や常識、自分の経験で決めつけるのではなく、一人一人とそれぞれ丁寧に話を聞こうとする、不器用でちょっとトロくてたまにイラつく先生にも好感が持てた。

    にしても切ない。

  • 文句なく⭐︎5つ!
    素晴らしい小説だった。
    帯を見て新米教室が子供達に降りかかる困難に奮闘するお話…と思い手にしたが、そんな軽いものではなかった。
    今や小学生の抱える問題はお友達と喧嘩しちゃった…勉強が難しい…ありきたりなものではなく不登校、ネグレクト、貧困、不法滞在、小児性愛者…そのどれもが紛れもなく社会問題である。
    社会問題があどけない小学生の学校生活にまで入り込んでいる事が恐ろしい。
    そしてそれらの問題から目を背ける事が当たり前のようになってしまう教師のあり方、そうせざるを得ない教師を取り巻く環境、教師ばかりではなく親の在り方、家庭環境、地域社会の子供への関わり方…波紋はどんどん広がるばかりだ。
    「金の角持つ子供たち」の塾講師、加地先生も素晴らしい先生だったけれど本書の澤木先生もまた心から子供を想い、正面から向き合う先生…こんな先生が1人でも多く…と思わされる先生の象徴だ。
    (クラス全体を見た時賛否両論ありそうな先生だけど…笑。問題児とされる生徒に心を奪われすぎると手の掛からない生徒や保護者の心は歪む問題も多々^^; 理解してくれる生徒や保護者ばかりではない)
    小説として充実した読書時間を持てた事は確か!ただそれだけではない…小説の中の話だから…と終わらせられない大きな問題定義を掲げてくれた!
    そう、こういう現実がある事をもっともっと知らなければならない。
    知るところから始まると思わされた!

    藤岡さんの小説、やっぱり好き。
    他の小説もたくさん読んでいきたい!



  • ネグレクトや虐待、貧困や不法在留など様々な問題に直面する小学校六年生の子供たちを救おうと、その担任の先生が孤軍奮闘する。

    こういう系の本は苦手かも?と心配していたが、担任教師であるひかりの考えや行動は決して押し付けがましくなく、純粋に子供たちを心配する愛情ゆえなので、自然にひかりを応援する気持ちになれた。

    絶望とも言える程の苦難の中、少しずつ光が見えてくるラストは圧巻で心が暖かくなり、目には涙が溢れた。

    新年の1冊目、よい本を読めて幸せ。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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